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【マッチレビュー】19/20EPL ボーンマス vs アーセナル(26/Dec/2019)アルテタのたしかな一歩

試合の論点

ボーンマス vs アーセナルのトーキングポインツ。今回ばかりはポジティヴなことしか書けねえっす。。

進歩のきざし

結果は1-1ドロウで、アルテタのマネージャーデビューを祝福するような最高の結果とはならなかったし、ボーンマスのレヴェルの相手にも相変わらずたくさんチャンスはつくられた。レノのセイヴがなければ敗けてたかもしれない。思い入れがないひとが見れば、アーセナルのただの平凡な1試合でしかなかっただろうと想像できる。

しかし、試合前に見たいものとして考えていたいくつかのポインツでさまざまな進歩や改善が見られた。もちろん荒削りではあるが、まだアルテタが来てからそんなに時間が経っていないことを考えれば、これは驚異的な変化であり影響力ではないだろうか。

まずはビルドアップ。

エメリの末期ではボールを持って前に運ぶことが壊滅的なまでにできなかった。難病を患っていた。とにかくヴァーティカルパッシングができないため、ひたすらUシェイプでバックラインを右へ左へとボールを回すだけで、誰もがボールを失う責任を回避したがっているように見えた。怖気づいてロングボールに逃げた。

この試合ではボーンマスが比較的プレッシングをかけてこなかったということもあるが、これがびっくりするほど改善していた。バックからのプレイでCMがボールを持って前を向くシーンというのは、アーセナルではほんとに久しぶりに見た。ていうかそれが久しぶりってどんだけなの。

それと、CMがボールを持ってプレイできていたこともそうだが、アーセナルはなんとピッチのセントラルエリアを使い始めた! なんてことだ。こりゃたまげた。

戦術の工夫があってのことだと思うが、トレイラ、ジャカ、エジルの3人がきっちり自分の役割でボールを持ってプレイしていたのがとても効果的だったのだと思う。後半は多少修正されてエジルのスペイスがなくなってしまったが、まあとにかくミッドフィールドの中央を使えるようになったことは、チームパフォーマンスにとって大きな前進に違いない。

そしてポゼッション。この試合のポゼッションは約60%。云うほど高くはないが、これも終始アウェイであっても攻撃的でいた結果だろうと思う。

アーセナルは明らかにボールを持とうとしていて、さらにボールを持って攻めているときはバックラインをかなり押し上げていた。

ぼくのメモによれば60分あたりでは(CB+ジャカ以外)ほぼ全員がファイナルサードに入っているというくらい極端に押し上げていた。これもエメリ時代にはなかなか見られなかったものだ。

もちろんそれによりカウンターも受けやすくなっただろうが、上から下をコンパクトにすることで、自分たちがボールを回すための距離が短くなりパス成功率は高くなる。最近の試合のパス成功率の推移は確認していないが、きっとなんらかの進歩があるはず。今回の試合全体でのパス成功率は89%。しかも後ろだけでダラダラ回しているのとはわけが違う。

ボールを持って攻撃する。

ボスの云うとおり練度はまだまだ進歩の余地があるが、とにかくチームはそれをやろうとしたし実行した。

正しいマインドセットとファイトとスピリット。今後に大いに期待が持てそうだ。

戦術の工夫

エメリの末期は、もう笛吹けど踊らずという感じだった。

いくらメンタリティを変えなければと云われても、やることなすこと徒労に終われば選手たちだってついてこない。選手とコーチの信頼関係が失われれば、伝わるものも伝わらない。

アルテタが自分のことばや信念を選手たちに伝達してそれが受け入れられるには(彼はよく“transmit”ということばを使う)、そのことばに説得力がなければならない。ことばを越えた「カリスマ」も重要な要素だろうが、なにより実地に改善を見せるのが人心掌握術でもっとも有効であることは想像に難くない。

この試合でアルテタが見せた戦術の工夫は大いにチームに活力を与えたし、選手たちも手応えを感じたろうことは生き生きとしたパフォーマンスにも現れていた。

彼が施した策はエメリ時代には見られなかった「プログレッシヴ」なもので、グアルディオラのスタイルを熟知しているような、フットボール戦術の話が3度の飯より大好きな皆さんにはかなり響いたのではないだろうか。

ペップゆずりのアプローチを取るとは試合前にアルテタ自身が認めていたことであるが、今回まさにそのペップの流れを汲む戦術を見せた。

この話は、これからいろんなところで言及されそうだから、そういった分析記事をあらためて紹介する機会がありそうなので、ここで素人があまりツッコまないでおくが、

目立ったもののひとつは、AMNとジャカのポジショニング。

RBのAMNは今回はポゼッション時にはRBのポジションをキープせずCMと同化するというポジショニングを取っていた。FBをMFとしてインサイドで使うこのやり方は、グアルディオラのいわゆる“Inverted Full-Back”(あるいは“False fullback”)だ。それによりミッドフィールドの数的優位を確保する。

Inverted Full-Back

それと左サイドでは右とは違い、ポゼッション時にLBのサカを高くプッシュアップするために、ジャカがかなり左寄りにLBあるいは3CBの左のようなポジションを取っていた。サカの90分のヒートマップを見ると左サイドで上から下までまんべんなくボールに触っていることがわかる。

このセットアップのおかげもあり、サカとネルソンはだいぶクロスを入れるチャンスがあったがそこだけはあまりにうまくいかなかった。

アルテタがこれからアーセナルで自分のやりたいシステムを組み込もうとするときに、ペップスタイルをどれだけアレンジするかが注目されているが、このようなところにもそれが現れていたのかもしれない。

AMNはもともとCMでFBのときもインサイドに入って行きたがる傾向がある選手だし、ジャカはもちろん混雑したエリアよりスペイスがあるほうが特長が活きる選手だ。

相手と選手に適応して最適なフォーメイションで戦う。相手への適応はエメリと同じだが、選手の特長をしっかり活かすところは前任者とだいぶ違うように思えた。

※コメントくださるかたにお願い
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21 Comments on “【マッチレビュー】19/20EPL ボーンマス vs アーセナル(26/Dec/2019)アルテタのたしかな一歩

  1. 久しぶりな観てて楽しい試合でしたー。
    あんなに縦パスポンポン入ったんで、逆にボーンマスの戦術大丈夫か?と思ってしまいました。
    あとは前からプレッシングかけて来るチームにどう対処するのか、アルテタに期待しましょう!

  2. オーバ以外の得点パターンが確立されれば勝率上がりそうな今後でしたね
    現時点ではマルティネッリが最右翼で、ラカの復調ペペのPL対応、サカ、ネルソン化け待ちですかね
    ラカの絶不調ぶりは心配ですけど

  3. アルテタ(違うかもしれない)のパパコールがすごかったです。ナイルズのポジション然りディフェンダーのポジションにもものすごく気を使っているのだとわかりました。アルテタは引き出しが多そうでいいですね。これから楽しみです

  4. ムスタフィ最高!
    パスも素晴らしいが何よりも画面に残像だけ残る新幹線スライディングが僕の脳裏に焼きつきました

  5. 全体によく走って戦ってたし、改善の兆しも確かに見えた。ただ厳しく見ればDFラインは相変わらず低かったし、中盤のプレスもゆるかったと思う。

    後半ジャカが下がって良いパスを出してたのはオプションとしては素晴らしいけども、逆にトレイラが下がってパスを引き出した時にジャカのサポートが遅くてカットされるケースが目についた。もっと全体をコンパクトにして短い距離のポジション修正でパスコースを作れるようにしたいし、ジャカもそういう細かい動きを磨いて欲しい。でないと下がったジャカに強いプレスをかけられた時に苦労すると思う。

  6. トレイラとエジル。この二人がとにかく目立ってました。エジルのパスが何度もすりぬけてましたが、一つでも決まってたらと思うと悔しいですね。こんな悔しがり方久しぶりです。
    ジャカが抜けるならあそこはルイスでもいいかなって思ってます。
    ラカゼットはちょっといつものキレがないとゆう印象でした。
    ダービーで初勝利。おおいに期待度します。

  7. 久しぶりに「神様、勝たせてやってくだせぇ」と思える試合でした。
    日曜のBLDでブチ勝ってハズみにして欲しいところです!

  8. 攻撃においてこの試合で一番効果的だったのはジャカの縦パスだったと思います。いつものサカのクロス精度ならもっとビッグチャンスになってもおかしくない場面を何度も作り出してて、あのパスのスピードでの正確性は世界でも有数の能力でなかなか代えがきかないんじゃないでしょうか
    トレイラやダビドルイスもいいパスは出してると思うけどジャカと比べると劣ると思います。なのでジャカにはぜひ残留して欲しい

  9. たった数日でこれほど改善するのかとビックリ。
    特にビルドアップの工夫が凄かった。状況に応じて変化しつつ形も多種多様。書くの面倒なんで省略しますが5パターンも使ってました。ボーンマスは前プレしなかったんじゃなく出来なかったんですよ。アルテタの無効化発動です。アルテタはホントに凄い。

  10. エジルやセバージョスといったボールプレイヤーが輝くスペクタルなサッカーをしてくれそう。期待しすぎるのは禁物ですが

  11. ビルドアップとプレスという二大問題を配置と少しの工夫で解決するとは思いませんでした。

    クロスの出し手と受け手が整備されたら、より得点の匂いが出てくると思います。

    サカやネルソンのクロスが効果的でなかったのは、ラカゼットとオーバメヤンが似通った動きをしている+反対のサイドのウイング&サイドバックやミッドフィルダーの入ってくるタイミングが悪いことが挙げられるのではないかと思います。

    チェルシー戦は楽しみですね。彼らもホームでサウサンプトン相手に不覚をとっているのでチャンスはあります。あと、トップ4もわからなくなってきました。レスターやシティも磐石ではないので、可能性は多いにあると思います。

  12. Primevideoでの中継について、トップギアでおなじみのジェレミークラークソンは「より多くの解説者に出番が回ってきて、これは良い事だね」とTwitter上でコメントしていました。英語圏全体ではどのような受け止められ方なんでしょうか。また日本語解説にとって長い目で見て前進となるのでしょうか。

  13. オーバのゴールは、大抵は合わせにいって左にそらしますよ
    ディフレクトしたボールなのに、瞬間的に完璧にコントロールするのはスゴいです

    ぺぺは相互理解の問題でしょうか、才能は明らかなんですけどねぇ
    スピードとテクニックで1枚くらい簡単にはがしますし、
    特にキックの種類は豊富で、セットプレーはもちろんオープンプレーでシュートにタテ回転かけちゃいますから
    どんな足首してんだよ、っていう

    自分のカタチが強すぎて球離れが遅い傾向だし、数的不利な状況でボール持つことも多い
    思った以上に相互理解が進んでないようですが、勝負所に自分のカタチ集中出来ればかなり強いと思います

    アルシャビンみたくすぐフィットするのもあれば、
    フレブは2月頃までダメでcl16マドリーで突然きっかけつかんで活躍しだすのもあります

  14. プレスが来ても、ショートパスのテンポを上げて対処していたし、アーセナルらしいサッカーが出来ていたと思います。
    明らかに自信を失っていた選手たちもポゼッション率が上がっていくとともに、強気にプレーできるようになっていました。
    特にルイスやトレイラは彼らの本来の武器が活かせるようになったように見えました。
    チーム全体がハードワークしていたし、その連動性も見られたのがすごくうれしいかったです。
    ボールが来なくてもパスコースに動きなおす選手も明らかに増えました。

    ミケル監督には疑問符がずっとついていましたが、
    アーセナルのサッカーを理解していて、
    その方向性を選手たちに示せる人は監督候補の中では彼が一番だっただなと思わされる試合でした。

  15. ほんと主さんが言う「まともなフットボールを見れた」思いました。成仏できそうです(笑)
    求めるとクオリティもまだまだだし、相手との相性もあると思いますけど。

    でも今回のポジティブはちゃんとアプローチがあって出来たポジティブだと思う。(戦術・選手のマインドを変える)
    たまたまでなく。細かいことはよくわからんですが(笑)
    継続してほしいですね。選手自身の取り組み含め。
    たぶんまだまだ苦労することもあると思う。信じられないような大敗をすることもあるかも。
    大まかなポジションの指示はある程度すぐ浸透すると思うけど、細かなところは時間がかかると思う。
    でもアルテタならその細かい部分も指示できると思う。試合中もそれは見て取れた気がする。
    コメントもいいですね。
    正しい方向、正しいアプローチで変えていけると期待してしまいます。

    自分はサカ、ネルソンはまだまだだと思ってますが主さんが期待するなら期待したいですね。

    ペペへのタックルほんま酷すぎ…

  16. トレイラ、トレイラ、トレイラ!でしたね。彼のああいうプレーを見たのは1年ぶり。どうしてエメリは彼のポジションをいじったのでしょう?

    そこからおかしくなり出したような気がしますが、まぁ今さらですね。

    とにかくトレイラは絶対保持!です。

  17. アンリ先生が言うように、公平に見ればブリリアントな結果とは言えない。
    相手もけが人10人と不調のボーンマスにドローだし、と。

    ただ!文脈として、エメリ末期 -> FL暫定でもあがらないパフォとムード、からの大反発であること!
    これがとっても素敵なことだと思う。(アンリとかってハイライトしかみてねーんじゃね?と思っちゃう)

    アルテタにとってトレーニングでインストールする時間がないこと、Detailにこだわれる段階でもないことなど
    多数の不利なシチュエーションにも関わらず、確かな前進を感じられた。
    これはすごいことだと思う。対マンチェスターC戦と比較してみ?ぜんぜん違うぜ!と言いたいぜ。

    縦パスバシバシ入るし、トレイラとエジルは踏ん張ってたし、AMNとサカ、ジャカをポジション修正して強みを引き出していた。これは明確なプランありだよね!

    あとは前線の選手の約束事の整理と精度や、プレス時のアタック&カバーなどの整理、距離感修正が欲しいけど、まぁそこは徐々にかなぁ。

  18. 次の試合は最近不調のチェルシー戦ですがここでアルテタ監督がビッグクラブ相手にどのような試合をするかが注目ですね!

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