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2017アーセナルの移籍市場雑感。サンチェスはなぜ移籍志願を明確にしなかったのか?

フットボールファン注目のデッドラインデイが昨日8/31(日本時間本日朝)に終わった。EPLトップ6で一番補強が必要といっても過言ではなかったアーセナルは、ファンの期待に反して結局たった2名の獲得という残念な結果に。また既存スコッドの人員整理についても思い通りにいかず、試合だけでなく移籍市場という大事な局面でも大きな不満を残す結果となってしまった。斜陽のアーセナルという印象をさらに強くした格好だ。

人員整理にも苦労したアーセナル

デッドラインデイに放出できたのは、ジョエル・キャンベルルーカス・ペレスとユース選手が数人。しかもキャンベルとペレスについては、おそらくアーセナル側が希望していた完全移籍とはならずローンとなった。これでドビュッシーウィルシャーは残留することに(※スペインのマーケットクローズが1日遅いのでまだ動きがあるかも)。これでまた1年、使いもしない選手の給料を払い続けることになるのであろうか。

戦力外選手の放出がなかなか進まなかったおかげもあってか最終日には選手獲得の予算がなくなったという報道もあったが、今思えばマーケット期間中にも関わらず、ヴェンゲル監督が「獲得よりも放出を優先する」と公言したこともまずかったのではないか。

アーセナルの選手を狙っていたクラブからしてみれば、アーセナルの売りポジションが明らかなら、その流れで相場より安値で買えると期待しただろうし、売り焦っているクラブとの交渉なら時期を遅らせれば遅らせるだけ買い手が有利になると思われてもおかしくはない。結果的にアーセナルは思ったような人員整理ができず、バカ正直なせいでわざわざ自分たちの首を締めてしまったのかもしれない。



サンチェスの残留はアーセナルの本意だったのか?

チェンバレンをキープできずライバルに放出し、大本命のレマールを逃すなど、今夏の移籍マーケットでのアーセナルの振る舞いには数々の疑問が残る。なかでも最大の疑問はといえばアレクシス・サンチェスの残留ではないだろうか。

もちろん、これはヴェンゲルがこれまで語ってきたようにサンチェスは売らないというスタンスを貫いたものであり、そうなったからといって驚くべきことではないのかもしれない。

しかし表向きは常に「サンチェスはアーセナルでハッピーだ」と主張し続けたヴェンゲル監督も、頑なに契約更新を拒む本人が本心では移籍を希望していることは当然認めていたはずだった。

また一部で報道され始めているように、サンチェスがチーム内で不和の種になりつつあることについてもクラブの監督が気づいていないはずがなく、やはりレマールやドラクスラー(やスターリング?)といったサンチェスの代役が獲得できさえすれば退団を認める意向だったのではないだろうか。

それが、残ってしまった。

なぜサンチェスは移籍希望をはっきりさせなかったのか?

サンチェス本人にとっても、28才という彼の年齢でキャリアがピークにあることは自覚しているだろうから、いまアーセナルに残るということは大きな停滞と感じるはずだ。ファンとして認めたくはないが、現在のアーセナルは世界一の檜舞台に立とうという情熱を持ったワールドクラスのフットボーラーがプレイすべき場所ではない。マンシティやPSGが本気で彼を欲しがったが、誰よりもこの移籍を実現させたかったのはサンチェス本人だったろう。

ではなぜ彼は移籍希望を明確にしなかったのだろうか?

ぼくが知る限り、移籍に関するサンチェス本人のコメントといえば「UCLでプレイしたい」「ロンドンの強いクラブでプレイしたい」といった婉曲に移籍希望をほのめかすようなものがいくつかあったくらいで、彼本人がアーセナルを退団したいとはっきり明言したことは一度もなかった。

はっきり退団希望を口にするような野暮なマネはせずとも、新契約も拒んでいるんだし希望はクラブには伝わるはずだと当初は考えていたのかもしれないが、ヴェンゲルが自分を本気で残したいと考えていると察した時点で、自分の望みをちゃんと伝えるべきだったんじゃないのか。

「トランスファー・リクエスト」というものが紙切れなのか何なのか具体的にどういうものかは知らないが、移籍を希望する選手がクラブに直訴という手段に打って出ることも少なくない。今回の移籍市場ではマレズやドリンクウォーターがレスター・シティを退団するためにトラリクを提出したといわれている。

選手とクラブの力関係として、選手の格に見合わないクラブが選手にトラリクを出されてしまうというイメージがあるが、アーセナルとサンチェスの関係を見れば、サンチェスがアーセナルにトラリクを提出しても何ら不思議ではない状況ではあった。もっとも、今夏でいえばバルセロナに移籍したいコウチーニョのトラリクをリヴァプールが無視したというケースもあり、それにどの程度効力があるのかはわからないが、少なくともとかく周りが騒ぎ立てることが多いこのフットボール世界で、選手本人の希望をクラブに明確に伝えるという意味では有効であるのは間違いない。サンチェスはトランスファーリクエストを出すべきだったのだ。だが出さなかった。

なぜこの板前ヅラのサッカー選手が最後の最後まではっきり移籍希望を口にしなかったのかは「謎」としかいいようがない。

サンチェスの残留で関係者全員が不幸に

サンチェスがアーセナルに残ったことはあらゆる面に悪い影響を及ぼしている。本人はもちろん、残留を願ったアーセナルにすら悪い影響を及ぼす。だから、サンチェスが移籍希望を明確にしなかったのは、(忠誠心のない選手を残そうとしたアーセナルの「罪」を棚に上げていえば)、はっきり糾弾されるべきだと思う。

彼が早々に移籍希望あるいはアーセナルでのプレイを希望していないというスタンスを明らかにしていれば、クラブとしては放出以外に選択の余地はなく、今季は最初からサンチェスのいないスコッドを計画していたはずで、少なくともこんな混乱した事態にはならなかったはずだ。もしかしたらリヴァプール戦の惨敗すらなかったかもしれないよ。

アーセナルはおそらくこの移籍市場の最中にもサンチェス関連で消耗していたはずであるが、彼の問題が早々に解決し、そのエネルギーがほかのことに使われていたとしたらどうなっていただろうか。

ほんとかどうかは知らないが、トマス・レマールにはアーセナルから最終的に92Mポンド(100Mユーロ)という巨額オファーがなされたという。レマールに対するアーセナルの最初のオファーは30Mにポンドだったというが、もし、そのタイミングでモナコにもっと大きなオファーが出ていれば状況は変わったろうか? 仮に80Mポンド出せとモナコがカウンターで要求したときに80Mポンドを出していたら? 最初からサンチェスがプランに入っていなければ、最終的にヤケクソで札束でぶっ叩くような(しかも失敗)、こんな後手後手の対応にならずに済んだのでは?

レマールは移籍するならアーセナルよりもリヴァプールのほうがいいといっていたそうだが、その判断にアーセナルのこのリーグ戦3戦の悲惨な結果が影響した可能性は? (追記:BBC SPORTSのDavid Ornsteinは、たしかにレマールは8月の初めにはアーセナルの移籍に前向きな発言をしていたし、デッドラインデイのあたりではちょうどフランスチームにいたジルー、コシエルニ、ラカゼットが説得したが断られたと話している

すべてが悪いほうへと転がっていく。まるで悪い夢でも見ているようである。

サンチェス残留のマイナス効果

いまアーセナルのやることなすこと裏目に出ているのは、全部板前ヅラのせいなんじゃないかな。

具体的なマイナス面を挙げると、アーセナルの経営面では、マンシティが最終的にオファーしたという60Mポンドという巨額の移籍金を得るチャンスを失った。そしてサンチェスが移籍する際には、トップトップクオリティの選手がフリー(0ポンド)で手に入るというライバルクラブに大きなアドバンテージを与えることに。来年マンシティがサンチェスを獲得するなら、今回獲得失敗したことは彼らにとってはよかったのかもしれない。彼らはサンチェスがいなくても十分強い。

スポーツ面では、サンチェスの存在自体がチームの不和を引き起こしさらなる低迷を引き起こす。チームメイトを信頼していないサンチェスは自己中心的なプレイに終始し、アンフィールドでの惨劇が場所を変え何度も繰り返される。たとえどんなすごい選手がいたって、チームワークがなければ実力を発揮することができないのはリヴァプール戦で見たとおりだ。それにサンチェスがいたってふつうにEPLで4位以内にも入れないのだから。今季の順位なんて予想したくもない。

もちろんサンチェス自身も不幸である。マンシティに移籍していればもらえていた週給の半分にも満たない報酬で働かなければならない。そして本来自分がいるべきではないクラブでプレイしなければならない。アーセナルは弱いし楽しくない。勝ちたくて勝ちたくて震えているようなトップクオリティのフットボーラーにこれ以上の不幸があるだろうか?

 

とはいえ……

しかし、サンチェスがすべて悪いんだといくら彼のせいにしてみたところで、一番の問題はアーセナルFCというクラブであるという事実を覆すことはできないのだけどね。虚しさが募る。

止まない雨はない、明けない夜はないというが、いったいいつになったらアーセナルはおれの見たいアーセナルになるんだ?

 

※2017/9/5追記

BBC SPORTSのDavid Ornsteinによれば、サンチェスは移籍希望をクラブ側にはっきりと伝えていたということだ(雑な翻訳エントリ)。ということは、やはりヴェンゲルは不誠実にもサンチェスはクラブに残りたがっているとメディアに対して虚言を繰り返していたことになる。しかし、だったら、サンチェス側としてもやはりメディアを通してサンチェス本人の意向を公にするべきだったのではないだろうか。この移籍を実現させるためにメディアやSNSを通して本人がはっきり移籍希望を宣言することは非常に有効な手段だったと思われる。むしろメディアを利用するというのは代理人の常套手段ではないか。

ただしこのやり方だとヴェンゲル監督のコメントを100%否定することになり彼の面目が立たなくなる。だからサンチェスが移籍希望を公言することを躊躇した理由は、彼がヴェンゲルという伝説の監督をリスペクトしていたからだったのである。

うん、これはないな。

 

 

 

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