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【マッチレビュー】24/25 EPL ウェスト・ハム・ユナイテッド vs アーセナル(30/Nov/2024)止まらない勢い

試合の論点

WHU vs アーセナルのトーキングポインツ。

前半に怒涛の5連発。勢いを維持

今回も素晴らしい勝利だったんじゃないだろうか。期待はしていたけど、ほんとに5ゴールを決めてくれるとは。さすがロンドンでアウェイサポーターの声も大きく、雰囲気も素晴らしかった。

ざっと試合を振り返ると。

まず序盤はホームチームがかなりオーガナイズされた守備を見せた。ぼくは試合前にメディアの「1-0」のようなロウスコア予想を観て、ちょっと不思議に思っていたんだが、WHUの守備パフォーマンスを観てなるほどと思った。ミッドブロックとハイプレス。とくにミドルサードに人数をかけていて、意地でも中央エリアはビルドアップさせないという決意を感じた。きっと、彼らはあの守備をニューカッスルでもやったのだろう。

だが、そんなオーガナイズされた守備を攻撃クオリティで圧倒するのがいまのアーセナル。あのインテンスなプレスをかわすプレス耐性と、狭いエリアでも必ずボールを前進させようとするビルドアップは非凡だった。強者のパフォーマンス。

この日はビルドアッププレイに重要なパーティが不在であったが、その点はジョルジーニョも遜色ない。アーセナルは、ひきつづき直近2試合の良好なパフォーマンスがつづいている。

前半はそういう両者の攻防がありつつも、アーセナルが比較的やりやすかったのは、今回もコンスタントにゴールが決まっていったから。前半の5ゴールは、ガブリエル(10分)、トロサール(27分)、オーデガード(34分※ペン)、ハヴァーツ(36分)、サカ(45+5分※ペン)。

さすがにスポルティングのときほど等間隔のゴールというわけではないもの、前半にアーセナルがつぎのゴールまでかかった時間はトロサールのゴールの17分が最長。短い時間でゴールがつぎつぎと決まっていった感じはある。そのおかげで、WHUもだんだんDFラインが下がってミッドブロックを維持できなくなっていった。

ちなみに、アーセナルの前半のSoTは6で、そのうち5がゴール。非常に効率的だった。それが重要。

このゴールのなかで、はっきりとこれまでの悪い時期との違いがあらわれていたのが、トロサールのゴールだろう。あのゴール前に人数をかけたブロック守備を前に、悪い時のアーセナルだと攻めあぐねて、いつまでもブロックの前でUシェイプにボールを回していたりしたものだ。そして単純なクロスボールで攻撃終了。あまりにも予測可能な攻撃。それが効果的なわけがない。

しかし、あのシーンは、オーデガードがそのような状況で、ブロック守備の上を抜くような浮き球のスルーボールでサカにパスを通した。そして完全に相手DFラインの裏をついたサカは、落ち着いてゴール前にクロスを送りトロサールがなんなくゴール(ハヴァーツは触らなくてよかった)。

悪いときのアーセナルにはあの発想がなかった。あの時間も空間も限られたなかでの瞬時のアイディア、ひらめき。それと実行。あれがまさにクリエイティヴィティでしょう。予測不可能性。相手DFがもっともイヤなもの。

ちょっと前に、あるひとが「オーデガードがシステムに合うんじゃない、オーデガードがシステムなのである」と名言じみたことを云っていた。ほんとにそう思うね。あのチームのなかで、彼が決定的な違いになっていることを今回も存分に示した。

チームの4点めとなった、ハヴァーツのゴールもチームの勢いを感じた。

サカが得たペナルティをオーデガードが決めた直後。中央でジョルジーニョがボールを奪うと、そばにいたトロサールへ。トロサールがそれを一瞬の判断でハヴァーツへインチパーフェクトのラストパス。相手DFのクリアミスにも助けられたが、ハヴァーツはGKとの1 v 1を落ち着いてフィニッシュした。

フィニッシャーとしての素質が疑われていた時期のハヴァーツなら、いかにも外してしまいそうなチャンスだったが、あのときの彼は完全に落ち着いて観えた。あれが彼の本来のクオリティであり、自信をつけることによってちゃんとそれを発揮する安定度が増している。トロサールのパスといい、ハヴァーツのフィニッシュといい、これも勢いのなせる技のように感じたものだ。

あとペナルティも。オーデガードもサカも、どちらのショットもファビアンスキに読まれても決まる強いショットで、あれは自信がなければ蹴れないボール。チームの勢いが反映されていたと云える。

それとこの5ゴールで特筆すべきは、今回もゴールスコアラーが複数人でシェアされていること。

PLフォレスト、CLスポルティング、そして今回のPLウェストハム。合計13ゴールも決めながら、どのゴールも試合中ひとりに独占されていない。これは、去年のファインフォームだった時期にやっていたこと。このチームがひとりのスコアラーに頼らず、誰でもゴールできることを今回も示した。その意味では、いまは勢いだけでなく、過去の理想的な時期のイメージも取り戻している。

この試合でアーセナルはまたしても好循環をつづけることに成功した。

この試合から得る教訓

失点については、まあしょうがない。あのような試合展開で4-0にもなればもはや試合を殺したも同然で、誰だってそれまでと同じ集中力を維持するのは難しい。試合後のアルテタも選手たちを擁護する発言をしている。

ただ、教訓にする必要があるのは、あのハムの2ゴールで空気ががらりと変わったこと。あの空気をつくらせてはいけなかった。ほぼ敗けが決まったようなチームに少しでも希望を持たせてしまったことで、イージーなはずのタスクが突然劣勢になったかのようなタフなタスクになってしまった。心理状態というのは、パフォーマンスにかなり反映される。

しかし、彼らの1点めとなったWan-Bissakaのゴールはうまいことやられたが(ここはチームが完全にスウィッチオフしていた)、あのフリーキックからの2点めは、そもそもあのフリーキック自体の判定が誤審疑いが濃厚であり、せいぜいは1失点が妥当だっただろう。

だが、そんなことを云ってもあの程度の誤審はふつうにあるし、試合のなかで理不尽なことはつねに起きる。アーセナルはやはり大量ゴールを奪っても守備の集中は切らすべきではなかった。

アーセナルはあの展開が前半終了間際でHTを挟んだことに救われた部分もあるだろう。リセットする時間を得られた。もし、この彼らの追い上げが後半のなかだったら、試合終了までもっとキツかったはず。5-2が5-3にでもなった日には、ホームチームは奇跡を信じてしまっただろう。そしてチームにはその信念でブーストがかかる。

そういう流れで始まった後半のWHUは、もうほとんど捨て身で、過剰にアグレッシヴになったのもアーセナルにはやっかいだった。失うものがなくなったものの強さというのはある。

ただでさえ、ビッグガビとカラフィオーリがフィットネス理由で下がったあと、トロサール、サカ、オーデガードが連続して相手の激しいプレイに倒れた。82分には、ノーファウルの正当なチャレンジとはいえ、ハヴァーツがかなり厳しいスライディングタックルをくらった。あれも危なかった。

試合後のアルテタによれば、サカもひとまず大丈夫というし、シリアスな問題は起きていないようだが、この後半を観ていて、もし重要な選手がまたケガをするようなら、この勢いは簡単に崩れるかもしれないとちょっと不安になった。オーデガードはもちろん、サカ、ハヴァーツ、ガブリエルの誰かがケガしてつぎのマンUに出られなかったら、それだけでチームは大打撃だろう。

したがって、この試合から得るべき教訓は、試合中なにが起きても集中を切らさないこと。リードしたらしたで、たっぷり時間をかけてダークアーツすればいいのだ。そして、ケガをしないこと。そっちは気をつけたってするんだから、気にしてもしょうがないけど。しかし、いまのこの勢いはフルスクワッドのうえに成り立っていることは、認識しておくべきのように思う。それは簡単に崩れてしまう。

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