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Arsenal, Emery, Tactics

エメリはグアルディオラとどう戦ったか

シーズン開幕を前に、なかなか興味深い記事がSKY SPORTSに来ていた。

「ウナイ・エメリはペップ・グアルディオラを試すことができる」

Unai Emery can test Pep Guardiola when Arsenal host Manchester City

エメリがスペイン時代にグアルディオラにまったく勝てなかったという戦績については以前にも触れたことがあるが、対戦成績の結果だけで試合内容までは知らなかった。

この記事ではエメリがヴァレンシア時代にグアルディオラのバルセロナにどう対処したかに触れられている。もともとエメリが特定の相手に対してどのように対応するのか非常に興味があったので、シティ戦を前にしてタイムリーな記事だった。

ざっくり紹介してみよう。



マンシティは日曜の対戦でも優位にあると見られているが、エメリのグアルディオラに対しての歴史を見れば、多くの人が考えているより実力はずっと近いことがわかる。

エメリのヴァレンシアがグアルディオラのバルセロナにとって、どのようにして小憎らしい敵になっていったか確認しよう。


まず、エメリのグアルディオラに対する成績を見れば、アーセナルのファンでも日曜の試合に多くの期待はできないだろう。彼らは2008から2012のあいだ、何度も戦ってきた間柄である。しかしエメリは10試合で一回も勝つことはできなかった。

これらは、なぜシティがエミレーツ・ステディアムでも優勢に見られているかの理由でもあるが、まずアーセナルは新しいヘッドコーチで仕事を始めたばかり。それに対し、シティはヤヴァい昨シーズンを過ごし、この前の日曜のチェルシー戦もヤヴァいところを見せた。またエメリはかつて一度だってグアルディオラに勝ったことがない。これが今回変わると思えるか?

確かに難しい船出になるだろう。しかしエメリのグアルディオラに対する0勝4分6敗という記録は、実際は結果をそのまま表してはいない。彼はラ・リーガのほかの何人かのマネージャーと同じようにグアルディオラに試練を与えたひとりだ。

バルセロナはホームでは何度か大勝もしたが、しかし逆にメスタージャでは5試合で1試合しか勝っていない。グアルディオラはベルナベウでのほうがもっといい数字を残している。

今回もまたグアルディオラにとっては悪いことが起きる可能性がある。バルセロナはグアルディオラの下で素晴らしいチームだった。おそらく史上最高くらいの。しかしメスタージャでの5試合のうち4試合は先制されてからなんとかドローに持ち込まねばならなかった。

当時のバルセロナはどんなチームでも一掃してしまうようなチームで、エメリのヴァレンシアとの戦いではいつもテンションが高くタイトな試合となった。

グアルディオラが2011に語った。「わたしはウナイについて、グレイトで、グレイトで、グレイトな意見があるよ。彼のチームを見れば、彼らがやっているすべてがそこにあることがわかる。ここ数年で彼がよりバジェットの潤沢なバルセロナやレアル・マドリッドのようなチームとライヴァルになれているのは偶然ではない」

エメリはヴァレンシアでつねに上位チームに食らいつこうとしていた。しょぼい財政状況やキープレイヤー(ダヴィド・ヴィジャ、ダヴィド・シルヴァ、ラウル・アルビオル、フアン・マタ)の放出にも関わらず、3シーズン連続でラ・リーガで3位に入っている。


彼のマネージャーとしての実力はグアルディオラには明らかだったし、選手たちの信頼もまた失うことはなかった。

元ドイツ代表でセヴィーリャでエメリの下でプレイしたHedwiges Maduroが語っている。「バルセロナは当時最強チームだった。だがわれわれはいつだって彼らと戦えるという感覚を持っていた。彼らのほうが自分たちより優れていたことはわかっていたよ。でもいつもちゃんと試合になるって感じていたんだ」

このような自信はエメリが大切に育てたものだ。

Maduro「単に11人の選手と監督というだけではなかった。彼はとてもいいコーチでありマネージャーだった。なぜなら彼はいつもグループのことを考えていたし、ドクターやほかのスタッフのことさえ気にしていたよ。プレイしなくたってチームに重要なんだと。彼の信念はその姿勢が結果に現れるというものだ。彼にとってそれが重要だったんだね」

エメリは、期待を越えていくだけなく、コレクティヴなスピリットを求めていた。しかし同時に複雑で様々な種類のゲームプランを実行しようとしていた。

Maduro「誰でもフィロソフィというものは持てる。でも選手本人がそれを信じていないとき、100%の力を出すことは不可能なんだ。選手が自分たちがプレイする戦術に自信と信念をを持つ、それが大きい」

それはヴァレンシア時代のエメリにとっても大きかった。エメリは速いペース、ハイプレッシングなプレイスタイルで知られていた。しかしアーセナルの前任者であるアーセン・ヴェンゲルは違う。ヴェンゲルは相手に対して戦術を調整することに消極的で、しばしばビッグゲームでは通用しなかった。エメリはひとつのアプローチに固執しない。彼は戦術的に柔軟だ。

その実用主義はバルセロナと戦うときにはいつも見ることが出来た。

Maduro「どの試合も毎回違うんだ。だからどの試合も違うアプローチが必要になる。いつもみんなが大好きな攻撃ばかりできるわけじゃない。ときどきは明らかに相手のほうが強い。そういうときは現実的になってボールを支配できないことを受け入れなければならない。それでもエメリはいつも勝とうとしていたけどね。ビッグゲームで使うアプローチはいくつもあった。ときどき後ろを固めたり、ときどき、バルセロナを驚かせようとして4人で攻撃したり。エメリのアイディアはいつも相手を驚かせるものだった。バルセロナとだって、ときには高い位置からプレスをかけた。また別のときには深い位置に下がってストライカーのためにスペースを開けたり」

Maduroはエメリとグアルディオラの戦いのなかで最高のときも最低のときも経験している。メスタージャでの2-2ドローに得点で貢献したときもあるし、ノウ・カンプでメッシのハットトリックで3-0で負けたときはレッドカードを受けたこともある。ときどき、エメリのチームは単なる下位チームのようだったが、バルセロナの弱点をさらけ出すことができたマネージャーは何人もいない。

Maduro「それがぼくらがエメリとともにバルセロナに行ったことだよ。彼らのウィークポイントを見つけてそこを突く」


もはや伝説的なエメリのヴィデオへの執着。エメリはときに何時間も外部をシャットアウトしてしまうときがある。敵をヴィデオ・フッテージでスカウティングし、チームと選手個人あてのヴィデオクリップをつくることに熱中する。元ヴァレンシアのホアキンは冗談めかして語った。「エメリからあんまりヴィデオを渡されるものだからポップコーンがなくなってしまった」

Maduro「それに辟易してる選手もいたけど、ぼくにはほんとに重要だった。なんかの学校に行ってるみたいだったよ。最初は難しい。でもその結果を見て自信をつかんでいく。ピッチ上でというよりももっと選手としてみたいなこと。敵のことをよく知らなければならない。情報がたくさんあればあるほど、準備もできるようになる」

このヴィデオチュートリアルはいつもあったし、とくにバルセロナに対しては入念に行われた。エメリはいつもRBのダニ・アウヴェスのランを防ぐために特別なアレンジをしていた。しばしば彼はLBのジョルディ・アルバとジェレミー・マシューを一緒のサイドで使った。それはディフェンスのためでもあったが、ブラジル人が後ろに開けたスペースを使うためでもあった。

これは非常に効果的な戦術だったことが証明された。マシューは正統派ではないウインガーのように見えるが、2010年にノウ・カンプで2-1で惜敗した試合でも、彼はそのポジションからパブロ・エルナンデスの先制点をお膳立てしたし、また翌年にもメスタージャでの2-2の試合で同じエリアから2得点をお膳立てした。

Maduro「それがトランジション時に使えるスペースだったんだ。バルセロナのフルバックが攻撃で開けた後ろのスペース。われわれがボールを持ったらウインガーとストライカーはそのスペースに駆け込む。エメリはそのことを事前にヴィデオとプレゼンテーションでぼくらに見せていた。だからその試合でそうなるのは自然だった。ルックアップする必要すらない。だってポゼッションが変わったらチームメイトがすぐさまそこに走り込んでいるってわかっていたし。彼のメソッドが報われたいい例だ。ビッグチームとの試合ではすぐに実行に移す。せいぜいふたつかみっつのチャンスしかない。たくさんはないからね」

エメリはシーズンの早い時期のグアルディオラとの対戦では、彼もまた戦術的主導権のためにカウンターを起こそうとセットアップしており、十分なアドヴァンテージを徹底できなかった。またヴァレンシアの選手たちはたただ単にボールを追いかけ回すことに疲れてしまったりもした。しかし彼には今回またチャンスがやってくる。日曜のエミレーツ・ステディアム。

Maduro「アーセナルでのトレイニングの様子をヴィデオで少し見たよ。献身的で精力的で彼が今までやっていたのと同じだ。ぼくが思うに、エナジーやいくつものアイディアをピッチ上で表現しようとしている。彼にはいい結果が必要だ。選手たちに自信をつけさせるためにもね。でもヴァレンシアでは彼のフィロソフィを信じるのに時間はかからなかったよ。アーセナルでもうまくいくんじゃないかな」

以上。

エメリを信じる

ぼくはいつもネガティブなことばかり書いてしまうので、このブログにとってはこれはバランスのいい記事かもしれない。たまにはこういうのもないとね。

エメリがアーセナルで成功できることに希望が持てるじゃないか。時間はそれなりにかかるだろうし、成功の基準はライバルチームに比べて低く設定せざるを得ないけど。。

対グアルディオラの結果はさておき、エメリがグアルディオラに対してどのように対処しようとしていたか、そしてそれが結構惜しいところまでいっていたという事実。グアルディオラ自身もエメリの有能さを認めていると。

そういう意味ではエメリの有能さを一番よく知っているのは対戦相手の戦術家なのかもしれない。トゥヘルもエメリとフットボールについて語り合いたいといっていたし、フットボール・スクールというのかフットボール学徒というのか。ことばはなくともフットボールで語り合える。拳を交えればわかるってやつですね。

エメリの方法は、どんな敵であってもあくまで自分たちのスタイルでプレイすることにこだわったヴェンゲル監督とはまるで好対照のアプローチといえる。弱点を探して相手を徹底的に研究する。それは対戦相手へのリスペクトでもあると思う。

仮に、もし、万が一、エメリでアーセナルがうまくいかなかったとしても、長いスパン、大きな流れでみればアーセナルFCが時代遅れのコンセプトからステップアップしてモダンフットボールの潮流に乗った、そのことが重要だ。

もうシーズン開幕ですよ!

さて直近の問題は日曜に向けてもう時間がなく、この短い期間のなかで、ヴェンゲリズムに支配されていたチームにエメリの方法をどれほど浸透させることができているかだが、プリシーズンを見る限りでは楽観的になれる部分となれない部分がある。

やりたいことはわかる、うまくいった部分もある、しかし所々にあるほころびが隠せない。そんな感じだろうか。

またスクワッドについては(エメリが責任を負っているわけではないが)ここへ来てチェンバースの謎のローン移籍もあり、あらためてセンターバック問題が注目されている。イングランドでの獲得のデッドラインデイとなる今日、チェンバースの替わりを誰も取らなければ、つまりエメリがマヴロパノスとホールディンに大きな信頼を寄せているということになるが、ほんとにそうなのか??

また不在が指摘されているウインガーも結局取らない可能性が高そうだ。好意的にはネルソンへの信頼とも取れなくもないが、果たして。

無視できない課題はあるにせよ、もうシーズンが始まるまで3日しかないとか!

しばらくブログを続けてきて、シーズン中はアーセナルの試合レヴューというものをレギュラーでアップしてきた。ヴェンゲルさんのときは勝っても負けてもプレイスタイルはほとんど一緒なので、毎回称賛したり罵倒したりすればいいだけだった。

しかし今後は試合ごとにエメリがどういう意図でどういうふうに選手を動かしていたか、ある程度そういうことも見ていく必要がありそうだ。

大変な仕事だなあ(笑い)。

文字ばっかでエンタメ性の低いブログながら、これからも読んでくだされば幸い。



6 Comments on “エメリはグアルディオラとどう戦ったか

  1. 更新お疲れ様です。
    いよいよ開幕が迫って来ましたね!
    時間はかかるかもしれないですが、アーセナルの変化やネルソン、スミスロウ、エンケティア達の成長を感じられるシーズンになれば良いなと思います。
    シーズン中の更新も楽しみにしています!

    1. どもども。

      若手をしっかり出してくれたら楽しめそうですよねー

  2. デンベレ
    デンベレ
    デンベレ
    欲しすぎる
    頑張れディックロー

  3. デンベレ。間に合うのかなあ。

    最後の締めのように、確かにブログを書く人にとってはなかなかたいへんですね。
    読み手としては、いつも楽しみですが。

    初戦がビッグマッチなんで、わくわくも大きいですが、それにしても怖いなあ。

  4. デンベレはバルサに残るって決めたらしいし、今年10Mユーロで残りの90Mは来年払うとか、噂になってるガナーズのオファーも塩っ辛いですからねえ。。

  5. 戦術もそうですがベンゲン時代よりもアグレッシブな選手達が見れるだけでも本当に幸せです

    頑張れ!

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