試合の論点
ベンフィカ vs アーセナルのトーキングポインツ。
オバメヤンが決定的なミステイクをやる
絶対に決めてくれなきゃで、思わずあたまを抱えたくなるようなやつ(xGは0.49)。
アレが決まっていれば2-1。1-1で終わるよりは、ずっと大きなアドヴァンテッジだった。
でもしょうがない。どんなトップストライカーでもミスをするときはある。こんなときは、もっともっとたくさんのチャンスをつくれなかったことを悔やむべきだろう。
だが、去年のEL敗退もオバメヤンがBCを外したのが、敗退の直接的な原因になってしまっていた(ふつうに決めていたら勝ち抜けだったという意味)ことを思い返すに、彼にはこの試合のなかで挽回のゴールを決めて気持ちをリセットしてほしかった。残念である。
セカンドレグでは、彼ひとりにあまり大きなプレッシャーがかからねばよいが。
We deserved better and i should Score couple goals today but still one Game to Go we keep going. Well done @BukayoSaka87 🌶 pic.twitter.com/geuDwU23N9
— AUBA⚡️ (@Aubameyang7) February 18, 2021
つぎだつぎ!
サカが輝きつづける☆彡
またまた得点に関与。ていうかゴール。
10+ – Since the start of last season, Bukayo Saka (19y 166d) is the youngest Premier League player to have reached double figures for goals (10) and assists (16) across all competitions. Hope. pic.twitter.com/cQMN2bOKvx
— OptaJoe (@OptaJoe) February 18, 2021
エンバッペやハーランドのような超人は別格としても、そのつぎのヤングタレンツグループの先頭集団にはちゃんといるという感じ。こんな選手がヘイルエンドから生まれてくるとはなあ。
全力で守らないと。
今回は、ヤン・ヴェンルトンゲンというやからがサカに何度かキツく当たっていてヒヤヒヤしてしまった。トッナムの血がそうさせるんですかね?
ゴールはVARで覆らないでほんとうによかった。
オーデガードのヴィジョンとパッシングスキル
初スタートしたリーズでもそうだったが、彼はほんとうに非凡なパスセンスを持っている。並の選手には見えないものが見える卓越したヴィジョンとそれを実現するテクニック。いまのアーセナルにはなかったクオリティ。
とくに目立つのが、DFの裏のスペイスへのパスだ。
彼はチャンスがあればそれをいつでも狙っている。リーズでもやっていたし(味方と意識が合わなかったが意図はわかった)今回もやっていた。
これまでのアーセナルの攻撃との違いを図にしてみたよ。
MFからウインガーへのパスがこういうパスだと、DFに奪われるリスクは少ないが、いつでもDFの眼の前でのアクションになる。DFの注意はそのままで、かたちは崩れない。
それが、オーデガードはいつもDFの裏へのパスを狙っている。
サカの得点は彼のプリアシストで、セドリックへのスルーボールはまったくこのかたちだった。
DFのあいだの狭いスペイスを通すのだから、パスを防がれる可能性は当然高い。また味方がそのボールに追いつく程度にはパスの強さを加減しなければならない。DFが触れない程度には強く、味方が追いつける程度には弱く。絶妙のコントロール。
DFはこのボールを出されると、パニックになる。裏のスペイスに向かって振り返らねばならないし、ゴール前で相手に背を向ければ相手から視界も外れる。そこでかたちが崩れる。混乱が起きる。
シンプルなようでいて、この背後のスペイスをいつでも狙おうという選手がいまのアーセナルにはいなかった。
このプレイには、瞬時にパスコースを見つける感覚や、ひらめきといったセンスが要求される。この2試合だけを見ても、彼はこれを狙っているし抜群にうまい。こういうプレイをわれわれはクリエイティヴだと呼んでいるのだよね。
最近のクリエイティヴィティ不足が叫ばれていたアーセナルでは、攻撃はいつでもDFの目の前で行われていた。つぎに何が起きるか予測されているとおりにしかプレイできなかった。そのことが、攻撃の可能性・効率を著しく阻害していた。
ファブレガス~カソルラ~エジル以降でチームに決定的に足りなかったものが補われている。渇きが癒されているという感覚がある。
ところで、オーデガードといえば、ESRと2試合ともにプレイしたことで、ファンのあいだではふたりのNo.10についての比較も議論になっているが、それはまた別の機会にでも書こう。ここで触れておきたいのは、No.10タイプという同じカテゴリに属する選手とはいえ、ふたりのプレイスタイルはだいぶ違っていて、ピッチ上での共存はおおいにうまくいっているということである。
ベンフィカの印象とセカンドレグ展望
ベンフィカがどんなチームでどんなプレイをするかイメージがつかめた。
今回のベンフィカの基本システムはバック3(バック5)の3-5-2。
守備に重心&カウンターアタック志向で、ポゼッションをすれば完全に足元パスの連続という。前進するよりもボールを失わないことのほうが重要みたいな、久しぶりに観た気がするなつかしのバルセロナワナビースタイル?(笑い)。あの戦いかただと、メッシやイニエスタがいないと決定的なチャンスはなかなか生まれない。それでも、アーセナルのMFがひとり、ふたりとパスでかわされると危険な攻撃になるときもあったので、あまりばかにはできないが。
アルテタも指摘していたように、彼らは基本的にハイラインであり、背後を狙われやすい戦いかただが、DFたちのラインの統制が取れていることも非常に印象的だった。アーセナルがオフサイドを取られるシーンのリプレイでは、複数のDFたちのラインがぴったり揃っていたのが何度も見られた。
ただし、彼らが自分たちで今回の試合をレヴューするなら、アーセナルのようなチーム相手にはやはりハイラインすぎたと反省をするかもしれない。ロングボール1本でオバメヤンとDFが1 v 1になるシーンが何度かあったが、いちおう事なきを得るとはいえ、一歩間違えただけでBCになる。彼らがCBにどれだけ自信があるのかはさだかではないが、ふつうはほとんど自殺行為である。セカンドレグで修正してくる可能性はある。
それにしてもオフサイド10コはいくらなんでも取られすぎである。アーセナルの拙攻(パスの出し手と受け手の合わなさ)も理由ではあったろう。
Arsenal now caught offside 10 times – the most in a game since November 2013.
— Orbinho (@Orbinho) February 18, 2021
またGKから始まるプレイでは、ハイプレスのなかバックからショートパスでつないでいこうなどと小賢しいことは一切考えず、ロングボール一択。男は黙ってロングボール。PLでもほぼ見かけなくなっているプレイスタイルも新鮮だった。ELのグループステイジでもあれほど割り切ったプレイは観なかったような?
彼らは、全体的にリスクをかけずにプレイするタイプのチームだという印象をもった。対アーセナル用のプレイかもしれない。
セカンドレグに向けての攻略法としては、まずハイラインの裏を狙うことはつぎもまたかなり重要になる。オフサイドトラップをやるというのなら、その裏をかく。本来は、オバメヤンやサカのような足の速い選手がいて、ジャカやルイス、ガビなど精度の高いロングボールを出せる選手がいるチームにはカモネギのはず。おいしくいただかないと。
また、今回とくに前半、アーセナルの速いミドフィールドでのボールの動きには、彼らはついていけていなかった。オーデガードやESRの少ないタッチを織り交ぜたテンポの速いチームプレイはかなり有効と思われる。
そして試合へのアプローチとして大きな要素は、ファーストレグはドロウで十分だった彼らも、セカンドレグでは得点が必要になる(※得点なしに勝ち抜けはない。最低でも1点)ということ。今度は、アーセナルが彼らの攻撃への積極性を利用すべきときだ。今回もカウンターの機会は何度もあったが、セカンドレグこそはそれで相手の息の根を止めたい。
その他試合について
- オーデガードはタックル成功もチームトップ(4)。チーム全体で8つしかないという問題もあるが……。彼はCM(No.8)としてもっと深いエリアでもビルドアップに関与させたいという気がする
- ESRのハンドはしょうがない
- 前半の1分の追加タイム、とくに問題なく試合を支配してさあ終わろうかというとき、いきなりジャカの不用意なパスから大ピンチに。一瞬ウォルヴズ戦がフラッシュバックしそうになった。彼のポジションならとくに絶対やってはいけないプレイである。ジャカとルイスは同じカテゴリで、彼らはどんなに称賛されても必ずどこかで帳尻を合わせてくる
- 全体的には無難に試合を終えたとは思うが、ベレリンが心配。13分のシーンでは単独でボールを持ち上がっていくも、あっさり相手に奪われてしまった。全盛期の彼ならばあんなときスピードで仏恥義理だったはず。大怪我から復帰以降は、いかにもエナジー不足というふうに見える。あれではRBがセドリックに変わっても驚かない
- マルティネリは最近はサブからで波に乗り切れず。彼もまたケガからの回復中という見方もできるが。フォームを取り戻させたい
- BT Sportsの中継で無観客試合のフェイクノイズに小さくホイッスル音が入っていてストレスがたまった(自分だけかと思ったらArseblogでも指摘されていた)。定期的に聴こえてきたことから想像するに、あれはリアリティを出すために実際の試合の音声をサンプリングして作成していて、ホイッスルの部分まで使ってしまったのではないか。フットボールというかスポーツにまったく興味がないサウンドエディターがつくった疑惑
試合については以上。
つぎはEL R32の結果を確認するので、試合を見る前に見たくないひとは見ないようにしよう。
オフサイド多かったですけど前半の線審の明らかなミスが多くて何かアレで結構水さされましたわ