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【マッチレビュー】23/24 UCL FCポルト vs アーセナル(21/Feb/2024)手痛いレッスン

試合の論点

FCポルト vs アーセナルのトーキングポインツ。

したたかなポルト。術中にはまるアーセナル

試合後の会見で、ポルトの戦略的アプローチについて問われたアルテタは、「相手のやってくることはわかっていた」と話していた。だが、ほんとうにわかっていたのかなと思ってしまった。

この試合でポルトがやろうとしていたのは、アーセナルのストロングポインツを潰すこと。調子に乗らせないこと。

そのひとつは、まずアーセナルが好むフリーフロウなフットボールの分断。接触すれば簡単に倒れてファウルを誘い、アーセナルには決して試合のリズム、勢いをつくらせない。ストップとスタートの繰り返し。これを意図的にやる。

結局この試合でアーセナルは22ものファウルを取られたが、そのファウルの多さはCLの試合でも2021年12月ぶりという。

今回、ポルトのファウルをあわせた両チームのファウル合計は36。参考までに先週末のPLバーンリーが19。その約2倍である。アーセナルの今年の試合平均が21.5。

EPLのファウル基準はワールドフットボールのなかでは比較的ゆるいとは思うが、この試合のレフはあまりにもイージーにホイッスルを吹きすぎていた。どうりで観ていてイライラするわけだ。

この試合で、ボールをプレイしていた時間は、たった51.7%。今シーズンのラスト16ではダントツの短さ。それだけ、プレイが止まっている時間が多かった。

にもかかわらず、この試合のアディショナルタイムは、前半が1分。後半が4分だった。

このようにファウルで時間を細切れにされながら、それしか追加の時間を取らなかったということは、いかにレフリーがホームチームの遅延行為的時間浪費に自覚的でなかったかということかもしれない。アルテタもレフがマネジすべきだったと苦言を呈した。

それと、毎回セットピースでの攻防も特徴的だったが、そこにもポルトの作戦があったようだ。

アーセナルのコーナーキックになると、彼らはアーセナルの選手をGKに近づけまいとするように、ボックスのなかではかなり執拗にマン2マンでつき、両者つかみ合いになることも多く、そのたびにレフが試合を止め、そこでもまた試合のフロウが分断されることに。

そのつかみ合いのなかで、その各所での1 v 1デュエル?にアーセナルの選手が勝つシーンもたびたび観られたが、あれもポルトの選手は意図的に倒れていたという指摘もある。

Sam Dean(The Telegraph):アーセナルのセットピース脅威を無力化しようとするポルトのアプローチ。それは、接触を待ってからレフリーにフリーキックを求めるというもの。さっきのコーナーでは6ヤードボックスのなかでポルトは3人も倒れた。

なんか、サッカーマンガとかでこういうズルい作戦ありそうだな(笑い)。でも、それを現実で実行して、しかもかなり効いた。

あとぼくが気づいたのは、ボールボーイがアウェイチームとホームチームでボールの渡しかたが全然違うこと。そういう地味な嫌がらせも。

ポルトには、そういうダークアーツ的アプローチがありつつ、同時に守備のオーガナイズも上等だった。フェアにいって、アーセナルは彼らのコンパクトな守備ブロックの攻略にはだいぶ手こずった。

この試合の彼らはハイプレッシングこそほとんど行わなかったが(※この試合の彼らのPPDAは23.6で国内リーグでのアプローチとまったく違う)、かなり整った守備でアーセナルが使いたかった中央エリアやハーフスペイスをまったく使わせず。

その結果、アーセナルはSoTゼロみたいな攻撃パフォーマンスになってしまった。そこは純粋にポルトが優秀で、彼らを称賛しなければならないところだった。

Arsenal Column氏の分析。

ポルトのポゼッションしていないときのシェイプはスーパーブだったと思う。とくに、ウィンガーの使い方。高くプレスさせるが、それでいながらにして彼らはハーフスペイスへのパスをブロックする。

基本的に彼らはアーセナルがインサイドにパスすることを防ぎ、ワイドに限定し、そこで勝つ。

アーセナルの今シーズンのワースト試合は、フラム、ランス、ポルト。アグレシッヴミッドブロックを使うチーム。

おそらくアルテタは、コントロールの面でミスを犯している。彼のチームは攻撃を持続するためにピッチ高くでポゼッションできなかったし、UBTパス(Up-Back-Through pass)に苦労した。

アグレシッヴミッドブロック。たしかに。

アーセナルは、リズムをつくりたくてもファウルでフロウを分断され、ボールを持っても中央をきっちり締められてバックラインでのボール回しを強いられ、サイドを大きく変えるクロスフィールドパスは毎回成功するわけでもなく。長いパスの成功率が低くなるのは当然だろう。

そういうことがおり重なって、SoTがゼロみたいな、ああいう攻撃のアウトプットになってしまった。

アルテタは、もしそれもわかっていたというのなら、もっと違うやりかたを模索するべきだったのではないか。

とくにポルトの守備ブロックは天地がコンパクトでハイラインのことが多く、カメラに映るマルティネリやハヴァーツはしきりにDFラインの裏抜けを試みようとしていたが、ショートパスのビルドアップにこだわって、スルーボールはなかなか出ない。逆に、ポルトのほうはアーセナルのDFラインにGKの正確なロングボール1本で、チャンスをいくつかつくっていた。

いまのアーセナルは決してロングボールに消極的なチームではなくなっているので、今回のような相手なら、DFラインの裏を狙うことはもっとやってもよかったように思う。そうすれば相手もロングボールを警戒し、高いDFラインで天地のコンパクトさを保てなくなり、おのずとブロックのなかにスペイスが生まれて…… とか。

セカンドレグに向けて

と、そのようなもろもろがありながらも、この試合はアーセナルは引き分けているべきだった。勝てないなら、敗けないこと。

まあ、実際限りなくそれに近づいてはいたわけだが。あとすこしガマンすれば0-0で終われた試合、あそこで致命的となる雑なパスを出してしまったマルティネリにはいいレッスンになったはず。

試合後のライスは、まだ勝負は半分終わっただけなので、ポジティヴだと述べいていた。この状況でポジティヴとは奇妙な物言いであるが、ぼくもそれは強がりとは思わない。

今回のポルトのアプローチはかなり効果的だったことは認めよう。だが、エミレーツで同じことができるとは思わない。今回、アーセナルのチームが学んだことはたくさんあるし、レフリーもファーストレグのレヴューくらいはするだろうから、今回の試合で起きたことをよく吟味してもらえれば、彼らもセカンドレグの教訓にするはず。

いっぽうポルトとしては、今回のアプローチは今回限りとして、あとは0-0で勝ち抜けることができるようになったので、モウリーニョばりのパーク・ザ・バスをやるかもしれない。あの守備のオーガナイズぶりで、ロウブロックをやられるとかなりやっかいだが、それでもアーセナルはゴールして勝つしかない。

ここで敗退するようなら、いずれにせよこの若い未経験なチームには、UCLはまだ早かったとあきらめよう。

正直、このノックアウトステイジでやっとCL本番という感じはするし、選手たちもそういう考えはあったと思う。アーセナルの選手たちは最初からかなりナーヴァスだったし。そうじゃなきゃ、いきなりあんな連携ミスからカードをもらうみたいなことは起きない。

そういう心理的な部分も、アーセナルの攻撃パフォーマンスに大きな影を落としたのは間違いない。ビビってた。

だが、未経験ゆえの吸収力があるはず。今回の試合で起きたことを振り返り反芻する時間は、幸いにもまだ3週間もある。

今回の教訓をつぎに活かすことができ、勝ち進めることができれば、このチームはまたひとつ強くなれる。うん、きっとそうだ。

エミレーツで大逆転のカタルシス。その伏線なんだろう?

 

この試合については以上。

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