今朝は驚いたね。ボロとのアウェイゲームで1997年に採用して以来アーセナルにとって20年ぶりだという3バックシステム(3-4-3)で登場。
アウェイ5連敗をどうしても避けたいとはいえ、アーセナルがここで3バックを採用するとは思わなかった。戦術家が幅を利かすEPLのトップレベルの監督のなかで、我関せずと流行のシステムにも一切なびかなかったヴェンゲル監督である。さすがに何かを変えないとどうにもならないと考えたようだ。
試合後の会見で3バックについて訊かれたヴェンゲルはこのように答えている。
3バックを採用したことについて
ディフェンス強化の必要を感じていたんだ。チームに安心を与えたくてね。
うまく行きましたか?
もっと試合を支配できたと思うけど、概ねうまくいったと思うよ。
3バックは20年ぶりです
この20年で初めてのことだ。わたしのような年になっても何かを変えられるんだということを示しているね。自信を失っているチームに何か新しいことを加える必要があった。
ヴェンゲル監督はこのところ、こういった席でしきりに自分の年齢について言及している気がする。
ヴェンゲルが近年EPLで台頭してきたグアルディオラやコンテ、ポチェッティーノポッチェティーノといったほかの若い監督たちに比べるとかなり保守的で彼らのように試行錯誤できないのは「加齢」でかなりのことが説明できそうではある。
「わたしはもう若くない。若い人たちと同じようにはできない」ヴェンゲル監督自身がそういっているも同然だ。そのあたりの、加齢による新しいことにチャレンジすることの難しさについてファーガソンやラニエリあたりにも聞いてみたいものだ。
20年ぶりにスリーバックフォーメーションを採用した意味
しかしこの3バックはアーセナルにとっては単なるフォーメーション変更以上の意味があったと思う。なにしろどんなことがあっても自分のやり方を変えようとしなかったあの頑固もののヴェンゲル監督がやっと本格的に何かを変えようとしたのだ。
監督本人のコメントはともかく、いずれにせよアーセナルで3バックが今後定着するかはまだわからないが、監督自身が変化することを恐れない姿勢を内外に示せたことは画期的だったとしかいいようがない。
ギャリー・リネカーにいたっては、続投を発表するなら今でしょとすらつぶやいている。
「ヴェンゲルさんへ。今日があなたにとって新契約をお披露目する完璧な日かもしれません」
Dear Mr Wenger, today could be the perfect time to announce that you’re signing a new contract.
— Gary Lineker (@GaryLineker) 2017年4月18日
とにかく今回アーセナルが3バックを採用したことは世間的にも大きな注目を浴びている。だが、なんとか勝ったとはいえ、20年ぶりの3バックシステムは成功したといえるのだろうか。
実際はこの試合、90分を通して観ていた人ならわかるだろうが、リーグ下位に沈むボロ相手に苦戦を強いられて3バックシステムがお世辞にもうまくいったとはいえない。が、いくつかの光明はあったと思う。
3バックでうまくいったこと、いかなかったこと
さっそくSquawkaが「3バックの実験から見た勝者と敗者」というエントリを投下。
勝者として、サンチェス、ラムジー、Ox、ホールディングを挙げている。
ぼくはやはりこの試合はウイングバックのチェンボが輝いていたと思う。CMのチェンボは密集したフィールドの中央でさほどドリブルで仕掛けていくシーンは見られないが、さすがにワイドに貼っていればチャレンジするスペースがある。チェンジ・オブ・ペースで何度もドリブルでつっかけていく様は観ていて楽しかった。得点には至らなかったが惜しいクロスもあった。ウイングバックという新しいポジションが彼に精神的な余裕を与えたのか、自信をもってプレイできていたように思う。
Alex Oxlade-Chamberlain game by numbers vs. Middlesbrough:
88% pass acc.
9 crosses
5 take-ons
5 clearances
2 tackles won
2 aerial duels won pic.twitter.com/B5qt886P3M— Squawka Football (@Squawka) 2017年4月17日
敗者として、モンレアル、ガブリエル、ウォルコット、ベレリン。
今回この3バックでディフェンスがうまくいかなかったとしたら、システムというよりは問題はやはりCB個々のクオリティではないだろうか。
とくにガブリエルのポジショニングや配球はあらためてクオリティの低さが露呈したかたちで、この試合を観るにまだクラブが要求するレベルに達していないように思われた。なぜこの試合にムスタフィがいなかったのか不明だが、彼を入れてもまともなCBはいまのアーセナルに3人もいないというのがアーセナルの3バックにおける最大の問題点だろう。
また最後方からのロングフィードを可能にするCBのパスセンス。これが重要だ。この試合でも3人のCBが同時にプレッシングを受けてたびたび窮してしたが、正確なロングパスがあればそれ1本で状況を打開できるばかりか、相手がプレスで前掛かりになって中盤や前線が薄くなっていれば一気に状況を逆転できる。これをこの試合で痛感した。この試合では、フメルスやダヴィド・ルイスのようなロングパスの精度が高い選手が3バックのなかにひとりでもいればと思うシーンが何度もあった。もしジャカにCBのセンスがあれば使ってみたいところだ。
ヴェンゲル監督には3バックついでに、ロングボールをもっと併用してもらいたい。パスセンスのないCBからのビルドアップにこだわり続けるのは愚かだ。グアルディオラのマンシティでCBが格下チームのプレッシングの餌食になっているのはぼくですら何度も目撃している。我々にはせっかく前線にジルーがいるのだ。彼の頭を使わないでどうする。ジルーの持ち腐れである。
今回システム変更で一番気になったのがベレリンで、このフォーメーションだと右のウイングバックが彼の適役だが、格下の対戦相手で攻撃の比重が大きくなるとそのポジションでチェンボに優先して彼を選ぶことはできない。今シーズンは調子を落としていてここ数試合ではファンから心無いチャントを浴びてすらいるベレリン。この3バックでは犠牲になる可能性が高い。心配である。あと髪切れ。