1、フットボールクラブのマネジメントモデルはどのようにワークしているか
- PLクラブのマネジメントモデルは単一ではなく、変わり続けている
- 大きく分けて3つのモデルがある
- おなじみのモデル、ディレクター・オブ・フットボール
- コミッティー(委員会方式)
- 比較的新しいモデル、エグゼクティヴ・ディレクター
- 加えてアウトライヤモデル(例外モデル) それは以前のアーセナルFCのモデル
2、フットボールクラブの職分(部門)
<伝統的マネジメントの職分(Traditional Management Responsibilities)>
- 図は伝統的マネジメントモデルのベイシックなファンクション
- (順不同)メディカルチーム、強化とコンディショニング、リクルート・スカウティング、選手トランスファー、選手契約、ファーストチームのマネージャー、チームロジスティクス
これらは不変なもの。では、近年フットボールマネジメントで何が変わったか。
<モダンマネジメントの職分(Modern Management Responsibilities)>
- 今日ではより複雑になっている
- あらたに増えたのは、以下
- チームパフォーマンス。これはかなり重要。チームサイコロジー(心理学)。どうやってチームをアゲていくか
- コミュニケイションズ。これは劇的に変わった。毎日のように変化している。とくにソーシャルメディアのインパクト
- (ほかにはテクノロジー、分析的リクルート)
- 複雑化を示す例として、強化とコンディショニングの部分。10年前はホールディングMF/ボランチは、FWと同じようなフィジカル調整だった。しかしいまではポジションごとにフィジカルトレイニングのやり方が違う
- チームロジスティクスについて。飛行機、バス、ホテル、いまでは出入国管理のスペシャリストまでいる
- テクノロジーについては、この5年で爆発的なものを見てきた。アーセナルの選手は全員がトレイニングでGPSユニットを背中につけピッチ上の動きがトレイスされる。その後にはマネージャーが個々の選手パフォーマンスをレヴューする。どれだけ走ったか、どれだけ速く走ったか、どちらの方向に走ったか
- もうひとつテクノロジーについてささやかな例。アーセナルアカデミーの選手たちの親はスマートフォンアプリで、子どもたちがいつトレイニングしたか、コーチ、フィジオは誰だったかなどを確認できる
データやオーガニゼイション、マネジメントはこんなふうに変化している。答えはひとつじゃない。
つづいて、わたしがとてもよく知っているクラブ、アーセナルがどのような相手とPLで戦っていたかについて。
3、PLの3つのマネジメントモデル
<1 ディレクター・オブ・フットボール方式>
- これはかなりスタンダードなモデル(マンシティの例)
- 私見だが、マンシティはマンシティブランドのうえにストラクチャを構築している
- マンシティはPLでの成功をグローバルレヴェルで持ち込もうとしている
- グローバル・テクニカル・ディレクターがこれらの国のフットボールオペレイションを手伝っている
- 同じようにマンチェスターにいるマンシティのディレクター・オブ・フットボールが、マンシティのフットボール部門の責任者となっている
- USA、オーストラリア、ユルグアイ、日本で投資している。つまり南米、アジア、ヨーロッパでのプレゼンス
- マンチェスターではDoF(チキ・ベギリスタイン)がフットボール部門すべてを統括するという伝統的な方法
<2 コミッティー方式>
つぎはDoFモデルとは少し違うストラクチャ。現在のPLでは主流派だと思う。
- これはコミッティー(委員会方式)と呼ばれるもの
- ディレクター・オブ・フットボールあるいはスポーティング・ディレクターと呼ばれるひとたち、彼らの責任はリクルート、選手契約、分析、移籍交渉、ロジスティクス、メディカル、強化・コンディショニングといったものになる
- しかし、彼らは何も決定しない(決定権がない)
- 決定はグループで行われる(CEO、コーチ、DoF/SD、ヘッド・オブ・スカウティング、ヘッド・オブ・ファイナンス)
- DoFやSDは、むしろ情報官のようなもので、委員会グループに情報をもたらす役割
- わたしの考えでは、このやり方には弱点がある
- まず選手の売買といった重要な案件でたくさんの意見があるということ。たくさんの意見があればバイアスの最小化はできる
- しかし明確な最終決定者がいないということが問題
- わたしはこの委員会方式は気に入っていない。単純にどこかの時点では誰かが決定しなければならないから
<3 エグゼクティヴ・ディレクター方式>
これは新しいモデル。ジャーマンフットボールで見られるものだ。「Co CEO」などと呼ばれているもの。
たとえばサウサンプトンがこれを採用している。サウサンプトンのオーナーシップがドイツ人だということはたぶん偶然だろう。
- CEOがコマーシャルとファイナンスを担当。マーケティング、チケッティング、スポンサーシップ、ステディアムオペレイションズをやる
- そしてもうひとりのCEO(Co CEO)、それが「エグゼクティヴ・ディレクター・フットボール」で、彼が選手デヴェロプメント、テクニカル・ディレクター、ファーストチーム・マネージャーを見る
- 各部署はそれぞれのCEOにリポートし、ふたりのCEOはチェアマンにリポートするという流れ
- もちろんふたりのCEOはともにワークしなければならず、相性がよくお互いを熟知しているふたりのCEOは、チームプレイヤーを選ばねばならないので、彼らを選任するチェアマンの責任が重い。もしこのバランスが悪いとすべての部署がうまくワークしない
ところで、この世の中でもっとも成功したフットボールのマネジメントモデルはなんだろう。30年、25年、そのくらいで。
これがわたしが云うところのアウトライヤモデル。
今はエグゼクティブディレクター方式ですが、ガジディスやミズリンタートがいたときはコミッティ方式だったんですかね?
お、鋭い。。
また別で書こうと思って書かなかったんだけど、おっしゃるとおりガジディスとミズリンタットがかぶってる短い期間に、アーセナルはコミッティ方式を模索していた可能性があるようっす。
メンツはガジーディス、サンレヒ、ミズリンタット、エメリ、ファーミー(弁護士・契約担当)、ローゼンフェルド(StatDNAのCEO)、あとはヴェンカテシャン? そのあたりらしいっす。
ガジディスはともかくとして、ミズリンタートはコミッティ方式に移行する際の煽りを受けた可能性がありそうですね。コミッティ方式でいけば、ミズリンタートのポジションはサンジェイの下になりますからね。あれだけ補強を成功させたミズリンタートに役職を与えないとは考えづらかったのですが…あの退任劇の裏が何となく見えてきた気がしますね。