望外のリードをもらったにも関わらず最後まで苦しんだアウェイマッチは、なんとかアーセナルの勝利に終わった。
貴重な3ポインツをゲットしたワトフォード戦。コメント集に引き続き、試合を振り返っていこう。
試合について
アーセナルのファースト11
ELナポリを挟んだこのワトフォード戦では少なからずローテーションの必要はあったが、またエメリは意外なセレクションを行ってきた。
バック4の右CBにマヴロパノスを入れて、ムスタフィをRBへ。コラシナツとAMN、両翼の温存を選んだ。ちなみにディノスは今季2度めのPL出場でファースト11に入ったのは初めて。
両サイドにミキタリアンとイウォビの復帰、ジャカが戻ってエジルがベンチというMFの5人はこのブログで予想したとおりとなったが、トップは攻守のバランスに優れたラカゼットではなくオバメヤン。
ホームチームが積極的に前へ来て、空くだろう敵陣のスペースを攻略する意図があったと思われるが、オバメヤンは開始10分でみごとエメリの期待に応えてしまった。
相手が早々にひとり減ったこともあり、試合中はややイレギュラーな対応を強いられ戦術的な混乱も見られた。これにはそのあたりの影響があったに違いない。
結果、エメリの試合後のコメントにもあるように優勢なポジションを終始維持しながらも、試合のコントロールにだいぶ苦労することになった。
マッチスタッツ
早々に退場者が出ているのだから、ポゼッション、シュートやSoTがアーセナルのほうが多いのは当然だ。
ここは失点直後のレッドカードで90分のほとんどを10人で戦ったワトフォードのパフォーマンスを称賛すべきところだろう。
xG map for Watford – Arsenal
It should have been a lot easier than this after Arsenal were gifted a goal and a man advantage, but still, they were better and they did win. pic.twitter.com/qrfvy0QWRy
— Caley Graphics (@Caley_graphics) 15 April 2019
Caley GraphicsによるxGスコアは、ワトフォードの1.1に対しアーセナルは2.1。そこに大きな差はない。
試合の論点
アウェイで薄氷の勝利。しかし大きなアウェイでの3ポインツ
アウェイでまったく結果が出せないなか戦々恐々として迎えたこの試合。
始まってみれば、戦前には予想もできなかった展開が待っていた。
10分にオバメヤンのGKへのハイプレッシングから珍しいソロゴールが決まると、直後にはディーニーのトレイラへのラフプレイからストレートレッドカード。
試合開始早々にアウェイで重要な先制点を決めて、なおかつ相手がひとり減るという思いつくかぎりの最高に理想的な展開。あとはアーセナルは落ち着いてボールを持っていれば相手が勝手に疲労していくだけで、容易に試合を支配できるはずだった。
ところがアーセナルはピッチ上でひとり多いにも関わらず、ワトフォードの攻守にアグレッシヴで効果的な動きに対し、なかなか思うような試合運びができない。
たいていひとり少なくなったチームは攻め手を欠き、局面での数的不利から全体的に後手に回り劣勢になりやすいものだ。しかし、アウェイの地で組織的な守備を前にホームほど積極的なパスを繰り出せないアーセナルのせいもあってか、ワトフォードのパフォーマンスはまるでひとり少ないとは思えないようなものになっていた。
アーセナルは訪れたたびたびのチャンスを決められないないでいると、逆襲を何度も受けレノがギリギリのセーブを強いられるシーンも。またしてもレノの活躍が見られることになったが、GKの活躍はできるならなるべく少ないほうがいいに決まっている。
何度もコーナーを取られ、そのたびにアーセナルがカウンターを仕掛けるという、どちらが人数が少ないのかパッと見ではちょっとわからないような時間帯もあった。
結局、3度の選手交代やシステム変更にも関わらず、この日のアーセナルが一人少ない相手を圧倒するどころか、逆にピンチをしのぎながらオバメヤンの先制点を守り切るかたちで試合を終えた。
最初のオバメヤンのゴールがなければ、この試合はスコアレスドローだったし、ディーニーが最後まで残っていれば失点を免れたかどうかもわからない。内容的には残念ながらこれまでのアウェイフォームを払拭したとは云えそうにない。
しかし、とにかくPLのアウェイで強敵相手に結果を残したという事実。しかもクリンシート。そして、それがこのタイミングだったこと。そこには大きな大きな意味がある。
Arsenal’s Last 3 Clean Sheets Away From Home In The PL Have All Come In Different Years
?? 2017: West Ham 0-0 Arsenal
?? 2018: Huddersfield 0-1 Arsenal
?? 2019: Watford 0-1 Arsenal #Arsenal pic.twitter.com/xjIGUKZztH
— Premier League Stat Man ?? (@EPLStatman) April 15, 2019
PLでのアウェイでのクリンシートはここ3年、1年に一回ペースでしかキープできていないという恐ろしいほどのアウェイ病。しかし、その年にたった一度のレアな機会が「いま」訪れたということ。
PLトップ4フィニッシュに向け、生死を分けるアウェイマッチは残り3試合。さらに今週ミッドウィークのELナポリもアウェイということもあり、ここでチームがアウェイでも勝てると本気で自分たちを信じることができるようになれば、それはこの3ポインツ以上の価値がある。
戦術で珍しい混乱?
この試合のなかで、後半からの采配には若干戦術的な混乱があったように見受けられたのが興味深かった。
バック4をバック3に変え、それをまたすぐにバック4に戻すという、エメリのアーセナルではこれまでに見たことがない少し珍しい光景だったのではないだろうか。振り返ってみよう。
後半開始からエメリは、ディーニーの退場に関与していたため、ホームサポーターから激しいブーイングを受けていたトレイラを下げてエジルをラムジーのポジションに投入。No.10でスタートしたラムジーをCMに下げることに。フォーメーションは変えずに選手と配置を調整してきた。
<4-2-3-1>トレイラout
レノ
ムスタフィ・マヴロパノス・コシエルニ・モンレアル
ジャカ・ラムジー
ミキタリアン・エジル・イウォビ
オバメヤン
これはカプーとデュクーレという強く激しいMFたちに対して、ミドルサードからアタッキングサードのビルドアップの改善、それと中盤でのクリエイティヴ成分を補おうとする意図が感じられる変更のように思えた。
しかし後半が始まってもオーガナイズされた守備を前に、エジルがボールに触る回数もさほど増えず、ボールを持って試合を支配するという意図した意味では期待されたような効果がなかなか現れない。
そして59分にマヴロパノスに変えてゲンドゥージを入れ、モンレアル・コシエルニ・ムスタフィのバック3にシステム変更。
<3-5-2>マヴロパノスout
レノ
ムスタフィ・コシエルニ・モンレアル
ミキタリアン・ゲンドゥージ・ジャカ・ラムジー・イウォビ
エジル・オバメヤン
もちろんバック3はディフェンスラインの補強と両ワイド(WB)をプッシュアップするシステムだ。
エメリが試合後のコメントで述べているとおり、ゲンドゥージを入れたのは中盤でビルドアップのフォローをさせる意図があったようだが、この変更でWBがイウォビとミキタリアンになってしまったことで(3-5-2?)守備のバランスを欠いたせいか、ふたりが自分がWBロールだと思っていなかったのか、アーセナルはバック3にシステムを変更してから立て続けにピンチを迎えることに。
ここでアーセナルはさらにシステム変更を試みる。
バック3にしてから迎えたピンチの数分後には、今度は最後の交代枠でラムジーをAMNにチェンジ。一度変更したバック3を10分ほどでまたバック4に戻すという、ちょっとしたドタバタ?が見られた。これは珍しい光景。
<4-2-3-1>ラムジーout
レノ
AMN・ムスタフィ・コシエルニ・モンレアル
ゲンドゥージ・ジャカ
ミキタリアン・エジル・イウォビ
オバメヤン
そこからも両チームはそれぞれチャンスをつくるも、結局オバメヤンの得点以外ではゴールは決まらず試合は終了。最小得点差だったため、アーセナルファンの安堵のため息が聞こえてきそうなホイッスルとなった。
この後半の混乱について、どういった原因があったのかは定かではないが、相手の数的不利というイレギュラーな状況がかえって対応を難しくしたのだろうか。
選手について
印象的だった選手についても。よかった選手から。
PL公式とSky SportsのMOTMはオバメヤン。脚力を十分に活かした序盤からのハイプレッシングは10分のゴールを生んだ。
その後の数々のチャンスを決めてくれれば何も云うことはなかったのだけど、そこはまあオバメヤンである。
これでオバメヤンはアーセナルに来て以来、57試合で44得点に直接絡んでいるということ。
そして今回の18得点目のゴールでPLのゴールランキングでアグエロ、サラーのトップふたり(19点)まであと1点と迫った。残り5試合、まだゴールデンブーツは十分狙える位置にいる。
この試合で目立ってチャンスメイクをしていたのは、アレックス・イウォビ。
Alex Iwobi created more chances than any other player against Watford
🔑 7 Chances Created
🔘 5 More Than Any Other Player #Arsenal pic.twitter.com/DlDT5WOypB— Premier League Stat Man ⚽️ (@EPLStatman) April 15, 2019
チャンスクリエイトが7つで、この試合では両チーム合わせてトップ(2位より5つも多い)。
序盤はサポートもなく、なかなかいつものように左サイド(ハーフスペース)を深く攻略できずにいたが、お互いにカウンターの応酬のようなオープンな展開になると、次第に左サイドのスペースを使えるようになっていった。アシストの記録を残せなかったのが残念ではあった。
ディフェンスではやはりコシエルニが光っていた。この試合でも存在感を発揮。一度競り合って背中を強打するシーンもあり、ナポリ(A)でプレイすることは間違いないだろうが少しフィットネスが心配である。
HTに流れてきたツイートでは前半のパス成功率は100%。いつものように安全なスクエアパスだけでなく、スキあらば縦パスを供給していたのが印象的だった。
Laurent Koscielny completed 100% of his passes in the first half
👟 28 Passes
🎯 100% Pass Accuracy
🔘 19/28 In Middle Third
🔘 20/28 Went Forwards(Via @StatsZone) #Arsenal pic.twitter.com/o32FVNeWk2
— Premier League Stat Man ⚽️ (@EPLStatman) April 15, 2019
ディフェンダーではムスタフィも印象的なスタッツを残している。空中戦の勝率100%(7つに勝利)。
Shkodran Mustafi won 100% of his seven aerial duels contested against Watford this evening.
The most by an Arsenal player without losing a single one in a Premier League game this season. 💪 pic.twitter.com/MvObKQnvmx
— Squawka Football (@Squawka) April 15, 2019
フィジカルが武器のワトフォードがセットピースやロングボールで脅威になることは事前からわかっていたことで、DFがエアリアル・ジュエルで優位に立てたことは大きい。
アーセナルのフルバックとしては攻撃力がまるで足りていないが、そこは承知したうえでの起用だろう。この試合の前半ではいつものように両サイドのFBを上げるということをしなかった。勝利にちゃんと貢献した。
決定的なセーブでまたしてもチームを救ったレノ、前半だけで10もボールリカヴァリーを記録したトレイラ、彼らも勝利の立役者だといえる。
悪かった選手についてもひとこと。
この試合で唯一ひどいと思えたのは、やはりミキタリアンか。
彼のサイドが攻撃で脅威になれなかったのは、後ろの選手がムスタフィがだったおかげでもあるが、それにしてもこの日の彼はビッグチャンスを含めゴール前でチャンスをことごとく無駄にしてしまった。「彼の日じゃなかった」とかそういうアンラッキーという感じではなく、ゴール前で集中力の感じられないパフォーマンスだった。
一対一のシュートをGKの足に当ててしまった最大のビッグチャンスのシーンでは、普段の彼ならすぐ左でフリーになっていたエジルに気づいていたような気がしないでもない。
ハードワークはいつも通りだし、ぼくは個人的には彼は信頼できる選手だと考えているが、コンスタントに試合に出ていないせいか今シーズンは試合ごとの出来不出来が顕著で安定感がない。少なくとも今回のパフォーマンスは200kpwのサラリーの価値はなかった。
アーセナルにはスクワッドプレイヤーに高給を払う余裕はなく、エジルと同様、クラブが夏の放出を望んでいるという憶測もあるが、来シーズン彼の扱いがどうなるのか気になるところだ。
試合については以上。勝ててマジよかったっス。
現在のPLトップ4レース(week33)
ふたたびPLテーブルを確認しよう。
相変わらず3~6位まで3ポインツのなかに4チームがひしめいている団子状態である。
今後のフィクスチャ。
これくらいの接戦だとGDも重要な要素になるかもしれない。アーセナルの+26は悪い数字ではないが、油断はできない。
このなかでトップ4争いにかなり影響がありそうな試合はチェルシーとユナイテッドの直接勝負だ。
この4チームで残された直接対決はここだけで、この試合はOTで行われるためマンUが有利。そしてそれはアーセナルには好都合だとも云える。
来週末、アーセナルがCPとホームで戦っているとき、ToTはタイトルを争っているシティのアウェイ。アーセナルがそこで3位に浮上する可能性は高い。
しかし、つぎの週、厳しいアウェイのウォルヴズ戦でポイントを落とせば、またしても順位は入れ替わるだろう。
最終日になってもトップ4争いがもつれているようだと、アーセナルにとっては最後のバーンリー(A)がとてつもなくイヤな試合になる。
まだまだタフな戦いはつづく。
つぎの試合は木曜のELナポリ(A)。この試合にもし万が一負けても、PLに集中できるというメリットはある。
しかし、ELで敗退してしまえばチームに与える落胆の影響は小さくないだろう。したがって絶対勝ち抜けねばならない。
つぎもまたタフなアウェイマッチだ。1点が重すぎるヒリヒリした本物のフットボールが待っている。今回のアウェイ勝利の経験を活かすときだ。
プレビューエントリでまた会いましょう。
COYG
ムスタヒのスタッツみるとエアバトルはチームで一番だし3バックの真ん中に置いてクロス対応を多くやってもらった方がいいのでは?
3バックの真ん中ならドリブラーと対峙しにくいのでボロも出にくいかもしれない
内容はともかく勝ち点3がなによりも必要な試合で勝てたことは嬉しいですな!
ストレートはストレイト。ローテーションはローテイションと書いてほしかった。
ムスタフィのストロングポイントに注目してるのは素晴らしい。彼は本当にヘディングが強いよ。この試合だけじゃない。足が遅いからこのチームのスタイルに合わないが、ジャカ、コラシナツ、ラムジー・・・上げたら切りがない辛辣に批判されていた他の連中と同じように評価を覆してほしいと思ってる。年齢考えても。けど、ここまでクソミソミソクソにファンから嫌われたら無理かしら。売られるのかな。
> ストレートはストレイト。ローテーションはローテイションと書いてほしかった。
あはは。ウケる。そこの表記ブレに気づくとは。おまえさんさては読者だな?
やりすぎ部分はちょっと自粛しようかなと。いっときはローテーションを「ロウテイシュン」とまで書いたおれですけど。
ムスタフィはたしかにファンの評価にはもはや変なバイアスがかかってしまっているところはあるし、云われるほど悪い選手じゃないんだろうけど、ときおり致命的なミスをやるのと、アーセナルのスタイルに合ってないってだけでここでの未来は暗いんだよなあ。
個人的にはそれでも彼を高く(正しく)評価して、適正価格で買ってくれるクラブが現れるのを願うばかり。
こんにちは!
ムスタフィはプレーはあれですけど柴犬みたいな可愛い顔が好きで憎めないです^^