『GOAL』が毎年発表している、つぎの世代のフットボーラー50人を紹介する企画記事の今年度版“NXGN2022”(※2003年1月以降生まれに限定)が、いまから一週間ほど前にアップされていた。
そのなかで、アーセナルからチャーリー・パティーノ(Charlie Patino)とマルセロ・フローレス(Marcelo Flores)というふたりの18才がランクイン。それぞれ、28位と48位。
パティーノは、今シーズンはトレイニング参加だけでなく、カラバオカップではファーストチームデビューも果たしていて、来シーズンは本格的にファーストチームスクワッドに入っていくともっぱらの評判。デビュー戦でゴールまでしているのは出来すぎなストーリーだった。まさにスター予備軍。
また、フローレスもたびたびファーストチームのトレイニングに参加しており、パティーノに劣らずアカデミーのなかで期待されている選手。また、去年末には、この若さでメキシコNTのシニアスクワッドに招集されたことからも、非常に将来有望な選手だということがわかる。
GOALがこの記事の関連で、ふたりにインタヴューをしていたので(チャールズ・ワッツ)、今回はそちらを紹介したい。
チャーリー・パティーノ「まだ始まったばかり。もっとやりたい」
NXGN2022で28位に選出。『GOAL』より。
21-22カラバオカップ・サンダランドでデビュー&ゴール
Remember the name, Charlie Patino!
A goal on his Arsenal debut 🌟 pic.twitter.com/bN3xYUj63W
— ESPN FC (@ESPNFC) December 21, 2021
パティーノ:あれはすごい夜だった。
ぼくが入ったとき、みんながぼくの名前をチャントしているのを聴いてすごい気持ちになった。あれがとても自信になった。自由になれたみたいで、いつもやっているプレイができそうに思えた。
最初のパスを出したあとは、もっと自信が持てた。そして、ぺぺのクロスが入ってきてゴール。正直ただひたすらアメイズィング。
ぼくがおぼえているのは、あのあとスタッフやぼくのところに寄ってきた選手みんなとハグをして、こう云われたこと。「おめでとう。キミにふさわしいゴールだ。夜を楽しめ」。
ぼくの家族とエイジェントもアディダスボックスで観ていた。そこへ入っていって彼らの顔を観たときはグレイトだった。だって、みんなぼくが国中を行ったり来たりするのにずっと付き合ってくれて、何年もぼくがプレイするところを観てきたから。ぼくがSt Albans、Luton、それにHale Endにいたときからずっと。
あの夜に家族に云ったんだ。「まだ始まったばかり。ぼくはもっとやりたい」と。
ファーストチームへの渇望
ぼくにとって今シーズンはずっとグレイトだ。U-23でPL2やPapa John’sトロフィをプレイしている。そして、8-9週間くらいはファーストチームにも呼ばれたのはうれしかった。
これでファーストチームとU-23の違いがわかった。かなり違う。試合のスピード、クオリティ、どれだけ速くボールが動くか。選手の強靭さも。
自分が要求されているところが理解できた。どれほどジムをやらなきゃいけないか。試合のテクニカルやタクティカルな面でも。すべてがとても大切。
ここからはただもう始めていきたい。できればプリシーズンで彼らのなかに入って、ドレッシングルームでも自分の場所を確保したい。
(ルートン・タウンからアーセナルへ来たのが11才のとき。当時もマンシティ、チェルシー、ToTが狙っていたが、アーセナルへ行った)それが正しいと思ったんだ。ホームだと感じてる。
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(FAカップのノッティンガム・フォレストでは1-0敗けでシニアフットボールの厳しさを体験)そういうふうに、ぼくは何年も時間をかけずに学ぶことが必要なんだ。いまは、ミケルが選手たちに満足しないことも理解した。「よくやったみんな、すばらしいパフォーマンスだった」とは云わず、これでは十分じゃないと云う。
あの試合は参加してみてビッグゲイムだった。ノッティンガム・フォレストはもちろん長い歴史があって、ファンもすごく元気だ。自分たちの望んだ結果にはならなかったけど、ぼくはあの試合を楽しんだ。でも翌日はみんな落ち込んでしまった。もっとうまくやれたとわかっていたから。
ヘイルエンドの先輩、サカとESRの足跡
それはプレッシャーではなくて、ぼくのこれからにほしいものなんだ。彼らがやったことをぼくもトライしたい。
ぼくはロンドンコルニーへ毎日行き、ハードワークしなきゃならないところにハードに取り組んでる。
ブカヨとエミールは、もちろんとても才能ある選手。でも、ほかのたくさんの才能ある選手たちと彼らを分けているものは、アティチュードだと思う。彼らのマインドセットであり、彼らがどれだけ謙虚か。
ヘイルエンドからロンドンコルニーへ直接入っていくのはとてもむずかしい。ローンなしで直接ファーストチームへ入っていくのは。だから、それは彼らのワークエシックと毎日の行いのおかげなんだ。
憧れのジャック・ウィルシャー
あの試合を彼と観たんだ。ジャックはブスケツ、シャヴィ、イニエスタみたいな選手を相手に支配した。彼を観るのはすごく楽しかった。あの試合のことを話したし、彼のハイライツも観た。彼は、ぼくがたぶんやれていないことを試合でやっているところを観せてくれた。おもしろい会話だった。
ジャックがアーセナルで働いているあいだ、彼の近くにいられたのはグレイトだった。若い選手にとって、彼が近くにいたことはすごくよかった。たくさんのひとが彼から情報をもらっていた。
“train to win”
毎日ここでワークしていれば、チームが勝ったときのヴァイブがわかるよ。みんな笑顔で、みんなよくトレイニングしている。
ぼくがファーストチームのトレイニングピッチに行くと、こういうフレイズがある「勝つためにトレイン(train to win)」。
それが意味するものは、もしトレイニングでハードワークするなら、必要なすべてをやるなら、試合になったときに3ポインツを取るいい状態になれるということ。
以上
パティーノはヘイルエンド史上最高の逸材?
チャーリー・パティーノといえば「ヘイルエンド(アーセナルアカデミー)で過去最高の逸材」という評判が、わりと枕ことばのようにつねについて回っているように感じる。
その発言のオリジナルを調べてみたところ、11才のときに彼をルートン・タウンからアーセナルに連れてきたスカウト、Brian Stapletonのことばだった。『GOAL』より。2021年7月のコメント。パティーノ17才。
Brian Stapleton:わたしは何年もスカウティングの仕事をやってきて、彼がわたしが観たなかではベストなキッドだ。
ある人物からチャーリーのことを聞いて、わたしはそこへ観に行った。そしてわたしは自分が観ているものが信じられなかったよ。彼は11才で、U-13でプレイしていたと思うが、もう「wow」みたいな。
彼のファーストタッチは信じがたかった。彼のヴィジョン、スペイスの知覚。彼は彼の年代よりずっと上回っていて、ピッチ上では異星人だった。
わたしは、あのときわたしの部署の部長だったSean O’Connorにすぐ電話をかけた。彼はわたしにどう思うかと訊くから、わたしはこう云ったんだ。「わたしはもう観ませんよ。もうこれ以上観る必要もない。すぐにでもあの子とサインしないと」。
O’Connorは、ジャック・ウィルシャーを見つけたひとで、彼も、チャーリーはヘイルエンドの門を叩いたもののなかではベストな選手と云っていた。あの子にはすごいポテンシャルがある。ただ、まだそこには至っていないと。
アーセナルには、彼のために用意している進路があり、おそらくそれは、マンシティにおけるフィル・フォーデンと同じようなものだ。
チャーリーは、ピッチ上で自分とほかの選手がどこにいるかの素晴らしいアウェアネスがある。彼のヴィジョンはすばらしい。彼はパスで道を開ける。そして、彼にはうまくやりたいという渇望がある。彼がピッチにいるときはアニマルになる。ウィナーだよ。
アーセナル・アカデミーが輩出したタレンツといえば、ファブレガス、ウィルシャー、そしてサカやESRがよく挙げられるが、彼らを含めたうえで「過去最高の逸材」なのだとしたら、いったいどれだけのクオリティなのか。
Takes care of the ball with every move
22nd September 2021 Mark the Calendar
You never know
— Next Generation Arsenal 🔴⚪️ (@scoutingindoors) September 7, 2021
ハイライト動画を観るに、テクニックとヴィジョンに恵まれていて、やはりセスクやジャック、カソルラといった、アーセナルのパスゲイムを支えたスキルフルなMFsの系譜と云えそうである。
ちなみに本人はスペイン系で(お父さんがスパニッシュ)、子どものころはカソルラ、ファブレガス、アルテタらスペイン人MFにあこがれていたという。とくにカソルラ。「サンティのクオリティはすごい」。バルセロナが彼に興味を持っていたというのは、そういう理由もあるかもしれない。
チャーリー・パティーノのプロファイル
2003年8月17日うまれ。ワトフォード出身。身長182cm。国籍イングランド/スペイン。MF/CM。左足。
2021年7月にプロ契約。契約年数は不明。
代表歴は、イングランドU-15、U-16、U-17、U-19。
彼は左足で、いまのスクワッドで考えると、左の8として、ジャカのリプレイスメントにちょうどいいプロファイルではある。
もっとも、デビューゴールしたカラバオカップでの試合などを観ても、シニアの選手たちに気後れしている様子もあり、まだいい意味での図々しさが足りないように感じた。さすがに、来シーズンにいきなりファーストチームのレギュラーとしてプレイすることはないだろう。
彼をローンに出さず、ファーストチームのスクワッドに加えるなら、週末のPLではベンチ、ミドウィークのカップ戦で経験を積んで、のようなやりかたを考えているのかもしれない。夏に取るであろう、新CMと競争だ。
それにしても、なんという楽しみな選手なんだろう!
つづいて、マルセロ・フローレス。
パティーノのボールタッチは少しセスクに似てる感じがしますナ。やばいくらい正確、すべてのボールタッチが心地よくて、しかも一つ一つにちゃんと意味があるんだ!って感動したのを今でも鮮明に覚えてる。
先日のエントリーじゃないけど、セスクのは音楽的だったと思う。ただデタラメに場当たり的に音を出してる(テクニックを使ってる)わけじゃなくて、ほんの20cmボールを動かすのさえ、フィールド上の味方全員をはっきり感じながらやってたと思う。ごく優しい、心地よい会話って感じだった。
ちょうど先日そのセスクが嘆いてたようにサッカーはすっかりフィジカルな競技になってしまったけど、パティーノがキャリアのこの段階で自分の行く道がはっきり見えたのは良かったと思う。あと2回りタフになった上であの才能を活かせたら、何か今とは違うサッカーが見えてくるかも。そういや昔THEATRE BROOKに「欲しいものは~教師じゃない、道だ」なんて曲がありましたネw。