試合の論点
アーセナル vs ポルトのトーキングポインツ。
アーセナルがポルトをやぶり14年ぶりのCLクウォーターファイナル(ラスト8)へ!
FCポルトとのCL R16。セカンドレグはエミレーツでアーセナルの1-0という結果に終わった。オーデガードの美麗アシストからトロサールのファインゴール&クリンシート。
その結果、ファーストレグと合わせたアグリゲイトスコアが1-1。エクストラタイムの前後半でも試合は決まらず、シュートアウトへ。
そして、エミレーツの大声援を味方につけたアーセナルが、オーデガード、ハヴァーツ、サカ、ライスと4人つづけて成功。あの土壇場で、彼らがあんなに自信満々な様子でボールを蹴るとは思わなかった。いや、もちろん大きなプレッシャーはあったろうが、それでも、ほとんど危なげなかった。※ハヴァーツはプロキャリアでペナルティを外したことがないらしい
そして、ラヤの2回セイヴもあって、みごと勝ち抜け。ヤッフー。
ティエリ・アンリ氏は、これを観ていられなかったらしい。こういうひといる。
Thierry Henry didn’t even need to watch David Raya’s game-winning save 🥶 pic.twitter.com/cxo8sCgeiI
— CBS Sports Golazo ⚽️ (@CBSSportsGolazo) March 12, 2024
わたしはこっちかな。あんまりドキドキして、終わったときは魂が口から出ていってしまい、うっかり骸骨に。
— Simpsons Arsenal (@SimpsonsArsenal) March 12, 2024
ペナルティシュートアウトのヒーローは、もちろん2回もビッグセイヴをやったダヴィド・ラヤ。UCLのMOTMにも選出された。
それとオーデガードもペナルティ勝利に貢献。キャプテンとしてコイントスで2回勝ち、場所(ノースバンク?)を選び、先攻を選び。これが大きかった。最初のテイカーとして、あの力強い決めかたも。彼が、それにつづくみんなのトーンをセットした。試合も最初から最後まで走ってチームをリード。さすがキャプテン。
記念すべき勝利の瞬間をよきアングルでシェアしてくれたのは、エイミー・ロウレンス氏。
Scenes! pic.twitter.com/vLAYhCXKcx
— Amy Lawrence (@amylawrence71) March 12, 2024
ふう、やっと勝てましたね。14年は長すぎた。
この14年のなかで、CLでアーセナルのQF進出を阻んできたチーム。
- 2010: Porto ✅
- 2011: Barcelona ❌
- 2012: Milan ❌
- 2013: Bayern ❌
- 2014: Bayern ❌
- 2015: Monaco ❌
- 2016: Barcelona ❌
- 2017: Bayern ❌
そして今回。
- 2024: Porto ✅
- ???
ポルトに終わり、ポルトに始まる。これも因縁。
あとは、CLではどうしてもバルサとバイエルンに勝ちたいっすよね。あいつらをギャフンと云わすまで死ねない。今回勝ち進んだおかげでCLの夢がふくらむ。
……という、アーセナルには、たいへんにめでたい日になったのであるが、試合内容はそうほめられたものでもなく。
ホームの環境に救われたアーセナル。CLはPLよりも現実的アプローチなのか?
ぼくは白状すると、ぶっちゃけペナルティ戦になったら敗けると思っていた。試合展開といい、延長戦でのおつかれっぷりといい、試合終盤はちょっと絶望的な気分に。
今回の試合のプレビューエントリでは、アーセナルは試合開始からスーパーインテンスでスーパーアグレッシヴだったPLニューカッスルの再現をやると予想して、それを期待してもいた。でも、そうはならなかったのだった。
アーセナルは試合のスタートから集団としてのプレスもちょっと中途半端で、ボールを持っても前へ行く積極性もさほど感じない。むしろ、相手の予想外に高い守備位置にバックラインからビルドアップに苦労させられるほどで、なかなか自分たちのテンポがつかめない。サリバなんかはナーヴァスになっているようにすら観えた。
ポルトの守備は今回も狡猾で、アーセナルがバックラインでボールを持ったとき、守備位置は高く、ミッドブロックで中央エリアを使わせない。ボールが中央を経由してまともに前に運ばれないから、いつまでもほしいリズムやテンポが生まれない。フラストレイションのたまる展開に。こちらのホームなのに、ぺぺ(40才)がキープレイヤーになってしまうような相手の意図どおり。
この試合の前半、オーデガードが成功させたパスはたった6しかなかったそうで、そのうちのひとつがあのアシストになったとはいえ、チームのチーフクリエイターがプレイに関与しなければ、攻撃が振るわないのも自然なこと。
Martin Ødegaard has only completed six passes for Arsenal across the first half versus FC Porto tonight… but one of those was *chef’s kiss* #ARSPOR pic.twitter.com/Wx83HSFRmM
— Opta Analyst (@OptaAnalyst) March 12, 2024
それと、逆に彼らのGKからのビルドアップでは、彼らのCBがそれぞれタッチラインいっぱいくらいまで開いてピッチをかなり広く使うおかげで、オーデガードとハヴァーツのふたりがリードしたアーセナルのハイプレスがはまらず、だいぶ無駄走りを強いられた。とくにオーデガード。
TVだともちろんボールにフォーカスしてピッチ全体は観えないので、アーセナルがどういう守備ストラクチャになっていたのかわからないが、今回のアーセナルのハイプレッシングは人数もインテンシティも足りず、ロングボールを警戒して、後ろにもっと人数を残していたのか、いかにも後ろ髪を引かれた感じだった。
ところで、試合後、とあるAFCインフルエンサーのひとが、こんなことを云っていた。
I said it all summer & after the 1st leg: Arteta wants to be pragmatic in UCL. He doesn’t want to play prem ball in the UCL. Look how slow we move the ball. Look at how we let Porto have the ball first 15-20 mins. “Arsenal played so bad”, “Arteta spooky”, nope, we just different.
— Mo (@MoArsenal86) March 12, 2024
アルテタは、CLではPLと違ってプラグマティック(現実主義的)にやりたがっているのだと。これはアーセナルの悪いプレイなんじゃなくて、ただPLとはやりかたが違うだけなのだと。
この見解には反対意見もあるが、今回自分が観たアーセナルのプレイについて腑に落ちたというか、一瞬なるほどと思った。たしかに、カップファイナルみたいに慎重だったから。だが、ではなんで、そんなことをしているのだろうと、またべつの疑問がわいた。
何度も書くように、前回のファーストレグ後のPLニューカッスルは、ほんとうに積極的でアグレッシヴだった。そして、あの憎き相手を4-1で粉砕した。力でねじ伏せた。ギッタンギッタンにした。ポルトのファーストレグでの消極的アティチュードの反省が活かされていたように観えた。このチームにはそれをやる実力がある。それが、CLできないのはなんでだろう。
一発勝負のカップ戦だから? ポルトが強いから? それはどっちもあるか。
あるいは中二日の身体的な疲労も考慮されたかもしれない。ぼくはプレヴューで、この試合最初の15-30分が勝負みたいなことを書いたけど、敗ければ終わりのカップ戦でそういうハイリスクなやりかたはしたくなかったと云われれば、それも納得できる。
アルテタの試合前会見での発言、「勇気をもって自分たちでことを起こす」を、ぼくはそういうファーストレグとは違う、ホームでは積極的アプローチをしますという決意表明みたいに受け取ったのだが、どうもそれは間違いだったようだ。あらためて会見コメントを読むと「試合のフェイズで感情をコントロール」とか「正しい時間にプッシュ」とかもあるから、むしろあの慎重アプローチを最初から念頭においていたのかもしれない。実際そんなふうに観えた。
「CLではプラグマティックに」というのは、CLファイナルへ行ったときのヴェンゲルさんがやったことと基本的には同じ考え方だと思うので、アルテタの今回のやりかたがほんとうにそういう意図があったとしても、それを否定をするわけではないが、ただ、今回のようなやりかたでもし敗退していたら、そうとう悔いが残ったとも思う。
実際ここで敗けている可能性はあった。
今回はセカンドレグがホームだったおかげで、ああいう雰囲気のなかペナルティ戦のような心理戦を有利に戦うことができたが、もしアレがアウェイでホームアドヴァンテッジがなかったら、敵対的雰囲気のなかでこのチームがあのように自信満々なペナルティをやれたかどうかはわからない。
そもそも、延長戦やペナルティ戦にたどり着けたかどうかも確信がない。カウンターで3 v 3になった瞬間などを思い出すと、背筋が凍る。ほかにも危ないシーンはいくつかあった。ちょっとの運で、容易に結果が変わるような。
今後のCLの試合で、今回のポルトのホーム・アウェイの2試合みたいなのは、正直もうあんまり観たくないなあと思う。まあ、ポルトのようなチームでなければ、自ずともっと激しく攻撃しあうような面白い試合になるかもしれないから、それに期待しようか。
極論、アーセナルみたいなクラブには勝利以上に重要なものがある。
アルテタが試合中に暴言を吐いたとポルトのマネジャー
アーセナルのめでたい勝ち抜けの雰囲気のなかで、ちょっとだけ後味が悪いのがこの件。
ポルトのマネジャーSergio Conceicaoが、試合後の会見で、試合中にアルテタから暴言を受けたと訴えているという。彼はフルタイムでミケルとの握手も拒否している。
Sergio Conceicao claims Mikel Arteta ‘insulted his family’ during @Arsenal‘s victory over @FCPorto 😳
Arteta and Arsenal have both since denied the allegation.
🔗 https://t.co/xfz8udVQsR pic.twitter.com/4mV7KX1QPe
— Hayters TV (@HaytersTV) March 13, 2024
SC:アルテタは試合中、わたしたちのベンチに向かってスペイン語でわたしの家族を侮辱することばを云った。
彼は自分のチームのトレイニングに集中すべきである。結果は不当なものだ。(われわれの)チームが勝ち抜けにふさわしかった。
スペイン語で家族を侮辱。そんなことを、アルテタが云うだろうか。彼はあんまり感情にまかせて暴言を吐きそうなタイプに思えないのだが、過去にそういうのあったっけ?
複数ソースが伝えているところによれば、アーセナルもアルテタ本人もこの事実を強く否定しているという。当然だろうと思う。
興味深いのが、すでに各所で指摘されているConceiçãoの過去発言。
2020年にはペップ・グアルディオラに。
Sergio Conceição: “He spoke about our country using ugly words. Guardiola’s attitude was extremely unpleasant. The whole #ManCity dugout was, because if anybody should have been complaining it was the FC Porto bench, because we were extremely hard done by.”
[via @PortuGoal1]
— City Xtra (@City_Xtra) October 22, 2020
2021年にはトーマス・トゥークルに。汚いことばを使われて侮辱されたと訴えているという。敗けるたびにこれを? バッドルーザー。
Conceicao: “I was insulted by this gentleman who is next door… My English is not perfect, there’s no point in talking about it. There was no word exchange because I was focused on the game, I don’t know why his reaction.” [Abola] #CFC #UCL
— CFCDaily (@CFCDaily) April 13, 2021
こういうひとの云うことは、信じないでおきますかね。
— Renato (@orehnato) March 12, 2024
Kai is We.
この試合については以上
伝説のシーズンになりそう
このチームはどこまで行くんだろう