hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Match, UEFA CL

05/06シーズンのUCLレアル・マドリッド戦を見返す

インターナショナルブレイク中で退屈な週末だった。

そして思わずアーカイブしてあった、05/06シーズンのUCLレアル・マドリッド戦ホーム・アウェイ両方ともフルマッチで見返してしまった。Jsportsの録画で、ファーストレグは「のいー」で有名な倉敷保雄実況・金子達仁解説コンビという、いまだと結構贅沢に感じられるふたりのコメンタリーだった。当時、某掲示板なんかだと金子氏はえらく嫌われていたけど、ぼくは好きだった。それにしても「のいー」ってなんだろうね。



ラウンド16のこの試合、アーセナルはアウェイで3ポイント穫ってセカンドレグのホームで引き分け見事ベスト8へ。サンチャゴ・ベルナベウでイングランドのクラブが勝ったのは史上初だったらしい。

スターティングイレブン

ファーストレグ

セカンドレグ

キャプの古臭さよ。たった10年くらい前でも当時はまだSDでこんな画質で楽しんでいたのだ。

レアル・マドリッドはマケレレが去り後任はエヴァートンやセルティックでもプレイしていたグラヴェセン、グティもCM寄りでプレイしていた。そしてもちろん、ジダン、ベッカム、ロナウド、ラウール、ロベカルといった銀河系方面の面々は健在だが、パスミスを繰り返したびたびアーセナルに逆襲を許すなどその輝きには陰りが見えた。ファーストレグにアウェイゴールを許し、得点がマストになったセカンドレグはいくらか攻撃的な布陣になっている。

対するアーセナルは、アンリをワントップに据えた4-5-1という布陣。ジルベルト・シルバがアンカー。本来のディフェンスリーダーであるキャンベルの代役にセンデロス、またLBのフラミニも本来のポジションではなく、とくにディフェンス面では決してベストのメンバーではなかった。しかし4-4-2をメインに戦っていたこの時代、UCLではこのワントップというある種守備的な布陣で結局チャンピオンズのファイナルまで上り詰めたのだから、戦術としては非常に有効だったということだろう。アーセナルはあとにも先にもこれ以上の成績を残していないのだから。

05/06UCL レアル・マドリッド戦の論点

全盛期のティエリ・アンリがやばい

とにもかくにもアンリ。この試合180分通して唯一の得点者。両チームとも何度かゴールポストを叩いたが、結局得点を決めたのはアンリだけだ。速い、強い、うまい、高い。そしてチームを鼓舞するキャプテン。ひとりでボールを収めてしまうアンリが前線に張っているだけで、確実にDFふたりを釘付けにできる。

アーセナルのゲームプランは全体を通して、アンリをひとり敵陣に張らせておいて、ボールを奪ったら素早くカウンターというものだった。そのカウンターもボールを奪ってから最初に密集地帯を掻い潜れるファブレガスやフレブがいてこそだが、敵陣で何人に囲まれようともボールをキープしてしまうアンリがいなければ成立しない。

しかしあらためてアンリのプレイを観て、このレベルの選手が今いるだろうかと考えてしまった。全盛期のアンリが今いたなら200Mユーロクラスである。

ファーストレグの得点シーンは凄まじかった。ハーフウェイライン付近でロナウドのトラップミスからボールを奪ったファブレガスが一番近くにいたアンリに短いパスを送る。するとアンリはそのまま前を向いてドリブルを開始。すぐに後ろから身体をぶつけてきたロナウドをいなし、一瞬でスピードアップすると、ふたりの選手の間を駆け抜ける。そのままスピードに乗ってボックスに到達すると、カシージャスの位置を確認しDFのスライディングタックルが届く直前に冷静にファーサイドへシュート。ゴール。

このときアンリの前には味方の選手は誰もおらず、ふつうなら囲まれてつぶされるか、キープして味方の上がりを待つところであるが、そんなマドリー守備陣の裏をかいたまさかの一点突破。まさに機を見るに敏。スピードやテクニック、フィジカルはもちろん、類まれなフットボールセンスが凝縮されたゴールだった。

この試合ではそういったレベルの高いアンリのプレイだけでなく、彼のキャプテンシーも見逃すことはできない。チームを鼓舞し、ディフェンスをすればスライディングタックルなど泥臭いプレイも厭わない。おれがこのチームを絶対に勝たせるという意気込みを感じさせた。

いまのアーセナルの選手たちと比べてみても、彼のタレントは比類のないものでプレイで及ばないのは仕方がないと思う。が、彼と同様の意志の強さを、戦う気持ちを持っている選手が果たしていまのアーセナルにいるだろうか。そう思わずにはいられない。パンディットになったアンリが現役選手たちに苦言を呈するのも理解できようというものだ。

ティエリ・アンリの全盛期は1998年のワールドカップ優勝や2000年のEURO優勝、もちろん03/04のインヴィンシブルズ(EPL得点王+無敗優勝)などが挙げられるが、その後のバルセロナでの成績など彼の選手生活を俯瞰すれば、このアーセナルでの05/06シーズンが全盛期の最後といえるかもしれない。ちなみにこのシーズンもリーグ戦は4位に終わったものの得点王に輝いている。

18才のセスク・ファブレガスがヤバい

この試合でもファブレガスはビジョン、パスセンスなどは卓越していて、中盤から1本でアンリに通してしまうロングパスの精度に至ってはちょっと尋常ではなかった。コメンタリーによるとこのシーズンに初めてスペインのシニア代表に呼ばれるが、18才何ヶ月かの選手が選出されるのは70年ぶりだったとか。それほど神がかっていた。ファーストレグの終了後には、当のマドリーが獲得候補にリストアップしたくらいである。

その後、彼はアーセナルで若くしてキャプテンを務めたりフットボーラーとして着実にステップアップしていくが、バルセロナに復帰し、不遇のときを過ごしたあとは結局チェルシーに移籍している。

しかし、タラレバながら、もしアーセナルがあのときメスト・エジルではなく、ファブレガスを選んでいたらということも少し考えてしまう。彼はあのときアーセナルの復帰を希望していたともいわれるし、少なくともエジルよりはアーセナルに対する愛着もあったはずだ。もし少しくらい成績が振るわなくても、OB連中からエジルのようにけなされることもなかっただろうし、ぼくたちだって忠誠心のない選手を頼りにしなければならないことほど情けないものはないが、そのような事態にもなってなかった可能性もある。

いずれにせよ当時はカソルラも元気だったし、たしかにファブレガス獲得はためらわれるような状況だった。でももしいまアーセナルの中盤にファブレガスがいたら、やっぱりクラブの中心選手のひとりだったのかと思うと、なんだかやるせない。

もっともぼく自身はメスト・エジル万歳!ついに大物が来た!と興奮したしファブレガスとか他所の子だし超いらねえしなんて思っていたので、やるせなくなる資格はない。こんな未来が待っているなんて思いもしなかったんだからしょうがない。

10年前のフットボールの試合はレフェリングがゆるい

正確には12シーズン前ということになる。これらの試合を観ていたら、なかなかファールを取らなかったり、カードを出さなかったり、現在の基準からするとだいぶ判定がゆるいように思えた。ロベカルやラウールのチャージは完全に足裏で行ってしまっているので、今なら躊躇なくレッドカードが出ていただろう。

でも考えてみれば、これくらいの時期のアーセナルはとにかくフィジカルで潰そうとする相手が多く、ひどいファールをたくさん受けていたように思う。その流れで、2シーズン連続でエドゥアルドのあれ(2008)やラムジーのあれ(2010)も起こった。アーセナルの選手が続けて犠牲になったのは偶然ではない。

そう考えると、以前ほど厳しく当たられることも減ってきたような気がしないでもない。もっとも、下位クラブですらTVマニーで潤いテクニックのある選手を買うことができるようになり、より複雑なプレイをするようになった結果なのかもしれないが。

いずれにせよ、相変わらずフィジカルなチームに弱いアーセナルにとっては、ファールを厳しく取ってもらえる傾向というのは悪いことではない。PKを取られすぎとか、あまり恩恵を受けているような気がしないのは気のせいだろう。

ベルナベウとハイベリーという両極端なスタジアム

サンチャゴ・ベルナベウという8万人収容の巨大スタジアム、一方いまは無きハイベリーという3.8万人収容の歴史ある極小スタジアム。

極小というのは収容人数ではなくピッチサイズで、アーセナルが06/07シーズンにエミレーツスタジアムに移動するまでホームスタジアムとして使っていたハイベリースタジアムというのは、ピッチが小さいことが有名で(まさにこの試合の05/06シーズンがハイベリーの最終年だった)、Wikipediaによると縦がベルナベウよりも5メートルも短かった。現在アーセナルが使用するエミレーツスタジアムはベルナベウと同じピッチサイズ(105*68メートル)で、現在のアーセナルのプレイと同じように、よくも悪くもふつうになってしまった。

ぼくが個人的に興味があって、いつかエントリにまとめようと思っているのが、スタジアムの中継カメラが試合の見栄えに及ぼす影響だ。TVで観ていても、カメラ位置によってスタジアムの雰囲気がだいぶ変わって感じられる。

ちょっとわかりにくいかもしれないが、

上がベルナベウ。下がハイベリー。下のシーンのほうが少しカメラが寄っているが、それにしても人物(選手)が大きく見える。このほうがTV画面的に迫力を感じないだろうか。

おそらく、ハイベリーのほうがベルナベウよりもカメラそのものの位置がピッチにだいぶ近い(&低い)。そのせいでより迫力を感じるのだと思う。逆にカメラ位置が遠かったり高かったりするとより俯瞰めになりピッチがスカスカに見える。戦況はわかりやすいが没入感はない。どちらが好きかは人それぞれだろう。

アーセナルのファンになって以来、プレミアリーグの中継はなぜこんなに迫力を感じるんだろうと思っていたが、イングランドは小さなフットボール専用スタジアムが多く、メインカメラの位置がピッチに非常に近いということに気づいた。たとえば、エヴァートンの拠点グディソン・パークのようなスタジアムでは、ほとんどサイドラインの間際にメインカメラがあるようで、メインカメラが手前サイドの攻防にフォーカスするときはほとんど選手の俯瞰になってしまう。それくらい近い。

これはぼくはグローバルなプレミアリーグ人気の隠れた一因になっているんじゃないかと推測している。画面に迫力あるほうが観ていておもしろいに決まってるんだから。



おわりに

この時期のアーセナルはポスト・インヴィンシブルというスコッドで史上最強というわけではなかったが、UCLでファイナル進出というクラブ史上最高の成績を残した。ヨーロッパのベスト2なんて今からでは到底考えられない。

もちろん当時もマドリーが勝ち抜けの本命だったが、アンリをワントップで前線に張らせ、レジェス、フレブ、ファブレガスが前に運ぶ、守ってはフルバックのフラミニもエブエも固くて、ジルベルト・シルバが陣取るセンターはスキがなかった。ジダンがほとんど仕事ができないなどマドリーが好調ではなかったとはいえ、チームは守備に一体感を持ち優れた攻撃陣を揃え、彼らに渡り合える勝負強さは十分にあった。いまに比べると勝利への意欲がより強かったといえるのかもしれない。

しかし攻撃フットボールを標榜するアーセナルが、ワントップを採用したりフルバックのふたりを攻撃参加させないなど守備的に戦って結果を残したのは皮肉な結果ではあった。

この後アーセナルが守備的なやり方に目覚めたかというと決してそんなことはなく。なぜかといえば、つまりアンリがいなかったからだろう。フットボールは失点しなければ負けないが、得点しないと勝てないのだから。

 

Leave a Reply

Your email address will not be published.