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【マッチレビュー】24/25 EPL アーセナル vs マンチェスター・シティ(2/Feb/2025)シティに引導を渡す

ワニエリとMLSがアーセナルの歴史をつくる

15才でデビューしてPL最年少プレイヤーの記録を持つイーサン・ワニエリ(17)、そしてそのワニエリの幼いころからの親友であり、今シーズンから同じくシニアチームにステップアップしているマイルズ・ルイス・スケリー(18)。このふたりにとっても、この試合はいったいなんという試合になったことだろう。

ふたりともこのEPL全体でも最大の試合のひとつであろう大舞台で、ゴールを決めてしまった。アーセナルでふたりの10代が同じリーグ試合でゴールを決めるのはPL時代では初。それ以前でも1986年まで遡るという。およそ40年前。

ワニエリは、CLジローナにつづき、このゴールで今シーズン7ゴールめ(※すべてのコンペティション)を記録。すでに将来を約束されたヤングエリートになりつつある。

最近の移籍市場では、10代でも巨額で取引される例がすくなくないが(いまアーセナルと話題になっているバイエルンの19才Mathys TelはToTのオファーは€60mという)、だとしたらこれだけアーセナルで実績をつくっている現在17才のワニエリに値札をつけるならいったいいくらになってしまうのだろう。現在TMでの彼のMVは€30mだが、バルサのLamine Yamalにも劣らない実績を築きつつあるいま、もはやその3倍でも驚かない。

彼はサカが不在の状況では、すでにアーセナルのRWのベストプレイヤーであり、今回は10分に満たないプレイでゴールまで決めた。これはやはり驚くべきことだろう。

そして、もっと驚かされているのがMLS。

このビッグゲイムで、€45mで買ったカラフィオーリより優先されて起用されたということは、なにより彼がアルテタの信頼を得ている証拠。18才にまったく見合わない成熟ぶり。

あのゴールセレブレイションもあり、アーセナルファンだけでなく、この試合は彼の名前を世間に知らしめただろう。きっとHaalandも今度は彼の名前をおぼえたに違いない。シニアフットボールで初ゴールであれをやれる肝っ玉のでかさ。Troy Deeneyもびっくり。

が、今回はあのセンセイショナルなゴールばかりが注目されているが、より指摘したいのは、守備など彼の全体的なパフォーマンスのほうだ。ほんとうにすばらしかった。

とくに、LBとしての左サイド深くでの1 v 1守備ではすきのない構えから、相手の突破を許さなかった。また、アグレッシヴで、技巧的で、チャンスがあれば自分でボールを前に運ぶこともできる。その判断力。意思決定。瞬時に選択肢のなかの正解を間違えない。まさに、機を見るに敏ということばがぴったり。

彼のLBとしての守備貢献を見れば、あのゴールはおまけだったと云ってもいいくらいだが、重要なことはアルテタがLBにあの役割を課していること。先日のPLウォルヴズでカラフィオーリがあの位置からウィナーを決めたように、MLSも同じく攻撃時にはフロント5のひとりとして左HSにいて、攻撃の重要なタスクを担っているなかで今回のゴールを決めた。どちらも成功したかたちで、アルテタはたいそう満足しているに違いない。

MLSもカラフィオーリもLBとして、新しい役割を与えられ、それを身に着けつつある。素晴らしい。

そういえば、このふたりの最近の活躍で、アカデミーで彼らのコーチだったジャック・ウィルシャーの功績もあらためて称賛されている。

わしが育てた
わしが育てた

今回ジャックは、ふたりの息子をつれて試合を観に来ていたようで、彼らと大きくなったマイルズと記念撮影も。こころ温まるなあ。

ワニエリとMLSという、ふたりの超タレントが同時にステップアップしてきたアーセナル。彼らはこの調子だとイングランドNTに招集される日もそう遠くない。将来がますます明るい。

ハヴァーツのショッキングなミス。なぜアーセナルにストライカーが必要なのか

このような相手にこのような結果で、なにも後ろ向きなことはないはずなんだが、唯一ネガティヴな要素があるとすれば、26分のハヴァーツのショットミス。

あれは、がっかりしたとか腹がたったとか、そういう感情を通り越して、ただもうショッキングだった。わしは正直、後半にパーティが2点めを決めるまでしばらくショックを受けていた。がびーん。

シティのような相手にゴールできるというのは云ってみれば千載一遇の好機なわけで、それをあんなふうに外すなんて、自分の目でいま観たものが信じられないというか。誰かが「PLのレヴェルでありえない」みたいなことを云っていたが、PLじゃなくてもありえない。もうFWとかMFとかそういう問題でもない。プロフットボーラーなら頼むから入れてくれと。そんなふうに思っていた。

結局、こういう結果の試合になり、彼自身もまたそのあとにゴールを決めたことで戦犯になるのは免れたわけだが、彼があのようなイージーなチャンスを外してしまったという事実は残る。そして、今回もまたつくづくハヴァーツのゴールへの執着のなさを思い知らされたという気がするのだった。あるいは、最後に自分で決断する度胸のなさ。

いや、彼が76分に決めたゴールを観ても、もちろんまったくダメなわけじゃない。ただ、彼は必ず決めてほしい場面でああして外したりすることが少なくない。誰もが当然決めてほしかったと思うような場面で。

このブログでも繰り返し書いているように、彼にメインストライカーをまかせているかぎりは、いずれこういうことが起きるのは避けられなかったのだよね。やっぱりそうなったか、と思ってしまう。彼が草食なことはすでにわかっていたことだ。

彼は才能あふれるフットボーラーだし、スキルもあって技術はめちゃくちゃある。基本的に万能でなにをやらせても上手。2メーター近い身長という武器もある。彼ほどのハードワーカーもいない。どんなコーチにとっても理想の選手だろう。この試合だって、あのミス以外ではなんの不満もない。

だが、彼は最後にボールをネットに入れる役割を担うストライカーとして必須な<キラーな本能>だけが、それはもう致命的に欠けているのだ。わがままで利己的で自分がゴールしないと気がすまないストライカーとしての性(さが)が。

オーデガードの1点めのアシストだって、機転が利くだとか利他的といえば聞こえはいいが、あそこは肉食ストライカーなら待ってましたと自分で行くところだろう。彼は自分で行く勇気がなかったみたいに見える。もし失敗したらとつい考えてしまう。その迷いが、彼の超絶うまいはずのプレイの精度を著しく下げる。

そして、いま彼が9としてプレイするチームにとっては、そこがまさに致命的という。今回はあのショットをミスしてもチームが敗けを免れたからよかったものの、1点差で勝敗が決まることがめずらしくないフットボールでは、あれが勝負の分かれ目になりうる。それほどフットボールの1点は重い。その1点を決める機会を、彼はしばしば逃してしまう。

フォルス9だとか、9レスだとか、いろいろな考え方はあっても、結局つねにもっともゴールの近くにいる選手のフィニッシュが難ありなら、そのチームは慢性的にゴールに不満を抱えることになるのだ。それが、ジェズース、ハヴァーツというピュアストライカーではないふたりがおもに9でプレイしているここ数年のアーセナルが直面している現実だろう。みんなでゴールをシェアするのもいいが、そんなとき9がショットを外さなければもっとゴールが決まっていて、試合に勝つ可能性はより高まっている。

理想を云えば、ジェズースやハヴァーツのような万能系が、ゴールもトップチームのストライカーとして平均以上に決めてくれればそれでよかったのだが。うまい話はなかなかない。

アーセナルにストライカーは必要だ。ゴールを決めることが好きで、それが得意な選手。

アーセナルのよかった選手

ハヴァーツのこれを書いて終わると余韻が悪いので、最後はよかった選手についてすこし書こう。

まずはライス。Sky SportsのMOTM。アシスト2。SofaScoreでは両チーム合わせて最高レイティング(8.4)。今回はハイプレスでチャンスをつくっていることから、チームのベストプレッサーという声も。さすがによかった。

もうひとりはパーティ。彼もそうとうによかった。フースコではハヴァーツに次ぐレイティング(8.5)。あのポジションでプレス耐性があるのと、縦パスがあるのは強い。ハヴァーツのゴールにつながったカウンターを発動するパスも彼の縦パスからだった。ランナーの勢いをそがない、絶妙な場所に置く、糸を引くような美しいパス。ああいうパスを出せる選手はそんなにいない。

もちろんビッグガビも忘れちゃいけない。Haalandのシャットアウトに貢献。この試合について「これは戦争だ」と云っていた有言実行の漢。オーヴァヘッドのシュートを試みたのもブラジル人ぽくてよかった。ああいうのもっと観たい。

ラヤ。いてくれてほんとうによかった。強いチームには優秀なGKが必ずいる。アーセナルには彼が必要だ。

 

この試合については以上である!

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