ことしの冬に、夏の移籍でMLSのニューイングランドレヴォリューションと合意していたGKのマット・ターナー(Matt Turner)。やっとアーセナルからも正式にクラブ加入が発表された。
Matt Turner joins from New England Revolution
アーロン・ラムズデイルがNo.1ポジションを奪い、この夏にはベルント・レノの退団が見込まれていたことから、必須補強エリアだったセカンドゴールキーパー。アーセナルは、半年も前からすでに来るべき問題を解決していたという、この夏の先手の動きのなかでももっとも先手だった案件といえよう。
アーセナルがマット・ターナーの獲得を発表
略歴。AFCオフィシャルサイトより。
28才のアメリカ代表は2021年1月の代表デビューから、USMNT(※男子サッカーUS代表)の18試合でプレイしている。また、USMNTが優勝した2021CONCACAFゴールドカップでは、全6試合でスタート。また、2022FIFAワールドカップカタールでの予選通過でも、スクワッドのなかで極めて重要な役割を担った。
コネティカットのフェアフィールド大学を卒業後、マットはUSプレミアディヴェロップメントリーグのJersey Expressに加入、その一年後2016にはNew England Revolutionとサインした。
マットは、MLSのNew England Revolutionにいた6年間で102試合プレイ。2020には、ファンとチームメイツのMVPにも選ばれた。
2021年8月、彼は2021MLSオールスターゲイムにも選出され、ふたつのペナルティをセイヴ。MVPにも選ばれた。
またマットは、New England Revolutionに2016年に移籍した当初、ローンでユナイテッドサッカーリーグのRichmond Kickersでもプレイしている。
えらいひとたちから。
アルテタ:マットは経験豊富なGKで、われわれのスクワッドに高いクオリティをもたらしてくれる。彼は近年、MLSと代表レヴェルの両方で活躍を見せていた。
われわれはマットと彼の家族を歓迎する。これからいっしょにワークしていけることを楽しみにしている。
エドゥ:われわれは、マットが加入してくれたことをたいへんにうれしく思う。マットはすでに高い評価を得ているクオリティと経験のあるGKで、チームにとり大きな補強になる。
われわれがマットを見つけたのは、もうしばらく前のことで、彼の獲得にはハードに取り組んできた。彼は7月からのチームのプリシーズンに加わることになりそうだ。
あとは、マットがチームに加入して、あたらしいホームにも馴染んで、来シーズンに向けて取り組んでいくことを期待したい。
🔥 MT30 🔥 pic.twitter.com/9sZzoIlySO
— Arsenal (@Arsenal) June 27, 2022
シャツは30に決まり。#MT30。
マット・ターナーのファーストインタヴュー「ラムズデイルをプッシュして彼をもっといいGKにしたい」
初の公式インタヴュー。オフィシャルサイトより。聞き手は、Frimmy。動画では、トレイニングセンターのジムの様子もすこし観られて興味深い。トランスクリプトのある部分だけ。
(マッティ! とうとう来たね。ぶっちゃけだいぶ長くかかった気がするよ。アーセナルに来れてうれしいかい?)
ターナー:イエス。しばらくかかったけど、ようやくここに来れていい気分さ。もちろんインタヴューやらなんやかんやで慌ただしいけど、ここにいて、ワークする準備も万端。とてもとてもグレイトだ。
(わたしたちはキミがここに来ると知っていたし、キミもアーセナルに来ることがわかっていながら、まだステイツでプレイをつづけていた)
そうだね。ときどきトリッキーではあった。でもよかったことは、アーセナルの昨シーズンの終盤を毎試合観ていて、その一部になるんだと思うと、すごく興味深かったんだ。
でもちょっとケガもしてしまっていたから、この数ヶ月はフィットネスを取り戻すのに集中していた。そこからリズムをつかむために何試合かプレイして、そのおかげでここでのプリシーズン開始にいい感じに合わせられた。
(どんなケガ? 重いやつ?)
いや、2ヶ月ってところ。軽症だ。ちょっとだけ時間のかかった軽症。
(ファンはみんなキミが来ることを知っていたから、DMが殺到したんじゃない?)
アーセナルのファンはソーシャルメディアでかなりアクティヴだね。インスタグラムのコメンツなんかを観ても、とても歓迎されていると感じられたし、サポートがあることもわかった。ぼくを観ることをワクワクしているひとたちがいて、それはとてもナイスな気分。ぼくだって、ここに来れてすごく興奮しているから。
(アーセナルのファンには、わたしもいろいろ訊いてこいと云われたよ。キミはだいぶ熱心なアーセナルファンだけど、いつどうやってアーセナルのファンになったの?)
ぼくはノースジャージーで育って、14才までフットボールをプレイしていなかった。だから、フットボールにハマったのは2010年のワールドカップが来たとき。あのトーナメントでUSはかなりいいところまでいって、いくつかのマジカルなときもあった。そのときに、初めてFIFAのゲームを買ったんだ。
ぼくの姉妹も、子どものころ、ふたりともThe Arsenalという名前のユースチームでプレイしていた。だから、自然なつながりみたいなものがあった。そこから、ぼくはアーセナルをかなり熱心にフォロウするようになった。ぼくの家族全員も。
(子どものころ観ていたアーセナルで、気になった試合とか選手はいた?)
オリヴィエ・ジルーがゴールをたくさん取ってて、楽しいシーズンがいくつもあった。彼はいつも観ていて楽しかった。ぼくの姉は彼にぞっこんだったんだよ。おかしいでしょ。彼はハンサムな漢だったからね。
(彼をリスペクトしないと!)
13/14シーズン、11/12シーズンあたりのチーム、ペア・メルテザッカーやヴォイチェフ・チェズニーがいて、観ていてたのしい、エキサイティングなチームだった。アレクシス・サンチェスはすごく火力があって、すごく才能があって、だから彼らは応援するにはいいチームだった。
大学へ行ってからは、イングランドから来た学生もたくさんいて、みんな違うクラブのファンなんだけど、土曜や日曜の朝はよくみんなでいっしょにPLを観たよ。
(ミケルとはまだ話してない?)
もちろん話したよ。何ヶ月も前から連絡を取り合ってる。彼は何度かぼくのことを確かめるために連絡をしてきて、関係を築いているところ。
(イニャキとも話した?)※GKコーチのイニャキ・カーナ
彼とも密に連絡を取り合ってる。とくに、試合に戻ったときに、いくつかの部分をチェックして、いくつかのクリップも観てもらって試合について話した。トレイニングのクリップも観てもらった。そうしたことについて、何度か繰り返しやって、とてもとてもナイスだった。だから、それもまたぼくがこのクラブの一員だと感じられたことだった。ノースロンドンにはまだいなかったにもかかわらず。
(キミはかなりのアーセナルファンだから、試合を見逃さないために早朝に起きなきゃならなかった。思い出に残っている試合はある?)
誰がプレイしていたとかは思い出せないけど、思い出の試合はあるよ。ぼくの姉がマンハッタンに住んでいたときに、ローカルのサポーターズバーに行って試合を観たんだ。USではかなり朝早い時間だけど、ファミリー全体で試合を観てチームを応援するのは、いつもいいね。
(そんなに早朝でもないんだっけ?)
そうだね。東海岸だといちばん早い試合が7:30。早朝ってほどじゃない! もうすぐ父親になるから、7:30なんて早朝じゃないよ。
(キミはもうすぐ父親になる。ワクワクしてる?)
とんでもなくワクワクしてるよ。これからグレイトな旅になるだろうし、いまはぼくの人生でもたくさんの大きな変化が起こり始めているところ。それにもワクワクしてる。
(アメリカからやってくるのだから、大きな変化だね。ワンちゃんも連れてきたとか?)
犬たちも連れてきたよ! それがいちばんたいへんだったかもしれない。でも犬もやりとげたよ。もう安全だし、あたらしいgaffを楽しんでる。
(犬の名前は?)
ベア(Bear)だよ。ベアは小さなポメラニアンで、カヌーピ(Kounoupiaki)はモーキー。たしかギリシャ語で「小さな蚊」っていう意味だったかな。ワイフが名付けたんだ。
(いいね! あとキミにはヨーロピアンとのつながりもあるんだよね。リトアニア系?)
そう。ぼくは祖父の代からのリトアニア人で、国籍をそこに戻すこともできた。だから、ぼくはアメリカとリトアニアの二重パスポートを持っているよ。
(すごい。われわれはヨーロッパのチームだから、ヨーロッパ中を回ることになる。リトアニアにも行ってみる?)
そうしないとね。それもすごく楽しみにしてる。アメリカにおける国籍変更のプロセスでは、みんなそれぞれの背景やら歴史を持っているし、ぼくもぼくの父もそう。ぼくらは、祖父の側の家族について多くを知らなかった。だから、古い書類を見つけ出して、どうやってこうなったのか知ろうとしている。
それはすばらしいことで、自分がほんとうは何者なのかをすこしでも知ることになる。だから、リトアニアへ行くことはとても楽しみにしているんだ。ぼくが国籍を取得したあと、すぐに世界は閉じてしまったから……。
(心が痛いよね。わたしが子どものころは、このリーグにはアメリカ人選手は多くはなかった。でも唯一支配したポジションがある…… GKだ。ブラッド・フリーデルやティム・ハワード。彼らのことは観ていた?)
もちろんだよ。ブラッド・フリーデルはNew England Revolutionでのコーチだったし。実際、彼がぼくをMLSデビューさせてくれた。だから彼とはかなり親しいよ。
ティム・ハワードも大好きだ。彼はぼくの子どものころのGKアイドルかもしれない。大きくなるにつれて、もっともっと好きになっていった。彼もぼくと同じニュージャージー出身で、いつも大きなステイジで活躍していた。
これはGKの文化的なものだろう。アメリカのすべてのほかのスポーツの背景と関係があることだと思う。
(なるほど。キミはここに来たばかりだけど、またすぐにアメリカツアーに行く。BaltimoreやFloridaと対戦するのは楽しみ?)
ステイツに戻るのはとても楽しみだ。みんなを案内して、ぼくがよく知ってる場所を教えてあげたり。ぼくをグループに自己紹介するにはナイスなやりかたになりそう。そして、チームのみんなをもっとよく知って、つながりたい。ワールドカップではイングランドとも当たるし!
(わたしもツアーには同行するんだ。だからわたしも案内しなきゃダメだよ)
いつだって案内するよ。必要なものを云ってくれたら、ぼくがなんとかしちゃうよ。
(必要なものか。あとで教えるよ)
あまり長く考えすぎるのはだめ!
(UKでプレイしているほかのアメリカ人選手は知ってる?)
チェルシーのクリスチャン・プリシッチとはいい友人だ。それと、リーズとサインしたばかりのBrenden Aaronsonも。そこはちょっと遠いけど。フラムのAntonee Robinsonとチェルシーのプリシッチとは、フィールドの外でも付き合うことになるはず。
それと、ロンドンに住んでいるいとこもいるし、大学時代の友人もまだ何人かロンドンにいる。ナイスだね。
(ロンドンには何度も来ている?)
18か19のときに一度だけ。そのときはほとんどマンチェスターにいた。マンチェスターに行って、そのあとは大晦日にLakesに行ってみたいな。そのあとに1-2日ロンドンにいただけ。ナイスだったよ。
ロンドンの街は、もっと見るものがたくさんあると思うし、18のころの自分といまの自分の目を通して観るのとは、だいぶ違うだろう。
(マットとマッティ、どっちで呼ばれたい?)
ファーストネイムはマッティでもマットでも構わない。ターナーだっていい。ファンがいちばん呼びやすいもので、それでぼくもやってくよ。
(ナンバー30を選んだ理由は?)
シンプルだ。ニューイングランドでのぼくのナンバーだったから。それはぼくが親しんだナンバーなんだ。もちろん、ナンバーワンになりたいし、あるいはニューイングランドで最初につけた12がいいけど、それは無理だから「いや、ナンバー30がある」と。それで大騒ぎするくらいなら、決めちゃおうと。これはぼくが親しんでいるナンバーだし、ナンバー30のネックレスだってつけてる。だから、あたらしいのを買う必要がない!
(いまのナンバーワンはアーロン・ラムズデイル。彼については何か知ってる?)
イエア。彼とはもう連絡を取り合ってるよ。彼がぼくのことを調べてくれて、慣れるようにしてくれてる。彼はグレイトなひとみたいだね。
ぼくは、彼のことをよく知っていくだけじゃなくて、彼をプッシュして彼のベストを引き出し、もっといいGKにしてやりたいんだ。
(キミはレスターとの試合を観たと思うけど…… ヤバかっただろ? つまりその…… ディフェンスがちゃんとしているといいなと……)
そうだね。ディフェンダーが対処してくれるといいね!
以上。訳は今回も自信なし。ごめんね。ネイティヴスピーカーの英語は難しい。
ターナーはそんなに熱心なアーセナルファンだったのか。ジェンコのヴァイブス。
じゃあ、これも仕方ないね。わざわざ自分のシャツを用意してくれたファンにちょっち大人げないゾと思ったけど。
I think he’ll fit in just fine on his side of North London 🔴⚪️😉 pic.twitter.com/pDzmYRACk0
— New England Revolution (@NERevolution) June 20, 2022
さて、PLでも最近はわりと増えてきたとはいえ、この世界でアメリカの選手はマイナーということもあり、それなりに珍しがられている様子。彼がPLでプレイすると、アーセナル(PL)でプレイした初のUSMNTの選手になるそうな。
「アメリカからイングランドに来るのは大きな変化」というくだり。日本人からすると、アメリカの東海岸からイングランドへの移籍なんて、ことばも同じ英語だし、とても大きな環境の変化とは思えないが、それでもこうした反応があるのは、やはり文化面、とくにフットボール文化における違いも大きいのだろう。なにしろサッカーの国だから。近いようで遠い。
それと、このインタヴューでもっとも印象的な部分は「ラムズデイルをプッシュする」という部分。
彼は28才で(※6月24日が誕生日だった)ラムズデイルよりもそれなりに年長であり、経験もあるということで、バックアップGKとしては理想的なタイプ。兄貴。すでにラムズデイルとも関係を築いているようで、なにやらまたしてもポジティヴなGKユニオンがまた誕生しそうな予感。とりあえず、セカンドでも腐らずハードワークしてくれそう。
ターナー「自分もラムズデイルもベストなGKにする」
こうした彼のポジティヴな姿勢について、すこし以前の『Sky Sports』のインタヴューでも彼は似たような発言をしていた。いまから10日前のコメンツ。紹介しよう。
Matt Turner: Arsenal’s new American goalkeeper vows to push Aaron Ramsdale for No 1 shirt
ターナー:(アーセナルでバックアップ役とみられることについて)彼らがそう思う理由はわかる。アーロンはアーセナルで一年を通してアメイズィングなシーズンを過ごしたから。ぼくもとりあえずはそれに賛成する。ぼくは彼をプッシュするためにここに来るのだし、自分もベストなGKになる。そして彼もまたベストなGKにする。それがぼくの目標なんだ。
(アルテタとの会話)もう彼とはすこし話した。ぼくに対する彼のメインのメッセージは、いま集中すべきことに集中すること。このあと数ヶ月、健康で、フィットして、プリシーズンに備えて、そこで競えと。
彼らのプロジェクトが進行しているところで、ぼくはロッカールームの重要なひとりになりたい。いくらか経験も伝えられるし、PLでの経験はないけど、でもナショナルチームの経験とプレッシャーがかかるリーグでの経験がたくさんある。もう28になったから、ロッカールームでは年長でもある。
(アルテタがGKに求めるバックからのプレイ)まったくだ。このチームのDNAはポゼッションベイスであり、それこそがぼくがピッチのうえで求められるものだと思う。
そこは、ぼくの弱点だと云われることもあるが、この数ヶ月でも進歩させてきた。ぼくはさらにいくらかパスをつなげるようになっているし、試合をよく読んで、もっと相手を崩すやりかたも理解している。
ニューイングランドでは、ぼくらはそのようなスタイルではプレイしていなかったが、ナショナルチームへ行ったときはそうした。ナショナルチームでの経験を積むようになって、試合をもっとよく読み、もっとパスをするようになった。
アーセナルでは、毎日それができるのがとても楽しみだ。
ぼくはかなり期待されている。ここは選手補強にかなり投資するクラブだし、ぼくは勝ちたい選手だ。ファンがやることもわかっている。ぼくの期待は、ファンの望みと同じなのだから。
バックからのプレイについてのコメントも興味深い。クラブではあまりそれはやってこなかったというが、それができないGKなら、アルテタがほしがるわけもないのだし。期待していいんだろう。
ナイスガイ感がハンパないですね。そして既にコンタクトしてるラムズデールのスーパー陽キャ感。
以前の記事も拝見しましたが、なかなか面白いキャリア。
ただ俗に言うゴールデンエイジにサッカーと触れてないってことは、果たして今後足元は向上するのか。。。
割と初めて見るケースかもしれません。興味深いです。
英語、やっぱ聞きやすいなあ。。アメリカ。。