試合の論点
アーセナル vs チェルシーのトーキングポインツ。
London derby delight ✨
Enjoy all the action from our big win over Chelsea 👇 pic.twitter.com/Xl2OG0lrYg
— Arsenal (@Arsenal) April 23, 2024
ベンジャミンの2点めを決めたあとの顔(笑い)。これは何度も観たくなる。
NLDを前にどでかい勝利
いやあ、何度も書くがこれはほんとうに大きな勝利。単に勝つだけでもうれしいのに、5点もぶっこむなんて。なんなら8点取ってほしかったな!
今月はエミレーツでヴィラに敗けて、ドイツでバイエルンに敗けて。2連敗したときは、わりと絶望的な気分になっていたのが、難しいアウェイのウォルヴズに勝ち、ロンドンのライヴァルであるチェルシーに勝ちで、だいぶ流れが変わった。しかもあんなふうなケチャどばの大勝。フタがどっかいっちゃった。
接戦で競うタイトル争いにおいては、GDが決め手になる可能性もあるなかで、今回の+5で2位のリヴァプール、3位のシティにそれぞれ13、12の差をつけたことも大きい。残り試合数を考えれば、さすがにこれがひっくり返る確率は高くない。もし最後にポインツで並べば、われわれの勝ちだ。
これでアーセナルは、2連敗からの2連勝。完全に、チームはバウンスバックしただろう。きっとチームの気持ちもこれまで以上にアガってる。シーズン終了まで最後の連戦で、それが重要だった。
ここでチェルシーに大勝できたことが素晴らしいのは、タイトル争いに残れたからだけでなく、つぎがToTとのノースロンドンダービー(NLD)だからでもある。
もちろんToTは、リーグにおけるアーセナルの最大のライヴァルであり、つねに勝ちたい相手だが、今回のNLDはタイミング的にお互いの状況もあって、さらにしびれるような勝負になりそうなのだ。
今回のNLDではアウェイチームとなるアーセナルは、20年ぶりのリーグタイトルを目指して、絶対に敗けられないなかで迎える試合。
いっぽうのToTは、来シーズンのCLをかけて4位フィニッシュに向けて必死になっている最中。今年のPLクラブのヨーロッパでの予想外の低迷から、PLの5位フィニッシュのCLスポットがほぼなくなったということもあり、現在5位の彼らが残り試合で死にものぐるいになるのは当然。
そしてなにより、彼らがアーセナルのPLタイトルを喜べるはずもなく。そちらを阻止するモチヴェイションのほうが、大きいかもしれないくらいだろう。絶対に絶対に許せない。
ふだんのNLDの何%増しかはわからないが、こうした状況からすると、かなりインテンスな試合になるに違いない。
今回チェルシーに快勝したおかげで、アーセナルは自信をもってその試合に臨むことができる。今回もまた、なんという意味のある勝利だったのか。
アーセナル対策を怠り罰せられるしょんぼりチェルシー
それにしても、チェルシーはあのクオリティでここまで大敗するとは。
前半などは、アーセナルが概ね優勢に試合を進めつつも、2点めのゴールがなかなか決まらず、いっぽうでチェルシーのほうもボールを持てば攻撃は危険で、アーセナルはゴールに迫られ危ない場面も何度もあった。
そんな前半だったので、1-0で迎えたHTの時点では、後半はまだどうなるかわからない怖さはあった。彼らをとても弱いとも感じなかった。
だが、結局はああなった。前半(4分)も後半(52分)も、アーセナルのゴールのタイミングがよかったので、それで相手の出鼻をくじいたところはあるものの、まあ全般的にゆるすぎというか。彼らは彼らで、PLでの失点のシーズンワースト記録をつくっているようだ。
それで思ったのは、この試合のプレビューエントリでも少し触れたように、最近のアーセナルの対戦相手はわりとみんな似たような「アーセナル対策」とも取れる戦術アプローチを採用していて、それに苦しめられたきたところがあるが、なんと今回のチェルシーは、そういうアーセナル対策を全然感じさせなかったという。
ひとつはミッドブロック。
ボールをもつDFにプレスに行かず、中央のパスの受け手を厳しくマンマークし、あえてプレス位置をやや下げるやりかた。これを最近のアーセナルはとくに苦手としていた。だが、チェルシーは、なんだか中途半端にハイプレスをやってきて、ミッドブロックの意図はほとんど感じず。彼らは、SBでの対戦ではそれをやっていたはずだったのだけど。
アーセナルはプレス耐性のあるチームなので、ハイプレスをやってくる相手なら、むしろ喜んで受けて立つ。ラヤがボールを足裏でコントロールするなどして、ハイプレスを誘いすらする。そういうチームだから、ミッドブロックが対策になるわけだ。
それと、彼らのバックからのプレイ。
これも最近の対戦相手は、アーセナルの4-4-2のトップふたりのハイプレスを無効化/弱体化させるために、わざとDFラインを大きく開いてボールを回すのが定石のようになっていたのが、今回のチェルシーのふるまいはまったくそれを意識していないみたいだった。GKからビルドアップを始めるときも、バックラインの選手たちがあまり開かず近くにいて、目一杯ワイドにはるようなやりかたをしない。
アーセナルがこの試合でかなりハイプレスを成功させたのも、そのおかげかもしれない。アーセナルは何度も何度もハイターンオーヴァをやった。今回アーセナルがファイナルサードで取り戻したポゼッションは15回で、アルテタのチームでは最多だという。
15 – Arsenal recovered possession 15 times in the final third against Chelsea; their most in a Premier League match under Mikel Arteta. Unit. pic.twitter.com/fXDAnXn8b8
— OptaJoe (@OptaJoe) April 23, 2024
チェルシーは、このあたりの戦術的な対策や準備が不足していたように思える。いまのアーセナルに勝つにはストロングポインツをつぶすアプローチが必要で、あのバイエルンでさえそれをやったのだから、チェルシーがアウェイでそれをやらない理由はない。
彼らの事情はよく知らないが、ケガ人もあったり、若い経験不足な選手たちを使わざるを得なかったりで、マネジャーの戦術的なインストラクションがうまくいってないとか?
わりと衝撃的なのがこのパスマップで、チェルシーのNo.10、Mudrykの位置がCucurellaよりも低いという。彼はパスも少ないので、試合自体にあまり関与できていなかったとも云えるが。いくらアーセナルの右サイドが脅威だといっても、ウィンガーがここまで低いと攻撃の仕事はできない。
まあ、なので今回の勝利は、チェルシーのしょんぼりなプレイに助けられたところもあるだろう。JacksonはやっぱりJacksonだったし。ありがとうCHE。
選手たちのビッグパフォーマンス
個人もスーパーだったが、まずはチームを褒めないと。
試合後のアルテタも述べているように、この試合が始まってからアーセナルは、もうすごく積極的だった。肉体的な疲労をあまり感じさせないほどパスが積極的で、狭いほうへ、ライン間へ、ポケットへボールを送ることを躊躇しない。そして、そこからショートパスで左右に展開。アルテタボール。
疲れているときは、ボールを奪われないよう後ろ向きにプレイしがちだが、今回のとくに前半は、それがまったく逆のように観えた。勇敢だった。
そのおかげで、ボールを奪われる機会も少くなくなく、相手の攻撃にもさらされることになったが、そんなことはかまやしねえというくらい勢いがあって、前向きにプレイしていた。
ここは今回の3MF効果も大きかった。パーティは攻守にほんとうによく効いていて、ライスもオーデガード(とくにMØ)も彼が背後にいる恩恵をかなり受けた。この3人が、今シーズンのアルテタの理想のMFトリオだったかもしれない。
今回アーセナルはどうしてこういうポジティヴパフォーマンスができたのだろう。そこはちょっとわからない。トロサールは、試合後のインタビューで「早くにリードできたから」と述べていて、それもあると思う。エミレーツでのヴィラを思い出すと、あの試合も前半は悪くなかったが、ゴールが決まらないと後半はいっきに流れが変わった。
そして今回は後半が始まって6分でまたゴール。その後に短時間に立て続けにゴールが決まったのが決め手になったか。ゴールがエナジーになった。
決めるべきタイミングでゴールを決め、それで勢いがうまれ、さらに攻撃が脅威になるという好循環。今回はそういう理想的な試合展開だった。
さて、選手個人については、まずはオーデガード。納得のMOTM。今回もキレッキレのキャプテン・ファンタスティックであった。残した記録はアシスト2ながら、彼がこの試合でつくったチャンス8からすると、この数字はもっとあってもよかったほど。
ハヴァーツのゴールをお膳立てした超ヤバいスーパースルーボール。あの距離で相手DFと並走するランナーにインチパーフェクトで合わせるという、まさにピンポイントの神業。それと同じくハヴァーツが決められなかった、こっちもやべえスルーボール。
かなり肉体的疲労はあるだろうなか、今回もキャプテンとして最後までプレイした。彼は疲れないんだろうか?
パーティ。彼はスタッツ上はさほど目立った数字は残していないものの、ピッチ上での存在感は抜群だった。アルテタがここで彼をほとんどいきなりスタートさせるとは思わなかったが、このプレッシャーがかかる大舞台で期待以上のパフォーマンスだった。
試合後にはあらためて彼のよさを思い出したというファンも少くなかった。パスも非凡で守備でも頼れるところは、ライスとジョルジーニョのハイブリッドという評価も。まさにアーセナルが必要としている理想のMFの姿がそこにはあった。PLの残り試合で、今回のようなパフォーマンスを発揮できるなら、チームにとっては非常に明るい材料になる。
ハヴァーツ。前半早い時間に絶好のチャンスをふいにしたときは、また草食動物の本性があらわれてしまったと頭を抱えたものだが、後半の2ゴールですべて忘れた。
彼の1点めとなるオーデガードのスルーボールからのゴールは、彼のフィジカリティがよくあらわれていた。Cucurellaと競り合いながらのランで、小柄な9ならつぶされていてもおかしくない場面だったが、ハヴァーツはしっかり相手を腕で抑えて結局フィニッシュまで持ち込んだ。ここぞというところで、彼の強みを出した。
その8分後の2点めは、サカとの右サイドの連携で、あのふたりはこの試合で何度もあのかたちになっていたので、最初から狙っていたのかもしれない。サカの1 v 1で、彼と対峙したDFのすぐうしろにいるという。いかにもファーポストを狙いそうなシュートで、ニアに行ったフィニッシュもみごと。
ちなみに、古巣のチェルシー相手に彼がゴールの喜びを隠さなかったことについては、議論になってるかもと思わずr/chelseafc(redditのチェルシー板)をチェックしてしまったが、そこではCHEサポのみなさんもとくに熱くもならず淡々としていた。まあ、彼自身もファンもお互い思い入れがあまりないのかも。
トロサール。最近の活躍でますます彼の両足使いが注目されているなか、今回の4分の左足のゴールも、まさに両足使いのゴールだった。あそこで利き足を意識するのと、どちらでも蹴ることができるのとでは全然違う。きっとAnne Hathawayも喜んでいるはず。
トロサールは、去年と今年でゴールとアシストの数が逆転しているという話がある。これはどういうことなのか。
トミヤス。印象的なインターセプションが2回ほど。あれはいかにも、パスの出先を読む彼らしい賢いプレイだった。あらためて、彼もまたフィットしていさえすれば現在のLBオプションではベストという声が多い。相手のウィンガーには守備で苦労させられることもあったが、概ねナイスなパフォーマンスだった。
ヒヤリとしたのは8分。NJのタックルが思いっきり彼の足に。また彼の足はグキっとなってた。あれだけ彼は痛がっていたのに、レフリーはカードも出さず。似たようなかたちでトロサールにはカードが出たのに。
これはレッドカードが疑われるプレイとして、レフリーはVARレビューをすべきだった。アーセナルは、ウォルヴズでの見逃しにつづいて2戦連続である。
この試合については以上。