試合の論点
アーセナル vs マンシティのトーキングポインツ。
「アーセナルはマンシティに勝てない」時代は終わったのか
試合前、アルテタのアーセナルがPLで24チームと対戦して23チームに勝利、いまだ勝ったことがないチームはシティだけというデータがよくシェアされていた。
アーセナルが最後に彼らに勝ったのは2015年12月なので、アーセナルで彼らに勝てなかったのはアルテタだけでなく、エメリ氏も後期のヴェンゲルさんも勝てなかったのだけど。
それと、このような試合前のデータもとても興味深く観ていた。アーセナルが彼らに勝って以降、ほかのPLクラブがどの程度彼らにポインツを得てきたか。ビッグ6クラブがやはり多く彼らからポインツを得ているが、最低でも1ポイント取ったチームもミッドテーブル/ボトムテーブル含めてこんなにいる。全部で14チームもある。
Teams who have beaten Man City since Arsenal last managed to do it
7 Tottenham
6 Man Utd
5 Chelsea, Liverpool
4 Leicester
3 Wolves
2 Palace, Southampton, Brentford
1 Brighton, Everton, Leeds, Newcastle, Norwich #ARSMCI— Orbinho (@Orbinho) October 7, 2023
ビッグ6の一角としてももちろん、これらクラブのなかにアーセナルが入っていないというのは、クラブの顔ぶれを観てもさすがに不自然である。それだけわれわれはマンシティというチームに対して、これまで特別な苦手意識を持っていたという証拠だろう。いまや世界最強と云われる彼らでも、この間にこれだけのチームが彼ら相手にポインツを奪っていたのが事実で、なぜかアーセナルだけがそこにいない。
どうしてだろう?
エメリやヴェンゲルはともかく、アルテタが彼らに勝てていなかったのは、コーチとしてグアルディオラとあまりにも近いからかもと思ったりもする。フットボールのフィロソフィを共有し、お互いになにをやるか、やりたいかが手に取るようにわかる特殊な間柄。それゆえに「特別に」相性が悪い。みたいな。
もうひとつ考えたのは、アルテタのチームがあまりにもよくコーチされているからで、それも対ペップとしては、マイナスに働いていたんじゃないか。
アルテタのチームの組織としての完成度が高いのは基本的にはけっこうなことだけれど、その悪い面は予測可能性で、チームは彼の考えを忠実にピッチで再現するから、つぎになにをやるかが相手にかなりわかりやすく対策もたてられやすい。彼らにかぎらず、ほかの対戦相手にもアーセナルがその点で苦労させられてきたフシはけっこうあると思う。ワンパターンかあるいは複数パターンでもいいが、とにかくある程度予想ができて、想定していたことが高確率で起きる。それで、オーヴァコーチング(コーチしすぎ)などと揶揄されていたわけだ。
そんなアルテタが、この1-2年くらいで「予測不可能性」や「ケイオス」のようなコーチングと逆のことをいい始めたのは、そのあたりの反省があるかもしれない。それはいいとして。
なぜアーセナルだけが、ここまでシティに相性が悪いのかを考えたとき、そのような側面があったから、アルテタのアーセナルはなかなかペップのシティに勝てなかったんじゃないかと、ぼくは思ったりしていた。
だから、ここでアーセナルがマンシティにようやく勝てたというのは、とても興味深いことが起きたように感じる。アルテタがアーセナルに来てからの、この一連の流れにおいて。
アルテタはずっとペップを追いかけてきて、PLという本番の舞台で、やっと手が届いた。それは、マネジャーとしても、チームとしても、彼らにもっとも近づいた瞬間。
興味深く感じるひとつは、アーセナルの経験や成熟がどんどん成長していること。この勝利は、それのひとつの証明だと思う。
アルテタは試合後にチームの成熟ぶりを称賛しているが、試合前にメディアなどで不安がられていたポイントもそこだった。シティのように完成されたチームの成熟に対し、若い選手の多いアーセナルはあきらかに未熟であり、その差が違いになり結果に現れると思われていた。メンタリティの部分。
だが、アルテタもすでに再来月にはアーセナルで丸4年という時間を過ごしたことになり、確実に経験は重ねている。PLでも毎年のように新しいマネジャーが登場しているなかで、この年月生き残ったマネジャーをそろそろ未熟だとは云えなくなってきているんじゃないか。ほかのリーグとの濃度ともだいぶ違う。
また選手たちの経験値も、毎試合のように増している。とくに去年はPLでタイトルを競うというビッグチャレンジがあり、彼らは年齢に似合わないとても大きな経験値を手にしたはず。アルテタのレギュラーを固定化する傾向もここではいい効果を生んでいるのかも。それが、今回は閾値に達した。
それと、いまチームの実力がめきめき向上していること。
去年ジェズースとジンチェンコが加入していっきに加速している部分はあるが、その基礎になったのは、アルテタがアーセナルに来た当初の混沌のサイクルから脱けだすことになった「五カ年計画」だろう。そして、この試合でも白眉だったライスのような決定的な補強もつづいている。
もちろん、この間のアーセナルの移籍戦略がすべて大成功とまでは云えないが、それでもやはりこの2-3年を考えると選手補強によって、着実にチームが強化されているのは疑いないように思える。それまでのアーセナルで起きていたことを考えると、そこがかなり改善されたのが大きい。
このようにチームが進歩し強化されていくことで、トップとの距離はいずれ縮まっていくはず。そういう期待があり。こうしてついにトップを撃破する日がきた。
もちろん10回やって10回勝てるほど確実ではないが、今回6年間の殻を破ったことで、今後はそれなりの勝率は期待できるようになるはず。実際にこの数試合では、勝っていたかもしれないほど惜しい敗けも何度かあったのだから。すくなくともこの試合での勝利は偶然ではなかった。ちゃんと、いまの実力でトップに手が届いた実感がある。まあシティ目線では、キーメン不在だったと云うだろうが。ベストチームじゃなかったのはこちらも同じ。
アーセナルのファンとしてうれしいのは、今後がポジティヴなことだ。今回ばかりは、われらのプロジェクトのマイルストーンとして認識できる。プロセスを信頼してきたかいがあった。
マンシティは、去年トレブルも達成したりで、フットボールチームとしてはすでに頂点に上り詰めた。高みにいればいるほど、チームとして成長の余地はそれほど多くない。
かたや、アーセナルはチームとしてこれから成長していく余地がかなり残っている。いろんなところが荒削り。改善の余地ありまくり。なによりスクワッドの年齢が若い。伸びしろが無限大である。
アーセナルがマンシティ相手に抱いていただろう「心理的な壁」があったかどうかわからないとアルテタは述べた。いや、むしろこれを機に選手たちには積極的に心理的に働きかけていくべきだろう。「もうあなたたちの呪いは解かれましたので」と。この試合で勝ったという自信は、選手にはいい影響しかないし、その大きさは計り知れない。
つぎのシティとのPLでの対戦は3月末。もちろんアウェイ。つぎなる大きな目標はエティハドでの勝利。
「アーセナルがシティに勝てない」時代は終わったのか? そりゃ、これからを観なければわかりません。でも、期待はできる。もともと期待していたけど、この試合の勝利で、もっと期待できるようになった。それが大きい。
アルテタとチームは、今回大きな仕事をまたひとつ終わらせた。
今後どうなっていくかが非常に楽しみ。こんな気分にさせてくれたアーセナルよ、ほんとうにありがとう。
Kovačićのレッド疑惑。危険なプレイになぜか2枚めのカードは出ず
短時間に足裏で2回いく愚かなひと。1枚めはイエローどころかレッドでもおかしくなかった(VAR)。
Martinelli got sent off within 30 seconds by the same ref but this isn’t a red card offence pic.twitter.com/KCCvTx173z
— P™ (@SemperFiArsenal) October 8, 2023
この件に関しては、ギャリー・ネヴィルなどパンディット系のひとたちもここは2枚めのカードが出るべきプレイで、彼が退場を免れたのはラッキーという見方をしているひとが多いし、過去にネリに2枚連続カードを出して物議を醸したマイケル・オリヴァーだから、なお怒り心頭のアーセナルファンも多い。
もしわれらが敗けてたら、この件だけでしばらく騒いでただろう。だが今回はすぐ忘れ去られそうな予感。
だって勝ったから。よかったよかった。
その他試合について
- ハイプレスのトーンをセット。絶え間なく味方に指示。スタンドを煽る。オーデガードのリーダーっぷりよ
- 深いタックルでボールを奪ってそのまま前進というライスのワンアクション
- ハヴァーツがアーセナルで初アシスト。試合終盤のハヴァーツ効いてたな。彼はスーパーサブのほうがいい説
- トミヤスとハヴァーツの長身ふたりが走り込むボックスにロングボール。相手は絶対イヤだろ
- トミヤスのランはアルテタの指示があったというけど、彼はそもそも攻撃のランにはわりと積極的で、今回はそれがバッチリはまってよかった
- サリバがハーランドをポケットに(ハーランドはショッツゼロに終わる。2試合連続でサリバ完勝)。ロールス・ロイス
- ジェズースのRW
- ゴールセレブレイションのスタンドにおなじみのスコアガイ
- ベニーのナツメグ
Stop that Benny 🤗🎨@Arsenal pic.twitter.com/P5dKSMUrLx
— شوقي (@ishawkii14) October 8, 2023
— Renato (@orehnato) October 8, 2023
サリーバ!
この試合については以上!
サカが使えないのはわかっていて「準備できている」と言ったのでしょう。それまでとは逆パターン。
シティ側は、リコ・ルイスがファールを受けたと笛を吹かれたシーンで「なんでアドバンテージ見ないんだよぉ」って反応でしたが、振り返るとあれは多少影響しましたね。
守備強度もありますがお互いビルドアップがうまくいっていない印象でした。サポーターとしては激アツなドラマだったけど他サポーターからしたらしょっぱい試合だったんじゃないかと思います。得点場面は今季アーセナルではあまり見られないパターンだっけど、もっとあれを狙ってよいと思う。冨安の動きは去年ジャカがしてくれていた裏抜けですよね。ハヴァーツもライス(やはりIHの方がよい)もあのようにセカンド/サードアタッカーとして振る舞ってほしい。次はロドリ、デ・ブライネがいるシティを倒そう!