昨日、日本代表のワールドカップスクワッドが発表されていた。
ヨーロピアンクラブに所属する選手たちが大勢をしめるなか、アーセナルのタケヒロ・トミヤスは、CBとして順当に選出。元ガナーのタクマ・アサノも選出されたということで、アーセナル界隈で少し話題になっていた(ケガさえなければミヤイチも選ばれる可能性があった?)。
トミヤスといえば、シーズン開始当初はライトバック(RB)に定着したホワイトから、なかなかポジションを奪い返すことはできなかったものの、最近ではレフトバック(LB)のポジションで優先的に起用されるようになっている。
シーズン当初からLBのファーストオプションだったジンチェンコが離脱しているあいだは、従来のレギュラーLBであったティアニーがポジションに戻っていたにも関わらず、どうもアルテタはKTよりもトミーのほうに信頼を置くようになっているようだ。
アルテタのLBは、KTよりトミー。そして、これが示すことはなにか。
今回は、これについて少し書こう。
22-23シーズンのレフトバックの変遷
PLのここまでの12試合で、LBにおけるジンチェンコ・KT・トミヤスの3人のプレイ変遷をおさらい。
<ジンチェンコ>
今シーズンからの新加入で、加入当初はMFかFBかどちらでプレイするか憶測もありながら、スタート3試合からLBでプレイ。当初からレギュラー扱いだった。
そのあとは、ヒザ、ふくらはぎをやりしばらくアウト。離脱は、いまもつづいている。
ケガのあいだでも、マンUやNLDのような重要な試合でスタートしているということは、基本的にはアルテタのチームでLBのプライオリティはジンチェンコという理解でよいのだろうと思う。
<ティアニー>
これまで、フィットしているあいだは基本的にずっとレギュラー扱いだったKTは、シーズン開始からジンチェンコにLBポジションを奪われたかたち。
彼がスタートからLBでプレイを始めるのは、ジンチェンコが離脱してから。彼にとって屈辱なのは、NLDでジンチェンコが復帰すると(すぐまたケガでアウトになるのだが)途端にベンチに戻されてしまったことで、さらにその後のリヴァプールでは、LBポジションを「タクティカルリーズン」で、トミヤスに奪われしまったこと。
それ以降、KTはPL3試合連続でスタートがない。
<トミヤス>
今年はサリバがチームに戻りRCBに収まったおかげで、シーズン開始からポジションをシフトしたホワイトにRBポジションを奪われていて、サブでの短時間のプレイを余儀なくされた。
だが、リヴァプールではLBでスタートに大抜擢。サラーやTAAの脅威に対応するためとはいえ、あれには驚いた。そして、それ以降はコンスタントにLBとしてスタートからプレイしている。あの試合のトミヤスはたしかにとても印象的だった。
トミヤスはRBからポジションをLBにコンヴァートされて、KTのポジションを奪ってしまったという。
KTは、新加入のジンチェンコにポジションを奪われたかと思ったら、今度はポジションをコンヴァートしたトミヤスにまで。まさに踏んだり蹴ったりである。
アルテタはなぜKTよりトミーを選ぶのか?
PLリヴァプールでの抜擢、その後のつづけての起用。トミヤスはますますアルテタの信頼を得ているように観える。
では、なぜアルテタは彼のチームでずっとプレイしてきたKTを置いて(彼の反発も当然予想されたうえで)、それでもトミヤスを選ぶのか。
結論から云ってしまえば、アルテタのチームで求められる「理想のフルバック」には、KTよりトミヤスのほうが合ってるということなんだろう。もっといえば、現状のチームでは理想にいちばん近いのはジンチェンコ。
試合のなかで、4-3-3から2-3-5のフロント5へシェイプが变化していく際にバランスのカギとなる、モダンフルバック。FBがポゼッション時にCMとしてプレイする、いわゆるInverted FB。この役に適応するかどうか。
したがって、この3人でLBポジションを争うなら、直線的にピッチを駆け上がってウィンガーをサポートする「古典的FB」タイプであるKTが、もっとも不利なのは自明に思われる。
ここ数試合では、KTもポゼッション時にCMのように、よりはっきりとInverted FBとしてプレイしようとしていて、このロールを積極的に自分のものにしようとしている様子が見受けられるが、正直その役はあまり彼に合っているようには観えない。あのロールに必要なスキルは、360度のヴィジョンであり、パッサーやゲイムメイカーとしてのセンスであり。走力よりも、総合力。ジェネラリスト。FBというよりも、むしろMFとしての能力が求められる。
彼がその役割に適応できないと云いたいわけではない。彼にはもっと適した役割があるというだけ。彼はスペシャリストとして、とても優秀な選手であることには違いない。MF的な、そういう役割をこれまでやってこなかったのだろうから、合っていないように観えるのは当然かもしれない。
いっぽうでトミヤスは、これまで右でやっていたことを左でもやれる。彼はほとんど両足使いであり、CBでもFBでも、もともとどちらのサイドでもそつなくプレイできる素養はあった。
だから、アルテタはKTよりもトミヤスを使うようになったのだろうと思われる。
ところで、今シーズンここまでのアーセナルの躍進を考えるに、チームのスタイルにおけるもっとも顕著なこれまでとの違いをつくっているのは、やはりジェズースとジンチェンコ(とジャカ)だろうと思う。このふたりの存在と役割によって、アルテタがこれまでずっとこのチームでやりたかったことに、ついに決定的なワンステップを踏んだという印象を受ける。アルテタのチームにとって、これまで足りなかったピースがなんだったのかが、よりはっきりわかったというか。
そして、チームのストラクチャという意味でより決定的だったのは、ジンチェンコの役割のほうかもしれない。右(ホワイト)からも左(ジンチェンコ)からも、うしろからゲイムメイキングできるようになり、アーセナルの攻撃はより予測できなくなったし、効率的/効果的になった。ピッチの全体で攻守のバランスが整って、アルテタがチームの戦略と戦術をよりコントロールできるようになった。そのことと今シーズンの躍進は、もちろん無関係ではあるまい。
ジンチェンコがケガで離脱して以降も、アーセナルは、KTをLBでスタートさせた2試合(ヴィラH、ブレントフォードA)にちゃんと勝っている。だが、その後のリヴァプールで、おそらく守備対策で起用したトミヤスが期待以上にLBにフィットしたことを目の当たりにして、アルテタも考えを変えたのかもしれない。そして、アルテタはそれ以降も3試合連続スタートと、トミヤスをますます重用するようになった。
リヴァプール戦は、トミヤスがサラーに完勝しただけでなく、LBではKTよりもトミヤスのほうがチームのスタイルに合っていると、アルテタが発見した(認識した)節目の試合だったように思える。
フォレスト戦だったかpsv戦だったか忘れましたがKTが中盤入って高速サイドチェンジを決めてました。
あの辺はジンチェンコ、富安にも無いスキルやなーと思います。
性能の塊だらけなんで皆んな残って皆んな成長して欲しいです。
ティアニーと冨安を比較すると、ビルドアップの能力は大差ないと思っていて、冨安が使われる理由は守備での貢献度かなと思います。相手のエースを無効化できるし、相手陣地でのファーストディフェンダーとしての役割も完璧にこなせる。
ティアニーも冨安も中に入って、ビルドアップしようと試みているけど、どちらもジンチェンコのようには出来ていないし、むしろ出来る選手は世界を探してもほぼいないかと。
さすがに冨安にジンチェンコと同等のゲームメイクを求めるのは酷なので、左ジンチェンコ、右冨安でみたいですね。
今年はDFにいい選手が揃っているので、替えのきかないパーティさえ長期離脱しなければ大崩れはしないと思います。
久々に期待できるシーズンです。
ビルドアップ面でティアニーと冨安が同等とは思えません。
redditのコメントにもありましたが、プレス耐性がまず段違いに冨安の方が高いですし、ポジショニングも素晴らしいし、たまに出す縦パスも気が利いてます。
守備に関しては、高さという面を除けば、むしろティアニーの方がいいはず。
なんせティアニーは確か昨シーズン、被ドリブル突破ゼロです。
サラーを完封したことがセンセーショナルすぎて、守備目的で冨安を起用しているという見方が多くなっていますが、左サイドの守備に関しては間違いなくティアニーの方が信頼度が高いはずなので、アルテタが冨安を使っているのはやはりビルドアップ面の評価が高いからだと思われます。
このままならKT移籍もやむなしだけどLB候補3人ともがいつ怪我するかわかんないからなあ……