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【マッチレビュー】20/21EPL アストン・ヴィラ vs アーセナル(6/Feb/2021)ふたつの6ポインターズを落とす

試合の論点

ヴィラ vs アーセナルのトーキングポインツ。

アストン・ヴィラはアーセナルより強いという単純な事実

ホームで3-0で敗けたときも同じことを書いた。

彼らは強い。チームはよりオーガナイズされていて、選手はそのなかでの動き方をよく知っている。

プレッシングもメリハリが効いているし、ドリブルも印象的だった。おそらくは、ドリブル単体だったらアーセナルのほうが得意な選手が多いのではないかと思うが、この試合で彼らはドリブルをアーセナルの2倍成功させている(10 v 5)。どこでドリブルすれば効果的か、やりどきをわかっているように見えた。

アーセナルはハイプレスを忘れ、プレイも遅い(ライアンまでそれを指摘するとは……)。そんなチームがアウェイでミスをやれば、より強いチームに勝てるはずもない。

最近アーセナルはかなり進歩した気でいたが、実際はこの程度では、PLではまだまだ競争力が十分じゃないのかもしれない。少なくともヴィラのほうがチームの完成度は高かった。

アーセナルのクオリティが低いというよりは、PLのほかのチームはもっともっと先を行っているということなのだろう。

レフェリーとVARについての議論がつづく

近ごろはアーセナル界隈ではこればかりで、個人的にはちょっとうんざりしつつある。

両論あってもおかしくなさそうな事例でも、坊主憎けりゃで「レフェリーが悪い」の大合唱とあっては、若干興ざめしなくもない。

これまでの数々の事例で、アーセナルのファンにとって被害者意識がつのる十分な理由はあるのだが、それでもいまの状況はちょっと行き過ぎの反応にも感じる。みんな少し冷静になったほうがよろしい。

いまのr/Gunnersとかざっと見てみてくださいよ。いまだにホットサブズのうち多くをレフェリー問題が占めている。

Peter WaltonというBT Sportsでパンディットをやっている元レフェリーという人物の発言がいまかなり注目されている。ルイスのレッドカードについて「意図は関係ない」と述べて炎上?したひと。その彼が今回もラカゼットとエミ・マルティネスの一連のプレイについて”VAR is not there to get the correct decision(VARは正しい決断をするためにあるのではない)”と述べて、またしても火に油を注いでいる。

ぺぺの試合後インスタ。ちなみにラカのコメントにエミ「そっちが先に押した」とリプライ

このときのリプレイを観ても、とくにラカゼットが押したからエミがシャツを掴んだというふうには見えず、アーセナルのファンからしてみれば、明らかに倒れる最後までシャツを掴んでいるGKがどうしてファウルではないのかまったく理解できないのだが。

ただ、そのWaltonの発言について、あるr/Gunnersのユーザがそのこと自体はたしかに間違いじゃないと述べていたのが興味深かった。彼の云っていることは、要するに、現状のVARというのはレフェリーが行ったある判定についてそれが正しかったかどうかをチェックする機能しかないと。まず始めにVARがそのプレイについて正しいかどうか判定をするわけではないという意味だろう。まずレフェリーの判断がありきという。このシーンではふたりの接触はまったく顧みられず、スルーだった。

まあそんなことを云っても、レフェリーの笛が吹かれない状況でVARチェックに至ったことがこれまでにまったくなかったなんてことはないとは思うんだけど(あるよね?)。

いずれにせよ、このWalton某もしっかりと坊主の袈裟になっているなあと思った次第。

しかしこの問題は、ほんとうに難しい。

いまの審判システムは、レフェリーがいつでも公正な判断をするという信用があって、あるいは彼らがみな公正な判断ができる能力があるという共通理解のうえに成り立っているが、こういうことがつづけば(今後もつづくだろうが)どんどん不公平感が増し、システムそのものをみんなが信頼しなくなっていく。そんなフットボールはイヤだ。しかしどんどんそうなりつつある。毎週毎週どこかでこの話題が吹き上がっている。この産業がファンを含めたエコシステムで成立しているのだとすれば、それはとても理想的な状況ではない。

ただ、絶望的になっているわけでもない。競技なのだからどちらかに不利な判定があれば、どちらかが不満になるのは当然だが、そういう原理がそこにある世界だとしても、少なくともマシなジャッジというものは存在するから。たとえばワールドカップのファイナルを任されるような優秀なレフは、やはりそういう衆目のなかで公平性を自ら示してきたからこそ高い評価や名声を得ているわけで。

人間がさばく以上は完全を求めることはできないにせよ、少なくともいまよりマシなシステムをつくる努力はやめないでほしいし、間違った判定を見逃さないシステムもまた必要。このラカとエミの事案が示しているとおり、せっかくVARがあっても必要なときに活用されないのでは意味がない。

また優秀なレフェリーとそうでないレフェリーがいるということは、彼らがインプルーヴできる仕組みだって必要だ。彼らの仕事をレヴューして評価するような仕組みがないと、いつまでたっても進歩がなく、同じことの繰り返しだ。それが現実に起きている。マイク・ディーンみたいなレフがいつまでも放置されていること自体もおかしい。

昨日、FAに対しラグビーのように試合中のレフェリーのコミュニケイションを音声で公開することを求める署名運動が立ち上がっていたが、それもまたジャッジの質やアカウンタビリティを高めるひとつの策だろう。

VARも含めて昨今のルール改定によって、現場はさらに混乱している部分もある(VARなんかないほうがよかったという意見には賛成しかねるが)。ということは、それがいかに難しいかをも示していると思う。FIFAのヴェンゲルさんには期待している。

アルテタがほしいオールラウンダーストライカーがチームにいない?

この試合のあとに、gunnerblogことジェイムズ・マクニコラスが書いた「アーセナルにはアルテタが求めるオールダウンダーなCFがいない」という記事(※要課金)が少し話題になっていた。

今回ラカゼットが、59分のプレイで1本もシュートを打てず、また交代で入ったオバメヤンもシュートがたったの1とまったく振るわなかったのに対し、2分で得点を決めたヴィラのCFオリー・ワトキンス(※アーセナルのファン笑)が抜群のスタッツを残していること。この試合のショッツは4だが、そのうち3つがSoT。彼はアーセナルとの2試合で、アーセナル全体よりも多くSoTを放っているということ。

オバメヤンの消え具合は31分のプレイでパスが4つしかないことにも現れている。あれだけ押し込んでいたのに、ほぼ試合に関与できていなかったみたいなものである。もちろん彼だけのせいではないが。

ワトキンスが印象的なのはジュエルで、地上戦と空中戦をあわせた成功/アテンプツで、ラカゼットが1/7、オバメヤンが1/3だったのに対し、ワトキンスは9/19と図抜けている(※成功9のうち7がヘッダー)。ボールリカヴァリーズもラカゼットのゼロに対し、ワトキンスが5。

「オールラウンダー」の定義にもよるが、一般的なオールラウンダーCF像(レヴァンドフスキとか)からすれば、アーセナルのふたりのスターFWはオールラウンダー像からは遠い。

とくにオバメヤンはかなり偏りのあるタイプだ。足が速くシュートも上手だが、彼はヘッダーで得点することはかなりまれでターゲットマンではけっしてないし、ゴールのほぼ真ん前でしか得点しない。またアシストやチャンスクリエイションで周囲を活かすタイプでもない。ゴール以外でチームに貢献する部分があまりない。

ラカゼットはアルテタからはフォルス9を任されていたり、あるいは一度は彼をNo.10でプレイさせたように、彼が任されているのはあくまで攻撃のお膳立て。これは、チームのなかでもっとも得点が期待されている選手の扱いではない。フランスで見せていた彼本来の得点能力からすれば、いまのこの扱いが正しいのかどうかはわからないが、イングランドに来てからの彼の不本意な実績からすれば、そういった扱いになるのはやむを得ないのかもしれない。彼は調子がいいときよりスランプのときのほうが長い印象がある。

オバメヤンに比べればラカゼットのほうがまだオールラウンダーに近いだろうが、彼もまたクリエイターでもターゲットマンでもない。最後にボールを押し込むフィニッシャーだ。大雑把に分ければオバメヤンと同じ方面のストライカーに分類されるだろう。

この議論はここでも飽きるほどやってきたけども。このふたりがある意味似すぎているのは非常に不幸で(片方がジルーだったらと考えれば)、アーセナルの近年抱える問題のひとつだとすら思う。

オバメヤンとは3年契約を結んだばかりで、ラカゼットは夏に残り契約が1年。

このふたりはプライヴェイトのつながりに比べれば、ピッチ上のパートナーシップはすごく素晴らしくはない。もうしばらくふたりは一緒にプレイしているが、そうなっていないのはこのふたりがやはりストライカーとしてのタイプが非常に似ているからだろう。もしどちらか一方がジルー(以下略

CFのオプションとして、マルティネリもいる現状では、夏にラカゼットに新しい契約を与えることには疑問もあるっちゃある。もし彼に新契約を与えるなら、オバメヤンとラカゼットの共存問題はさらに継続することになり、それは未来のアーセナルにとりメリットよりもデメリットのほうが大きいようにも思える。

この試合のポジティヴなところ

よかったところも書いておこう。

この試合でよかったことは、ふたつある。ひとつはマット・ライアン。それは上にも書いたとおり。

彼が信頼できるGKだとわかったことは大変にポジティヴだ。仮にここで彼がルナーソンのように自信なさげな面持ちでプレイしたなら、わりと絶望的な気分になっていたところだ。レノに何かあれば一巻の終わりという。デビュー戦であれだけ堂々としていたのは、さすが経験豊富なヴェテランと云うべきかもしれない。ほっとした。

もうひとつは、ESRとオーデガードの共存。

今回珍しくESRは途中交代されなかったので、結局ふたりは30分程度一緒にプレイしたが、なかなかよかったんじゃなかろうか。ふたりの直接のやりとりというのはそれほど多くはなかったと思うが、それでもNo.8がふたりというアーセナルにとってはしばらくぶりのシステムには可能性を感じた。

ジャカがひとりでアンカーポジションに入るということはおそらくないと思うので、今後このふたりが一緒にプレイするかどうかは、パーティ次第ということになりそうだ。

ESRとオーデガードとパーティのトリオがMFでプレイするというのは非常に夢がある。

追いかける試合だけのオプションではなく、できればそれがデフォルトのシステムになるようにスタートから試してもらいたいものだ。アルテタにはぜひ理想を追求してもらいたい。

ウィリアン問題

マズい。非常にマズい。なんのしがらみもなければ、この試合以降彼が試合でしばらく起用されなくなっても何もおかしくはない。それほど効果がなかった。

あのスクランブル状態で、あそこまでの低パフォーマンスとは恐れ入った。まじでチェルシーのスパイなのでは?

今後、彼がアシストでもゴールでもしてくれさえすれば、ケチャどば的にパフォーマンスが上がっていくような気がしないでもないが。あのプレイではどちらもできるはずもなく。

今後は、彼の残り2年の契約をどうするかで悩むことになるのかもしれない。サラリーの半分負担してローンに出すとか?

ニューメストはこんなところにいた。

その他試合について

  • ヴィラにはこれでダブル。92/93シーズン以来。もうこの手のスタットはどうでもよくなってきたな。毎回のように悪い記録をつくっている
  • パーティがまたしてもケガ。つっただけだと思ったのに筋肉系とは。KTはまた別の場所のケガだというし、アーセナルに来るとみんなケガがちになっちゃう
  • セドリックはなあ。あれだけ称賛されていたのに残念だ。でも高いレヴェルでずっとプレイできる選手ならそもそもサウサンプトンでプラン外になってないという。AMNがいないので、LBもRBもセカンドオプションは彼。いまフルバックはかなり薄い
  • アーセナルはスロウインで毎度苦労しているように見える。なぜ?

試合については以上。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

5 Comments on “【マッチレビュー】20/21EPL アストン・ヴィラ vs アーセナル(6/Feb/2021)ふたつの6ポインターズを落とす

  1. 開始2分の失点ってほんとにショックが大きいですね、なにやってんだってゆう。
    でもどーせ3点とるんだしって思って見てましたが。はぁ。
    ライアンはよかったですね。ただCB からのバックパスが明らかに減ってましたね、ほぼないくらい。ライアンもけっこうパスはよかったと思いますけど。
    だいぶ整理したと言ってもシニア選手には問題がまだ多いっすね、ラカオバ問題、ウィリアンメスト化問題、ルイスセドリック問題。あとティアニーとロールスロイスの故障の多さと言ったら。どっちも頑丈そうに見えるのにどうしてこうなったんでしょう。
    ペペも前よりは明らかによくなったとゆうか自信満々に見えますが、あそこでドリブルミスられると全部カウンターにされちゃってましたよね、もうちょっとワンツーとかでうまくできないものか。
    オバはあのメンツでワントップだと消えちゃっててここもどうするのがいいのでしょう。ここはさらに思いきってガビを使うのが最適解かも。
    まだまだ発展途上な感じですが、アルテタのチームづくりは方向性は間違ってないと思えるので、今シーズンはしっかりいろいろと試してもらって土台を固めてほしいですね。

  2. 前回ビラのハイプレスにやられて何もできなかったけど、もうあのレベルにはいないのは有り難い。
    ただエンドプロダクトの不足とミスで負けるのも、0ポイントという点では何も変わらない。
    もうそろそろ、このチームはそういう批判に値するチームになってもいいと思う。

    しかし、悔しかった。
    ここから立ち上がるのは鍛錬以外の何物でもないと思う。しんどい。見てるこっちも。
    鋼を鍛えるみたいに、ぶっ叩いて余分なものを絞り出してる最中だと信じたい。
    COYG

  3. とっても見るのも苦しい試合でした。あれ?アーセナルってこんなに弱かった?と思わされてしまった。
    アルテタを基本応援しているのだけど、スカッドの質量ともにチェルシーやユナイテッド、シティ、リバプールとはかなり離れてしまった。(まぁチェルシーの高齢者を引き取って長期契約するくらいだからお察しだが(悲))
    そしてこの試合は攻防一体のヴィラの組織と戦術に、まったく手が出なかった印象。ボールは持たされただけで、たまにたまーに個人のクオリティ発揮でラインを抜け出せるけど崩していないからチャンスの質も低い。
    出しどころ探す -> バックパス -> 前で足元で待つ奴らばっかり -> ウダウダしてるうちに足元まできっちり競りに来るヴィラに引っかかって攻めらる。 -> 少人数だけどドリブルシュートでエリアまで一直線 -> ロブとかお世辞にも相手にとって制限になってないからシュート打たれまくるし奪えない。(私はセドリックよりもロブとベジェリンがひどいと感じた。)
    そして高額なアタッカーがオンザボール以外、前で待つことを許しているアルテタにも怒りが初と言っていいほど湧いてしまった。そんな自分に驚いた。マジか。

  4. 失点に直結したあのバックラインのパスミス。
    今シーズン失点を免れたものも含めると、かなり多く感じます。
    で、上位陣の試合みるとあんなパスミスほぼ見ない。
    タイミングが合わなかった?運が悪かった?
    それは理由にはならない。
    多分上位陣と比べると、バックラインが球を持つ時間がとても多いんじゃないかと思います。
    出しどころがなくて危険な位置でグダグダとパス回しをしすぎ。

    それでも一時期のドン底よりはかなりマシに見えてしまうと言う…。

  5. 楽しく見られると期待していた2戦がこうなるとは。パスミスからの失点は痛いですね。ただそのシーンも厳しく言うとホールディングがもう少し寄せておけたのでは?というかパスカット出来るくらいのポジショニングを取れたのではとも思ったり。あのシーンでマークすべき相手は得点者くらいだったので。まぁ急だったから厳しいかもしれないですが。

    ただそういう細かい相手への寄せというような部分は試合を通して相手の方が上回っていたと思います。相手への寄せだったりパスコースの限定だったり。こちらはまだ少しサボったり修正の頻度が少なかったり寄せが甘かったり、まだ省エネでやりたいというような気持が見える場面というのが散見されますね。前半はパススピードも遅い場面が目立ったかな。相手の寄せやパスコースの切り方のうまさをかいくぐるクオリティは課題ですね。

    ラカを上手く絡めさせてくれなかったのと調子含め噛み合わないのがあったのも割と影響あったかな。交代は納得ですがオーバも全然活きる感じがなかったのも課題ですね。CMがもう少し前でプレイして欲しいというシーンもちょくちょく。
    ウィリアンは最初の10分は以前よりコンディションいいように見えましたしそういうプレイしてたと思いますけど、すぐガス欠した印象。

    自滅のようなプレイがなければこの2戦の結果もここまでガッカリすることはなかったでしょうし残念でしたが、良いところもあったとは思いますし継続して改善していって欲しいですね。

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