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アルテタが「disgrace」発言のバンを免れる

かねてより、ミケル・アルテタへの罰は免れないだろうと云われていた、11月のPLニューカッスル(A)試合後の“disgrace”発言。

アーセナルにとって、PLでは今シーズン初めての敗けとなったあの試合。VARによる疑惑の判定で認められたゴールについて、試合後のアルテタがほとんど怒り心頭といった様子でかなり感情的に捲し立てたことは、大きな話題になった。

そして、ようやく昨日になって、FAから公式にこの件に関する声明が発表されたのだった。

その結果は、なんとおとがめなし。先日のPLアストン・ヴィラにつづき、アルテタのタッチラインバンは免れないと思われていたため、界隈ではこのニュースは驚きをもってむかえられている。



FAからのおしらせ

FAからの声明。

ミケル・アルテタによるFA規則E3.1違反の疑いに関する最新情報

独立規制委員会は、FA規則E3.1違反の疑いでミケル・アルテタに対する告発を立証できないと判断

同監督は、11月4日(土)に行われたプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッド戦後、メディアのインタビューに答えた。

彼の発言は、マッチオフィシャルに対する侮辱的なものであり、かつ/またはゲームに有害なものであり、かつ/またはゲームの評判を落とすものであるという点で、不正行為にあたるとされた。

規制委員会は公聴会を経て決定を下し、その理由書の全文は以下に掲載されている。

*DeepLに翻訳しました

「ミケル・アルテタに対する告発を立証できない」。つまり、おとがめなし。

そして、これに追随してAFCからもおしらせがあった。

判決の詳細については、FAから全37頁にも及ぶ文書が、PDFファイルで提供されている。PDF

アルテタ無罪判決のポインツ

この文書には、事件のあらましが事細かに記述されていて、事情聴取によるアルテタの答弁と思われるものなど、いくつかの部分が興味深いポインツとして話題になっている。

ジョー・ウィロックが「ボールはout of playだった」と云った

事案の経緯(A) Introduction and Backgroundの、アルテタが試合後も感情的な態度でありつづけた件についての7-b。

7-b: he was told by certain Arsenal players that Willock (a former Arsenal player) had expressed the view that the ball had gone out of play before he crossed into the penalty area.

彼はアーセナルの選手たちから、ウィロック(元アーセナルの選手)が、彼がペナルティエリアにクロスする前にボールが外に出たという見解を示したと聞いていた。

フルタイムの雑談のなかで、ウィロックが元チームメイツの気安さで、サカやネルソンに「アレ、出てたよね」とうっかり自分の正直な気持ちをもらしてしまい、それがミケルに伝わったと。

一説によると、この部分がアルテタ無罪の判断に大きな影響を与えたという。

ちなみに思い出していただきたいのは、あのウィロックがギリギリで救ったというボールがラインを割ったかどうかの判定自体は、いわゆるゴールラインテクノロジのような明白な証拠はなかったということ。あの現場では、結局人間の目で判断されたのだ。そういう部分も情状を酌量する理由になったのかもしれない。

“disgrace”と“desgracia”の違い

もう大きくひとつ注目されていたのは、同じく12-d。

アルテタが何度も捲し立てた“disgrace”というワード。ぼくのブログでは「恥ずべきこと」のように訳した。日本語の直訳は「不名誉」とか。

英単語としての本来の意味は、Googleに辞書を提供しているOxford Languagesによると。

disgrace

(noun)loss of reputation or respect as the result of a dishonourable action.

(verb)bring shame or discredit on.

12-dで述べられていること。

MAがインタビューの中で使用した「disgrace」という言葉は、スペイン語の「desgracia」と綴りと発音が非常に似ている。

スペイン語の単語には、侮蔑、不名誉、無礼(contempt, dishonour or disrespect)を連想させる英単語としての意味合いよりも、むしろ不幸、悲劇、不運(misfortune, tragedy or bad luck)という意味合いがある。

英語としての意味合いでは罵倒や侮辱という解釈につながるかもしれないが、これはコメントの意味を意図したものではない。

英語とスペイン語の違いでいい訳説明。なんというウルトラC。これはいくらなんでも弁護士が有能すぎるという。ティム・ルイスなのかな? シティの弁護士を呼んだ説もある。

もちろん真相はわからないが、毎週彼のコメントの日本語訳をやっているぼくからすると、彼は外国人としては英語にはとても堪能なほうだと思うし、そんな彼が英語のdisgraceをスペイン語のdesgraciaのニュアンスを含めて使ったとは、ちょっと考えにくいとは思う。

英語については、たまにペップやクロップの会見を観ても、ミケルのほうがすらすらしゃべっている感じはする。あと、たぶん本もたくさん読んでいる。

英語に限らずそのことばにあまり堪能でない外国人が使う場合、何度も使うイディオムがあったり、つい同じフレイズを繰り返したりするものだが(昔ホンディの英語インタヴューを観てたらThat’s why~を連発してたみたいな)、そのような感じがないだけでなく、彼のコメントには毎回のように新しいイディオムが出てきたりする。インプットが多い証拠だろう。

ウケる。

ミケルは「ハイプロファイル」?

それともうひとつ。これは無罪判決とは関係ないけれど。

「本件に関する予備的事項」に含まれる第37、38項について。「MAのゲイムにおけるステイタス」。

今回の規律違反の調査は、彼がインタヴューのなかで強いことばを使用したということと、さらに彼が英国フットボールにおいて「very high profile=非常に高い知名度」を持っていることが挙げられている。

37) MAは、英国フットボールの世界で非常に高い知名度がある。彼はイングランドの最高レヴェルで10年以上プレイ。その後、2019年にアーセナルのマネジャーに就任しかなりの成功をおさめる前には、マンチェスター・シティFCで3年間アシスタントコーチを務めた。

FAが主張し、MAも認めているように、彼はゲイムにおけるロールモデルであり、その言動は世界中で広く報道され、フットボールピラミッドにおける上から下までの関与する者たちの模範となっている。

38) FAは、MAのステイタスが告発の内容に関連していると主張した。いいかえれば、同じ言動であっても、ロウワープロファイルな個人が犯した場合は、FA ルール E3 の違反にはならない可能性もある。

このあとは、ミケルの代理人(Mr Mill KC)が、ミケルの立場が判決に影響を及ぼすというFAの主張に反論したとつづく。

アーセナルファンのあいだでよく「あのマネジャーは罰せられないのに、なんでミケルは……」のようなことが云われがちだが、そのあたりは、これで説明されることなのかもしれない。

著名人だから。この世界での大物だから。影響力が大きいから。まあ、その場合ミケルと同等かそれ以上の実績や名声のあるマネジャーが優遇されている説明にはならないわけだが。

ミケル・アルテタも、もうすっかりビッグなひとになってしまったんだと感慨深いような。そうでもないような。

 

ということで、今回のニューカッスルの件はこれにて終了になった。

アンフィールドでバンをやられなくてほんとうによかったな。もしかしたら、アルテタが先日ヴィラですでにタッチラインバンの処分を受けたこともなんらかの影響を及ぼしたんだろうか。そこから短期間で再度その罰を受けるようなら、それもまた大きな注目にならざるを得ない。

ちなみに、この判決が出るまでにかかった時間(約一ヶ月)は、ほかの事案にくらべると異例の長さだったようで、それだけこの判決にはFAのなかにもいろんな意見や議論があったということなのかもしれない。

最近は、セレブレイションポリス氏もハードワークしてる。

 

おわり



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