試合の論点
アーセナル vs ニューカッスルのトーキングポインツ。
自信回復がカギになることを再確認
今回は要するにケチャどばだったように思える。
ケチャどばというのは、アレだ。デルモンテじゃないハインツ的なトマトケチャップをひっくり返して出そうとするんだけど濃厚だからなのかなかなか出てこなくて、あれーなかなか出ないなーあれーと逆さに揺らしつづけていたら突然中身がどばっと出ちゃってオムレツが大惨事みたいなアレである(この説明いる?)。
前半はシュートがポストをかすめたシーンもあったし、後半早々にはラカゼットのシュートが相手GKにファインセイヴされたりもしたので、たしかに得点のにおいがまるでなかったとは云えないが、悪い流れにどっぷりつかっていたという感じはあった。おれは前半寝そうになった。
チームでずっと何かきっかけを探していて、そしてそれをキャプテンがやっと見つけてくれたという。
そしてリードしたことで一気に肩の荷が下りた。これで試合に勝てるとようやく信じられた。それがエナジーになった。自信のパワーというのはほんとうにすごい。
あの50分のオバメヤンの得点がなければ、その後どうなっていたかはわからない。とくに0-0で終わった、がっかりすぎるパレス戦のあとではそう思われた。
ここで理解しておくべきことは、このチームはまだそういうはっきりとしたきっかけがないと、自分たちをちゃんと信じることができないチームだということだろう。こんなにも長いあいだ悪い状態がつづいていたのだから、当然でもある。一見調子が良さそうに見えても「勝てないかも?」と一瞬でも脳裏に浮かぶようなら、簡単に自信が揺らいでしまうようなもろさ。
それこそ先日のFAカップのニューカッスル戦やパレス戦がいい例だろう。あんなにもチームが改善されたように見えていても、きっかけを掴めないと途端に前へ進めなくなってしまう。
試合でリードするというような明確な根拠がなくても、自分たちが必ず勝つ、自分たちが相手より絶対に強いと信じられるようになるには、いまのような良好なフォームが何年もつづいて、自信を確実なものにしていかねばならない。
今回の試合では得点までのわれわれのパフォーマンスを観て、ほんとうの強さを身に着けるにはまだ時間がかかりそうだと思ったものだ。
そういう意味で今回の勝利は非常に大きかった。前回は久しぶりにポインツを失っていて、ここでまた連続してポインツを失うようならせっかく取り戻しつつある自信はまた後退していたに違いないのだから。
オバメヤンが2得点でバックインフォーム?
前半にせっかくお膳立てしてもらったいくつかのチャンスを決められず。
前半の最大のチャンスだった14分のサカの右足クロスに合わせたシュート。ポストにあたってしまったのは、若干QBKっぽいところがあったので、いくらゴール前が空いていたとはいえ責めるのはちとかわいそうに思えるが(※QBK云いたかっただけ)。タップインゴールの達人なら決めてほしかったけれども。
また自分が左サイドからボールを持ってボックスに侵入するシーンも何度かあったが、どれもあまり脅威にはなれず。トップストライカーなら大変に残念なことである。
ただ、あれは思うに、彼の自信レヴェルが落ちているということもあるが、そもそも彼はあそこで単独で脅威になれるようなタイプではないということだろう。良くも悪くも、彼の最大の武器はゴール前でのタップインである。チャンスはつくってもらってなんぼであり、ましてや自分がチャンスをつくる側ではない。ああいう局面では彼のよさはあまり発揮されない。
と、前半は相手のロウブロックを前に、これまでの低フォームを引きずったようなプアなパフォーマンスだったが、後半になってすぐの50分にはパーティのロングボールからカウンターで決めてしまった。左足で。単独で。
あそこはそこまでの流れを見れば、いかにも外しそうなシーンで、だからこそびっくりした。
でも結局それが、オバメヤンのようなビッグプレイヤーなんだろうとも思う。やぶから棒に決めてしまう。
そしてそれがすべてを変えてしまった。あまりにも大きな1点だった。
彼の2点目は得意のタップインゴールだろう。セドリックがつくってくれたチャンスボールに足を合わせるだけだった。
0️⃣1️⃣0️⃣ @DFCO_Officiel
0️⃣0️⃣2️⃣ @losclive
0️⃣0️⃣2️⃣ @AS_Monaco
0️⃣4️⃣1️⃣ @ASSEofficiel
1️⃣4️⃣1️⃣ @BlackYellow
0️⃣7️⃣8️⃣ 𝗧𝗵𝗲 𝗔𝗿𝘀𝗲𝗻𝗮𝗹
0️⃣2️⃣6️⃣ @fegafoot_gabon3️⃣0️⃣0️⃣ @Aubameyang7 🤝 pic.twitter.com/cOAoXsblKQ
— Arsenal (@Arsenal) January 19, 2021
オバメヤンはこの試合でキャリア300ゴールズを達成。
契約更新後はずっとフォームを落としていたキャプテンだが、これをターニングポイントにしてほしい。
もし彼がこれまでのシーズンのようにゴールを量産するようになると、アーセナルはさらに強くなれる。というより、彼がフォームを戻してくれないかぎりは、トップチームにはなれない。このチームの命運はまさにキャプテンの双肩にかかっている。
ESRとサカのパートナーシップ
今回もまた大活躍のふたり。オバメヤンのゴールから5分後のふたりのゴールにはしびれたものだ。あれで試合は決まった感はある。このふたりのコンボによるファインゴールというのも、いまノッているYoung gunsを象徴していた。
Good night, Gooners! 👋😄
✅ #ARSNEW pic.twitter.com/LxMd9QStNE
— Arsenal (@Arsenal) January 19, 2021
Players to score 5+ PL goals as a teenager for Arsenal
Nicolas Anelka
Cesc Fabregas
Theo Walcott
Bukayo Saka pic.twitter.com/m9bKnP3WXP— Sky Sports Statto (@SkySportsStatto) January 18, 2021
Smith Rowe up to five assists and two goals in 10 appearances for #AFC this season. A goal or assist every 80 minutes at the latest count.
— Sam Dean (@SamJDean) January 18, 2021
#Arsenal’s record when Emile Smith Rowe has been named in the starting line-up.
W W W D W W W W D D W W W W D W
— Harvey Downes (@HarveyDownes92) January 18, 2021
そしてやはりここで特筆すべきはESRだろう。今回も彼はエンジンに油を差しつづけた。
ドリブルで相手DFを翻弄するだけじゃなく、キャラガーの云うように、あんな局面でもつぎにボールをどこに出せばいいのかちゃんと見えている落ち着きがある。ただやみくもにクロスボールをゴール前に放り込んでインシャラーというのとは全然違う。ESRがグリーリッシュに見えるぜ。。
前半のオバメヤンのQBKのシーンでもふたりのいいコンビネイションは観られた。
右からESRがボールを持ってカットインサイドしていくと見せかけて、自分がDFをひきつけてつくった右ワイドのスペイスに忍び込んでいくサカを見逃さない。そこから大きなチャンスにつながった。
ファイナルサードの狭いスペイスのなかであっても、彼がしっかりとした視野を持っていることが証明されるシーンでもあった。
Minutes per goal involvement all competitions this season: (as of 60th minute tonight)
Kevin de Bruyne 96.88
Croydon de Bruyne 96.86#ARSNEW— Orbinho (@Orbinho) January 18, 2021
チャンスにつながったシーンのいくつかで、ESRは左右のワイドエリアからボールを持ってプレイを始めていたこともあり、今回もまたぺぺと比較して観ざるを得なかった。ESRはぺぺにしてほしいプレイをする。ぺぺにしてほしいプレイというのは、アルテタも何度も口にしていることだが、相手にとり予測不可能になってほしいということだ。
今回、試合後のSky Sportsのインタヴューでも指摘されていたように、彼のワンタッチプレイが注目されている。ワンタッチプレイというのは、つまりほかの選手を使って自分も生きようというプレイである。局面でテンポをつくろうというプレイでもある。
そこではボールを持った選手と周囲の選手との関係や動きといったものが多層的に絡まり合って(ユニットになって)、つぎのオプションがいくつも生まれるので、相手は対応が難しくなる。だから効果的だし、それこそ観たかったアーセナルらしいチームプレイでもあると、ぼくは思う。
一方で、ぺぺはピッチでつねに孤立しているソロイストである。阿部薫である(※参考)。味方を使って自分が生きようという意識はあまりない。ボールを持てばまず1 v 1ありきで、それがダメならつぎのオプションは…… とその場で考える。テンポが生まれない。また、彼はまれに1-2パスを試みようとすることもあるが、そういうときはたいていほかにオプションがないときで、相手にもバレバレ。簡単に防がれてしまう。ひとりの世界なので、相手にもその先の展開が読まれやすい。
ESR的なチームプレイのなかで、彼のようなソロイストがアクセントをつけるというのは理想的なチームかもしれない。軽自動車のようなキビキビしたこじんまりとした動きのなかに、突然スーパーカーが入ってくるというのは、たしかに組み合わせとしてはおもしろい。だが、現時点ではこのチームのなかでぺぺを組み込んでうまくいくような想像がしにくい。
彼はアーセナルに来てからPLとか外国とか新しい何かに適応しなければならないというのが、彼の課題だと云われつづけてきたが、もっとプレイそのものを適応というか、アップデイトする必要があるだろう。毎度同じような結論になってしまうが、ぺぺが進歩するためのヒントはESRやサカのプレイにあるはずである。
閑話休題。
それにしても、いまチームのなかでもっとも安定してパフォーマンスしているふたりが、チームでもっとも若いふたりというのもまたアーセナルらしさなのか。
3 – Emile Smith Rowe has assisted three of Bukayo Saka’s Premier League goals – they are the first English duo to combine for as many as three Premier League goals before either player has turned the age of 21. Future. #ARSNEW pic.twitter.com/1CrEzLhPPi
— OptaJoe (@OptaJoe) January 18, 2021
OptaJoeによれば、PLでESRはサカの3ゴールをアシストしていて、21才になる前の英国人コンビとしてPLで初めてということ。なんてこった。
ちょうどエジルの退団が決まりそうという世相もあって、サンチェス&エジルから、時代はサカ&ESRになってきたと感じるひとも多い。ここにさらに、サカ&マルティネリというコンボもあることを忘れちゃならねえ。
これからが非常に楽しみだと云わざるを得ないっすね。
ESRには新契約がオファーされるという情報もある。ソースはあやしいがこの活躍っぷりならば、そうなったとて何もおかしくはない。できるだけ早く済ませたほうがよろしい。
「ミッドフィールドのロールスロイス」トマス・パーティ
昨今のアーセナルでは、サカ、ESR、KT、マルティネリなど、だんだんとチームがフレッシュなクオリティで満たされてきている感覚があるが、トマス・パーティもそのなかの重要なひとりになりそうに思える。
この試合も67分のプレイながら、クオリティを見せつけた。なかでも彼のヴァーティカルパッシングはインプレッシヴで、ミッドフィールドでボールを持ったときに、つねにmake things happenしようとしていた。テクニックもヴィジョンもすばらしいが、もっとも素晴らしいのはそういうエリートメンタリティかもしれない。ずっと最高レヴェルでプレイしてきた選手だけある。
これでまだ完全にはフィットしていないのだから、これからどうなってしまうのか。
今回はアシストをひとつ記録。アーセナルに来てからついに直接ゴールに絡んだ。
あのオバメヤンのオープナーのうち0.3点くらいは彼にあげたい。そんな松木安太郎な気持ちにさせてくれるような精度の高いロングパスだった。
それと注目したいのは、そのパスを出す前のアクション。完全なカウンターでオウンハーフには相手選手たちがたくさんいて、あそこでラカゼットからボールを受けたときにすぐ前方にパスを出すことは難しかったが、ボールを持って相手選手をひらりとかわしたのにはしびれた。そこからのアレである。目立たないシーンだったが、さすが50Mの漢という感じがしたものだ。
あるものは彼を「チャンピオンズリーグレヴェル」だといい、あるものは彼を「MFのロールスロイス」と云っていた。まったくである。
われわれはもう4シーズンもELレヴェル、ミッドテイボーレヴェルで戦ってきたが、そろそろCLレヴェルに近づいてきているんじゃないかという予感。
Thomas Partey’s game by numbers vs. Newcastle:
66 minutes
95% pass accuracy
67 touches
14 final third entries
9 ball recoveries
3 interceptions
2 chances created
1 assist
0 fouls committed— Squawka Football (@Squawka) January 18, 2021
夢がふくらむなあ。
その他試合について
- またしても起きた前半の停滞はどう分析され、つぎに生かされるのか。ESRとサカがつぎの試合でどういうアプローチになるか見ものである。もっと自由になっているかもしれない
- この試合も終盤のESRはクタクタに見えた。おつかれである。ESRがこれだけ絶好調だと、彼のバックアップかあるいは彼と同じようにプレイできる選手が必要になってくる。どうしよう
- ジャカも好調をキープ。ボールリカヴァリが15。バケモンか
- セドリックもファウルスロウをやる。ウケるw
- ラカゼットも好調をキープ。後半始まってすぐのシュートはなぜ決まらなかったのか不思議なくらいよかった
- 2009年以来の5連続クリンシーツ。今回はほとんどゴールを脅かされず
- エイミー・ロウレンスが指摘しているが、アーセナルは無観客になる前と比べてかなりヴォーカルなチームになっているということ。それ以前はもっとずっとおとなしかったと。いいサイン
- セットピースでパーティをボックスに入れないのは意味がわからない
試合については以上。
いつもブログ楽しく拝読させてもらっています。
今週土曜日のセインツとの試合はFAカップですよ!
ありゃ。ご指摘ありがたう!
あんなにロングパスを蹴らないルイスは初めて見た。
ポンポン蹴らない事でチームのリズムが違ってきたと思うし、割とDFラインも高かったと思う。
序盤を除けば。
それで足が速くなるわけではないし(w)、優勢な試合だからできたとも言える。
しかしFAカップ~前節から上手く修正したと思う。
パーティは、とにかくすげえの一言。
常に動いて受け、運んでアングルを変えて、そこから少なくともジャカと同等のキックを蹴る。
いや、すげえ。(語彙)
しかしこれはジャカにとっても良い事だと思う。
「俺はもっとやれるはずなのに何でだ!」って思うから相手にのど輪を食らわしたりするんだろうが、パーティの隣でプレーすれば、ジャカがもっとやれてない理由は明らかだ。
結局のところキックの質だけがパーティに匹敵するのだから、それを生かす動きを磨くしかないと思う。
これは主に頭の問題だから、27だから遅いという事はないはず。
久しぶりにコメントします。
ESRやサカ、ティアニーの勢いに乗ってベテラン勢も徐々に躍動しつつありますね。ペペやナイルズも波に乗って欲しいですね。
セカンドGKの話題が出ていたので、ちょっとしたネタを。
少し噂が出ていたスウォンジーのGKウッドマンですが、結構有力な候補かもしれません。
23歳と若いですが、スワンズのGKを務めており、結構な数のクリーンシートをあげています。また、2017年に世界一になったイングランドのU20代表の正GKを務めていました(ちなみに、この時のセカンドGKは昨季シェフィールドUで大活躍したヘンダーソン(現マンU)だそうです)。
しかし、ローン元のニューカッスルにはドゥブラフカとダーロウがおり、十分な出場時間が見込めないためか、契約更新しておらず、今年の5月で契約が切れるそうです(トランスファーマルクトによれば)。うちのバログンみたいな状況です。
そして、興味深いのが、ウッドマンの父アンディはアーセナルのU23のGKコーチしているという情報です。
GKコーチのイニャキ・カナの秘蔵っ子、ダビド・ラヤもいいかもしれないですが、ウッドマンもいいかもしれません。
> スウォンジーのGKウッドマン
名前すら初めて聞いたッス。。へえ。
トーマスのとんでもフィードは思わず変な声が出ました。守備も出来て前に進める事が出来る、書くのは簡単だけど難しい事をポンポンやってしまうのはワールドクラスだなと。そしてそのフィードから単騎で決め、もう1点はらしいワンタッチゴールのオバメヤンも良い感じに。
セドリックも良いパフォーマンスでこれから楽しみです。
そしてエジルの移籍が公式発表されたらアルテタは何を語ってくれるんでしょうか。深読みしすぎかな。
テンポよく前線にボール配給できるMFがいればもっと安定して勝てるかなと
結局トーマスの相方が欲しいですな。セバージョスなら出来ると思いますけど彼来年いないのでね…