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移籍市場でひとり巨額を費やしたチェルシー。なぜFFPで罰せられないのか?

チェルシーはなぜFFPルール違反を免れているか?

ここから本題。

クラブやオーナーがいくら金を持っているからといって、それを使いたいだけ使うことが許されたら、競技として不公平になってしまうし、それはスポーツの本来のコンセプトからも逸脱することだろう。だから、FFP(Financial Fair Play)のようなルールもある。※FFPのおもな存在理由はクラブが金を使いすぎて財政危機に陥らないようにコントロールしようとするもの

では、なぜ今年のチェルシーのような極端な振る舞いが許されるのか。

以下、記事より引用す。一部は要約。※赤字ハイライトはわたしによる。

2023移籍市場において、チェルシーはどうやってそれを実現した?

ふたつの設問。

  • クラブは十分な金を持っている?
  • それでもチェルシーはFFPレギュレイションズに則っている?

 

<クラブは十分な金を持っているのか?>

かつてアブラモヴィッチは、チェルシーに総額£1.5blnという資金を注入しつづけた。その結果チェルシーはPLで最高の負債を負うことになったが、彼はクラブ売却の一部として、それを帳消しにしたと報じられている。

新オーナーは、クラブ買収に£2.5blnという大金を支払い、さらに£1.75blnのインフラ投資を約束したことから資金も潤沢である。

いずれにせよ、ほかのクラブと同様、移籍金は分割で支払うことになるため一度に資金を調達する必要はない。

チェルシーの移籍金債務はここ数年で増加しているが(2021年に£147m)、アーセナル(2022年6月時点で£188m)や、マンU(2022/23年第1四半期のプレミアリーグ記録£307m)に比べるとまだ低い。

(つまり、チェルシーには十分な資金力がある)

 

<チェルシーとFFP>

これを理解するには、クラブの会計における選手売買を観ることが役立つ。

会計:選手の購入

ここで重要なのは、選手を購入するときは数年にわたり費用がかかるが、選手を売却して得た利益はすぐに会計に計上されること。

移籍金は選手購入時に全額費用化されるのではなく、選手の償却によって契約期間中に均等に償却される。つまり、ある選手を5年契約£60mで購入した場合、年間償却額は£12mとなる。

これはまったく普通の、標準的な会計処理である。

チェルシーがとった唯一の「*発明的」な措置は、選手と長期契約を結び、移籍金のコストをより多くの年数に分散させるということ。※訳注:「発明的」は原文ではInnovative(革新的)

この結果、会計上の年間費用は少なくなるが、それでもいつかそのツケを払わなければならない。だから、これは一部の人が主張するような「銀の弾丸」ではない。

しかし、短期的には、Enzo Fernandezを見ればわかるように、帳簿の見栄えをよくする効果がある。彼は8年半契約£106mで買われたが、これは年間償却額£12.5mで計算される。もし、もっと普通の4年半の契約だったら、年間償却額は£23.6mと2倍近くになっていただろう。

ほかの選手の多くも非常に長い契約を結んでいる。Mudrykは8年半、Badiashile、Madueke、Gustoは7年半、Wesley Fofanaは7年。

2022-23の償却によるインパクトは£67mと小さいが、これは1月の契約では6ヶ月分しか計上されないためである(そしてほぼ間違いなくアドオンは除外される)。

ただし、UEFAは現在、選手の契約期間に関わらずFFP計算のために最大5年の契約期間を設定することによって、償却「トリック」を厳しく取り締まることにした。

だが、この新ルールは今年の夏から実施され、遡及適用はされないため、これまでのチェルシーの契約選手の処遇に影響が出ることはない。

会計:選手の売却

ここでは、より有利な会計処理と現実の世界との違いが浮き彫りになる最近のチェルシーの事例をもとに、選手の売上が会計にどのように計上されるかを見てみよう。

まず、Saint Etienneから£12mで買い取ったKurt Zouma。彼をウェストハムに£30mで売却し、£18mの現金利益が発生した。しかし、当初の移籍金は完全に償却されていたため、クラブはもっと高い£30mの利益を計上することができた。

さらに、Davide ZappacostaはTorinoから£22.5mで4年契約で購入し、4年後にわずか£8mでAtalantaに売却、£14.5mの現金損失となった。しかし、会計の “妙 “で、このイタリア人フルバックは再び完全に償却されていたため、帳簿上は£8mの利益になったのである。

この会計処理は、わずか2シーズンでRB Leipzigに£22.5mの損失(購入£47.5m、売却£25m)で売り戻された不発のTimo Wernerのケースでも財務を押し上げることに成功している。クラブはすでに彼の2年分の償却額£19mを計上していたため、会計上の残存価値は£28.5mに過ぎず、報告された損失額はわずか£3.5mとかなり低くなっている。

アカデミー選手

クラブのアカデミーで育成された選手には、会計上のコストがかからない。クラブが他のクラブから選手の登録を確保するためにお金を払った場合のみ費用が発生する。つまり、アカデミー選手を売却すれば、純粋に利益を生むことになる。

このことは、チェルシーにとってとくに重要で、彼らが若い才能を蓄え、他所へ何度もローンした後も選手を登録し続ける理由の一端になっている。

チェルシーは、Tammy Abraham(ローマ)、Fikayo Tomori(ミラン)、Marc Guéhi(クリスタル・パレス)、Billy Gilmour(ブライトン)などの売却で大金を手にし、過去2年間に£100m以上をアカデミー所属選手の売却で計上している。

将来的にも、チェルシーはこの成功を再現できるかもしれない。新しく獲得された選手によって試合ではプレイしない可能性もあるが、まだいい金を生む選手として、Conor Gallagher、 Ruben Loftus-Cheek、Trevor Chalaboah、Callum Hudson-Odoi、Levi Colwillらがいるし、Mason Mountすらその可能性がある。

チェルシーのビジネスモデル

チェルシーのここ数年のビジネスモデルは、選手売買の会計処理に負うところが大きい。基本的に、多額の営業損失を選手売買の利益で補填してきたのだから。

2021年までの10年間で、チェルシーは常に多額の営業損失を計上しており、その額は£750m以上(さらに£110mの例外項目を除く)に上るが、これらの損失は、£100mを超える2シーズンを含む、同期間の選手売却益£611mという非常に素晴らしい利益でほぼ相殺されている。

これは、直近5年だけを観ても、彼らが生み出した£413mの利益は、PLで次に高い利益を出したリヴァプールの£274mよりも、50%ほど多い額である。

このようなチェルシーのアプローチは、£112mの営業損失を、選手売却による£143mの利益で補い、£36mの純利益をもたらした2019-20シーズンが最もよく表していると云えるだろう。

とはいえ、チェルシーは過去10年のうち半分の期間で純損失を計上しており選手売買は万能というわけではない。だが、ダメージを抑えるのに役立つことは確か。

要するに、今後もチェルシーが選手を売りつづけることができるなら、FFPの観点からも問題はないはず。

後略&以上。

雑なまとめ

チェルシーが今年のような極端な金の使い方をしていて、なぜFFPで問題にならないのか。

その答えは、

  1. 選手の売買において、会計上のやりくりで損失が抑えられている ※ただしこれはどのクラブもやっている
  2. 選手売却益が多い。とくにアカデミー選手が金のなる木 ※チェルシーはアカデミーに選手を集めていることで有名
  3. 単年ごとの償却(選手獲得コスト)を下げるために長期契約で分散する会計ハック

などであると。

1と2については、まあ問題ないというか、とくに2はクラブの戦略としてうまくやっているということだから、べつにいんじゃないだろうか。選手売却が下手っぴな近年のアーセナルは、大いに見習うべき部分もある。

もちろん、そのいっぽうでは売却するためだけに若い才能をかき集めていることについての批判や、今回のようにスター選手を爆買いするみたいなクラブのフィロソフィの欠如についての批判はあったりするが、それはまた別の話。

去年から今年、もっとも注目されていた3の長期契約については、このチェルシーのやり方を問題視したUEFAがルールを改正して、今後は「選手コストの償却は5年しか認めない」となるので、このようなチェルシーの長期契約による会計ハックは通用しなくなるのだろう。

こういうことからもわかるように、チェルシーがやろうとしていたことは、FFPのコンセプトからも、まったく褒められないやりかただったということだ。

したがって、チェルシーがこれからも今年のように移籍ウィンドウで選手を爆買いしていくかといえば、そうはならないと思われる。選手獲得コストの償却にかけられる年数が減れば、会計上は一気に損失が増えるのだから、それこそルール改正後はFFPに引っかかってしまう。

それに、彼らはもうこれ以上選手を取っても仕方がないしな。。

先日はオバメヤンがCLスクワッドから外れたことが話題になっていたが、チームの人数が多ければそういうことだって起きる。とにかく過剰なのだ。too much.

チェルシーのリスク

Swiss氏の解説のなかに、長期契約は「銀の弾丸」ではないという一節がある。そう、長期契約はチェルシーの意図だっただろう会計上のメリットがあったとしても、結局支払い総額は変わらないのだから、負担が減るわけでもない。

それに、長期に選手と契約を結ぶということは、クラブにリスクもある。

もし、大いに期待されて獲得した選手がチームでワークしなかったらどうするか。どのクラブでもありえるリスクだが、とくに、契約が長ければ長いほどリスキーだろう。

戦力外でありながら売却もできず、残留希望なんてされた日には、クラブとしてはたまったものではない。だが、高給&長期契約の選手ならそうしたこともありえる。選手だって待遇が下がる場所に行きたがらない。つまり、クラブがそうした選手をどうしても売却したいときには、譲歩を強いられる。

しかも、あれだけスター選手を抱えていて、長くプレイできない選手が出てくると、ドレッシングルームにも悪い影響があるだろうし、試合に出てない選手は価値だって下がる。もし来年のヨーロッパなしなら試合数も減って、よけいに選手はあまる。こんなことをして選手を集めても、ろくなことがない。

これはクラブ運営としては、あまり健全な状態ではない。だから、UEFAも動いたのだろうけど。みんながこれをやり始めたら、失敗して大損するクラブだって出てくるかもしれない。

 

おっと、チェルシーみたいな世界一どうでもいいクラブについて一所懸命書いてしまった。

おわり



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