hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Arteta, Controversy, EPL, Match

【マッチレビュー】23/24 EPL アーセナル vs フラム(26/Aug/2023)10人相手に痛恨のドロウ。このチームはなにかがおかしい?

試合の論点

アーセナル vs フラムのトーキングポインツ。

アルテタはもう「実験」はやめるべき? パーティのライトバック。ハヴァーツへのこだわり

ぼくは試合が終わったあとは、だいたいtwでジャーナリストやインフルエンサーの感想を観たり、redditを観たりして、世間がこの試合をどう見たかをチェックすることにしている。アーセナルブロガーとして。

そして今回、ぼくの観測範囲では「アルテタは実験をつづけるのはもうこれ以上やめるべき」という論調がかなり多く観られた。このチームは(以前とくらべて)なにかがおかしくなっていると。

「実験」というのは、アルテタが今シーズンから新たに始めている、パーティのRB、それに伴うバック3、3-1-6(3-1-3-3)システム、あとはハヴァーツの使い方などの試験的なこころみのこと。

誰かが云っていたが、プロセスのなかでいろいろ実験的なこころみをするのはいいとして、プリシーズンでもやっていないことを本番から始めるというのも、たしかに奇妙なことではある。なんのためのプリシーズン?

とくに疑問視されているのが、パーティのRBだろうか。

今シーズンからパーティがRBに入る新システムで(これまでに伏線はあった)、ポゼッション中はCMにインヴァート、うしろに3人のCBがいるという基本のかたちになっている。それ自体は、概ね大きな問題にはなっていない。この3試合だって、ほとんどの時間は支配的に試合を進められている。

昨シーズンとの違いについて考えるに、おそらくもっとも大きな影響を受けたのがベン・ホワイトで、彼がバック4のRBとしてときおりのオーヴァラップでサカと見せた連携が、今シーズンは減っている。そのおかげで、サカはボールを持ったときに相手DFと対峙して、さらに単独での打開が要求されるようになった感じはある。今回のような試合だと、サカにRBのサポートがほしいと思う場面は多かった。

ベンジャミンとサカ(とオーデガード)の右ワイドでのコンビネイションは、昨シーズンかなり脅威になっていたので、せっかくのストロングポイントがなくなってしまったことを憂いているひとが多いということなんだろう。

ガブリエルもその犠牲になっているひとりかもしれない。パーティがRBに入ることにより、ベンジャミン、サリバとCBがひとつづつ左にポジションがずれて、LBとしてのペッキングオーダーから?彼はベンチになってしまった。ジンチェンコ不在のLBでは、トミヤス、キヴィオールよりも優先順位が下だとアルテタからは思われているようなので、実質いまのシステムでは彼はLB/LCBとしてプレイできないことになる。

では、ベン・ホワイトの攻撃貢献や、2年もずっとレギュラーとして使いつづけてきたビッグ・ガビをあきらめてまで、アルテタがパーティのRBにこだわっている理由はなんなのかと考えるに、重要なポイントは、おそらくカイ・ハヴァーツの存在なのだろうと思う。アルテタは、どんなシステムであれ、どうしても彼を使いたい。

もし昨シーズンまでのように、バック4(ジンチェンコ、ガビ、サリバ、ホワイト)の前で、パーティがCMとしてプレイしたとすると、ライスやオーデガードをMFから外す選択肢は当然ないので、ハヴァーツの居場所が9にしかなくなってしまう。しかし、ジェズース不在の現状ですら、アルテタは好調のエンケティアを置いてトロサールを起用しているくらいで、すでにセレクションが悩ましい。少なくとも現状では9が彼のオプションであっても、ベストポジションだとは思っていない。よって、ハヴァーツを使いながらパーティも使うには、彼をInverted RBにせざるを得ない。そういうことなんじゃないか。

その結果アーセナルのチームは、なんだか、まあるい穴に角ばったネジをはめるようなことになってしまっている。回らないわけじゃない。ただハマっていない感触が残る。

現状、いまだにハヴァーツはファンからの完全なる信頼を得られてはいるようには観えないが、ハヴァーツに対するファンのフラストレイションは、このアルテタからの評価の高さが逆なでしている部分もあるように感じる。

ハヴァーツの優れたところは、アルテタだけでなく多くの識者が指摘しているとおりで、彼が選手として優秀であることが否定されているわけでもないだろう。だが、彼がいまもわかりやすい結果を出していないのも事実であり、むしろ今回も観られたように、いまだにほかの選手と利用したいエリアがかぶったり、まだチームプレイにも馴染んでいないところもある。したがって、そのような状況でもなお、ハヴァーツを重用しつづけるアルテタが無条件に彼を支持しているように観えてしまう。

ここでちょっと想起するのは、かつてのウィリアン。彼も期待されてチームに加わり、アルテタからの圧倒的支持を得ながら、結局最後までチームでワークすることなく終わってしまった。あのときも、ファンとヘッドコーチの選手評価のあいだには乖離があった。奇しくも同じくチェルシーからの獲得。リーグでの経験や実績も申し分なく、同じロンドンでほとんどプレイ環境も変わらず、ただただなぜかワークしなかった。あれはいったいなんだったのか、チームとしてあれは分析できているのだろうか。

あのときもアルテタはウィリアンにだいぶこだわった。

ここで、べつにウィリアンとハヴァーツを似た者同士だと云いたいわけではない。年齢もタイプもだいぶ違うし。ただ、ほかにオプションもあるなかで、マネジャーがひとりの<かなり期待している選手>に固執するのは、わりと危険な兆候ではあるとは思う。

アルテタがハヴァーツに特別にこだわる理由は、高さや守備などいろいろあるだろうが、チームへの適応をそこまで急ぐ必要がないのなら、せめてもうちょっと休み休みでプレイさせるくらいの余裕で起用してもらいたい。たとえば今回のような試合の流れなら、ゴールを目指す場面では、ハヴァーツはサブで出てきたほうが相手の脅威になっていたようにも思える。

アルテタは、疑問視されつつも£65mもの大金を費やしたハヴァーツについて、やはり焦りがあるんだろうか。自分たちの判断を正当化しなければならないと。少なくともここまでは、ハヴァーツはL8としてジャカのリプレイスメントにもなれていない。

ということで、つぎのマンUは、これまたセレクションが悩ましくなってしまった。マンUはカウンターが鋭いので、これまでの3試合のセレクションとはまた違ったアプローチが求められるだろうし、ホームでのバッドフォームを鑑みてこれまでのやりかたからなにかを変えるなら、パーティのRBとハヴァーツは検討ポインツのひとつになりうる。

ふたつの愚かな失点に観られるチームとしての精神的未成熟さ

実験云々というのは、戦術的な話であり、それ以外にも未熟な点はある。

それが大いに露呈したのが、今回の2失点。開始1分のミスからのと相手が10人になってからのセットピースでのもの。どちらも避けられたという意味で、大変にくやしい失点。そのおかげで2ポインツ失った。

ひとつめの失点、よりによってチームのベストプレイヤーであるサカがあんな愚かなプレイをするとは。不用意なバックパスが、相手には絶好のスルーボールになってしまった。ラムズデイルはもしかしたら止められたかもしれないが、アレを責められたらちょっと気の毒ではある。

タイトルを狙うようなチームで、どうしてあのような失態があったかと考えるに、ホイッスルが鳴って本格的に試合に入っていく前から、この試合(相手)には勝って当然の空気があって、それが集中力の欠如になったんじゃないか。そうでもなければ、あんなにゆるいプレイをしてしまう説明がつかない。最初から自分たちが優位で、ボールを持って試合を支配しつづけられるという安心感。当然ホームの雰囲気もある。日本語で云うところの、まさにアットホームな。

それとふたつめ、試合結果を決めた失点。あれも、2-1と逆転で相手をリードしたあとに彼らが10人になって、試合を観ていた自分もそうだが、もう勝ったと思い込んでいた。そんななかで、冷水をぶっかけられた。

2-2になったのが87分で、今シーズンの長い追加時間を考えれば、もう一度リードできる可能性は十分あったが(※9分)、正直ぼくにはあのチームにそのエナジーが残っているようには観えなかった。それほどショッキングな失点に観えた。まさかの。

今年はシーズンが始まる前から、アーセナルをめぐる世間には随分とポジティヴムードがあった。メディアは前年とは見違えて、あんなに高評価だった。もちろん、ファンからも。そして、そのような空気はアーセナルのチーム内にもあったんじゃないかと推測する。

ただ、それはべつに悪いことばかりではない。われわれはそれをセルフコンフィデンスとして、うまく利用すればよかった。自信を持つことは重要だから。だが、ここまでを観ていると、どうもそれがマイナス方面に作用してしまっているようにも観える。要するに「慢心」になっているんじゃない?

アーセナルは、単一のカレンダーイヤー(1/1から12/31)で、1分以内失点を3回やったPL史上初のチームであり、PLホームの直近9試合という超短期間でこれをやらかしている。

データを失念してしまったが、アーセナルだってこの15-20年くらいの期間で1分以内に失点したことは2回くらいしかなかったらしい。それがこれ。突然にそれをやりはじめた。

そんな時間帯にいきなり失点したり、10人を相手にあそこから失点するというのは、油断以外のなにものでもないだろう。結局それも自信の悪い面が出ているんじゃないかと思われる。今年、開始1分失点をやらかしている期間、昨シーズンの後半から今シーズンここまでというのは、アーセナルが近年にはないほど自分たちのフットボールに自信をつけた期間と重なる。偶然と思えない。

アーセナルが、なぜかホームでのフォームが悪すぎることも、これと無縁じゃないような気がする。とにかくホームでクリンシートがない。昨シーズンからのエミレーツの21試合でたったの4つ。リーグワースト2位。逆によくこれで2位フィニッシュしたな。。

アウェイでは記録的なクリンシート数(良)、ホームでも記録的なクリンシート数(悪)。これいかに。

マネジャーにとって、こうした慢心や油断にいたるような、チームにはびこる「気分」とか「雰囲気」をマネジするのは、けっこう難しいことだと思う。ドレッシングルームでひとりづつ張り手をかます?

それでも、アルテタはこの状況をどうにかするしかない。

この先、チームが本当の意味で強くなるには、戦術やパフォーマンスの面を向上させるだけでなく、精神的な強さも身に着けねばならない。アーセナルを観ていると、チームプレイや戦術を洗練させるよりも、単純なミスをなくすことのほうが難しいかもしれないくらいに思えてくる。

ぼくはシーズン前に、このチームがシティに先んじてタイトルを取るためにはチームとしてハイレヴェルなプレイができるだけでは足りなくて、とにかくエラーをなくさねばならないと書いたのだけど、結局こうしてそこからポインツを落としてしまっている。よりによってホームでのフラム戦のような、アーセナルにとってはイージーな試合で。

まず勝たなきゃならない相手は、自分自身。この発展途上なチームには、つねに安定してハイパフォーマンスが出せるような精神的な成熟が必要だということが再確認された試合だった。

ファビオ・ヴィエラがついにブレイク!(か?)

この試合でもっとも目を引いたひとりは、56分にジンチェンコともにピッチに入ったファビオ・ヴィエラ。ハヴァーツとの交代でL8に入った。

後半から入っていたエンケティアもチームの勢いには大いに貢献していたが、このふたりが入ってからは、ジンチェンコ効果なのか、ヴィエラ効果なのか、アーセナルはさらに攻撃にプッシュすることになった。

とくにヴィエラは今回はほんとうに見違えるようなプレイっぷりで、同点のきっかけになるペナルティをもらうプレイがあったり(素晴らしいボックスへの侵入とドリブル)、2-1リードにするエンケティアのゴールアシストは、インチパーフェクトという表現がぴったりの、正確さが際立つパスだった。

2-2を打開すべくチーム一丸となって追いかける93分、彼のオーヴァヘッドのショットがもし決まっていれば、昨シーズンのボーンマスでのネルソンばりのインパクトだったはず。それは、惜しくもベルント・レノに阻まれた。残念!

ヴィエラといえば、アーセナルではもう2年めであり、€35mという大金で加入したわりには、ここまで期待されたほどのパフォーマンスができていたとは云い難かった。現時点ではファーストチームには残っているものの、レギュラーにもなりきれていない。彼には、それこそマンUのブルーノ・フェルナンデスのようなパフォーマンスが期待されていたのだから、ファンの期待度がしぼんでしまうのも無理はなかった。

だから、今回のパフォーマンスは非常に喜ばしい。彼には、これを機会にブレイクしてほしいと思わないではいられない。

その他試合について

  • エディが好調をつづける
  • ライスが好調をつづける
  • オーデガードが好調をつづける。3分、マルティネリへのどえらいパス
  • サカが自ら志願してペナルティテイカーに。あのときスタンドがざわついていたのは、最初はオーデガードがボールを持って準備していたからっぽい
  • おれ氏、試合プレビューでベルント・レノのことを忘れる。セイヴズ8と大活躍
  • マルティネリのSoT3はすべてレノの正面へ。彼はゴール感覚を見失っている?
  • アダマ・トラオレ。ここにいたんかい。最後にアダマにやられなかったのはラッキー。サリバさえ置いてきぼりにしようという圧倒的走力
  • 今シーズンのアーセナルはずっとカウンターに脆弱。終始ハイラインでプレイしているため、ボールを失うたびに毎回カウンターにさらされている。マンU前に悪いきざし

この試合については以上

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

8 Comments on “【マッチレビュー】23/24 EPL アーセナル vs フラム(26/Aug/2023)10人相手に痛恨のドロウ。このチームはなにかがおかしい?

  1. オンザボールの面で確かにハヴァーツは連携に苦しんではいるけれども、ライスとトーマスのポジショニングでの連携の方がより深刻な気がします。コンダクターの役割をウーデゴールとハヴァーツが多少肩代わりしなくてはいけないせいで全体が後ろに重くなり、ファイナルサードに達するまでがノロい。左右への揺さぶりもスムーズではない。という問題は開幕節からあったのだから、アルテタがそれを未だにイマイチ把握してなさそうなことにはそこまで楽観的ではいられないと思う。右可変を左可変にすれば今ある問題はすべて解決ということではないはず。

  2. 強豪には流石に3-6-1ではなく、コミュニティシールドのアンカーパーティ、インサイドライスでしょう。
    ビッグガビもスタメンでお願いします。

  3. ライスをジャカの位置にするだけでいい気がするんだけどなー

  4. 皆さん感じてる事は一緒で昨シーズンのシステムにしないと両翼が活きないですねぇ
    ハヴァーツは時間かかりますなこれは。かかっても適応できるかも不明。ビエイラと一緒
    思いっきり変えるのではなく昨シーズンからの上積みのが強いと思います

  5. ナイテタさんが仰ってる事に100%同意です。ライスとトーマスのところは本当に早急に調整が必要だと思います。
    そもそも、ライス個人をアンカーとして見ても、昨年トーマスがやっていた時と比べて、まだまだ準備不足だと考えてます。
    オンザボールの時に時々鋭い縦パスがあるのはメリットですが、それは相手が完全に戻っている状態で、サイドに揺さぶりを十分に掛ける事が出来ている状態でこそ一番効果が得られる事だと思います。

    ハヴァーツは今のチーム状態だとスケープゴートになりやすいので、あまり悪く言いたくは無いのですが、フラム戦に関しては正直コンディションがよさそうには見えませんでした。前を向いてプレイさせてあげたらもっと輝く選手だと思うので、そのためにもビルドアップのところでもっとスピーディーになると良いのですが、、。

    ビッグガビは移籍が内定してるのでしょうか、、?正直今の一番の不安はそこです。

  6. マルティネッリのパフォーマンスがイマイチかなと思います。ワンパターンというか正直すぎると言うか。

  7. ビッグガビも、ロウも、パーティも、ネルソンも、トミーも
    来年の今ごろは、いないんじゃないかと不安になってきましたよ。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *