ワールドカップで中断したシーズンのリスタートまで、一週間を切った。長かった。
そんななか、アーセナルFC公式ウェブサイトに、今シーズンここまでのチームパフォーマンスを総括する特集記事がアップされていた。
これが、なかなかうまくポインツがまとまっていて、シーズン後半をあれやこれや想像するのにちょうどいい読み物だったので、今回はこれを紹介したい。
The Breakdown: Evaluating our season so far
アーセナルの22/23シーズン前半を8つのポインツで総括 by Adrian Clarke
書き手は、AFC公式動画などでおなじみのエイドリアン・クラーク氏。このひと1991から1997までクラブに在籍していたという元ガナー。最後のシーズンはローンだったので、タイミング的にはちょうどヴェンゲルさんと入れ替わりくらいか。
ではHere we go.
※今回は意訳的要約的に訳す。全体や正確なテキストはオリジナルをご覧あれ
1. Fast starts(スタートの早さ)
試合へ入っていくとき、正しいマインドとポジティヴなエナジーがあれば、それが違いになるものだ。エミレーツでリヴァプールに勝利した試合は、しょっぱなからシャープ&アグレッシヴで、その典型的メンタリティだった。
アーセナルは14試合のうち12試合で最初のゴールを奪っている。またこの期間は、試合開始30分で11ゴール&無失点。前半のGD +11は、チャンピオンのマンシティに次ぐ2位。
こうして試合のスタートからトーンをセットし、ゴールでリードすれば3ポインツに近づける。早いスタートは、このチームにとり非常に重要になっている。
2. Strong in both boxes(両ボックスで強い)
試合は、ふたつのペナルティボックスで何が起きたかで決まる。ありがたいことに、今シーズンのアーセナルはそこがうまくやれている。
昨シーズンのアーセナルのゴールは、試合平均1.6でリーグ6位。それが今シーズンここまでは2位のゴール数になっている。試合平均では2.36と昨年から劇的に増やしている。
守備面での進歩はさらによい。昨シーズンのPLでは、アーセナルより失点の少ないチームは7チームもいたが、いまは1位タイ。14試合で11失点しかしていない。ポゼッションしていないときのチームワークは際立っていて、アーセナルの守備を崩すのはかなり難しい。
3. Better pressing, more control(有効なプレッシング、よりコントロール)
今シーズン、アーセナルのプレッシングは一貫して効果的になっている。そしてセントラルミドフィールドでのコントロール改善。このふたつの進歩が顕著である。
いまガナーズは、対戦するのがかなり難しくなっているチーム。4人の攻撃的選手たちがミドフィールドにかなり関与するが、プレスの組織もレヴェルが上がっている。
それにより相手はオウンハーフで窒息しそうになり、ラインを通すパスも困難になる。アーセナルはターンオーヴァに頼るチームではないが、それがチームの戦略的アプローチ重要な部分になっている。
また、フロントからバックまでが熱心に守備をすることで、ディフェンダーの負担はかなり軽減されており、それによって相手に質の高いチャンスをつくらせない。MFのトリオ、パーティ、ジャカ、オーデガードが安心してプレイできているのは、そのおかげでもある。
昨シーズンとくらべ、平均ポゼッションは53%から58%とかなり増えて、いまやミドルサードが非常に安定している。
4. Settled side(レギュラーチームの固定)
つねにというわけではないが、とても強いチームがスターティング11を固定するのはよくあること。アーセナルでそのことが言及されるのは久方ぶりであるが、今シーズンは違う。アルテタは、かなり一貫してチーム選びを行っている。
初戦のクリスタル・パレス以降の13試合で、アルテタはスターティング11をたった11人しか変更していない。これは、この時点で2位のエディ・ハウ(20)よりも9も少ない。
アルテタには信じている方程式があり、それをできるだけ頻繁に使いたい。また彼はフォーメイションも同じ4-1-4-1、あるいは4-3-3を使いつづけている。戦術的に彼は満足しているのだろう。
5. Emerging star: William Saliba(サリーバの台頭)
彼は新しいサインというわけではない。だが、ウィリアム・サリバはそんな感じである!
ガブリエルとの強固なパートナーシップもあり、彼はファーストチームで素晴らしいスタートを楽しんでいる。
サリバのプレイは落ち着いていて、気まずい状況に動じることもない。彼はどんな場面であっても冷静で自信たっぷりにプレイするディフェンダーだ。彼にはパワーとペイスがあり、守備を愛している。このリーグでもっとも優秀なCBのひとりといっても過言ではない。
まだ14試合だけのPLキャリアながら、相手のFWは彼と1 v 1デュエルでは、すでに自信喪失するほど。早くも際立つオーラを放っている。
また彼にはゴールスコアラーというボーナスまである。
6. No reliance on a single player(ひとりに依存せず)
アーセナルの5人のアタッカーたちは、ここまで素晴らしいシーズンを過ごしている。彼らはポジションをロテイトし、意図ある攻撃を繰り出す。エンドプロダクトに関しても、みんなで共有している。
20以上のチャンスをつくっている選手が5人いるPLチームはほかにはない。たとえば、ひとりかふたり静かな試合があっても、このチームでは安定してほかの選手がステップアップし、大きく貢献している。
このチームは個人に依存していない。これは極めて健全。
7. Evolving roles: White and Xhaka(ホワイトとジャカの進化した役割)
戦術的観点では、今シーズンの早期にふたりの選手に役割変更があった。そしてこのふたり、ホワイトとジャカがチームを進歩させている。
今シーズン、ホワイトがライトバックでプレイすることになるとは誰も想像しなかっただろう。あるいは彼がそこでファーストチョイスになることを。だが、彼はその役割を素晴らしく身につけた。
インサイドでもアウトサイドでも自信を持って現れ、ピッチの深いエリアでも自信マンマンにプレイする。もう何年もRBでプレイをしているみたいである。トミヤスをベンチにしておくために、彼自身もパフォームせねばならないことをわかっている。そしてそうしている!
ジャカは今シーズンのPOTS候補だろう。B2B MFとして、かつて彼を観てきたよりも、だいぶ頻繁にファイナルサードに侵入するようになった。
彼は自由にプレイしているように観え、かつてないほどに自分のフットボールを楽しんでいるようだ。彼のダイレクトなゴール貢献、エナジーレヴェル、リーダーシップでチームを大いに助けている。
8. Main man: Gabriel Jesus(メインマン:ジェズース)
今シーズン、アーセナルではすべてのレギュラー選手がとても素晴らしいので、誰かひとり選手を選ぶのは難しい。だが、ジェズースがフロントにもたらしたインパクトはとくに際立っている。
最初の14試合で、ジェズースのスキルとシャープネスはチームの攻撃を著しく向上させた。彼がゴールしないときでさえ、彼はチームのカギになっていた。ワークレイト、激しさ、動き、ドリブル。彼よりも多くボックス内タッチが多かった選手はいないし、デュエルで彼より勝っている選手もいない。彼はアルテタのプレイスタイルに完璧にフィットしている。
ジェズースの5ゴールは、ほとんどがシーズン序盤のものながら、彼がヒザの手術から回復するまでは、ファイナルサードでの脅威には穴を残すことになる。
このチームは間違いなく、彼のエナジーとタレントを渇望することになるだろう。だが、このNo.9は、きっと完璧になって力強く戻ってくるはずだ。
以上。さいごのまとめコメントは割愛した。
公式コンテンツにこう上から目線も失礼ながら、ポインツが簡潔にまとまっていて、いい記事だったんじゃないだろうか。
ここに挙げられたポインツにとくに異論はないが、ひとつだけ違う意見(観点)があるとすると「4. レギュラーチームの固定化」は、ポジティヴだけでなく、ネガティヴな側面もあるんじゃないかなと思う。レギュラーを固定しているのは、要するに信頼できるバックアップがいないということの裏返しでもあるから。ミケルが選んでいるんじゃなく、スクワッドデプスのなさから、それを強いられているという。
Bチームでもタイトルを狙えるなんて云われていたシティみたいなチームなら、選手はたくさんのなかから選べるはずで、そのほうが強いに決まっている。戦術の幅が広がったり、フィットネスの問題も軽減できるだろうし、プレイしない選手を減らせばチームの士気も保てる。そのほうが当然チームとして健全。デプスがあれば、それもできる。そのうえでチームを固定化するコーチがいたとしても、いまアルテタがやっているのとはちょっと違う気がする。
逆にアーセナルは、アルテタのレギュラー固定化によってポジティヴだけでなく、ネガティヴな効果も少なからずありそうに思える。たとえばプレイ機会の少ないサブの選手たちは、けっこう不満を貯めてるはずであり。サンビ・ロコンガのふてくされを思い出す。セドリックなんかもかなり機会が限定されたひとり。彼はコーチングバッジをやってなければ1月に移籍志願してたかも。いま引き合いもかなりあるようだ。
アルテタはスターティングを変えないどころか、サブまで消極的なんだから、いずれにせよ非レギュラーメンへの信頼度はかなり低い。
ところで、WCブレイク中に、アルテタからの評価を高めた選手はいるんだろうか。ファビオ・ヴィエラとかどうだったろう。ネルソン不在で、彼もウィング起用のチャンスがあるかもしれない。そういえば、ヴィエラはミラン戦では試合中、RWや8など複数回ポジションを変えていて、アルテタにはかなり重宝されていた(便利に使われていた?)感じがした。
さあ、来週にはPLが戻ってくる。
アーセナルもここまでは、ほとんど有頂天というくらいの出来だったが、問題はここからだ。ヴェンゲルさんの時代だって、途中まではトップを争いつつも、後半のある時期に失速ということは何度も繰り返してきた。
それにこれから後半戦と云っても、シーズンをまだ14試合しか消化していない。せいぜい1/3程度の消化。シーズン38試合の半分の19試合までだって、あと5試合もある。
まだまだ先が長い。
このチームがどこまで行けるか。観てみよう。
おわり