今晩FAカップファイナルが行われる。
セミファイナルでまさかアーセナルがシティに勝つとは思わなかったし、そもそもこのグダグダのシーズンにおいて、アーセナルがここまで勝ち進んだことは奇跡のようなものだろう。しかしいずれにせよミケル・アルテタが、ヘッドコーチとしてファースト・シーズンからメイジャータイトルを取れるチャンスがやってくるとは、もっけの幸いとしか云いようがない。
PLを8位で終わるなど、現在もひきつづきチームをめぐる状況は相変わらず厳しいからこそ、ここから再生しようというアルテタとこのチームにとってこのトロフィが与える意味はとてつもなく大きい。
また相手は去年もELファイナルで当たったチェルシーとあって、因縁を感じざるを得ないところ。こちらが(CL出場をかけた)重いプレッシャーを背負い、背水の陣で試合に臨まねばならないという試合前の状況もまた去年と同じ構図だ。
雪辱を果たす好機が思いがけず早くやってきた。この機会を逃すわけにはいかぬ。
この試合を占ってゆこう。とても長くなりそうなので、コメント集から。
アルテタの試合前プレスカンファレンス「タイトルを取れば信頼がうまれる」
予定が1日ずれ、昨日行われた試合前記者会見。オフィシャルサイトのトランスクリプトより。過去最高という感じのボリューム。。
FAカップファイナル
(試合前のエモーション)
アルテタ:ワクワクしてる特別な日。われわれはFAカップをたくさん勝っているし、また勝ちたい。自分にとっても特別。ヘッドコーチとして初めてのファイナルであり、選手としても最後のシーズンでFAカップを取った。ボーイズもやる気マンマン。
(今回はチェルシーが本命)
知らん。ファイナルだよ? 目的、集中、エナジーがトロフィを勝ち取る。どこからスタートするかなんて関係ない。チェルシーはとてもいいときにあるし、今シーズンはカムバックもあったが。
(ELフットボールを得られるかもしれないビッグデイ)
そう。それについてはあまり話したくないが、たしかに財政にはとても助かる。もちろんスポーツ面でもそうだが、このクラブはヨーロッパでプレイしなければならない。明日はどちらも得るチャンスだ。
(FAカップファイナルが“Heads Up FA Cup Final”に名前を変えたことと、ファイナルに正しいメンタリティで臨む重要性について)
まず、彼らがやってきたワークはまったくもってすごい。みんなが話したくないと思っていることかもだが、それ(メンタリティ)はとても重要で、ときにはフィジカルサイドよりもよほど重要だったりする。それらはとても関係しているから。
ふたつめの質問については、わたしはたくさんのマネージャーたちを知っているが、わたしがそれについて話すならペップは言及しなきゃいけないし、アーセナルについてももちろん。
(ドレッシングルームでの試合前スピーチはどうする?)
わたしがいつも必要としているフィーリングは、自分たちがどうあるかと少しばかり匂いたい。自然体で振る舞うときもあるし、あるいは何か準備して話すこともある。しかし、土曜に何か準備するにしても、それが行うのに正しいときではないと信じないなら、そんなことはする必要がない。だから、わたしは明日何が必要かチームの様子を見て、彼らを(メンタリーに)トップにあげられるようにするつもりだ。
(選手たちはジョルジーニョに掴まれないよう、腕にベビーオイルを塗っておくべき?)
ノー。彼はクレヴァーな選手で、やるべきことをわかっている。それも競争のうちだよ。
(チームを築いていくのにファースト・シーズンでトロフィを勝ち取れるのはどれだけ大きい)
タイトルを取れば信頼が生まれる。みんなで乗り越えいいエモウションが生まれる。最後にはみんなが団結しいい思い出を持つことになる。それが勝利ということであり、トロフィを勝ち取るということで、どんなクラブにもとてもポジティヴなものだ。プロセスの途上にいるのなら、よりいっそう重要になる。明日はグレイトなオポチュニティがある。取りに行こう。
(カップファイナルをからっぽのウェンブリーでプレイするということ)
いつも云っていることだが、わたしにとっては英国フットボールでもっとも美しい日だ。シーズン最後の試合で、みんなが待っていて、みんなが観ていて、ふたつの色で染まったウェンブリーのアトモスフィアがあり、それはもうとんでもなく美しい。それを楽しめないことは残念だ。
(マネージャーキャリアのなかでこんなに早くトロフィの可能性があること)
まったくすごいことだ。わたしが来てからも、タイトルを勝ち取れるようなクラブに戻るためにずっとハードワークしてきたから、それが叶うのならとてもうれしい。しかし、わたし自身のためではない。選手とクラブのためだ。彼らはこの数シーズンはとても難しいときを過ごしてきたし、ファンだってそう。ファンには喜びやナイスモウメンツをもたらしたい。
(マンシティのときのような戦術でセットアップする?)
これはファイナル。違う試合だ。違う相手で、違うクオリティがある。だから同じやり方でアプローチすることはできない。
(選手は試合に集中し、結果で来シーズンがどうなるかは考えないほうがよい?)
われわれは試合でプレイし勝たねばならない。最高レヴェルでのパフォーマンスが必要。相手のことは知っているし、あとは自分たちのパフォーマンスの結果とその日になにをやるかで決まる。
(家族などウェンブリーに来られなくて残念なひとたち)
試合には誰も来られない。わたしのワイフもキッズも家族も…… 選手としてもコーチとしても、このコンペティションではいつだって家族がいてくれたものだ。それで大いにエナジーを得たし、彼らも楽しんでくれたことが、特別な日にしてくれる。そこはみんな残念がっていると思う。
(パーティは家で家族と楽しむこと。選手たちはどう祝う?)
イエス。家でやることになるはず。われわれがやらねばならないのは勝つこと。そうしたらみんなで楽しめる。だがまず勝たないと。
バクーのリヴェンジ
(去年のELファイナルはご覧になって?)
観た。
(今回は違った結果が得られるという自信はどこからくるので?)
フットボールの1年はふつうの1年と違うからだよ。2-3週間だって、違うチームに見えることもある。だから以前の試合からたくさんのことが得られるとは思わないんだ。
(今回、去年のファイナルについてスクワッドに話した?)
ノー。
選手時代の経験
(2014年と比べて)
いろんな思いがある。当時はしばらくトロフィから遠ざかっていてプレッシャーもあった。一方でファイナルの本命でもあった。試合は若干おかしなものになったが、結局素晴らしいものになった。
(まだ2014ファイナルを思い出す?)
もちろん。すばらしい思い出がたくさんある。クラブには9年ぶりだかのトロフィだった。そのおかげでクラブ、選手、ファンとでいい絆が生まれた。街ではみんなと祝った。グレイトなメモリーズ。
(コーチと選手のときでカップファイナルのエモウションは違うもの?)
わからないね。ナーヴァスになること、その日が来るのを不安に思うこと、チャンスを得ること、ピッチにいること。すべては準備によるものだ。ウェンブリーのとなりのホテルに泊まり、その雰囲気を感じる、家族が観に来ていて、あとはピッチに出ていきスタートすれば、早くトロフィを掴みたくなる。今日のわたしも同じ気分だ。もう明日になってほしいくらいだし、そこで選手たちがいることを実感し、トロフィを勝ち取りたい。
フランク・ランパードについて
(グアルディオラが相手よりは楽?)
ノー。これはファイナルだ。プレッシャーがあり、エモウションがあり、簡単なことは何もない。目の前にはグレイトなオポーネントがいる。
(フランク・ランパードをどう思う)
選手としてのフランクは間違いなくトップだった。何年も安定してプレイしていたし、すごかった。それについては大したものだと思う。
ダービーに行ってからマネージャーとして見せているものは、彼がどういう人間か、あるいは野心があるか、チームをどう励ましてプレイさせるか。今シーズンの彼はとてもいい仕事をしている。われわれはともに若いし、相手から学ぼうとしている。だからキミが云うようにふたり(クロップとグアルディオラ)とは比べたくはない。
(チームのクオリティは、テーブルのポインツギャップに公平に反映されている?)
リーグテーブルはウソをつかないと、わたしはいつも云ってきた。いくつかの試合のなかでの決断を見れば、ギャップは少しは縮まっていたかもしれないが、まだ長い道のりがある。
彼らは今年たくさんの正しいことをやってきたし、結果を見れば、フランクはチームをとてもポジティヴに進化させていったと思う。
(アーセナルとチェルシーの差)
彼らがどれだけストラクチャがあるとか、リソースがあるとかわからない。もちろんスクワッドのことはわかる、何人いるかとか、クオリティとか、いまやっているいいワークとか。こちらにもいい選手が何人かいるし、いいスクワッドがある。われわれはすごいクラブだ。だから、われわれはいいポジションにいると思う。
ジルーについて
(ダヴィド・ルイスとオリヴィエ・ジルーがお互い元のクラブと戦う)
最近のオリーはたくさん得点している。われわれは彼を知っているし、ファイナルだってプレイした。ダヴィドについても、特別な日になるだろう。シティでのようなプレイをしてくれることを願う。
(ジルーはアーセナル時代は過小評価だった?)
さあ。ストライカーに対する要求はとてもとても高いものだよ。でもファンは彼を大いに称賛していたと思うし、当時のクラブもドレッシングルームだってそう。
(ジルーの脅威とチェルシーでの復活)
驚きはない。だってわたしはオリーを知っているし。彼はファイターだ。彼がここにいたときでも難しいときはあったが、彼はいつだってリアクトしてきた。彼はいつだって最高の選手と比べられ、ハードにワークしてきた。彼がいまうまくやっていることはとてもうれしく思うけど、明日はうまいことやらないでほしいね。
オバメヤンの契約について
(オーバの最後の試合になる恐れ)
それは恐れてない。
(FAカップに勝てばオバメヤンを慰留するには十分?)
ノー。わたしが云っているのは、結局パッケイジだよ。選手を説得するにはたくさんの材料が必要になる。忘れちゃならないのは、彼にはまだ契約があるということ。われわれが彼をより長期でキープしたがっているということはあるが、現時点で彼はここにいて、彼もまた自分のいる場所について誇らしく思うべきだと思う。
(FAカップに勝てばオバメヤンは残りそう)
そう。選手として経験したいことすべてには強い結びつきがある。トロフィを取ることは、信頼になる。「Wow、ぼくはもっとこの瞬間を味わいたい」。アームバンドをつけて、カップを持ち上げることができれば、そんなすばらしいときはない。それが(慰留の)助けになるのは間違いない。
アーセナル・ヴェンゲルとのやりとり
(この試合の前にアーセン・ヴェンゲルと連絡を取っている?)
ノー。彼とは連絡を取っていない。この数ヶ月は何度か彼とやりとりをしているが、ファイナルの前にはとくにない。
(ヴェンゲルがFAカップをリスペクトしていたことから影響を受ける)
いま、FAカップについてはマネージャーたちがどう思っているかをわたしは知っている。リーグでタイトルを取るのがどれだけ難しいか。PLで勝てるのはたった1チームであり、だからすべてのトロフィがマッシヴになる。
競争がどれだけ進化しているかわかるだろう。チーム…… 以前に使われていたラインアップの種類と現在のそれ、みんながいま行っていることの重要性。セミファイナルを見れば、チームの進化や数年前との比較でも、だいぶ違っている。だから、思うにクラブとマネージャーがこのコンペティションにどれだけ重きを置くかは、いい計測方法だと思う。
(今シーズンについてアーセン・ヴェンゲルと話していること)
ノー。個人的な会話だ。彼が親身になってアドヴァイスをくれるのは素晴らしいことだ。ただ話すだけだよ。彼は何でも知っているから。知的な人物であり、彼がいた当時のことを話してくれたりサポートをしてくれたり、安心させてくれる。
(フットボールについて相談するにはアーセン・ヴェンゲルがベスト?)
彼とは何でも話せると思うよ。そして教科書を出してノートを取るのさ。
その他
(選手たちが、あなたがアーセナルを選手たちがいたいクラブ、一部でいたいクラブにさせると云っている件)
わたしの仕事のもっとも重要な部分だ。自分たちの選手をハッピーにさせ、彼らが楽しんで仕事をしていて、彼らがこのクラブでプレイすることがどれだけラッキーかわからせ、自分たちのやり方でプレイすること。われわれにはつながりが必要で、最後は人間的なつながりがキーになる。
自分も選手にはサポートしてもらいたいし、彼らには全力を尽くし、お互いに全力を尽くす。だから、そういうことを聞くのはわたしはとてもうれしい。わたしが彼らに思っているのと同じなんだから。
(コーチングスタッフには誰が加わるので?)
シーズンが終わったとき、それについて話し合う。
以上。
アルテタは選手としてもアーセナルでFAカップのタイトルをとっているということで、そのあたりがフィーチャーされたインタヴューになっている。
また今回はアーセン・ヴェンゲルとやりとりしているというくだりが少し話題になっていた。
しかし考えてみれば、アーセン・ヴェンゲルとペップ・グアルディオラという、世が世ならこの世界にもっとも革命的なものをもたらしたふたりの薫陶を受けているというのは、ミケルもなかなかのサラブレッドでありますな。