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進化するゴールキーパーの役割:プレミアリーグのトレンド

数日前、BBC Sportsにこんな記事が掲載された。

Opta insight: Premier League trends – Kane, Alisson, De Bruyne, Man City, Ozil

スタッツプロバイダ、Optaのデータを使ってプレミアリーグのトレンドを占おうという新シーズン開幕を前にした特別企画。

トピックはこんな感じ。

  • Will Cardiff be the new Wimbledon?
  • Don’t expect promoted teams to struggle
  • The ‘magic 40-point mark’? It’s time to lower it
  • Goalkeepers are getting better at football
  • Will Alisson be any good?
  • Where have all the red cards gone?
  • Will Kane ever score in August?
  • Can anyone break the assists record?

なかでも、当ブログでは何度かGKについて書いたエントリが好評だったので、その流れでGKについて言及されている「ゴールキーパーはフットボールがうまくなっている」「アリソンは役に立つ?」の2本(フンガッフッフン)をざっくり紹介してみたい。

なお、この記事がアップされたの段階ではまだアリソンが史上最高額(65Mポンド)で取引されたGKだったが、ご存知のようにこの後チェルシーが獲得したケパとかいうGKに支払った移籍金(71Mポンド)が史上最高額をあっさり塗り替えた。

さらに、移籍の噂が絶えないアトレチコのオブラクに今月中に動きがあれば、また史上最高額を塗り替える可能性がある。

今年の夏はGKの価値が一斉に上がったことで記憶されるシーズンになるかもしれない。まさに次世代のGK元年である。



ゴールキーパーはフットボールがうまくなっている

ゴールキーパーをボール回しに参加させるというムーブメントの先陣を切ったのはペップ・グアルディオラかもしれない。そしてゴールキックを(ロングボールではなく)サイドに蹴ることも特徴である。しかしそれもプレミアリーグにおいて、どんどんトレンドになってきている。

15年前のキーパーたちは彼らのパスは43%の成功率しかなかった。しかし2017/18には、それが54%にも上がっている。グアルディオラのミューズ、エデルソンに至っては昨シーズンに85.3%を記録している。これはマンUのMFポール・ポグバに匹敵するものだ。

EPLにおけるGKのパス成功率は上がってきている

それはミドルスブラのブラッド・ジョーンズが2005/06に彼のパスが4本に1本以下しか味方に通らなかった時代とは隔世の感がある。グアルディオラは伝えられているように、2005/06にはいくつかのプレミアリーグクラブでプレイするチャンスを断っていた。もしかしたら、ゴールキーパーにも感染したいい加減なパス文化に毒された英国に嫌気がさしたのかもしれない。

アリソンは役に立つだろうか?

足元のうまいゴールキーパーといえば……

ブラジリアンのアリソン、リヴァプールは史上でもっとも高額なゴールキーパーを手に入れた。それはファン・ダイクの次に高額で、フットボール史上もっとも高額なディフェンスの選手でもある。

しかしキャリアを彼の兄弟のバックアッパーとして始め、ヨーロッパにおいてはたったのワンシーズンしかフィーチャーされていない彼にほんとうに66.8Mポンドの価値があるんだろうか?

この手の疑問はどのトランスファーウインドウでもスカウト、コーチやマネージャーが直面するものだ。グッドフォームは能力や可能性をちゃんと反映したものか強制的に判断させられる。

データは役に立つ。Optaのエクスペクテッド・ゴールス・モデル(xG)は、同じ状況下で平均的な選手より優れている選手がどれくらいいるか示すことができうる。

リヴァプールのサポーターにとってうれしいのは、アリソンの数字は昨シーズンのセリエAでベストだったこと。彼が失点したゴール数は想定されたゴール数よりも8つも少ないものだった(28失点ながら、つくられたチャンスからすると36.31失点していたはずだった)。

プレミアリーグでは、この数字より優れているのはマンUのダヴィド・デ・ヘアとバーンリーのニック・ポープだけ。アリソンはまだこのパフォーマンスをシーズンを通して続けられるか見せていないが、兆しはあるし、彼に対する信頼、これも良さそうだ。

xG(期待ゴール)と実際の失点数の差

以上

ゴールキーパーは正しく評価されつつあるのか

アーセナルがベルント・レノを獲得する前に、ゴールキーパーについてのエントリをいくつか書いた。

そのなかで、まずフットボールアナリスト界隈では、ゴールキーパーの価値が正しく評価されていないという問題意識があることを伝えた。

一般的にゴールキーパーはフィールドプレイヤーに比べて移籍金が少ない。なぜならば、その価値がわかりにくいから。そのゴールキーパーがいることでどれだけ勝率が上がるのか。チームに貢献するのか。クラブはそれがわからないから大金を出すことができない。

ストライカーのような得点というわかりやすい指標のあるポジションと比べれば、ディフェンダーやゴールキーパーのチームへの貢献度を正しく評価することのほうがより難しいのは明白で、それがそのまま移籍金(選手価値)に現れている。いや、正確にはいた、というべきか。

というのも、近年ではディフェンダーに高額の移籍金が発生することも珍しくなくなってきているし(ヴェンゲル監督がその風潮に驚いていたのがほんの数年前だ)、そして今年のこのゴールキーパー祭である。

ノイヤー、ブッフォン、デ・ヘアのような特別なゴールキーパーのパフォーマンスを見れば、彼らがチームの勝利に貢献しているのは誰が見ても明らかだが、もっと平均的なゴールキーパーにおいても、以前に比べれば価値が正しく評価されるようになったのかもしれない。

これらはすべて進化したフットボールのスタッツ分析がサポートしていることはいうまでもない。

いまではスタッツ・アナリティクスで選手のパフォーマンスをより正確に吟味することができるようになったし、今後も技術の発展によってその傾向は加速していくだろう。

レノのコストパフォーマンス

レノというゴールキーパーは、そのスタッツ分析においては、彼の名声ほどには優秀ではない(過大評価)と見る向きがある。

あるスタッツではむしろ平均以下という分析もされているのは、当ブログのショットストッパーについての過去エントリでも触れた通り。

ただ、ゴールキーパーにすらインフレの波が押し寄せるなかでは、レノのような若くそれなりに実績や経験のあるゴールキーパーに対し22Mポンドというショッピングはかなりコスパが良かったんじゃないかとの指摘もある。

たとえば、チェルシーはクロトワをやむを得ずマドリッドに40Mで手放し、今度は71Mでケパを獲得。ケパがどれほどの能力のあるゴールキーパーかわからないが、取引された額だけ見れば一見悲惨なビジネスに見える。少なくとも合理的に考えればケパはクロトワよりもかなり優れていなければならないわけだ。彼はレノと比べて50Mポンドもの能力差が果たしてあるのだろうか?

また、くだんのアリソン・ベッカーだが、文中でも指摘されているように、ヨーロッパ(ASローマ)での2シーズンはまずヴォイチェフ・チェズニーのバックアップ、まともにプレイしたのは昨シーズンの1シーズンしかない。

セレソンのファーストGKが無能なわけがないが、彼のような経験の浅いゴールキーパーにレノの3倍の移籍金をかけるのはいささかギャンブルがすぎるという気はする。

もっともこのあたりは投資の考え方の違いで、1ポイント、1点のために湯水のように金を遣うビッグクラブのやり方が間違えているなんてことは決していえない。だって彼らはタイトルを取るつもりなんだから。

投資をギャンブルだと蔑視して、コスパがどうなんていってるからアーセナルはいつまでたっても強くなれないんだという意見があれば、それはもうイグザクトリとしかいいようがない。

まあコスパでいえば、ほんとはウエストハムが買ったファビアンスキのほうがもっとお得だったんだけどね。おっとしゃべりすぎたようだ。

おまけ

このBBCの記事の最後には今シーズンのアシスト記録への挑戦について書かれている。エジルが関係してくるところだからここも訳してみよう。

マンシティの昨シーズンの目覚ましい攻撃を持ってしても敗れなかった記録がひとつだけある。アシスト記録だ。

その記録はいまだに2002/03シーズンのティエリ・アンリが持っており、その数20。

メスト・エジルが2015/16シーズンにアンリの記録に追いつくかに思われたが19。

2016/17にはKDBがアンリ越えに挑戦したが18までだった。昨シーズンはデ・ブルイネとサネで31アシストをシェアした。それぞれ16と15。

(後略)

今年はエジルにチャンスがあると思う。これはまじめにそう思う。

だってラカゼットとオバメヤンという立派なストライカーがいるんだから。15/16に彼らがいたらすでにアンリの記録を大幅に塗り替えていたに違いないのだ。



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