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【意見】PLは2枚めのイエローカードをVAR対象にすべき

月曜のセルハースト・パークでのパレスとの試合。アーセナルはなんとかアウェイで3ポインツを持ち帰りながらも、30分にもわたる劣勢の直接の原因となったトミヤスの退場処分は、試合後も各所で議論となっていた。

ぼくはこのブログのマッチレヴューでああいうことを書いて、そのあとtwで親切なひとから「あれは2枚めのカードだからVAR対象じゃなかった」と教えてもらい、ああ・そういえばそんなルールあったような?と思い出した。以前にもブログの読者のひとに教えてもらったかも。物忘れひどくてすまない。

とはいえ、その後もなんとなく腑に落ちないような気分で、そのことをずっと考えていた。

そして、いろいろ調べているうちに「いや、やっぱり2枚めのイエローカードはVARの対象にならねばならない」という思いを強くしたので、そのことについて少し書いてみる。

トミヤスの事案に関しては、レフの一貫性の問題も大きいが、ここではそのことは一旦置いておいて、VARレギュレイションのほうにフォーカスしたい。



現行のVARルールのおさらい。4つに限定されたVARレヴュー対象

まずは、現行のVARの運用ルールを確認しておきたい。

フットボールのルールを策定している機関であるIFAB(Tht International Football Association Board)が、それを公開している。

Video Assistant Referee (VAR) protocol Video Assistant Referee (VAR) protocol

これによると、試合のレフェリーが決断を覆すことができるVARレヴューを行うのは(VARレフェリーがアドヴァイスできるのは)、以下の4つの判定に限られる。

  1. ゴール/ノーゴール
  2. ペナルティ/ノーペナルティ
  3. ダイレクトレッドカード(2枚めのイエローカードは含まれない)
  4. 個人の特定ミス(レッド/イエローに関わらず)

4の個人の特定ミスというのは、アーセナル的にはオックスとギッボのアレを思い出す。ぼくは、あとにも先にも同様の事例を観たことはないので、かなり珍しいケイスなのではないか。椿事。

今回トミヤスの件で問題になっているのは、3の「ダイレクトレッドカード」。わざわざ「not second yellow card/caution 2枚めのイエローカード(警告)は含まれない」と但し書きしてある。

トミヤスの議論なレッドカード@パレス

マッチレヴューを読んでくれたひとには繰り返しになってすまないが、パレスでのトミヤスの事案をもう一度振り返っておこう。

まず、最初のカード対象になったスロウインのtimewasting(いわゆる遅延行為。おれはtime wastingでこの日本語がいままでずっと思いつかなかった笑)。スタンドのブーイングによってレフェリーがプレッシャーを受けていた面も大きい。アウェイならでは。

あれはアーセナルのチームとしてスロウインにかかった時間は24秒だったそうだが、実際にトミヤスがボールを持ってからカードが提示されるまでの時間はたったの「8秒」だったらしい。

まずマルティネリがボールを拾って、近くにいたハヴァーツへ。ハヴァーツが自分でスロウする雰囲気を見せながら、トミヤスにボールを渡したところでスタンドから大きなブーイング。なので、トミヤスは彼自身に問題があったというよりは犠牲になった感が強い。チームを代表して警告を受けた。

そして2枚めのカードについては、あれはレフェリーのCooteのジェスチャによればシャツを引っ張ったことがカード対象だったようだ。ぼくは足がかかっているほうを観たのかもしれないと思ったが、そうではなかった。

であれば、仮にあそこでVARレヴューがあったら、彼は考えを変えた可能性はある。

というように、やっぱりトミヤスにとって今回はとばっちりだった。彼はそれまでけっこういいプレイをしていたし、せっかくPLでスタートできるチャンスが巡ってきたのにつぎの試合は出られない。かわいそうなトミーである。

なぜ2枚めのイエローカードはVARで顧みられないのか?

IFABのVARレギュレイションは理解して、それでも残る根本的な疑問。

「そもそも、なぜ2枚めのイエローカードはVAR対象から外れているのか?」

セルハースト・パークで起きたように、ストレイトレッドカードかイエローカード2枚かに関わらず、選手の退場処分はあんなふうに試合に大きな影響を与えるのだから、2枚めカードのほうだけをわざわざVAR対象から除外しているのはなぜなのか。

「結果的に退場処分を引き起こすどんな判定もVAR対象になりうる」でよくない?

どんなイエローカード2枚めも必ずVARレヴューしなさいというのでもない。エラーの可能性が少しでもあるなら、VARレフがそれを進言することができるというだけ。今回なら、トミヤスのプレイにVARレフは気づいていて、それでもなお現行ルールに則って進言しなかったのかもしれないのだから。

それでいけない理由はなんだろう。

VARを頻繁に行うことで試合の流れが途切れるから(運用を限定する)、というのはVAR議論のなかでももっともメジャーなもののひとつだが、選手が退場になる2枚めのイエローカードをすんなり受け入れるチームなど、この世の中にほとんど存在せず、レフェリーへの抗議や不満の表明なども含めて、どうしたってゲイムフロウはそこで寸断される。議論の余地が大いにありそうな判定ならなおさら試合再開までには時間もかかる。

だいたい、今シーズンから始まっている新ルールでオンボールの試合時間を厳密にカウントするコンセプトと、逆行しているようではないか。どうせフロウはそこで一時中断するのだし、時計も止めているのだから、多少時間がかかってもVARでレヴューすればよい。

VARでレヴューしたところで誰もが納得できる結果にならないのも毎度のことだが、それでもスルーするよりはマシだろう。トミヤスの件を観ればなおさらそう思う。映像で観れば、少なくともAyewはシャツを引っ張られて倒れたわけではなかったことがわかったはず。

この件を調べていたら、『The Athletic』にこのような記事があることに気づいた。

「2枚めのイエローカードはもっと頻繁に起きるようになりそう。それにどうしてVARを使わない?」

Second yellow cards look set to become more frequent – so why not use VAR?

トミヤスのレッドカードにインスパイヤされただろう記事で、今回のぼくが書こうとしていたエントリとほとんど同じ問題意識。とても興味深かった。

一部を引用して紹介しよう。

なぜ、2枚めのイエローカードはストレイトレッドカードと同じインパクトをもたらすはずなのに、顧みられないのか、そのルールの考え方について。

基本的にイエローカードというものは、試合そのものを左右するわけではなく、レヴューをするほど重要なものとはみなされない。そしてカード自体はひとつひとつ独立したものとみなされるため、したがって2枚めのカードも1枚めと同様にレヴューはされない。

それが、こうつづく。

しかし、現実ではそのふたつのイエローカードはレフェリーにとっては同じものではない。試合のなかでレフェリーがカードを出そうとして、それが2枚めだと気づいて躊躇するシーンというのはしばしば観られる。

今回の女子ワールドカップのファイナルでも、すでにカードをもらっていたスペインのSalma Parallueloがボールを蹴り出したとき、レフェリーがポケットに手を伸ばしかけてから考えを変えた。

建前上は、どっちのイエローカードも同じ重要性だといっても、実際ピッチ上では同じ重みではありえないという。

だから、レッドカードがVAR対象なら、ふたつめのイエローカードもVAR対象であるほうが、公平公正をうたううえではむしろ一貫していると云える。

新ルールによって今後は2枚めのイエローカードが増えるかもしれない

この記事によると、PL含むイングランドでは、今後は2枚めのイエローカード事案はもっと頻繁に目にすることになりそうだ。

その理由は、もちろんこの夏から導入されている新ルールのおかげ。それについてはこのブログでも先日書いた。

23-24EPL新ルールの説明。抗議に厳しく、フィジカルに甘く、時間の浪費は許さない | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

シーズンは始まったばかりでサンプルサイズは2試合とかなり小さくはあるものの、PLにおける新ルールの影響はてきめんに現れている。

2枚めのイエローカードによる退場の頻度が4.8試合に1回(左図)。time-wastingによるイエローカードの頻度が1.4試合に1回(右図)。

試合の数は、その週に10試合あるので(20チーム)、2枚めカードで退場になる選手は毎週ふたり。遅延行為で出るカードは毎週7枚。くらい。

ほかのこれまでのシーズンとくらべても突出して頻度が高い。

PLなりPGMOLなりが、シーズン序盤の試合を観てやりかたをあらためるようなことがない限り(そんなことは絶対しないだろうが)、この傾向でシーズンは進むのだろう。あるいは、チームや選手がこのことをより意識するようになって、この2試合ほどカードが出ないようになるか。

いずれにせよ、2枚めカードによる退場はこれまでより増える可能性のほうが高いように思える。新ルールによってカードが出る対象は遅延行為だけではなく、レフェリーへの抗議などその範囲は拡がっている。状況としてはよりカードは出やすくなっているだろう。そして、試合結果に大きすぎる影響を与えるものとして、これからは2枚めカードがどんどん注目されていきそうである。

今回のことでアーセナルをm9(^Д^)プギャーしている、ほかクラブのファンも全然他人事じゃない。いずれ我が身のこととして理解する日が来るはずである。

意見:退場におよぶ2枚めイエローカードはVARレビュー対象に含めるべし

結論として。このようなルール改定はかならずやるべき。

とにかく<退場>というのは、あまりにも試合への影響が大きく、そんなに気軽に下されていい処分ではない。今シーズンでこれから2枚めカード事案が毎週のように観られるというのなら、ファンの不満の声もどんどん増えていくのは想像に難くない。

すでに述べたように、個人的にはその部分をレッドもイエロー2枚めも同じようにとらえて

「退場処分を引き起こすどんな判定もVAR対象になりうる」

でよいと考える。そのようにルール改定したからところで、ゲイム全体に大きな影響はないと思う。

たしかに、VARレヴューの範疇を広げることに消極的になる理由があるのは理解できるが、いまの状況を考慮すれば、この場合はむしろメリットのほうが大きいはず。

理想的世界では、どんなささいなプレイだってVAR(あるいは未来のサムシング)でチェックをしてレフェリングの公平性が担保されるべきなのだろうが、現実世界ではそのための技術が追いついていない。だから、運用の範囲はどこかで線引きを行う必要があるのは理解できるので、せめて、その線引きをそこだけでも広げてほしいということ。

そもそもVARなんかやったって無駄という考え方もあるかもしれない。ぼくらアーセナルファンはずっとそんな事例ばかり観てきたのだし。無力感にさいなまれた日は一度や二度ではない。今回だって、われらがいくら抗議をしようと、VARで確認してやっぱりファウルに値するとレフが判断した可能性だってある。

ただ、それでもないよりはあるほうが確実にいいのだ。

今回トミヤスのプレイに対する判定をVARレヴューで覆すことは、「2枚めカードはVAR対象にならない」という現行ルールの下では不可能だった。その可能性がすこしでもあるほうがいいに決まってる。

 

では、最後にお聴きいただきましょう。わたくしのYouTubeのLike動画より、「龍が如く6」OST収録「不器用ラブステップ」。

 

おわり



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

5 Comments on “【意見】PLは2枚めのイエローカードをVAR対象にすべき

  1. 2枚目のイエローカードはvar対象にしなくてよいと思います
    それをやり出すと切りがない
    1枚目のイエローカードが誤審まがいのもので、2枚目が適当なイエローカードであった場合、今度は1枚目のイエローカードにもvarをとなるんじゃないですか

    1. 本文でそれを説明したつもりなんだけど、まさに「2枚めのカードでキリをつけよう」という話です。

  2. 今回の記事とはやや的外れとなりますが、
    遅延行為による厳しいアディショナルタイムの追加と、イエローカードの提示は、個人的に二重罰のように感じますね。

    1. 遅延行為によって「懲罰的に」時間を追加するのでなければ(あくまで厳密な試合時間カウントによるアディショナルタイム)、double jeopardyにはならないのではないかと。

      ぼくは、試合終盤にみられるようなあからさまな時間稼ぎをなくすには、むしろ懲罰的に時間を追加するルールがあってもいいと思うことはけっこうありますけれども。

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