試合の論点
アーセナル vs クリスタル・パレスのトーキングポインツ。
All the key moments from our 2-2 draw with Crystal Palace in the Premier League 📺 pic.twitter.com/uhz30mSv9H
— Arsenal (@Arsenal) April 23, 2025
ぼくたちはお仕事完了できない。今シーズン13回めのドロウ
開始3分にフリーキックから、いきなりキヴィオールがゴールを決めて始まったこの試合。イプスウィッチでの快勝からのこの試合という流れで、ちょっとした楽勝ムードもあったように感じる。
パレスが、アーセナルのバックからのプレイに、わりとアグレッシヴなプレスをかけてきても、アーセナルは落ち着いてボールをまわすなどかなりのプレス耐性があって、それもCLQFで一皮むけたチームの姿のように思えたものだ。
が、ホームでいきなり1-0になり余裕ができすぎてしまったのか、あるべき試合のコントロールがない。その後、パレスの優勢も許すなどオープンな展開に。
そして27分には、コーナーキックから失点。ボックスの密集を避けたWhartonの正確なボールを、Ezeがダイレクトでズドン。たしかに、あれは100回試して数回決まるか決まらないかのショットで、アーセナルの守備の過失はあまりないように思われる。が、問題はその時点ですでにパレスは複数のコーナーやシュートがあったこと。彼らに攻撃をさせすぎていただろう。
このとき必要だったのは、コントロール。リードしたチームだからこそできる振る舞いが必要だった。
気になったのは、7分のオーデガードのパスミス。めずらしく彼らしくないのをやったなあとメモっておいたのだ。あれはなんだかその後の伏線だった。この試合を通して、チームのなかに集中力の欠如は感じられた。
エンケティアのビッグチャンスが1-1になった直後というのもある。ホームチームがリードを追いつかれて発奮するよりも、現状維持か、あるいは相手の勢いを許してしまっていた。
とはいえ、そのような状態でもPLのミッドテーブルチームとなら互角以上に戦えるのがこのチームであり、42分にはトロサールのゴールで再度リード。このまま試合を終わらせるべきだった。相手だって、エミレーツで2-1敗けなら十分想定していた結果のはず。
しかし、後半もアーセナルは前半のようにパレスの攻撃を許し、いくつか危ないシーンもあったりした。
そして最後のアレである。83分。サリバのありえないようなエラーからの失点。メガテン。Matetaはでかくてうまい。
サリバは、CLレアルのセカンドレグでもやらかしていて、この3試合で2回も同じような致命傷レベルの個人エラーをやってしまっている。
思えば、どちらの試合も彼が集中力を切らす理由はあるにはある。CLのあの試合はすでに勝ち抜け濃厚だったし、今回はPLは事実上終わっていて勝負への緊張感は薄かった。だが、プロとしてそのメンタリティはいかんでしょう。
この試合は、ほんとうにがっかりな引き分けだった。
今シーズンのアーセナルが、PLでリードしてから追いつかれて試合を終えるのは、これで9回めという。
9 – Tonight was Arsenal’s ninth Premier League draw in a match they were leading in this season, two more than any other side. It’s the most by a team in a season since Spurs in 2007-08 (also 9). Succumbed. pic.twitter.com/lhM9HjhwyV
— OptaJoe (@OptaJoe) April 23, 2025
われらはここまでPLでのドロウが13と、そもそも極めて多い。これより多いのはエヴァトン(14)だけ。そしてこのドロウ13のうち、リードしてからドロウで終わった試合が9で、そこでなんと18ポインツを落とした計算という。いまのリヴァプールとの差が12ポインツ。これがいかに大きいか。
ちなみに、この今年落としたポインツは18は、去年と一昨年を足したよりも(17)多いという。今シーズンのアーセナルをはっきりと特徴づける傾向だ。レジリエンスはどこへ行った?
試合後のアルテタが述べたように、これにはいろいろな理由があるんだろう。レッドカードで10人になった試合もあるし、ケガ人もハンパない。直近のエヴァトンやブレントフォードのような試合もここに含まれる。
だが、ボスも認めるように、それを防ぐことができた試合もある。今回はその典型的なひとつだろう。ひとりのDFが、一度ミスっただけで2ポインツを失った。
今シーズンのPLタイトル争いで明暗を分けたのは、ほとんどドロウの数だ。リードを守る、試合を殺す、チームとしてそうした成熟した振る舞いができるかできないか。
一年を通してずっとベストでプレイするのは無理なので、ベストじゃないときも、きっちりお仕事は完了させる。チャンピオンにはそれが必要だし、それがプロの仕事というものだろう。
今後のUCLでは、これをやれば命取りになる可能性が高い。
今回の試合でやった、集中力の欠如、個人エラー、これを教訓に活かすしかない。勉強代は高くついたが、CLで成功できるなら安いものである。
ラヤのポジショニングが狙われた?
パレスのボスのOliver Glasnerのラヤに関する試合後コメントがちょっと話題だった。
OG:昨日、われわれは選手たちに相手の準備として示して見せたんだ。ダヴィド・ラヤの高さだよ。
あの状況があったのは、試合のなかで3回めだった。最初のはJustin Devennyが気づいていなかった。それはいい。前半のAdam Whartonが蹴ったのは、トーマス・パーティに当たってしまった。あれはかなり危険だっただろう。
そして、そのあと3回めの機会が訪れた。JP(Mateta)が素晴らしくフィニッシュした。
要するに、ラヤのポジションを事前に研究していて、彼がゴール前にいないときを狙おうとしていたと云うのですな。試合のなかで3回もその機会があったと、相手のボスが具体的にそれについて言及してくれているのは、親切心なのか。
これについては、試合後のアーセナル界隈でも議論になっていた。CLレアルでもサリバがやらかしたとき、ラヤのいないゴールは無人状態だった。今回の失点もふたりはセットだ。
しかし、このことを憂えるファンはほぼいなかったと思う。だって、そんなことはわかりきっているから。
ラヤはバックラインに入ってアウトフィールド選手のように振る舞うことで、バックからのプレイに安定をもたらしているし、彼のようなボール扱いのうまいGKだからこそ、それができる。それにより、基本的にアーセナルの後方でのパス回しはかなり安定し、人数で有利になることでよりプレス耐性も増す。恩恵は十分。
ただし、DFのひとりが危険な位置でボールを失うような想定外のことが起きると、ゴール前にいないGKには対処ができない。リスクとリウォード。アーセナルは十分プラスを得ているだろう。ラヤがふつうのGKのポジショニングじゃないからといって、脆弱な部分もそこまでさらしていない。われらはもっとも失点が少ないチームなのだから。
そもそもこの問題はアーセナルに限ったことではなく、GKをそのように使うチームでは、当然負うことになるリスク。ときに弱点になることも、わかってやっている。
だから、ラヤのロールやポジションは、PSGでは(ロングレンジのシュートなどに)より気をつけようというくらいでよいと思う。
彼は、それよりもペナルティの練習をしたほうがいいんじゃないか。PSGでもその機会がないとはいえない。相手が蹴るだいぶ前に動いてしまうやつ。あれはよくない。
ヤコブ・キヴィオールのステップアップ
ゴール1。プレイに自信も感じるし、どんどんステップアップしているなあ。
あのいきなりのゴールは、相手が誰も彼のことをマークしておらず、完全にフリー。まさに伏兵。ゴール前に殺到するアーセナルのアタッカーたちの顔ぶれをみれば、たしかに相手マーカーたちが最高プライオリティじゃないと思ってもおかしくない。存在感的に。『スラムダンク』でいうところの小暮くんみたいな。見くびり。
この日の彼はゴールだけでなく、全体的なパフォーマンスも素晴らしかった。SofaScoreでは、彼がMOTMである。
エディのビッグチャンスをブロックしたり、そのほか印象的な守備もあった。
それとパスは115/120 (96%)を記録。サリバはもうちょっとよかったが、これは素晴らしい正確性。
守備も固く、ゴールも決めてとなれば、これはもうビッグキヴィ。
ところで、試合のプレビュー記事にあとから追記したので、読んでくれていないひともいるかもだが、キヴィオールが試合前のインタビューで、アーセナルでの将来を示唆するようなことを云っている。
“We know that the Premier League is one of the strongest leagues in the world and this level is definitely very high. If we fight for the third season to win the Premier League, it also means that we are at a very good level and that we are really close to winning this league. This is another good motivation to fight for victory in the next season.”
太字部分。キウイが、来シーズンのことを語っている……だと……。
もちろん、彼はガブリエルが負傷するまではまともなプレイ機会が得られず、今シーズンかぎりで移籍する可能性が高いひとりと思われている。野心ある若者なら、ビッグクラブでベンチにいるよりも毎週プレイできる機会を求めるもの。彼が移籍を望むならクラブも引き止められまい。
もし、彼が来年以降もアーセナルでのチャレンジをつづけてくれるなら、素晴らしいじゃないか。※もっとも現在とある若いCBのうわさがかなり出ているが
残りの決定的に重要な試合で、彼が存在感を見せつけるところを期待せずにいられない。
この試合については以上