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【マッチレビュー】20/21UEL SF 1stレグ ヴィヤレアル vs アーセナル(29/Apr/2021)ゲイムマネジメントの代償

試合の論点

ヴィヤレアル vs アーセナルのトーキングポインツ。

アルテタのチームセレクションとゲイムマネジメントに疑問&疑問

今回ESRのフォルス9、あるいはオーデガードとのダブルNo.10。それはどっちでもよろしい。

問題はストライカーがいなかったこと。

ではなく、なぜいまここでそのような「実験」を行ったかということだろう。どんな試合よりも確実性が必要とされる、このシーズンで最大級に重要な試合において。

試合後のプレス会見での質問「セミファイナルは経験を積む場所なのですか?」は、この日のアーセナルのセットアップの矛盾を突くとてもナイス質問だったと思う。

アルテタがアーセナルでこのようなストライカー不在のセットアップで試合に臨むのは、もちろん初めてであり、この試合に向けてこの戦いかたを準備をしていたとはいえ、いつもプレイしているやり方とくらべれば、選手たちは当然慣れてはいなかっただろう。

実際試合の序盤はESRはピッチにいるのか?というくらい消えていた。アルテタは、このシステムが効いていたかどうかは、試合開始早々に失点したので評価できないと述べていたが、それはいい訳ではなかろうか。とても効果的には見えなかった。しばらくは、彼がこれを再度試そうとするとは思えない。

この手のゼロトップといえば、当然最近のマンシティが思い浮かぶわけだが、ESRにデ・ブルイネ役を期待したのだとしたら、それは盛大に失敗していただろう。これを書くのはさすがに少しはばかられるが、ぼくは観ていてちょっと恥ずかしくなってしまった。なんだか、表面的にペップがやっているかたちを真似をしてみただけで、実際のアウトプットは似ても似つかないものだったのだから。

この手のチャレンジングなことは成功すれば、タクティカルジーニアスだともてはやされるかもしれないが、失敗したときの気恥ずかしさといったらない。

今回はとくに「師匠筋の劣化コピー」みたいに云われてしまう危険性もあるのだから、なおさらだ。それにESRがKDBにあこがれていることはみんなが知っているわけで、それなのにこんなふうに注目されたら彼が気の毒になってしまう。

アルテタはなぜそのようなリスクをかけてまでこのようなセットアップで試合に臨んだのだろうか。ある意味ぶっつけ本番である。大胆すぎる。

そんなにエンケティアやマルティネリのCFは信用できないのか。

結局アーセナルのやっつけゼロトップフォーメイションは、相手のCBを楽にしてしまうだけとしか思えなかった。

それと、チームセレクションでは、やはりアーセナルの左サイドにおける、相手選手とのミスマッチが際立っていた。アーセナルの左にいたのはセバーヨスとジャカ。

彼らの右サイドにいたのは、アーセナルも当然スカウティングしていてよく知っているであろうウィンガーのチュクウェーゼと、ToTからのローニーのRBフォイト。このペイスのあるふたりには、平たく云ってセバーヨスもジャカも相当やられていた。

セバーヨスはフォイトのスピードにまるで追いつけず、一度は彼を後ろから引っ掛けてカードをもらい、結果的にセントオフの原因にもなった。

また、開始5分の失点シーンでは、やはりフォイトのドリブルから右のチュクウェーゼにボールがわたり、ボックスに侵入される。そこでは、ジャカに単独での対応を任せられないためにセバーヨスが寄っていき、その結果スペイスが生まれゴールを叩き込まれた。まったくイージーだった。そこもジャカのようなMFをLBで使っている弊害が現れてしまったシーンだったろう。

だが、どちらも相手の右サイドの選手の特徴を把握していれば、何が起きるか想定できたことでもある。

なんならぼくだって、この試合のプレヴューエントリで脚の速い選手にジャカのエリアが狙われる可能性があると書いたくらいだ。フォイトのことはよく知らなかったが、彼はかなり光っていたと思う。後半にハムをやって交代になり、アーセナルはかなり助かった。その自損シーンもちょうど1 v 2になりそうなところで、彼がケガをしなければかなり危なかった。

というように、とくに前半は誰の目にもいろいろな問題が見えていたと思ったのだが、アルテタはなんとHTにひとりも変更しなかった。これにはびっくり。

HTのtwitterを観ていても多くのひとが前半のパフォーマンスに落胆し、選手やシステムの変更を予想(期待)していたので、驚いたひとが多いと思う。

そして57分にセバーヨスが2枚めのイエロウカードで退場。「それみたことか」とたぶん1000万人くらいのグーナーがツッコんだはず。彼が何かやらかしそうな予感はかなりあった。

100歩譲って、この試合でのゼロトップ実験もアリとしよう。ほかのセットアップも。ジャカのLBもいい。それまでの試合では効果的だったのだし。いずれにせよどれかを選んで、どうするかは決めなければならない。

でも、試合中に明らかにうまくいっていないことがあるのだったら、変えなきゃいけない。なるべく早く。今回なら、どう観てもHTがそのタイミングだった。セバーヨスのレッドカードは、ほとんどアルテタの過失だろう。

カードを1枚もらっていて、チュクウェーゼとフォイトのスピードに対応できていなかったセバーヨスOUT/セドリックINで、ジャカを上げてパーティのとなりに移動。それが無難な調整だったと思う。

なぜそこでセバーヨスを続けさせたのか。セントオフは57分。最初のサブを彼にするつもりだったかもしれないが、それは63分だった。アルテタだってどうしようか迷ったのかもしれない。でも、その逡巡した18分の代償のなんという大きさ。勝負を分けるポイントになりかねなかった。そうならなかったのは単純にラッキーなだけだろう。

セバーヨスはELでずっとやらかしつづけている。。

プレス会見でもツッコまれているが、セバーヨスの退場のあと、アーセナルがむしろ生き返ったように見えたことも皮肉に思える。たしかにその後もアーセナルが試合を支配して、ひとり少ないようには見えなかった。

アルテタはひとり退場することでファイトバックが必要になったからとチームのメンタリティの変化について述べていたが、そういう側面はあったにせよ、それだけとも思えない。むしろプレイがしやすくなったんじゃないか。つまり、彼はいないほうがよかったのだ。そもそも彼があそこにいるセットアップはこのチームに合っていなかった。そういう疑いがある。

エイミー・ロウレンスが「アルテタは自分の過ちを認めたくなくてチームを修正できなかったのでは」というようなことを試合後に書いていた。まったく同感だ。ぼくはアルテタはつねづね頑固なひとだと思っているが、その頑固さは身を滅ぼすのではないかと思えてならない。

冒頭にも書いたように、ぼくはこのチームの問題はアルテタが笛を吹いているのに、選手がいっこうに踊らない。基本的にはそれが問題だとずっと思っていた。

だが、今回のような試合を観ると、問題は踊らない選手ではなく、踊らせられないマネジャーのほうが過失が大きいのではないかと思えてきた。

アルテタはよく“best possibility”といういい方をするが、こんなふうに可能性を自ら狭めるようなことをしていては、勝てる試合も勝てなくなってしまう。

今回はほんとうにそんなふうに感じた。

ウナイ・エメリはやっぱり超プラグマティストだった

今回のアーセナルはたしかにまずかったとはいえ、ヴィヤレアルのふたつのゴールズはラッキー成分もそれなりにあっただろう。あんな状況でもゴールにならないシーンなんていくらでもある。

エメリ視点ではまったく理想的な展開だった。

そして、後半ウーナイをとてもなつかしく感じることになった。

HTにはストライカーのパコ・アルカセルに替えて、MFのフランシス・コクランをIN。交代後カメラに抜かれたアルカセルはとくにケガの様子もない。ということは、これは戦術的サブ。この交代にはニヤリとさせられた。

彼は2-0とリードして、残り45分もあるのにもう守りに入ったのだ。

前半にあれだけこだわっていたバックからのプレイもやめて(前半の彼らは非常に上手にそれをやっていたのに)、GKから始まるプレイは基本的にゴーロングの一択。リスクを最小限にしようとプレイ姿勢をシフトさせたのは明白だった。

あー、やっぱりウーナイはウーナイだったと。安心した。

試合後のアルテタは後半は選手を変えずに戦いかたを変えたと云っているが、正直よくわからない。戦いかたを明らかに変えたのはヴィヤレアルのほうで、それによって形勢はだいぶ変わっていったから。彼らはゴール前にドン引きしてカウンター狙いに戦いかたを絞った。アーセナルがボールを支配するのも自明である。

しかし、正直云ってあの流れなら全員オウンサードに引いたとしても、アーセナル相手に失点なしで終わるのはけっこう難しいと思うのだが、それでもエメリというひとはそちらに賭けた。

つくづくアーセナルと合ってないマネジャーだったと思う。

でもヴィヤレアルやセヴィーヤのようなチームにはぴったり。

正直なところ、いまのアーセナルがもしセミファイナルを勝ち抜いても、ファイナルでマンUに勝つ姿はまったく想像できないが(8失点するほうが想像できる)、このヴィヤレアルならもしかしたら……という気はする。

その他試合について

  • 彼らにはカプーとフォイトとふたりの元ToTがいて、トッナムサポーター目線ではかなり痛快な試合だったのだろうと思う。まあふたりともいなくなってしまったわけだけども
  • セカンドレグではセバーヨスとカプーとお互いに失うが、どちらがダメッジが少ないかといえば当然アーセナルだろう。そこだけはよかった
  • アーセナルはセットピースから直接失点するのはひさしぶりでは?
  • ヴィヤレアルはいいチーム。バックからのプレイはかなり落ち着いていてビルドアップの成功率も高そう
  • アーセナルはバックからのプレイの劣化がひどい。ハイプレスに対応できない。以前よりずっと劣化しているように見える。なぜだ
  • そしてレノのロングボールは全然成功しなくてイライラ
  • アーセナルはパスが雑すぎてイライラ
  • サカのアレはまあアレだ。うまいことやった。あれは相手のDFは大げさに関与してないアピール(両手の平を見せるジェスチャ)しないといけないやつ
  • パーティのショット(笑えない)

この試合については以上

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

10 Comments on “【マッチレビュー】20/21UEL SF 1stレグ ヴィヤレアル vs アーセナル(29/Apr/2021)ゲイムマネジメントの代償

  1. アルテタも学んでるところでしょう。それを待てるかですね。

  2. 奇策&エメリに負けるのはさすがに応えます。セカンドレグに巻き返してね

  3. この起用は批判する人多いだろうなあ。ただアルテタのサッカーは元来こういう傾向が強い。奇策というよりも、相手と状況で変えただけという気もする。

    とはいえ結果としてストライカーを削ったほどのメリットはなかったと思う。2列目の突破力に期待したんだろうが、サカもウーデゴーアもあまり良くなかった。

    いきなり失点して、2点目のコーナーはひどいミス。加えてあの退場。しかし相手のレッドまでの絶望的な時間帯に、あくまで強気にやったからこその1点だったと思う。あそこで投げてたらシーズンが終わるところだった。

    シーズンもこの時期になると、戦力や戦術の面でもう上積みは期待できない。でも一貫して90分やり続けるという点では、このチームはもう仕上がってると思う。僕は正直ここに間に合うと思ってなかったが、ギリギリそれだけは間に合った。悲観する必要はないと思う。

  4. いつもありがとうございます!
    本ブログを読むと、ゲームを観てのモヤモヤがいつもスッキリして非常に助かっています!
    モノのたとえも秀逸で分かりやすくまさに言い得て妙!と思いながら楽しんでいます。
    そーですよねー、アルテタは結果を最短距離で狙ってて、選手の信頼を得ることはその必要条件ではなさそうに見えますよね。。今シーズンの初期ぐらいまでのように結果がでれば信頼もついてくるでしょうが
    結果が出ないときこそ選手の信頼が必要だとは思わないんですかね。。
    私の好みが結果よりも人情味なもんですからこんなこと思っちゃいますが、
    アルテタがもうちょっと人情味もってくれたらだいぶいい感じだと思うんですけどね。
    その辺がヴェンゲルとは対照的だなぁと思いつつ、交代が遅いところは似てるなぁと思いました。笑
    その遅い理由は異なりそうですけど。
    駄文を長々と失礼しました。また次回も楽しみにしています。

  5. こりゃまたひっでえ試合でしたね。
    個人的にちょっとフォーメーション試合毎に弄りすぎじゃないですかね?
    このチームのベストフォーメーションって形が無い。こんどけ毎試合コロコロフォーメーション変えると、当然選手間の連携も悪くなるし、現にため息の出るようなパスミス連発している。
    そのくせ試合になると上手くいかなくても全然交代しない。
    選手だけでなく、監督までも成長を待たなければならないのはしんどいですね…。劇的にアルテタが変わらないと、来年も結局今年と同じくらいの順位なんだろうなと思う。
    選手に一貫性を求めるなら、ある程度フォーメーションにも一貫性を持たせないと。

    これだけ組織力皆無のクラブがよくここまで勝ち上がってこれたなあとつくづく感じました。
    もう奇策はゴメンです。
    あとパーティの宇宙開発シュートも笑

  6. その他試合について に追加

    ・カレンのコテコテブリティッシュイングリッシュ&アーセナル愛 フォーエバー

  7. この1年アルテタ見ててわかったのは基本選手を信用してないですよね
    ティアニーとサカ、ジャカくらいしかそれを感じない、それが寂しいです
    選手が能力活かせてないのは監督のせいですから
    規律が厳しいと言われてますがこれが引き金で選手の反乱からのアルテタアウトも現実味を帯びてきたのでは
    フロントは何も考えて無さそうですが

  8. 両クラブの監督とも負けたくてしょうがないのかと思いました。

    アルテタが元キャプテンじゃなかったらもっと批判されていたでしょうね。

    来季からはヴェンゲルさん監督復帰(ただしマネージャーではなくヘッドコーチとして)を希望します。

  9. 後半もよかったっていうよりエメリがコクラン入れてワントップにしたことでビジャレアルが自滅したようなもんなのにまるで手柄のように…(失笑)

  10. アルテタのこのスタートメンバーのチョイスはなんだろ、CFにラカもオーバも使えなくエンケティアに対して信頼がなかったか。
    それか逆にオーデガード、ESR、サカ、ペペに対する信頼が強くてアタッカー陣でパフォームしそうな選手を優先して入れたかったというものなのかなとか感じました。
    この4人を同時起用したい+ジャカをLBにするなら個人的にはESRをCMにして試して欲しかった。ペペ、オーデガード、サカの後ろにESRとパーティ並べる。過去に何度か試合中にESRがCMになることあったけどこなせなくはない印象なんですよね。まぁ4-3-3でもいいか。

    今の攻撃の問題としてボールを前に運べる(相手陣内も含めて)選手が少ないのは大きいと思っていて、SBが本職のKTやベレリン、セドリックの時はSBがそこに大きな貢献をしていた。これを2か所で減らしたのはキツイ(1か所でもキツイが)。この部分での苦労は全体でのクオリティに影響するしプレスのクオリティも落ちる。
    なのでSBの部分で減った推進力をCMの部分で補う為にESRをCM起用という事をして欲しい気持ちが個人的にはあるんだと思います。

    最近のアルテタはどうも分析や評価が上手くいっていないように感じます。問題点を正しく把握していれば修正できるんだろうけど把握が出来てなくて試合の結果で良し悪しを判断してしまっているような印象を受けてしまう。勝った試合の選手の評価は高いみたいな。そんなわけないだろうけどそう思わせてしまう判断が多いというか理解できない判断が多いというか。

    まぁでもアルテタの戦術家としてのなにか判断があったメンバー選択なのかな。ここまで言っといてあれですが試合フルで見れてないので的外れかもしれないです。

    話変わってマルティネッリはスタートからCFってのは今まであまりなかったかもな点と、最近出た試合でのパフォーマンスは即スタメンとは個人的には言いにくいかなぁ。

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