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【マッチレビュー】21/22EPL レスター・シティ vs アーセナル(30/Oct/2021)ラムズデイルの驚愕セイヴ。アーセナルのグッドフォームつづく

試合の論点

レスター vs アーセナルのトーキングポインツ。

アルテタのチームづくり。選手の入れ替えとチームのフォーム向上の好循環

今回は直接のライヴァルかつアウェイゲイムということもあって、そうとうな苦戦が予想されると思っていた。

しかし、いい意味でその予想は裏切られた。90分を通して趨勢を観れば、アーセナルの劣勢の時間のほうが長かったので、これを楽勝というのは多少抵抗もあるが、まあ概ねアーセナルにとってはいい試合だったろう。

とくにアーセナルの試合開始からのパフォーマンスは目覚ましかった。

1分にも満たない時間には、サカとラカゼットでもうボックス内に侵入しチャンスをつくり、レスターのタフなプレスのなか、たくみにボールをつないだ。ミドフィールドで三角形をつくりワンタッチでパス交換するさまに、近頃のグッドフォームからくる自信を感じたものだ。この試合の序盤に観られたああいう短いパスを頻繁に交換するといったリンクプレイは、悪いときの自信を失ったアーセナルにはついぞ観られなかった。

そして2本めのコーナーキックから早くもガブリエルが得点。チームはとりわけセットピースの改善に取り組んでいたというのだから、このゴールに選手たちはだいぶ気持ちがアガっただろう。

その後も、集中力を欠いていたのか、雑なプレイでなかなかビルドアップできないレスターに対し、アーセナルはボールを持ってからはいつも効率的で、それが17分のESRのゴールにもつながった。彼のゴール自体は運良くボールが目の前に転がってくるごっちゃん要素もそれなりにあったが、そこまでを観ればあれはれっきとしたチームゴールに違いない。

アーセナルにはボールを持ったら判断を迷わない・間違わない余裕があり、ボールを持った相手に素早く詰めるアグレッシヴさもあった。

そこからは、徐々にレスターが落ち着きを取り戻し、後半はとくに勢いが増していったものの、結局無失点で試合終了。ブレンダン・ロジャースが試合後に語っていたように、ホームチームの悪いスタートが試合を決めてしまったのだった。

ぼくは開始20分だけあらためてフルマッチを見返してみたが、やはりアーセナルはいろんな意味で相手を上回っていた。

前回のPLヴィラと今回のレスターと、ふたつのビッグテストにアーセナルはかなりいい試合をしたということで、ブライトンとパレスの惨敗気分のふたつのドロウからはだいぶ雲行きも変わってきたように感じるが、ではアーセナルはなぜここまでパフォーマンスを改善できたのか。

ぼくは3つの選手の入れ替えがカギになったんじゃないかと感じている。それは、ぺぺ・KT・オーデガード。この3人はいずれも、連勝したPLヴィラ、レスターでスタートしていない。

ぺぺはアルテタのチームのなかではもうずっと期待通りの活躍ができておらず。それがこのチームの構造的な問題と切り離せないことについては、このブログでも何度も書いてきた。ゆえに、彼がいないほうがアーセナルの攻撃が活性化することについては、とくに目新しい現象でもないかもしれない。ぺぺとサカを比較したときの右サイドにおける生産性は、今回の試合を観てもあきらか。サカはボールを持てば毎度右サイドで脅威になっていた。

なので、この3人でとくに注目したいのはKTとオーデガード。今シーズンは揃ってそれまでのフォームを取り戻すのに苦しんでいるふたり。

まずオーデガードは、これまで彼を使わないとき、アルテタはESRを中央に置いて、サカとぺぺのウィンガーでプレイすることを好んできた。それも悪くなかったが、現在アルテタはオーデガードが中央にいるときと同じようにESRをウィンガーとして使い、中央にラカゼットを入れるようになった。

厳密にはラカゼットは4-4-1-1のセカンドストライカー的ポジションで、オーデガードがNo.10や8/10でプレイするときの役割とまったく同じではないだろうが、ミドフィールドに落ちてビルドアップを助けたり、ハイプレスをリードしたりといった役割においてはオーデガードの代替となっている。これが期待以上にうまくいっている。

以前アルテタが「No.10のESRを発見」する前に、ラカゼット(とウィリアン)をNo.10起用していたときといまとでは効果が全然違うのはなぜだろう。そこは、戦術的な要素や周囲の選手のセレクションも関係あるのかもしれない。まあESR発見前はESRはPLでプレイすらしていなかったということもある。とにかく、いまラカゼットがいるほうが、調子の戻らないオーデガードを使うよりはよほど効いているように見える。

もっとも、フェアにいえば、この試合のオーデガードはサブで入ってからけっこう効いてはいたけれど。彼のスタンダードからすれば、もっと目立ってほしいというのはある。

それと、わりと大きな影響を感じているのはKTの不在。それとヌーノ・タヴァーレスの台頭。台頭というにはまだ早いかもだが、大器になりそうな予感はある。

KTとNTで何が違うのかというと、やっぱり予測可能性なんじゃないかと。

悪いときの(今シーズンはとくに)KTは、将棋でいうところの香車みたいな感じで、相手にとってはまったく予測可能な動きしかできずにいた。左サイドを縦に突破して左足のクロスか、それができなければ後ろに戻すかのほぼ二択。少なくとも以前の彼は飛車に見えたのに。

ところが、タヴァーレスはヴィラ、リーズやこの試合でも観せたように、サイドラインを駆け上がるだけでなく、ボールを持ってからチャンネルに入っていく予測できない動きがある。スペイスを見つけるのが早く、そこを単独で突破できるドリブルのセンスもある。KTの香車に対して成飛車と云ったらさすがに云い過ぎか。しかしそこまで万能ではないせよ、彼のこの3試合のパフォーマンスはわりと際立ってよかったと思う。

正直、KTのような選手とルーキーをこうして比較するのは、若干気が引ける部分もある。KTもフィットネスが戻ればPLのベストLBに戻れると信じている。だが、相手がKTのプレイを熟知しているのに対し、相手がタヴァーレスのプレイを全然知らないというのはおそらく事実であり、その違いはそれなりに大きいように思える。これはトミヤスの最初の数試合にも感じたことだ。著しく予測可能だったアルテタのチームのなかに、何をやるかわからない選手が混じっているというのは貴重である。

ぼくはだんだんタヴァーレスが桜木花道に見えてきている。周囲は彼のことをまだ全然信頼していないのに(何ならハラハラしてみてる)、なぜか本人だけは根拠なく自信満々みたいな。そして凡ミスをやりつつ、けっこうみんながWowと驚くようなプレイを平然とやってのけたり。おもしろいやつだ。いまのチームにはこういう型にはまらない個性が必要だったと思う。単純に観ていて楽しい。

アーセナルとしても、KTとLBポジションを競えるバックアップが理想だったはずで、ヌーノ・タヴァーレスのここまでの活躍は思わぬ発見になっている。

ジャカ不在の影響? それはどうだろ。いまのロコンガなら、まだぼくはジャカのほうがいいと思う。きっとジャカもこれほどまとまったチームのなかでなら、もっとチームをよくするプラスアルファを加えてくれるだろう。ロコンガはこの試合も何度か相手に決定的なパスをミドフィールドで通されているということで、わりとスイッチオフしてしまう時間帯があると指摘する声もある。

そういうわけで、いまのチームは攻守で非常にバランスが取れていて、明らかに以前より強くなっているようだし、結果も出ている。棚からぼたもちとかケガの功名とか、すべてアルテタのアイディアやお手柄というわけではないとしても、でも結局彼が選んだ11人でこうしてワークしているのを観るに、ここにたどり着いているのは、やはり彼の手腕なのではないかと。理想を追うだけでなく、ちゃんとチームに適応してる。

ところで昨日、シーズン3連敗スタートのあとのエドゥのインタヴューを読み返していた。長いやつ。

エドゥのロングインタヴュー。戦略とスクワッドバランスについて語る「批判は選手全員がフィットするまで待ってほしい」 | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

彼が云った「批判は選手が揃ってからにしてほしい」ということばには、あのとき否定的な反応が多かったのだけど(あの状況なら当然かと)、結局いま、彼の云ったとおり選手が揃ってパフォーマンスが改善して、だいぶあのときの批判を見返しつつあるのだよね。アーセナルはクラブとして長期戦略を見据えつつ、短期の結果を出さなきゃいけなくて、そしていま短期の結果を出し始めている。

いまこれを読むと彼の発言に対する考えが変わるかも? このインタヴューからまだ2ヶ月しかたっていないというのに、ぼくらもほんと考えがコロコロ変わるのに忙しいね(自戒を込めて)。

アルテタもエドゥも、あの3連敗から選手が揃って、自分たちがつくってきたチームにいい訳できないところまで追い込まれたプレッシャーを思えば、なんだかんだでそこからのバウンスバックだから、トロイ・ディーニーもびっくりの肝っ玉。

もちろんエドゥやアルテタの仕事についての総合的な評価はシーズンが終わるのを待ってからになるが、いまのところは、期待してよさそうに思える。

スーパー・ラムズデイル

いわずもがな。もちろん文句なしのMOTM。8セイヴズ。バケモンか。

彼がいなければ試合の結果が変わっていた可能性はある。2-0から1点でも返せばムードはだいぶ変わっていただろうし。とくに前半終了間際にアレを阻止したことはほんとうに大きい。

なんというNo.1。試合中何度かレノのなんともいえない複雑な表情がカメラに抜かれていたのが。

あのトップセイヴについては、ピーター・シュマイケルのコメントがすべてを物語っている。彼は息子の試合を観てただけなんだろうけども「ここ何年も観たことがないベストセイヴ by ラムズデイル」と絶賛tweet。10万件以上のLIKEが。

あのショットセイヴは、たしかに何度も観られるものじゃない。とくにアーセナルのGKがあのようなセイヴをするのはいつぶりかちょっとわからない。どういう反射神経をしているとアレができるのか。

それと、彼がGKとしての評価を爆上げしている配球は、今回もトップだった。

今回あれだけ劣勢の時間が長かったので彼のロングボールは5/30と数字は振るわなかったものの、それでもいくつか印象的なロングパスを決めているのはハイライト動画のとおり。

あれはすごい。GKからあのようなパスが通ると、もうハイプレスは完全に無効化される。ラムズデイルがああいったプレイを今後もつづけてくれれば、ハイプレスに躊躇するチームが増えるかもしれない。シーズン終了後に、対アーセナルへのハイプレスがそれまでよりどれだけ減ったか確かめるのが楽しみだ。

r/Gunnersにポストされた「ラムズデイル謝罪フォーム」がおもしろかった。彼を批判していたファンがこれで彼にごめんねできるという。

なぜそんなことをしてしまったのか

□フットボールを知りませんでした □AFTVが彼はダメだって云ってたから

□アーロンに嫉妬してました □redditからフットボール情報を得すぎてました

□ロンドンが晴れてたから □彼の試合は観てませんでした

—– —– —– —– —–

□自分の振る舞いを心から謝罪し、わたしはここにアーロン・ラムズデイルをリスペクトすることを誓います

笑える。

このまま目覚ましい活躍をつづけると、ラムズデイルはほんとうにイングランドNTのNo.1になってしまうかもしれない。アーセナルが取ったGKがイングランドのNo.1になるとは。No.1になってから取ったのとちゃいまっせ。どえらい。

試合中のレスターサポーターへの反応とか、試合後の様子とか、愛さずにいられない。

ああいうAFC加入のしかただったので、彼が毎試合でどんどんファンフェイヴァリットになっていっているのを観るのは感慨深い。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

13 Comments on “【マッチレビュー】21/22EPL レスター・シティ vs アーセナル(30/Oct/2021)ラムズデイルの驚愕セイヴ。アーセナルのグッドフォームつづく

  1. お疲れ様です。

    得点以外も含めてCKほんと工夫するようになったなーと思いました。ガブリエルめっちゃ強い💪

    あと、リード奪った後に消極的になる現象、ダゾンの情報で判断するにアルテタの意向では無さそうで安心しました。(プレスが弱いことに不満を漏らしてるみたいなこと言ってましたし)
    あの早い時間で引くには早すぎだし、正直今の得失点を考えると少しでも多くの得点を目指して欲しいので…。

    トロイディーニーで思い出しましたが、次はワトフォードでしたね。なんか知らないですがワトフォードは嫌な記憶ばっかり焼き付いてるので、是非完勝して欲しいですね。

    COYG

  2. サンビのポジションがだいぶ高くなり、良くなったと思う。ただ明らかに数的に余ってるのにパーティの横でステイしてる時もあって、あそこは前に出るべきだと思う。

    おそらくサンビは連携がないのを考慮して慎重にやってるんだろうし、移籍直後のプレーとしてそれが悪いとは思わない。ただ志はあくまでも高く持ってほしい。究極を言えばシュートで終わるのが一番リスクがないわけだから、サンビがフィニッシュに絡まないことは(特にこのサッカーでは)すでに1つのリスクだと思う。

    ラカとオーバの共存に関しては、後列からのパスが良くなったという面もあると思う。特にラムズデイルのパスはこの2人に直接バシバシ通っていて、いきなりあそこに通るならそりゃあ。。という気もする。
    ただこの構成にしてからまだ一度もビハインドの展開がないし、もしそういう状況ならGKからあんなパスは通らない。ウーデゴーアの復調とかサンビの攻撃参加とか、オプションを増やして行かないと先々苦労すると思う。

  3. また勝ちましたね。すばらしい。
    若いチームが自信をもってプレイすれば、こうも強くなるのですね。そこにシニアがアクセントをつけるとゆう。
    あのときエメリのゆうとおりペペではなくザハをとっていたら、どうなっていたのでしょう。少なくともペペにはもうちょっといい未來が待っていたのかも。今の状況はあまりにも気の毒ですが、出てもロストの繰り返しだど…やはり彼はオバの後継者として覚醒してほしい。

    つぎの試合も楽しみです。COYG

  4. エヴァンスの件は確実にレッドだったと思います。試合後にレッドカード取り消しになったりはあるのに、レッドカードになる場合ってあまり例がないような。でも、取り消しと同等に扱われるべきだと思います。

  5. なにかがおかしい、、、
    八百長やスキャンダルの類じゃないにせよ、この偏りはアーセナルはもっと主張すべき。それとも何か主張できない理由でも??

    FKは、試合観ながらラムズデイルのキックが観てみたいと思ったものです。チラベルト的な。

  6. 暫定でも6位は素直に嬉しいですね。いや、こんなことだけで喜んでいてはいけないのですが、あとはスローインや交代枠、オーデガードとガビ―の覚醒、というところですかね。サカにもう少しゴール期待したいのと、ペペはミッドテーブル相手だと無双になったりするので、そのあたりで調子あげてほしい。いい状態でLFCにあたれるよう、次の試合も応援しましょう!COYG

  7. 6ポインターやりましたね
    とりあえず結果には大満足で最高です
    ただ、内容は最高とは言いづらいですね
    ラムズデールに勝たせてもらったと言っても過言じゃないです
    アーセナルは向こう10年はGKには困らなくてすみそうですね
    もぅイングランド代表のNo.1GKはラムズデールで決まりじゃないですか笑
    結果は違いますけど、ほんとサポーターが歌ってる通りOneNil Arsenal的な内容だったし、攻めるのをやめる時間も早すぎる
    せめて60〜70分ぐらいまでは攻める姿勢を見せてアグレッシヴにいってほしいとは思います
    アルテタの性格というか戦術というか、手堅すぎる感じがしますね
    それでも勝ってくれればいいんですけど、トップチーム相手には通用しないような気がするし
    ラムズデールも毎試合大当たりなわけじゃないし
    しっかりとせめて互角ぐらいには試合をコントロールしてほしいかなぁて感じです
    でもほんと良く0で抑えたなと思いますし、これがさらに自信になって安定感を得られればと思いますね
    あとはどうしても気になるのはオーバメヤンの存在感の薄さですね
    確かに守備は頑張ってるとは思うけど、本職の攻撃で存在感をみせてもらいたいです
    なんか周りの選手も心なしかオーバメヤンにボール出すのをためらってるようにみえるのは気のせいですかね
    でもまぁなんやかんや言ってもチームが結果を出し続けられるならOneNilArsenalでも全然問題ないです
    このディフェンスを武器にして勝ち続けてほしい
    大きな一戦をものにしたアーセナルは最高です

  8. 難敵相手に勝ちきれるアルテタの良さが出ましたね。
    Chanさんが触れましたが引っ張ってきたセットプレーコーチがいい仕事してるんでしょうね。
    その後追加点取れたらいつもみたいな前プレスではなくてリトリート気味でフォメの噛み合いで前半は素晴らしい出来。
    後半は相手の修整に対して後手後手というか、ウーデゴールはキチンと仕事してた気がするが、ぺぺはよくわからんかったな。。
    サイドをガンガン押し込まれたなかでのラムズデール!!
    前のエドゥの記事で自分は「今のアーセナルにリーグで勝ち点を独力で稼いでしまうようなタレントなんてぶっ壊れたの移籍金/給与じゃないとこない」とコメントしてしまいましたが、反省です。
    ラムズデール!! 勝ち点をもぎとるスーパーなタレントです!!
    いやちょっとこれは素晴らしいタレントの成功を目の当たりにしてますね!
    いやあ昇り調子!!

  9. 今度こそ信じてもよろしいんでしょうか?
    リヴァプール戦も期待してよろしいんでしょうか?

  10. エドゥはソーシャルアビューズこそ凄かったみたいですが、ファブロマーノさんなんかも終始擁護していたし皆んなが皆んな批判的ではなかったと思います。

    サリバの扱いで評判を下げてるのと、契約延長したジャカも批判が多い選手なのでエモーショナルな反応が多かったのだろうと思います。

  11. ラムちゃんの縦パスすごかったなー
    エデルソンとかアリソンはあんなパスポンポン出してるかな?

  12. ラムちゃんのパスすごかっなー
    アリソンとかエデルソンはあんなのばんばんやってんのかな?
    うちのラムちゃんの方が上じゃね?

  13. ボールを持って持ち上がると対面の相手はなんらかのアクションを起こさないといけないし目線も引きつけられるので、裏側にスペースが生まれるんですよね。そこに降りて顔を出すラカや、ハーフターンして加速orパスの2択を突き付けられるESRが水を得たように活躍しやすい、と。

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