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PLのFFPルール「STCC」が撤廃される。アーセナルへの影響は?

もうほぼ一週間前のできごとで、ニュースというにはいささか旧聞に属する話題になってしまったが。

今年7月1日から、PLのFFP(Financial Fair Play)ルールである「STCC」(Short Term Cost Control)が撤廃されたとのこと。※今後3年に渡り廃止というので、その後はまたどうなるかはいまのところ不明。

STCCはクラブの補強方針に大変に影響のあった制度で、近年のアーセナルの補強がずっとはかどらないのはSTCCのおかげだとも云われていた。

STCCとアーセナルについては以前に詳しく書いたことがあるので、未読のかたはぜひこのブログの過去エントリをご覧ください。

なぜアーセナルはローンでしか冬の補強ができないのか? 問題のSTCCについて | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

今回はこのSTCC撤廃により、PLクラブやアーセナルにどのような影響があるのか。確認しておきたい。



STCCの撤廃についてメディアの反応

Premier League clubs given major boost as Financial Fair Play rule is scrapped

Premier League gives clubs transfer boost by scrapping one FFP rule

The new Financial Fair Play rule change that could completely change how next season’s Premier League plays out

Premier League scraps FFP rule to allow clubs to spend more on transfers this summer in big blow to Arsenal

STCCの廃止は、どのPLクラブにおいても非常に影響のある重要な決定で、とくにアーセナルにとって影響が大きいと指摘しているメディアもいくつかある。

STCCの撤廃で何が起きるか

STCCルールとは?

まず、これまでに適用されてきたSTCCというルールについて簡単に復習しておこう。

STCCとはShort Term Cost Control(短期コストコントロール)というように、短期でのクラブの金の使い方をルールで定めようというもの。PLの独自FFPレギュレイションで2013年から適用されていると。

云わずもがな、急激な財政的変化によってクラブが致命的な問題を引き起こすことを抑制しようというのが、このルールの基本的なコンセプトだ。PLのようなとくに急成長している(バブリーな)リーグで求められたルールだったと云える。

具体的には年間£67M(18/19にはこれが£81Mに増額)の給与総額を超えるクラブは、毎年£7Mの給与総額の上昇しか認められない。しかし(ここがミソだが)直近3年の収益によっては、これをその収益に応じて上昇を認めるというもの。

これにより実際に保有している資金の多寡に関わらず、収入の多いチームは£7Mの上昇幅を越えてより多く選手給与分に資金を使えるため、質の高いタレント選手を多く雇うことが可能になる。

つまり原則的に人気がある強いチームはより強くなり、弱いチームはそれなりにという格差の固定化に陥りやすいルールではあった。

STCCルールの撤廃で起きること

PLクラブすべてで給与総額の上昇幅の制限がなくなり(※FFP自体がなくなるわけではない。クラブは一定の損益を出せばペナルティがある)、移籍ウィンドウでの足かせがなくなるためすべてのPLクラブに恩恵がある。

なかでもとくに近年、資金力をつけているミッドテーブルクラブが恩恵を受けやすい。

なぜSTCCルールがなくなるのか?

なぜPLは財政健全化のためのルールをいま廃止したのだろうか。

これにしっかり触れている記事は見つけられていないが、おそらくはSTCC廃止によって不平等が緩和され恩恵を受けるであろうPLのトップクラブ以外のクラブの要請と、もうひとつはヨーロッパのなかでのPLクラブの競争力を高める意図がPL運営サイドにあるのではないかと想像する。

そもそもPLはほかのメジャーリーグに比べてトップから下位までの格差が少ないリーグだと云われている(たとえばリーグ賞金)。しかし、STCCはどちかといえば上下格差を固定する方向に働いていたルールだった。

そういった背景があるなかで、潤沢な資金を持つオーナーシップやTV放映権料などで急速に資金に余裕の出てきた中位~下位クラブが、事実上のサラリーキャップであるSTCCに不平を唱えてもおかしくはないし、実際彼らは数のうえではリーグのマジョリティである。

それと、ヨーロッパのなかでPL全体で競争力を高めていこうという機運もこれまで以上に高まっていると推測できる。

18/19シーズンのCL/ELでファイナルの4つの席をイングランド勢が占めたことは若干のラッキーはあったかもしれないが、偶然とも云えない。近年スター選手やスターマネージャーが続々と集まっているのがイングランドだ。人と金を集め続けているPLのスポーツ面での競争力が上がったところで何も不自然なことはない。

これまで以上にヨーロッパでの競争力を持とうとするなら、当然ヨーロッパのメガクラブにも対抗せねばならず、PLのトップクラブにとってもSTCCはハンディキャップでしかなかった。

トップクラブ以外のクラブまで移籍ウィンドウで活発に動くようになえれば、これまで以上にタレントがPLに集まる傾向が加速するかもしれない。

STCC廃止によるアーセナルへの影響

STCC廃止で影響を受けやすいのはやはりミッドテーブルクラブ。もちろんいい影響だ。

たとえばシティやチェルシーといったオイルクラブや、マンUのような世界一人気のあるメガクラブは、もともとSTCCのルール下においても財政的な競争力を持っていたので、さほど大きな影響はないし、STCCがなくなればさらにやりやすくなる。

一方で、ヨーロッパのコンペティションに出場していないことで給与総額も制限されてきたレスター、ウォルヴズ、ワトフォード、エヴァートンといったPLのいわゆるミッドテーブルクラブにとって、収益による補強の制限が解除されたことはとくに大きな意義がある。

今年7月からSTCCが廃止ということで、レスターはさっそくこの夏にAyoze Pérezを£30Mで買い、さらにクラブレコードでユーリ・ティーレマンスを£40Mで獲得しようするなど精力的に動いているが、きっとSTCC廃止の影響も大いにあると思われる。

よって、彼らがさらに力をつけるということは、PLのポジション争いのなかでは、タイトル争いやトップ4争い以上に、トップ6争い(EL出場争い)での競争が激しくなることが予想される。アーセナルには逆風になるかもしれない。

アーセナルのようなクラブに悪い影響がありそうだと示唆しているのはThe Sunだ。

STCCの廃止は、エリートクラブになろうとしている裕福な新興クラブにとっては心地よく聞こえるだろうが、すでにトップにいるクラブは心配だろう。

とくにアーセナルは、チームを改善する必要があるにも関わらず、CLフットボール出場がないおかげで予算が制限されている。

セントラルDF、レフトバック、セントラルMF、ウイングを補強するのにガナーズは£45Mしか持っていない。

エヴァートンのファハド・モシリやウォルヴズの背後にいるフォーサン・グループのようにキャッシュリッチなオーナーの投資もなく、マンUが持っているようなコマーシャル収益も欠いている。

アーセナルはSTCCがあった日々を恋しく思い出すことになるかもしれない。

この記事で紹介されていた過去5年のオーナー投資を比べたグラフ。アーセナルではオーナー投資は皆無で、マンUのようなコマーシャル収入もない。

残り1ヶ月。停滞するアーセナルの移籍ウィンドウ

今日で夏の移籍ウィンドウは、ちょうど残り30日ほどだそうで。

期待に反してここまでのアーセナルの移籍市場での動きは鈍く、獲得は若いマルティネリが発表されたのみ。

退団はオスピナが発表されたがわれわれが一番気にしている肝心の選手たちのニュースはない。補強の動きが鈍い以上に、放出の進捗が見えてこないのが恐ろしい。

夏の間ずっと指摘されているムスタフィやエルネニーといった売却対象と云われる選手たちを今後それなりの金額で売却することはできるのか。彼らを欲しがっているクラブについて、ほとんど名前が出てこないことがアーセナルの苦しさを物語っているような気がする。もし水面下で交渉があったとしても、あからさまな売りポジションのわれらが相手に足元を見られ、タフな交渉を迫られている可能性もありそうだ。

新体制では商売ベタの汚名をどうにか返上してもらいたいのだが。

(ちなみに昨日アストン・ヴィラが以前アーセナルともリンクされていたことがあるボーンマスのCBタイロン・ミングス(26)を£26.5Mでローンからそのまま買い取ったというニュースがあった。これを受けて、アーセナル界隈ではミングスで26.5Mならチェンバースはゆうに£30Mを超えなければおかしいと議論がヒートアップしていた笑)

コパ・アメリカが終わったので、噂が本当なら今週にもエドゥ入社のお知らせがあるはずだが、このタイミングでエドゥが何か決定的な働きをしてくれるとも思えない。

買い手がおらず不要な選手をやむを得ず残し、それによる資金不足で必要な選手も補強できず。軒並みパワーアップしたライヴァルクラブを尻目に停滞するアーセナル。

恐れていたような不本意な移籍ウィンドウで終わるんじゃないかと気が気じゃない。

アーセナルがトップ6陥落するような未来は、皮肉にもアーセナルが苦しめられたSTCCの廃止が引き金になるのかもしれませんよ。

くわばらくわばら。

楽しくない話題でまじごめん。



4 Comments on “PLのFFPルール「STCC」が撤廃される。アーセナルへの影響は?

  1. プレミアリーグの放映権料があれば、どのクラブもそれなりの支出が可能で、PL放映権料を除外した商業収入なんて変な制限がなくなって、中位よりやや上のクラブは歓迎しそう
    アーセナルは、そんなこと関係なく損益アップアップ状態で、赤字はダメですよとクロエンケママおこなので、厳しい状況になるかも
    ELは優勝以外はスケジュール的にも賞金的にもー罰ゲームなので、ストレートインできる4位以上が今後は必須
    というかCL取れないと本当の中位になりそう

  2. 今シーズンCL権取らないと、主力流出で今後エバートンやレスターと立場逆転するでしょうね
    これが他のリーグなら3年くらい巻き返しの時間ありますがプレミアは変化のスピードが早いですし
    古豪と言われて万年中位以下に沈む未来
    アーセナルよりヴィラやリーズに入りたいと思う選手がほぼ居ないように古豪と言われたらおしまい

  3. もの凄く参考になる記事のアップありがとうございます。

    ですが、アーセナルの現状を知れば知るほど辛い気持ちになります。

    歯痒いし悔しいです。

  4. ネガティブな話題が多くて気が滅入るので無理矢理ポジティブ思考します。
    アーセナルの誇るべき点としては優秀な下部組織がある事です。
    セスクやナスリが居なくなった後にはコクランやラムジーが台頭し、
    サニャが居なくなった後にはベジェリンが台頭したように、アーセナルは下からの突き上げが割と見込めるチームだと思います。

    ただ下から出てきた選手に共通する点として、ある程度の出場機会が与えられて(ミスも含め経験を重ねて)初めてチームの中心へと成長できたと思います。
    なのでエメリには今シーズン若手の積極登用を期待します。
    昨シーズンのリヒトシュタイナーのようにその場しのぎの補強をするくらいなら若手にチャンスを与えてあげて欲しいですね。

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