22-23EPL NLD(H)のレヴューエントリ。前半につづいて後半を。
試合の論点
アーセナル vs トッテナム・ホットスパーのトーキングポインツ。
😍 Enjoy that one, Gooners?
🍿 Watch the action all over again…
📺 Bitesize Highlights | Arsenal 3-1 Tottenham 👇 pic.twitter.com/6YFbJQrGux
— Arsenal (@Arsenal) October 1, 2022
↑AFC謹製公式試合ハイライトリール。コメンタリが興奮気味でちょっとおもしろい。
「アーセナルウェイ」でNLDに完勝。予想どおりの試合展開で自分たちのプレイを完遂したアーセナルにうれしい勝利
今回は3-1というスコアながら、これはアーセナルの完勝と云ってよいよね?
まあ、トテナムもボールを持てば危険なチームだったし、さすがにやられ放題というわけでもなかったので、これがホームチームの圧勝と云ったらちと語弊はあるかもしれない。が、あれだけ支配的にプレイしていたのだから、今回こそ完全に勝ったと云ってよいと思う。相手が1人減ったこともある。
近年はとくに、トテナムのほうがリーグテーブルでもずっと上回る成績を残しているなか、アーセナルは現時点での実力で、まぐれでもなんでもなく違いを観せただろう。
「10回やったら何回勝てる」みたいないい方もあるが、ニュートラルな視点でも今回のような内容なら、その半分以上はアーセナルが勝つと認められるんじゃないかと思う。それだけアーセナルとしては、自分たちのやりたいようにプレイして、ちゃんと相手を上回ったという実感がある。それは、マネジャーや選手の試合後コメントにもよく現れている。
ファンとしてはずっと苦しかったから、この試合内容と結果は率直に云って、感慨深い。非常に。
さて、今回の試合内容は、ハイライン&ハイプレスとカウンター、5-4-1ディープブロックへの攻略と、戦術的には予想どおりの展開になった。そして予習をしっかりやっていたおかげで、よけいにみどころがあったし、楽しかったなと。手前味噌ながら、事前にこのブログのプレヴューエントリを読んでくれていたひとが、そういう感想を持ってくれてたらうれしいスね。今回の試合プレヴューは3つのエントリを足すと、このブログでもプレヴューエントリとしてはたぶん過去最大級の文章量だっただろうし。さすがに、いつもあんな熱量では書けない。
まず、トッテナムのロウブロック。これは、ほんとにめっちゃやっていた。。ハイプレスにもあきらかに消極的でうしろで待つという。
これは、どのくらいの時間がそうだったんだろ。そういうデータがあればよかった。でも、90分のうち1/3以上(30分以上)はそんな感じだったという印象はある。試合全体のアーセナルのポゼッションが65%で、1時間半の試合時間のうち、約1時間ボールを持っていた。その半分以上は相手をオウンサードに押し込んでいた。みたいな計算が成り立ちそう。
そしてアーセナルは、きっちりそのロウブロック攻略をやろうとしていた。もっとも、ドン引きされるのは彼らに限らないので、いつもどおりのことを忠実にやろうとしていたということに過ぎないとも云える。
ロウブロックのエントリで筆頭に挙げられていた、「クオリティあるショット(ロングショット)」。まず、パーティがそれでボックスの外からズドン。しかも20分以内という理想的に早い時間帯。
あんなふうにボックス内にとにかく人数を入れて守るので、その外側がフリーになることは事前に想定できていた。トテナムの戦略は、ボックス外から可能性の低いショッツを打たせるだから、彼らとしては、あんなショットを決められたら、その時点でお手上げという。そして、キャプテンMØが述べていたように、アーセナルは最初からそれを狙っていた。
それと、ドリブル。アーセナルはボックス内でのタッチが42(ToTは14)、ドリブル成功が10/15(67%)。ふだんはゴールに近ければ近いほど仕事をさせないトテナムの守備をアーセナルは何度もこじ開けようとした。
ここでちょっと振り返りたいのが、トテナムの今シーズンの記録。
- 6ヤーズボックス内でのショッツ4%(リーグ最少)
- 18ヤーズボックス内でのショッツ15%(リーグ最少)
- ボックス外からのショッツ47%(リーグ最多)
- 相手チームのショッツ距離18.5ヤーズ(リーグ最長)
- ショッツブロック(5.57/90min)(リーグ最多)
そして、この試合でのアーセナルのオープンプレイからのショッツ位置。
アーセナルのショッツ22の半分以上(12)がボックス内から。そのうちの3つは6ヤーズボックスから。アウェイチームにとっては、これは得意のロウブロックをやったにも関わらず、例外的にブロック内を侵食されたということを示している。この試合が、ゴールからなるべく近くでショッツを打ちたいチーム vs ゴールからなるべく遠くでショッツを打たせたいチームの戦いだとしたら、前者は後者をかなり攻略した。
また、ロウブロック攻略におけるオプションのひとつだったロブボールにも印象的なものがあった。59分のジャカ→ジェズースへのOTTのパス。ゴールにはならなかったものの、あれはまるで、完全にふたりのインスピレイションで決めたブレントフォードでのゴールを再現しようとしているみたいだった。
ハイラインのほうは、どうだったろう。
ポゼッションしているうちはカウンターを許さないという原則は、効いていたとは思う。29分にペナルティで藪から棒に失点した前後から試合がオープンになっていった感じはあるが、それ以外はポゼッションをキープし、高い位置でボールを失ってもカウンタープレスから雑なロングボールを出させて、ミドルサードや最終ラインでイージーに奪うことは何度もあった。あれが、典型的ハイライン&ハイプレスの戦略。
オフサイドトラップについては、TV中継だと大部分DFラインはカメラに映らないので、ハイラインがどのような動きをしていたのかは、把握できなかった。ぼくはいちおうそこは注意深く観ていたので、オフサイドトラップを仕掛けようとするDFの動きがカメラに映った場面はあったと思う。
今回はトテナムのオフサイドは3(※13分のラムズデイルがセイヴしたショットはオフサイドは取られなかった)で、オフサイドトラップがすごくハマったという印象はないが、たとえばマンUでやられたような、中央エリアで裏への決定的ランを許したという場面はほぼなかった。
ハイプレスのほうは、データを観るかぎりいつもどおり。今シーズンのアーセナルのアタッキングサードでのプレッシャーはp90で33.8。今回のそれは34だから、ほぼ同じ。ちなみにジェズースひとりで13を記録している。これは、今回もまたアーセナルは粛々と自分たちのタスクをこなしたと観るべきだろう。
というわけで、アーセナルはやるべきことをきっちりやって、勝つべき相手に勝った。
- 自分たちのやりたいプレイをやった(スタイルに妥協なし)
- 必要だったレジリエンス(失点したあと時間をかけず2点めを奪う)
- 相手が退場者を出したあと、数の優位を活かし試合を殺した(ダメ押しの3点め)
NLDのような超重要な試合でこれをやってのけた。これは今後につながる内容で、この若いチームがいま持っているものからしたら、かなり高い経験値を積むことができた。
結果だけでなく、内容も理想的だったのだから、これがうれしくないはずもない。
それにしても、アーセナルでアルテタが疑問を持たれていた時期、その代替に、ファンのあいだでアントニオ・コンテを推していた声があったなんて、いまではちょっと信じがたい。とくに、いまアルテタがアーセナルのファンがもっとも喜ぶスタイルでプレイしていることを考えると。
もちろん、コンテならアーセナルでもちゃんと結果を出しているのかもしれない。が、もしアーセナルが、いまのトテナムのような守備ファーストのスタイルだったら、いくら結果を出しても(評論家たちから、シーズン前にトップ2に唯一チャレンジできるチームだと高く評価されても)やっぱりアーセナルのファンは議論をしていたんじゃないだろうか。それでほんとうにいいのかどうか。エメリが結果を出していたときですら、議論があったように。
だから、アルテタがずっとアーセナルの価値やフィロソフィについて尊重する姿勢を貫いていて、それをピッチのうえで実現しようとしていることは、ほんとうにほんとうにすばらしい。貴重で、得がたいもののように思える。
NLDの反省点:成長すべきポイント
ぼくはこの試合は完勝だと思っているが、たしかにHTを迎えた時点ではけっこう悪い結果も考えなかったわけではない。
ずっと支配していたのに、ちょっとプッシュされただけで焦ってエラーから失点するという、あれもまたアーセナルあるあるな展開だったから。
ガブリエルによるあのがっかりペナルティは、パーティのファインゴールからたった10分後だった。残念ながら相手の足を蹴ってしまったファウルは明白で、あの台無し感たらなかった。CBならやるべきじゃないプレイだった。
結局は、そのあと挽回したので、たしかに大きな問題にはならなかった。だが、ちょっとどうかと思うあの前後の局面ではあった。とくに失点後は1-1に追いつかれて、相手に物理的だけでなく、心理的プレッシャーをかけられて、やや局所的にパニックに陥ったというようにも観えた。
HTに、あるAFCインフルエンサーが「U-21じゃないんだから、ビッグゲイムで1-0で勝ってるときのアドヴァンテッジを活かさないと」みたいな誰かのtweetをRTしていたのが、なんとなく頭の片隅に残った。
そう、あそこはなんだか若いチームが未熟さを露呈した時間帯だったと感じた。ピッチをオープンにしすぎで、トランジションの連続。この試合で唯一相手の思う壺だった。
とくにガブリエルは、ああして致命的エラーをやるのは今回が初めてじゃないし、ややアツくなってしまう性格は今後も、命取りになりかねない。となりのサリバとくらべると、よけいにそう思う。
もちろんビッグガビだけでなく、そのあたりのゲイムマネジメントは、チーム全体として反省したい改善ポイントと思われる。われわれは、もっと成熟したいやらしいチームにならないといけない。
アーセナルファンで良かった。
これにつきます。
最高のノーロンに、素晴らしい記事をありがとうチャンさん
まずはCL権確保を目指してCOYG
ジャカの円陣、熱くなりましたね!
でも、円陣で思い出すのが、13-14のリヴァプールvsシティでのジェラードの円陣。
名シーンですが、その後のチェルシー戦で、彼のスリップで敗れ優勝を逃しました・・・
ジャカ。君は最後までやらかすことなく、宜しくお願い致します。
熱いレビュー、有難うございました!満点、最高の一日に。
パーテイがようやくミドルを叩き込んだこと、ジェスズの嗅覚、そしてジャカとファンの喜びの共有・・・もう文句なしです。リバプール戦もきっちり勝ち切ってほしいですね。ELでは今回ベンチ入ったリースとか、マルキーニョス、エディにファビオ、トミヤスにティアニーが、ボスの選択を悩ませるぐらい活躍してほしいですね!