こりゃ驚いたの驚かないのって。いや驚いたんだけど。
Arsene Wenger: Ex-Arsenal boss ‘might not return to management’
昨シーズンいっぱいで22年に渡るアーセナルFCのマネージャーを退任したアーセン・ヴェンゲル氏が、最新のインタヴューで自らの去就についてほのめかしたこと。
それはフットボールマネージャーからのリタイヤ。。
退任後の去就については、一時はPSGやRMといったビッグクラブのマネージャーに就任するだとか、FIFAの重職に就くだとか、これまで数々の噂が囁かれてきたが、なかなかつぎの本格的な動きが見えぬままはや一年が過ぎていた。
そんななか、BBC Sportsのデイヴィッド・オーンスタインの取材に応えたヴェンゲル氏が、AFC退任後初めてマネージャーに戻らない可能性について言及したという。
この発言が驚きをもって迎えられたのは、これまでずっとヴェンゲル氏は現場復帰に意欲を見せてきたからだ。
あらためて、何を語ったのか、確認してみよう。
アーセン・ヴェンゲルの最新インタビュー(2019年5月)@BBC Sports
※小見出しの一部は訳者による。
「マネージャーに復帰するかはわからない」
ヴェンゲル:(フットボールクラブの)マネジメントにはすぐに復帰するつもりだったんだ。しかし、それとは少し距離を取ることも楽しんでいる。
いまわたしは岐路に立っているといったところだよ。
フットボールの世界で、わたしがまたマネージャーをやっているところを見られるか……わたしにもわからないね。
今年、わたしはたくさんのチャリティワークやカンファレンスに参加して、それを楽しんだ。そこは認めないと。注目がそんなに集まるものでもないし、ストレスにさらされることも少ない。
インテンスなこともないね。でもいま起きていることについてベターな見方ができるんだ。わたしは(今年のフットボールクラブの)マネージャーたちのミステイクを見ていて、これは割に合わないなと思ったんだ。
そしてこういう結論にたどり着いた。わたしが人生で学んできたことをシェアしたいと。なぜなら、人生なんて、ある時期に来てしまえば、知っていることを共有してなんぼじゃないか。
それをどうやってやるか? フットボールの試合に勝つ? それとも別のやり方で? それがわたしが決断しなければならないことだ。そして、その決断はすぐにすることになるだろう。
フットボールはいまでもわたしのパッションだよ。すぐに戻るはず。でもそこで何をやるかははっきりとは云えない。
‘I miss Arsenal because I left my heart in there’
ヴェンゲル:コンペティションが恋しいし、アーセナルが恋しいよ。だってわたしのハートはそこに置いてきたのだから。
このクラブに人生の22年間を捧げた。わたしの人生の時間を余さずこのクラブに捧げた。クラブでわたしたちがつくりあげた価値が恋しいと思う。
わたしはアーセナルをサポートするよ。永遠にわたしのクラブだ。
「ヨーロッパリーグの件は悪夢のようだ」
ヴェンゲル:(ミキタリアンの件は)ファンにとってはちょっとした悪夢だね。
チームは問題ない。彼らは理想的なところにいる。プライヴェートジェットがあるし、いいビジネスシートがある。問題はファンだよ。
ミキタリアンの状況はフットボールでは起きてはならないことだ。
2019年の、それもとても洗練された民主主義のあるヨーロッパ内で起きていることとしてはふつうじゃないと感じる。政治的な理由でプレイできないなんて。
ヨーロッパの勢力図のシフト
ヴェンゲル:以前のヨーロッパではたくさんのチームが支配勢力だった。レアル・マドリッド、バルセロナ、バイエルン・ミュニック、ユヴェントス。みんなやられてしまった。
パリ・サンジェルマンは今年のCLを取るいいチャンスもあったし、ほかの勢力よりも成熟した選手たちがいた。
彼らはチームを刷新する必要があるね。違いをつくれる選手たちが、いまは少し年をとった。
だから、今年の夏の移籍市場がとてもとても興味深いんだ。
以上
おれの雑感
アーセナルを退団して以来のヴェンゲルさんは、このインタヴューでもコメントしているように、かなり精力的に活動しているように見えた。
数々のイヴェントに姿を見せ、大きな試合のTV中継では出演するだけじゃなく、「さすが」と云いたくなるような示唆的な解説をいくどもした。
ツイッターなどを見ていると毎週のように何かしらヴェンゲルさんの話題があって、むしろアーセナルでマネージャーをやっていたときよりも忙しく働いていると思えるくらいだった。そしてそれが、なんだか楽しげに見えたりもした。
ヴェンゲルさんが今後フットボールの現場に復帰しないということは、つまり方向転換だ。彼は退任後にもフットボールマネージャーにこだわりたいと何度も云っていたのだから。
ぼくだけじゃなくファンの多くは、アーセナルの最後の数年は結果が出ず、ほんとにストレスを抱えたし、硬直状態のアーセナルで何かを変えるにはヴェンゲルさんが退くことが一番いいと信じていた。
でも、彼のリタイヤまで望んだわけじゃない。またどこか別のクラブを率いるヴェンさんの姿を見たいとずっと思っていた。だから今回のコメントはショッキングだった。
でもでも、そういった方向に気持ちが傾く理由もわからないではない。自分でも言及しているように、22年間のプレッシャーから一度離れて快適なポジションを少しでも味わえば、そこから離れて再度濁流に身を任せようと思うには相当のエナジーがいる。モチヴェイションがいる(『3月のライオン』でそんなくだりあったなあ。。)
それに躊躇したからといって、これまで第一線をがむしゃらに走りつづけてきた69才を誰が責められようか。
思うんだけど、フルタイムのクラブフットボールは難しいとしても、ナショナルチームのマネージャーくらいはやれるんじゃないか。
日本代表にどうだろう。一票いれたいね。
※追記
Arsène Wenger: ‘All of us have competition. My toughest one was with myself’
似たようなタイミングでGuardianやMirrorにもインタヴューが。
BBCでも少し触れられているヴェンゲルさんが出資しているというスポーツテック企業「Playermaker」についても語っている。