Hey.
ひさしぶりにつぎの試合まで一週間もあるとあってブログを油断してたら、今日はもう木曜だったでござる。そして、もしCLで生き残っていたら、今ごろてんやわんやだったなあと遠い目をしてみたり。
さて、日付としては一昨日になってしまったが、ジャーナリスト、デイヴィッド・オーンステインによるジョルジーニョの新契約についてのスクープが、ファンのあいだで大きな話題になっていたのは賢明なファンの皆さまはご存知のとおり。
🚨 EXCL: Arsenal offer Jorginho new contract & midfielder expected to sign it. Existing terms run until June with option for another year, but fresh deal rewards 32yo’s importance to #AFC
➕ Edu & Ayto make Saudi Arabia trip (no players / deals discussed) https://t.co/tloSTwOWnB— David Ornstein (@David_Ornstein) April 30, 2024
もうシーズンも最終盤で、来シーズンのスクワッドについてもますますニュースが増えている昨今、チームのなかでは比較的高齢の選手を抱えるアーセナルのMFが来年どういうかたちになるかは、ファンには最大の関心ごとのひとつだった。そして、それのヒントになりそうなのが、今回のジョルジの契約オファー。
そのいっぽうでは、昨日gunnerblogのジェイムズ・マクニコラスが、アーセナルは夏にガビー・ジェズースの売却意志ありと報じたことも大いに注目されている。
これらのニュースが示唆することとは?
今回は、このあたりのニュースと今後のアーセナルのスクワッドビルディング方針について、すこし書きます。
「アーセナルがジョルジーニョに新契約をオファー。本人もサインする意向」
『The Athletic』。閲覧は要課金。
Jorginho offered new Arsenal contract and expected to sign it
いまもトーマス・パーティの去就が不透明ななか、32才ながらジョルジーニョは今シーズンもスクワッドプレイヤーとして安定したプレイ時間もあり、アーセナルのオファーに対し、本人もサインする見込みであるとのこと。彼の現状の契約は今年の夏かぎり。
彼の契約については、彼の代理人が目立ちたがりなのか、これまでもよくメディアにこの夏のセリエA復帰もオプションであるとほのめかしていたが(ユヴェントス、ラツィオ、ナポリら)、結局は本人もアーセナルでハッピーだし、アーセナルももちろんハッピーで、相思相愛な状況がある。
いまの若い選手がそろうアーセナルのチームのなかで、経験豊富な彼はピッチ上だけでなく、ピッチ外でも非常に重要な存在であり、今シーズンもすでに試合中にコーチのように振る舞う彼の姿が観られるし、選手たちには「パパ(papai)」と親しまれている。アルテタが彼にチームにいてほしいと願っても、なにもおかしくない。
*****合わせて読みたい*****
Mr. インテリジェント。アーセナルのタイトル争いでジョルジーニョがカギになる | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
また彼もいずれコーチになる身として、いまのアーセナルはいろいろな意味で理想的な環境かもしれない。本人も、いままさにめざましい成長をつづけているチームから学ぶことも多いだろうし、クラブも彼のコーチ修行に協力的であることは容易に察せられる。
ところで、もともとのジョルジーニョの契約には、1年の延長オプションが含まれているといわれるが、AFCインサイダーのTNATによれば、今回は延長オプションの行使ではなく、あくまで新契約のオファーということ。延長オプションは期限切れ(expired)と述べている。
いっぽう、昨日のチャールズ・ワッツはデイリーのYouTube配信のなかで、その理由について「(スタート数やプレイ時間等が)オプションを発動させるトリガーに満たなかった」と述べていた。
個人的には、今シーズンのジョルジーニョは思ったよりスタートするし、プレイ時間もあると感じていたので、もしかしたらそのあたりが関係していたのかもしれない。もちろん活躍もしていたので、それをおかしいと感じたこともないが。起用頻度と契約内容の関係は、エジルのときを思い出す。彼が干されていたとき、プレイ時間によるボーナスのことがよく取り沙汰されていた。
さて、そういうわけで来シーズンのアーセナルのMFの重要なひとりがジョルジーニョになりそうということが判明した。
いまのアーセナルのMF、とりわけDMエリアは、エルネニー、パーティ、ジョルジーニョと高齢な選手で構成されていた。今年はライスがここに入って、来年意向はさらにMFの世代交代が進んでいくだろうなかで、エルネニーは夏に契約切れで退団するとして、興味深いのが6月に31才になるパーティだ。(夏にローンから戻るサンビ・ロコンガも興味深いがひとまず置いておこう)
云うまでもなく、この夏ウィンドウにおけるアーセナルの最優先エリアのひとつがここであり、ソシエダのZubimendiやニューカッスルのBruno Gなど、アーセナル界隈でも、もう長らく多くの候補者の名前が取りざたされている。
そして、実際に彼らが来るかどうかはともかく、おそらくはこの23-25才くらいの年齢レンジのDMが、アーセナルの重要なターゲットになっているのは間違いない。アーセナルがそれなりの投資をするであろう彼が、来シーズンは多くの試合でNo.6のレギュラーとしてプレイするはず。
となれば、ヴェテラン&バックアップ枠は、ジョルジーニョかパーティの二択であった可能性が高く、自ずとパーティ退団の道が開かれるという。
ちなみに、上のThe Athleticの記事では、先週のエドゥのサウジ出張についても触れられている。これは、具体的な移籍案件のためではなく、SPL(サウジプロリーグ)にあいさつ回りに行ったらしい。サウジといえばパーティの有力な移籍先。それがジョルジーニョの契約オファーのニュースとともに語られる意味は。
アーセナルではavailabilityがますます重要に
この件について、昨日の『Arseblog』がとても興味深かった。ジョルジの契約延長についての記事。
くわしくは記事を読んでもらうとして、このなかで個人的にもっとも重要な指摘に思われたのが、今後のクラブのスクワッド構築の方針として、availabilityがより重要になってきているのではないかということ。
“availability”はうまい日本語訳をいつも考えてしまう。ぼくが訳すときは文脈で「起用できること」みたいにすることが多い。要するに、ケガせずにいつも起用できること。直訳は「可用性」らしいが日常で使わないよなあ。カタカタも長い。だから今回はavailabilityで。
去年のアーセナルがめちゃくちゃ悩まされたのが選手のavailability。そして、今年のアーセナルがめちゃくちゃ恩恵を受けているのもavailability。ほとんどどの対戦相手より離脱者が少ない。ティンバーが週末のボーンマスで復帰するといううわさもあるが、この時期にフルスクワッドが揃っているとはいまも信じがたい。
とにもかくにも、アーセナルにとっては2年連続でタイトル争いに大きな影響を与えているもの。それがavailability。
パーティについては、チェルシー、ToTとこの超重要なダービー2試合でスタートして勝利に貢献し、あらためて有能さを見せたのはたしか。彼がずっとフィットしていたらなあと思わずにはいられなかった。攻撃と守備で違いをつくれる。※この2試合でアーセナルがシーズンワーストのxGAだったことと彼の6が関係あるのかないのかはよくわからない。個人的にはあまり関係ないと思う
だがしかし、彼のavailabilityが致命的。今シーズン、パーティはすべてのコンペティションで13試合プレイ(シーズンの2/3をミス)、いっぽうのジョルジはこれまで35試合でプレイしているという。
どれだけ優秀な選手でも、試合でプレイしてボールを蹴ってくれないことには話にならない。そして、彼のケガが今後改善するかどうかはまったくわからない。これまでの彼のアーセナルでのケガ履歴を思えば、それに期待しようというのは無理がある。
パーティがアーセナルに来てからの20/21以降の4年間で、ケガで欠場した試合が、21、19、6、26(TMより)という。アトレチコ・マドリッドの全キャリアでは、たった7試合しか欠場していない漢が。€50mでかっさらわれたアトレチコの呪いか?
「アーセナルは夏にジェズースへのオファーを聞く」
と、このような話がもりあがっていたところで、このニュース。アーセナルは夏にジェズースへのオファーを聞くという。
Last season, Mikel Arteta said that Gabriel Jesus “changed our world”.
But Arsenal’s world may be changing again.
With Jesus struggling for form and fitness, #AFC are ready to listen to offers for the 27-year-old in the summer.@TheAthleticFC 🔴⚪️🇧🇷⬇️https://t.co/OSlAfYqhLk
— gunnerblog (@gunnerblog) May 1, 2024
22/23シーズン。ジンチェンコとともにチームにやってきたジェズースが、アーセナルを変えたことに異論のあるアーセナルファンはいないだろう。プロジェクトの進捗が一気に加速し、シーズン途中まではまじめにタイトル候補ですらあった。なにより、目に見えてチームのパフォーマンスは向上した。それにあきらかに大きく貢献したのが、新9のジェズース。
しかし、彼もまたケガに悩まされるひとりであり、今シーズンは慢性的なヒザのケガに苦しまされている。本人も認めていたように、夏に向けては手術も検討しているというので、いまフィットネスに苦しんでいるのもしかたがない。
それと彼の場合は、ケガ以前に9(ストライカー)としての適性にはつねに疑問もあった。シティ時代も含めてPLではシーズンG15以上したことがなく、アーセナルでも加入当初のファインフォームこそあったものの、次第にゴール前での物足りなさを感じさせるようになっていった。
彼の今シーズンのPLでの記録は、ここまで24試合でプレイしてG4 A4。CLではG4 A3と好調ながら、PLでそのアウトプットでは、トップチームの9としてはとても及第点とは云えない。
そんななかで、今シーズンはハヴァーツの台頭があった。アルテタは最近はハヴァーツを9として起用することが増え、彼もまたあのポジションで期待された役割をこなし、ゴール前では極めて高い生産性も発揮、いままさにストライカーとしてブレイク中といったところである。
このふたりの9のフィニッシング比較が興味深い。PL(p90)におけるふたりの平均xGは0.4と同等ながら、コンヴァージョン率がまったく違うという。ハヴァーツの21%に対し、ジェズースは7%(※それぞれブロックされたものも含む)。1/3。ビッグチャンスのコンヴァージョンも48% vs 30%と大きな差がある。
正直、ハヴァーツもゴール前の積極性では大いに改善の余地があるように思えるが、ジェズースのゴール前での生産性の低さは目に余るものがある。
この2ヶ月間でジェズースがCFとしてスタートした試合は、たったの2。タイトル争いにおいても超重要だったふたつのロンドンダービーでも、チェルシーでサブとして20分程度プレイしただけでNLDではベンチ。いまやジェズースは、自動的に攻撃のリーダーとしてアルテタから選ばれる選手ではなくなってしまった。
今シーズンのジンチェンコとジェズースの存在感のシフトについては、以前誰かが「アーセナルのプロジェクトのフェイズ」について指摘していた。彼らがアーセナルを変身させたのはたしか。だが、あのときからクラブのフェイズが変わったのだと。アーセナルはさらに一歩前に進もうとしている。
ジェズースについては、彼のヴァーサティリティゆえ、ウィンガーとしてもプレイできるのだから、バックアップとしてチームにはいるのはなんの問題もないという考え方もある。たしかにそうだろう。サカのバックアップが長らくいない状態で、マルティネリも今年は安定しない。もちろんCFでもプレイできる。ジェズースは完璧な選手になりうる。
だが、バックアップにしては給与(£250kpw)があまりにも高すぎるのが問題だ。貴重な売却資産でもある(現在のMVが€70m)。毎試合でベンチに置いておくには豪華すぎるし、まだ27才の本人もバックアップの役割を望むはずもなく。そもそも彼はウィンガーではなく、ストライカーでプレイしたかった。
9は、夏ウィンドウのアーセナルのもうひとつの優先エリアだと云われ、ひとり優秀なストライカーが来ることは間違いないだろう。そうしたときに、ハヴァーツがおり、新9がおり、エディが売却され、ジェズースがどうなるか。
2027年まで、彼はまだ3年の契約を残しているし、クラブがこの夏に積極的に売りたいと考えているわけでもないだろうとも思う。だが、こうした事情を考えると、クラブが彼へのオファーを聞く、非売品ではないという姿勢は、ファンとしては残念ながらとても理にかなっている。
Jorginho doesn’t get injured.
Gabriel Jesus does.
Both are top players, leaders, etc, etc, but Arsenal want to keep one and sell the other for this sole reason.
Availability is the best ability.
— EBL (@EBL2017) May 1, 2024
availabilityに信頼おけないものたち
チームには、ジェズースやパーティのほかにもまだいる。この一連のニュースで、心配になってしまっている選手たちが。
ケガがちな選手として、すぐに想起されてしまうものたち。
ESR、ジンチェンコ、トミヤス。とくにこの3人は危ないんじゃないかと思わずにいられない。ヴィエラはよくわからない。ティンバーもその評価はこれからだろう。
ESRは、先月はじめにPLルートンでひさしぶりにスタートしてMOTMのパフォーマンス。アルテタも「彼は100%プランに入っている」などと褒めちぎっていたが、正直わしはまったく信じられない。それに今年のような完全バックアップの扱いなら、移籍したほうがいいんじゃないかと思えるくらいである。まあ悲しいのは、同時に彼がシーズンを通してフィットしているのも信じられないということだけども(笑えない)。
仮にほんとうにアルテタが彼を信頼していたとしても、彼の事態が変わりうるのは、夏にオファーがありそうなこと。WHUが1月に向かってきたように、彼が非売品でないなら、欲しがるPLクラブはあるようである。そのときに、断れない金額のオファーがあれば? どうなるかは想像に難くない。
ジンチェンコとトミヤスはポジションがかぶっている。アーセナルはLB(兼CB)の補強も考えているらしいので、アルテタはやはり彼らのことはあまり信用していないのかもしれない。ジンチェンコは、トミヤスにポジションを奪われ、トミヤスはケガがち。先日の彼の新契約が長期ではなかったことも、そのあたりの信頼度の低さのあらわれかもしれない。
逆にいうと、いまのアルテタがめちゃくちゃこだわっているレギュラーチームというのは、ことごとくavailabilityが信頼できるものたちなのだよね。
全員が殺しても死なないタフガイ。どんなに酷使しても、つぎの試合ではかならず起用できる。ちょっとくらいのケガなど、ものともしない兵ども。まさに兵隊。レッドアーミー。
アーセナルでは、優秀なだけでは十分でなく、それに加えてケガせず、いつでも起用できることが求められる。フェイズ進んでるなあ。
ということで、アーセナルの夏の移籍ウィンドウは、買うほうも売るほうも、このあたりを思い出しながら観ていくとおもしろいかもしれない。
おわり
availabilityは日本風に言うと稼働率ですかね。
パーティにしても冨安にしても極端に稼働率が下がってしまったのは加入後(というかプレミア挑戦から?)なので、見極めるのも難しそうではあります。