hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Behind The Scene

エドゥのこれまでとアーセナルがエドゥに期待するもの

おととい、アーセナルFCが公式にエドゥ(41)のテクニカル・ダイレクター就任を発表してから、各メディアでいろいろな紹介記事や分析記事が書かれていた。

インヴィンシブルズの時代にアーセナルでプレイしていたことを知っているひとはもちろん多いと思うが、それ以前・それ以降の彼のことはそれほど知られていないのではないか。

エドゥの選手時代、ディレクター時代の足跡、それと彼の仕事や彼への期待についてまとめてみたい。



エドゥの来歴

まずはエドゥこと、エドゥ・ガスパールがどのようなフットボールライフを歩んできたか。おさらいしてみよう。

アメリカ人ライター?のZach Lowy氏のツイートが簡潔にまとまっていたので、ありがたく引用させていただこう。Respect。

ガスパールは、5才のときコリンチャンスでプレイキャリアをスタートさせた。サンパウロで育った彼には自然なことだった。ブラジレイロを2度勝ち、またクラブワールドカップも取った。2000年には彼はアーセナル移籍する見込みだった。しかし彼のポルトガルのパスポートがフェイクだと判明して、一時保留となった。

彼はバルサからのオファーもあったが、アーセナルに加入することを選んだ。2003年のインタヴューでその理由をこう明かしている。「彼らのビジネスのスピードのおかげだ」。しかしながらパスポートの問題は残った。彼はEUのパスポートを得るためにイタリア人の血をひく父親に頼らねばならなかった。

彼のアーセナルでの始まりはひどかった。そのとき英国のシーズンはすでに半分は終わっており、ガスパールはブラジルのホリデイシーズンから戻ったばかり。そしてプティはバルセロナに去っていった。彼はしばらくまともにトレイニングもしていなかったのに、ヴェンゲルはすぐに彼を起用し、そしてプアなパフォーマンスに終始することになった。

彼はイングランドに渡ってたった一週間でケガまでしてしまい、彼の姉も自動車事故で亡くなってしまう。総じてアーセナルでの彼はケガがちだった。しかし、それでも彼はヴェンゲルのお気に入りのひとりでありつづけた。

そして彼はヴァレンシアに移籍した。最終的にコリンチャンスに復帰するまで、そこでも彼はしばしば故障した。

32才のとき、彼はリタイヤを決意。アメリカからサスティナブルな床材を輸入する会社TimberTechを創業した。床材はリサイクルプラと木材の混合だった。「耐久力はプラスティックで、風合いは木だ」

リタイヤして数週間後、(コリンチャンスの)クラブプレジデントのAndrés Sanchezは彼にディレクター・オブ・フットボールにならないかと声をかけてきた。彼はコリンチャンスを完璧にオーヴァーホウルした人物で、クラブを下位からトップディヴィジョンに昇格させたばかりだった。彼は、パオロ・ゲレーロ、パウリーニョらを連れてきて偉大なチームを生まれ変わらせた。

結局コリンチャンスは、彼の最初のシーズンで国内タイトルとクラブワールドカップを勝ち取った。エドゥはマルコムのようなアカデミーからのユース選手の起用を後押しした。彼はクラブにおける長期での健全性を進歩させたのだ。また彼はガブリエル・マルティネリの獲得にも尽力し、マルコムと同じ道を歩ませようとしていた。

やがて、エドゥとチッチはコリンチャンスを去ることを決めた。チッチはブラジルNTでドゥンガの後任マネージャーにオファーされていた。

彼らはブラジルNTでほんとうにうまくやっていて、2007年以来のコパ・アメリカ優勝に導いた日曜のあと、エドゥはブラジルNTでの冒険を終えた。

エドゥ・ガスパールに関する(短くはなかったが)このスレッドでの結論。独学で3つのことばを操る漢であり、しかしそれより重要なことはビジネスのことばを知っていること。アーセナルは宝石を手に入れたよ。

床材のプラと木の話はそのあとに出てくる何かのエピソードの伏線かと思ったら何も出てこない。プラの耐久性と木の見た目。なんだったんだ(笑い)。

さて、ここではアーセナル時代について、あまりポジティヴな調子で書かれていないが、エドゥがフットボーラーとしてもっとも輝いた時期が、この2001-2005のアーセナルにおける4年半だったという。

03/04のインヴィンシブル・シーズンには、ヴィエラとシルヴァのバックアップでありながら30試合に出場。ファンにはインヴィンシブルズの一員として記憶されている。

また興味深いのは、ここには書かれていないがいまから約10年前、ヴァレンシアでの選手時代にはウナイ・エメリの下でプレイしているということ(2008-2009)。彼らはお互いを知っている。

そしてコリンチャンスでのディレクター・オブ・フットボール。

選手としてはコリンチャンスを最後に32才でリタイヤしてから会社を起業、そのすぐあとにはクラブのディレクター・オブ・フットボールになっているということは、30代なかばでいきなりブラジルのビッグクラブのDoFという要職に就いたことになる。シニア選手としてクラブでプレイしながらも、なにかマネジメント方面で能力を発揮できるような素質を見せていたのだろうか。

とにかく、エドゥはコリンチャンスで2度の国内タイトルにCWCタイトル、つい先日のブラジルNTでの2007年以来のCAタイトルと、チームのマネジメント職として十分な結果を出した。

アーセナルFCにとってクラブ史上初めてというテクニカル・ディレクターだが、AFCがテクニカル・ダイレクターに求めるキャラクターには3つの要素があったと云われていて、

  • アーセナルFCとの親和性(できればクラブ出身者)
  • トップレヴェルでの経験
  • エメリとの連携

この条件のどれも満たす人材として、アーセナルがエドゥに白羽の矢を立てたことはまったく理にかなっていた。

以前に一度はエドゥがこの仕事のオファーを断ったという報道もあったが、1年越しで粘った甲斐があったのかもしれない。サンレヒも「最後の重要なピース」と大きな期待を寄せている。

それともちろん、ラウル・サンレヒとヴィナイ・ヴェンカテシャンが主張するアーセナルの「トランジション・チーム」。アカデミーからファーストチームへの風通しをよくするうえでもエドゥの存在はキーになるはずで、エドゥがマルコムやガブリエル・マルティネリで若手の登用に実績があることはここでも言及されているとおり。

マルコム獲得の噂について

ところでそのマルコムについて、このスレッド(ツイート)では、つづけて触れられている。

さいごにひとつだけ。マルコムについて。チッチとエドゥはブラジルとコリンチャンスで一緒に仕事をしていた間柄だ。マルコムが18才でボルドーに移籍したとき、チッチはあと1-2年はクラブに残ってほしいと頼んだ。しかしマルコムはそのときもう移籍を決断していた。

チッチは涙目でこう語ったという。「キミはわたしがとても大切している息子だ。なぜ大切かってわたしはキミの出自を知っているからだよ」

マルコムはVila Formosaのヤバイ地域で育った。父親は彼が子どものころにいなくなってしまい、彼は母親を助けたがっていた。「わたしはいつだってキミの味方だ」とチッチは語った。

マルコムについてはバルセロナの要求(€40M)をアーセナルはおそらく満たせず、現時点ではエヴァートンやToTが獲得する可能性が高いように思われるが、エドゥがクラブに来たことで本人がアーセナル移籍を希望する可能性もあるのだろうか。

事実、そういった厳しい状況があるにも関わらず、サンレヒがバルサとなんとかローン+買取オプションや分割払いなど、苦しい条件ながら、いまも熱心に交渉しているという説もある。見込みは少しでもあるのかもしれない。

最近見かけた情報によるとマルコム本人はあくまでFCB残留を希望しており、移籍を検討するのはネイマールがきたときだけだとのこと。

ザハの獲得が絶望的になっているいま、もしこの夏にマルコムをローンで獲得できればアーセナルにとってはかなり大きな意味がある。エドゥが一役買ってくれるようなことがあればいいのだが。

TDエドゥの役割。元インヴィンシブルの「闘魂注入」に期待

アーセナルは近年ではかつてない苦境のときにいる。

クラブの予算も限られ、高齢・高給選手を抱えながら結果も出せず、3年連続でELを戦うという状況はアーセナルのようなビッグクラブにとって理想的ではない。

もっとも危機感を覚えているのはアーセナルFCのボードメンバーたちのはずで、アーセン・ヴェンゲル以降のアーセナルFCはクラブの運営ストラクチャの再構築という抜本的大変革のときにいる。アーセナルの長い歴史のなかでもこれは一大プロジェクトだろう。

そんななかで新たに指名されたテクニカル・ディレクター。エドゥの仕事内容、現在のアーセナルFCが彼に期待していることとはなんだろう。

エドゥの仕事=選手リクルート

エドゥのおもな仕事は選手リクルートだと云われている。

もちろん、短期的には南米方面でのリクルート活動の拡充や、若い選手の発掘と育成に高い期待がある。

とくにブラジルNTで働いていたことは、ブラジルでのスカウティングにおける強力なパイプが存在するということで、ブラジルやアルゼンチンなどあまり南米方面にアンテナが高くなかったアーセナルの今後にはかなり期待が持てる。

いまのアーセナルが直面している大きな問題のひとつは、あきらかにスカウトやリクルートメントで、少なくともミズリンタット以前では費用対効果という意味でも、選手選定や契約条件などで数々の判断ミスをやってきた。そういったことがクラブにじわじわとダメージを与えているように思える。

エドゥがミズリンタットに劣らない選手リクルートおよび契約マネジメントで能力を発揮してくれることを切に願いたい。

以前話題になっていたリヴァー・プレイトの21才MFエゼキエル・パラシオス(Exequiel Palacios)について、最近噂を聞かないが、アーセナルはラムジー(B2B)のリプレイスメントについてはいまも継続して追っている最中だというので、彼とのリンクにエドゥが一枚噛んでいるなら、またどこかの時点で名前が浮上するかもしれない。

もし彼のような、マルティネリよりもっと経験ある南米選手が来るようなことがあれば、まさにエドゥ効果といっていいのではないだろうか。

移籍ウィンドウでの活動方針への異議?

選手リクルートにおいては、実際の現場での活動だけでなく、移籍ポリシーといったハイレヴェルのクラブ政治についても口を出すのかどうか注目されている。

もっとも大きな現状の課題は、もちろんオーナーからのクラブへの投資についてだ。

なぜ冬にデニス・スアレスのローンだけで節約したはずの補強予算が、夏になってもまだ£45Mなのか。ミッドテイボークラブがつぎつぎに散財しているのを横目で見ていなければならないのか。

KSEからのオーナー投資がないことによる影響は、アーセナルの移籍ウィンドウでの活動におけるほとんど元凶のようなものでもあることは誰でも知っている(それだけじゃないけど)。

折しも、PLでは今月からアーセナルの移籍プランを苦しめてきたSTCCルールが廃止されたばかり。いま選手に投資をすることはFFPに抵触するからと「いい訳」もできなくなった。

Arsenal hope Edu’s return instils invincible ethos at a critical stage | Amy Lawrence

『The Guardian』でエイミー・ロウレンスは、エドゥが今回のUSツアーでスタン・クロンキ、ジョッシュ・クロンキとコネクションをつくることになるだろうと書いている(来週火曜にはKSEがオーナーシップを持つMLSのコロラド・ラピッズと対戦)。

果たしてKSEによるクラブへのサポートのやり方は正しいのか。クラブが稼いだ以上の金は使わないという「自律経営」の悪影響はないのか。

もちろんアーセナルのTDを引き受けたということは、そういったオーナーシップ事情についてもある程度は理解しているだろうが、エドゥが選手リクルートメントに責任を持つということは、補強予算は彼の評価にも決定的な意味を持つ。彼がそこに必死になる理由はある。

KSEが100%株主でもはやプライヴェイトクラブになっているAFCにおいて、オーナーシップで何かを変えることはかなり難しいはず。

しかしエドゥにはぜひ正論でこのオーナーシップに風穴を開けてほしい。Spend some fucking moneyってやつだ。

インヴィンシブルズの経験

スポーツ面での進歩、選手たちのパフォーマンスを最大化するというのもテクニカル・ダイレクターの重要な仕事だろう。

これはウナイ・エメリとともに取り組むことになるが、選手たちにより大きな絵を描いて見せて、どういうヴィジョン・プレイスタイル・メンタリティでパフォーマンスしていくかを監督すること。

そこでファンにも大きな期待を持たれているのが、やはり彼にインヴィンシブルズ時代の経験を活かしてもらうことだ。

彼はもはや伝説的なPLの「無敗優勝」という偉業を成し遂げたインヴィンシブルズのメンバーとして当時の空気を直接体験している人材のひとりで、クラブにとってはやはり貴重な存在だ。

このツイートは、前述のエイミー・ロウレンスの著作の一節を紹介したもののようで、ロウレンス本人もこのツイートに反応していた。

エドゥがインヴィンシブル当時のティエリ・アンリの「ウィニング・メンタリティ」にいかに感心していたかがわかる一節となっている。彼がDoFとしてどんな選手をチームに欲しがっていたか。それがよくわかる。

エドゥ「わたしはいつも云っているように、当時のティエリが持っていたようなメンタリティを(コリンチャンスの選手に)持ってほしいんだ。彼はいつだって勝ちたがっていた。どの試合、どのトレイニングでも。すべてにだ。トランプで遊んでたって勝とうとしてたよ。

どの試合にだって勝つために、スクワッドにみんなをプッシュする選手がいれば、自分たち自身をプッシュする選手がいれば。それは特別なことだった。

ときどきは少し重いことだってある。でもそれもティエリだ。勝つためにプッシュしてくれるひとがいるってことは、スクワッドには大きな意味があるんだ。彼のメンタリティは信じられないくらいだった。もしどんなチームにもティエリがいたら、そのチームは強くなるに違いない。

わたしはコリンチャンスにもつねにそういう漢がいてほしいと思うんだけど、そういう選手はなかなかいない。天性の才能があったという意味でも、たくさんのゴールを取れるという意味でも、ティエリは完璧なフットボーラーだった」

こういった強いキャラクターはまた別の選手にも波及する。

レーマンは選手たちにトレイニングでもベストを出すよう鼓舞した。キーオンは全員の聞き役になっていた(everybody’s ear constantly)。キャンベルはヴィエラの動きにつねに注意深くなった。ベルカンプは自分の(クリエイティヴな)仕事にも多大なインテンシティで取り組んだ。彼はみんなの模範になった。パーラーはフィジカルの限界まで自分をプッシュした。ジルベルトはスーパープロフェッショナルになろうと努めた。ユングベリ、コール、ロウレン、そしてトゥーレはチークのようにタフなコンペティターになっていた。

アンリは負けるのが大嫌いだった。ヴィエラはアームバンドをつけて堂々と立ちはだかり、どんな相手もこれは一筋縄ではいかないと理解した。幸運にもそんな選手ばかりだった。

(※訳はまた自信ないゴメン)

いまのアーセナルに彼らのようなメンタリティを持った選手はいるだろうか。

「ウィニング・メンタリティの欠如」。これはアーセナルが長らく指摘されつづけていることだ。

選手全員だけじゃなく自分自身も強烈にプッシュして、どんな試合でもつねに絶対勝つつもりで戦う戦士。自分が責められるリスクを顧みず、誰かを問い詰めるような選手がいるか。鬼軍曹がいるか。

それがいまのアーセナルが勝つチームになるために決定的に欠けている要素でもある。

ぼくがアーセナルの家族的な雰囲気が伝えられるたびにちょっとした違和感を感じているのは、チームにはこういう憎まれ役も必要だし、なんならいまトレイニンググラウンドに必要なのは笑顔よりも緊張感なんじゃないかと思うからだ。

もちろん、時代は変わったし、もはやそういう価値観は古いという考え方もあるだろう。いまどき神社の境内でうさぎ跳びとかやるわけないし、水を飲まずに校庭10周なんてやらない。歯を食いしばってマネージャーの張り手に耐えるなんてどんな昭和だと。あれふつうに犯罪だろと。

でもアーセナルのチームでの和気あいあいとした雰囲気を見ていると、そういうメンタリティも必要なのではないかとつい思ってしまう。とくに結果が出ないときは。

エドゥがいまのチームにウィニング・メンタリティ=闘魂をもたらしてくれること。そこにはかなり期待したい。

まずは強烈なリーダーシップをもったキャプテンの指名。キャプテンが5人いますなんて生ぬるいことを云ってたらだめなんじゃないかな。

 

ということで、エドゥにはアーセナルに大きな変化をもたらしてもらいたい。

苦境のなかもがき苦しむアーセナルにとって、いまがとりわけ重要な時期であるからこそ、新テクニカル・ダイレクターへの期待は大きい。

エドゥがアーセナルを正しい方向に導いてくれることを願ってやまない。

以上



Leave a Reply

Your email address will not be published.