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夏にアーセナル加入するGKマット・ターナーの紆余曲折すぎる道のり

こんにちは。

また、中途半端にタイミングを逸したニュース。

冬ウィンドウで、アーセナルが夏に獲得することで合意したと報じられた、MLSサイドNew England RevolutionのGKマット・ターナー(Matt Turner 27)の移籍が、彼の所属クラブから発表されていた。5日前に。

現在USMNT(USサッカー代表)のNo.1であり、2021のMLSのGK of the yearに選手されたGKは、2022夏にアーセナルに加入する。

アーセナルから同時発表があってもよさそうだったが、まだない。

ひとまずは、ようこそマッティ・ターナー!



アーセナル移籍についてマット・ターナー「ワールドカップイヤーでの移籍はチャレンジング」

2月12日の『Tribal Football』より。

ターナー:ぼくはいつだって、できる限り最高のレヴェルで挑戦できるところにいたい。

ゴールキーパーにとって移籍はタフなもの。もう27才だし、それもわかっている。でもそれがほんとうにやりたかったことだし、叶えたいことだった。同時にいまはワールドカップイヤーなのだから、スマートにプレイしなければならない。

海外へ行き、もしかしたらあまりプレイできないところへ入っていく状況だし、それに外国に慣れないことだってあるかもしれない。ワールドカップを前にチャレンジングなことだろう。

USMNTからたくさん得られるものがあるし、2022年もまだレヴォリューションでプレイする。そしてワールドカップだ。ワールドカップのあとはまた考える。しかし、つぎの12ヶ月、つぎの4カ月、つぎが何であれ、自分がすごくそうしたいんだからいいんだよ。

ワールドカップでプレイするチームのGKが、所属クラブでバックアップだったらと考えると、やっぱり選ぶほうも不安はあるはず。それでもこのタイミングで移籍を決断したターナーに幸あれ。

 

ぼくはこのコメントを読んだあとに、彼のこれまでのフットボーラーとしてのバックグラウンドストーリーを知った。

それをわかって、このコメントをあらためて読むとなかなか味わい深いなと。

われらのクラブに新しい選手が来るのだから、本来は選手のプロファイルやスキル、アーセナルでの立場などを細かくフォロウしておくべきなんだろうが、今回はそれは後回しにして、彼のここに至るまでの生い立ちをざっと紹介したい。

アメリカンサッカーの選手がイングリッシュフットボールにたどり着くのは、これまでPLのアメリカ人選手の少なさを観てもそれなりにレアなことだろう。

そのうえ、このターナーはPLでプレイするようなトップオブトップの、とくにアーセナルの若い選手たちのような子どもころから英才教育を受けてきたような、エリートフットボーラーのバックグラウンドとは一線を画した紆余曲折ぶり。

マット・ターナー、転機だらけの「奇妙で思いがけない」ストーリー

『The Athletic』の去年夏の記事“Matt Turner’s strange, fortuitous path to the USMNT(マット・ターナーの奇妙で思いがけないUS代表への道)”より要約。

※このときまだ彼はアーセナルともリンクされておらず、USMNTのNo.1をキープしたわけでもなかった時期。USMNTデビューは2021年1月

バスケと野球をやっていた少年時代

  • マット・ターナーは27才でUSMNTのNo.1になったが、ここまでは大変に紆余曲折があった
  • ターナーの最初の岐路が訪れたのは14才。バスケと野球をやっていたターナーは高校サッカーのトライアウトに落ちる。サッカーを諦めようとするも両親が説得
  • その後トライアウトで1年生GKがケガ。自分で挙手をして自然とGKに
  • GKとしての才能を発揮するも、すぐには軌道に乗らない。高校3年でバスケと野球をやめてサッカーに専念
  • サッカーを始めたのが遅く、クラブチームでプレイするようになったのが16才のとき。大学サッカーからの関心はなし。自分でハイライトリールをつくって大学に売り込まねばならなかった
  • 大学4年でやっと世間に関心を持たれ始める

1通のメールから本格的にサッカーへ。しかし挫折を知る

  • ターナーは、コネチカット大学のコーチにトーナメントでプレイする自分を観に来てほしいとEメイルを送る
  • その1通のEメイルがターナーの人生を変えた
  • GKコーチのJavier Decimaがターナーの才能を見抜く。キャンプに招待される。その後にチーム(フェアフィールド大学)にスカウト。それが唯一のオファーだった
  • 2012年にフェアフィールドに加入。しかし1年めはバックアップ、2年めにスターターを期待していたもののチームは別のNo.1を獲得。それをtwitterで知る
  • また、アイオナ大学戦では、逆転敗けのきっかけになった悲惨なエラー(オウンゴール)で注目を集めてしまう
  • このプレイが「ESPN’s Not Top 10」のトップに(※訳注:「珍プレー好プレー」みたいなやつ?)
  • その後シーズンを通してターナーはベンチに。完全にサッカーから離れようと考え出す
  • 悲惨なエラーをやったアイオナ戦のYouTubeコメント「このGKはどんなにがんばったってプロにはなれない」。2014年
  • 当時を述懐するターナー「その時点ですべてが終わった。サッカーはぼくには向いてない。フェアフィールドはぼくには向いてない。いいGPAを持っているし、どこでも移籍できるのだから違うチームにいったり、いい学位を取得したり楽しめればそれでいい。それがぼくの考えだった。終わった」
  • しかし、両親の励ましと、春には好調なシーズンを過ごし気持ちを持ち直す

大学サッカー。プロは遠く

  • まだフェアフィールドに残っていたが、プレイするためにチームを探す。しかしまたチーム探しが困難に「フェアフィールド程度のチームでスタートしていなければ誰も見向きもしなかった」
  • 結局、3度のトライアウトでジャージー・タウン(USLリーグ2)のサードGKに
  • ここでも、また転機が訪れる。シーズン序盤にGKふたりが同じ試合で負傷。ターナーはNo.1になり、チームをPDL全米選手権のセミファイナルへ導いた
  • ジャージー・タウンのあと、フェアフィールドでNo.1を勝ち取り、3年めにして18試合で13のクリンシーツを達成
  • しかし、それでもターナーはMLSクラブからはほとんど関心を持たれなかった。大学生選手のためのドラフト前キャンプには呼ばれるも、チームはステディアムにも入れず。マット・ターナーの名前はスーパードラフト(The SuperDraft)に含まれなかった

偶然の成り行きからMLSクラブへステップアップ

  • またしても転機。これはターナー本人も気づいていなかった
  • フェアフィールド卒業生のプッシュを依頼されていた大学OBのエイジェントが、クラブでGKコーチも兼任していたニュー・イングランド・レヴォリューションのスカウティングディレクター、Remi Royに「うちのGKを観てくれないか」と相談
  • このOBエイジェントはGKの評価に疎く、自分で判断しなかった
  • Roy「マットの映像を観てわたしはこう云ったよ。彼をプリシーズンに連れて行くと。エイジェントはマジ?って驚いてたな。われわれはサードGKを探していたから」
  • Remi Royは2回のトレイニングセッションズでターナーとの契約を決断。2016年でターナーは21才
  • ターナーはサッカー以外のもっと稼げる仕事もあったが、これをやめてニュー・イングランド・レヴォリューションと契約。そこから2年は、ニュー・イングランドとヴァージニアを行ったり来たり。週末は別のチームでプレイした
  • ニュー・イングランド・レヴォリューションではあまりチャンスはなかったものの、試合前のウォームアップでは「今夜は彼をプレイさせたいと思わせるようなセイヴをやった」とRemi Roy

苦しみながらもついにクラブでNo.1。自分を信じ強気で新契約を勝ち取り、そしてアメリカ代表へ

  • 2018年に、アメリカの伝説的GKブラッド・フリーデルがクラブのヘッドコーチに就任、ターナーはチャンスを得る。オープニング試合でいきなり抜擢されると最後の8試合でベンチになるまで、No.1をキープ
  • ターナーが云うには、フリーデルが彼をベンチにしたタイミングでクラブは「最低の契約オファー(4年)」をしてきた。ターナーにとってはルーキー契約の最終年で、自分がプレッシャーを感じていたときに、クラブは安く彼をとどめようとした。ターナーは思い切ってこれを拒否。結局クラブは2019年に彼のオプションを行使した
  • このときの決断がまたまた転機に
  • ターナーはまたサードGKに戻ったが、結局フリーデルはヘッドコーチとして最後の試合で彼をスタート
  • フリーデルの後任マイク・ラッパーは、ターナーのNo.1を維持。クラブがプレイオフに進出したシーズン後半に大活躍。8月にはさらなる高額な条件で契約延長
  • 11月のCONCACAFネイションズリーグのあと、USMNTに初招集
  • ターナーは翌年の2020年にも大活躍。MLSのGK of the year投票で2位。チームメイトたちとファンからの投票でクラブのPOTSに選出。このシーズンのショットストップはMLSでもダントツ
  • シーズン終了後には、クラブと2023年まで契約延長(1年延長OPつき)

後略&以上

 

これでもかというくらい、つぎつぎに転機が訪れるという。ターニングポイントだらけの人生(笑い)。

両親もいい仕事してる。彼のこころが折れそうになっている場面で、両親がフットボールをつづけるよう息子を説得していて、彼らがいなければ、いまのマットはいない。親に感謝しないと。

またライヴァルがケガをしたりと、要所要所で偶然にも恵まれたところもあるかもしれない。

でも、もっとも重要なことは、ここに至るまで何度も挫折しそうになったのに、本人が成功することを諦めなかったことなんでしょうな。それがすごいよ。仮に才能があっても、ほとんどのひとは途中で止めてしまうのだろうから。

そしてちゃんとそれが報われて、アーセナルFCのようなビッグクラブに移籍するサクセスストーリーになっている。

フットボールではたまにこういう波乱万丈なストーリーがあるけれど、これもまたその稀有な一例なんだろう。もちろん、ジェイミー・ヴァーディみたいになるには、これからアーセナルでの成功が欠かせない。

応援しよう。マット・ターナー。夏に来るのが楽しみだ。

 

おわる



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4 Comments on “夏にアーセナル加入するGKマット・ターナーの紆余曲折すぎる道のり

  1. 僕も同じ記事読んでて、それがシェアされて嬉しいです。
    こういう稀有なバックグラウンドをもつ選手、、応援しちゃいますよね!
    アルテタがパーソナリティ面もかなり獲得時に気にするようになった上での2ndGK(非HG)。
    現3rdの面子からU16までかなり才気溢れる若手が揃ってるとの評判なので、若手にも勿論ラムズデールにも好影響もたらしてくれる人と期待してます

    もう1人の方はKSE内で試してみようかー獲得後もレンタルかなーぐらいっぽいので、ホント今冬(来夏)実質マット・ターナー1人の補強で終わったこともかなり印象的

  2. ケラー、フリーデル→ハワード、グザン→ステッフェン、ターナーと定期的にプレミアに米国産GKが来ますね。
    期待期待。

  3. 若手のうちに最低給のオファーを蹴ってるっていうのも味がある話だなあと。内心けっこうビビってたんじゃないかなあw

    ウチでもサカ・バログン・エンケティアとギリギリまで延長しないケースが増えてるけど、この場合はカネもだけどチームでの立ち位置だと思う。自分の成長もだし、チームのサッカーが合ってるかどうかをギリギリまで見極めないと、10年ちょっとしかないキャリアの大事な4年が無駄になってしまう。まして「本当は要らないけど移籍金を取るために一応キープ」なんて都合のいい契約は、賢い今の選手は許してくれなくなったんじゃないかと思う。

    でもそれってターナー君みたいに自分からリスクにガンガン突っ込んでいく根性の裏返しでもある(そういう根性があるから納得できないオファーを蹴る)から、今の時代が必ずしも悪いとは言えないと思う。もっともクラブのチーム編成の担当者はすごく嫌だろうけどw。

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