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エドゥが語るブラジルと英国、PLタイトル、夏の移籍

やあ。

すでに一昨日のことでニュースとしてはちょいと出遅れてしまったが、われらがスポーティングダイレクターのエドゥがブラジルメディアの取材を受けていたのが話題になっていた。そいつを読むついでに訳したので共有しよう。

Edu Gaspar exalta vida ‘sem política’ na Europa: ‘Se você sobrevive no Brasil, sobrevive no mundo’

『Estadão』はブラジルで3番めにメジャーな新聞で、日本でいうところの毎日新聞とか? インタビューはロンドンで行われたようだ。

では、Here we go.



エドゥ・ガスパールのインタビュー by Estadão 2004年5月

「ヨーロッパには政治がない」

(コリンチャンス、ブラジルNTとイングランドの違い)

エドゥ:ここには政治(política)がないんだ。わたしはブラジルでのプロセスを理解も尊重もしている。コリンチャンスでは、すべてのプレジデントたちともうまくやってたしね。だが、ここは違うんだ。

会社勤めしているような気分がある。フットボールカンパニーさ。すべての問題について関与し議論する。予算、投資、財政バランス。すべてだ。ブラジルではそういう感じではなかった。わたしもキャリアを始めたときでまだ若かったし、そこにいた人たちはわたしに管理者としての権限をすべてゆだねてくれたわけでもなかった。

だが、ここでは違う。わたしはここでもっと権限がある。

ブラジルで生き残れるなら、ヨーロッパでも世界のどこでも生き残れる。政治について付け加えれば、ブラジルではファンからのプレッシャーがかなりある。そして、それはかなり増幅されたものになる。とくに、コリンチャンスではそうだ。

(選手への投資について)

契約のために契約するわけじゃない。それは、何週間もかけたプロセスでなければならない。わたしのデスクには、ひとりの選手に対して180ページものリポートが置いてある。それはもう非常に詳細なものだ。

肉体的、技術的、精神的プロファイル。PLの経験。それに適応できるかどうか。すべてだ。

われわれは、自分たちにまだ欠けているもの、進歩できる部分を分析している。そして、どこに投資するか。選手を探しに行くのは、そのあとだ。

わたしがこれからやろうとすることは、もう1月からずっと議論をしていること。それは、わたしやミケルだけの決断でもない。グループ全体の決断になる。

(伊『Tuttosport』でBest European Director Award 2023に選出)

政治的によく構築されたクラブがトップにいるものだ。ブラジルの話をしているんじゃない。世界の話だ。難しい時期にいるクラブを観てほしい。そして、最近国際的にも国内的にも成功しているチームを観てほしい。そこには、ソリッドなストラクチャが反映されている。ブラジルは、正しい人間を選ぶ必要がある。

Edu named Best European Director for 2023

(PLのタイトル争いとマンシティ)

おかしな気分だ。とても奇妙だよ。われわれは、すべてをとてもうまくやれたという感覚でシーズンを終えたから。選手の補強から、目標から、選手の契約更新まで。ミケルはグレイトな仕事をして、彼の目標を達成した。われわれは、できることはすべてやったんだ。だが、それでも十分じゃない。

フラストレイションはある。しかし、自分たちがやってきたプロセスについてはポジティヴな感覚もある。素晴らしい仕事だった。

残念ながら、わたしも、わたしが感じていることをそのまま云えないことがある。だが、この世界でPepがキャリアを始めてからやってきたことについては、すべて彼の功績だ。

わたしは、うちの息子と冗談を云ったりもする。彼はラグビーならどうなんだろう?とかね。そんな冗談を云うのも、彼がすでにフットボールではすべてを勝ち取ったからさ。すべての国で勝ってきた。

(2018のワールドカップではブラジルNTはベルジャンに敗け敗退)

あの試合は痛かった。痛かったのは、ベルジャンには敬意を払うが、われわれのチームのほうが、はるかに優秀だったからだ。後半は楽しかった。われわれのほうがずっと良かった。

だが、彼らには戦略があり、それが効いた。Roberto Martinezには、われわれを驚かすような戦略があって、それに慣れるのにしばらく時間がかかってしまった。こちらには、それを乗り越えるチームもあったのだが。

でも、後悔はしていない。すべてをやったから。できるすべてをやった。ひとが気づいている以上にね。ブラジルがベルジャンに敗けちゃいけないということじゃないよ、われわれが相手よりうまくやれるかどうかという意味で敗けたんだ。

(現在のブラジルNT)

いまも見逃してない。愛着もある。とくに自分の選手時代には。当時わたしは、チームのなかのひとりでしかなく、ワールドスターたちを観ているばかりだったけど。ヒザのケガをしたことが悔やまれる。それで2006のワールドカップには競えなかった。

(ネイマール)

彼がいいときは、違いをつくれる。それが好きかどうかじゃなく、彼は違うんだ。

だが、われわれは彼の復帰については観ていく必要がある。もし彼が復帰するなら、世界のどこでだって場所はある。彼の能力に疑いを持つものなどいないのだから。優秀な選手は世界中どこのリーグでもプレイできる。どんなチームにもスターの居場所がある。

ヨーロッパのメンタリティ

(英国とブラジルのフットボールの違い)

ここに来る多くの(ブラジル人)選手たちのストーリーは、適応できない、あるいは素行が悪い。それで終わりさ。そう断言できる。

ヨーロッパにはブラジル人の成功者もたくさんいるとも断言できるよ。彼らのことは全員とても誇りに思う。わたしだって初めてPLを勝ったブラジル人だった。門戸は開いている。今日では、ここには極めてプロフェッショナルな世代がいる。

問題ありというストーリーを持った選手がいたとして、だが彼はゴールを決めて試合に勝つ。そういうのはもう終わりなんだ。まだそれを擁護する人たちもたくさんいる。だが、それはもう終わりだ。

わたしには、そういうフィロソフィはないし、そういうふるまいをする選手を雇うことはない。フットボールで、もうそういう余地はないんだよ。そういうタイプの選手のための居場所は、ここにはもうない。

(今後について)

将来については、自分自身とても考えることではある。わたしがつねに夢見ることでもある。いまはブラジルに帰ることは考えていない。絶対とは云えないが、いまはそのことは考えていない。

わたしはここにいたいし、ここでリタイヤするかも。それ以外のことなんて思いつかない。

マネジャーとしては、わたしは選手として勝ったタイトルはすべて勝った。あとはPLだ。

以上

 

ヨーロッパとブラジルの違い。ブラジル人の目線からすると、エドゥはEPLのような世界の超絶表舞台で成功しているブラジル人であり、そのような人物の口からブラジル国内のやりかたとワールドスタンダードとの違いを指摘してもらうというのは、意味があることなんでしょうな。

日本の新聞が、海外で成功している日本人に、いかに日本が遅れているかを語らせたがるみたいな。それをそうだそうだと喜ぶ読者もいる。世界共通。

それにしても、あらためてエドゥはいつの間に成功してたんだよ!という気になる。いまや、ミケルとともに、アーセナルをここまで連れてきた立役者。もちろんまだアーセナルは成功はしていないが、かぎりなく成功に近づいている。彼らがここまでやってくれるとは、多くのファンだって思ってなかったはず。

このエントリを書くにあたって、弊ブログの過去エントリをざっと読み返してしまったが、エドゥもミケルもここに来るまでにはかなり苦労があった。

エドゥのこれまでとアーセナルがエドゥに期待するもの | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

史上最悪レヴェルの危機的状況のなか、AFCテクニカル・ダイレクターのエドゥが語ったこと | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

エドゥとアルテタ、アーセナルFC再構築のプランのなさへの懸念 by ティム・スティルマン | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

エドゥのロングインタヴュー。戦略とスクワッドバランスについて語る「批判は選手全員がフィットするまで待ってほしい」 | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

でも、こういう苦労も、すべて糧になっているとすごく思う。ミケルは完全にルーキーであり、エドゥもヨーロッパでの経験不足はずっと疑問視されていた。ここまでの失敗や挫折もすべて経験として消化し、ちゃんとそのつぎに生かされている。試練を乗り越えるたびに力強くなっている。

ぼくらは、クラブとチームの全員の成長ストーリーを目の当たりにしているのだ。

現実だが、まるで誰かがつくった物語みたいである。

 

おわり



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