試合の論点
フルハム vs アーセナルのトーキングポインツ。
not good enough
前回のPLウェスト・ハム、あるいはPLヴィラと、同じ敗けという試合結果でも、今回は事情がまるで違った。今シーズンのアーセナルはこのほかにニューカッスルにも敗けているが、その試合とも全然違う。
とにかく、アーセナルはまったくこの試合に勝つに値するパフォーマンスではなかった。試合を観ていても、プレイにエナジーも集中力も感じないし、単純ミスを繰り返し、このチームがインフォームのときの勢いがまるでない。
逆にフラムのほうはよく守り、よくチャンスをつくっていて、ゴールも必然と感じた。前半28分のゴールも、いかにもアーセナルはやられそうだったし、後半58分の2点めも勢いがあった。彼らは、とくにベン・ホワイトのエリアから何度もチャンスをつくっていて、事前の研究も感じさせた。
ボールを持たれているときは、全員がボールの後ろに陣取り中央をかため、ワイドのサカとネリに仕事をさせないやりかたも、直前のWHUがだいぶお手本になったはず。
このアーセナルのプアなパフォーマンスには、やはり疲労の理由が大きかったんだろうか。
前の試合から中二日で、選手を一部変更した以外はチームのコアには変更なし。アルテタは、チームに疲労があったことは否定していたが、正直あのチームがこのパフォーマンスになった理由は、それが最大だと思える。
疲れているから、相手にボールを奪われて、自分たちがボールを追いかけることになるのを恐れてリスキーなパスが出せないし、いつまでも横へ横へ展開することになってしまう。正直、われらがアーセナルのあんな消極的なボールまわしを観るのは、ひさしぶりではないだろうか。
下の動画では、この試合のアーセナルのチームにあった消極的マインドがうまくまとめられている。すぐ消えるかも。
Fulham – Arsenal – Analysis thread
1⃣No risk passing
2⃣What’s going on with Ben?
3⃣Nketiah1⃣ Have we been so used to control and slow-cook our opponents that we’ve lost all urgency in our play, even when losing?pic.twitter.com/vwTaVwh8G5
— 🇳🇴 kimmoFC (@kimmoFC) January 1, 2024
※このスレッドはほかにも、ホワイトやエンケティアの消極的プレイ(BWはずっとケガを押してプレイしているという説アリ)も動画で指摘されてて興味深い
集中力を欠き、プレイの正確さも欠いた。多くのことが疲労で説明できそうではある。肉体的な疲労は、精神的な疲労にもつながっている。いいときのアーセナルは思考のスピードすら速く観えるが、上の動画などをあらためて観るに、思考スピードがかなり減退しているのが観られる。ボールをもらってから、やっとつぎのことを考え始めるみたいな。集中力が研ぎ澄まされているときは、2手3手先を考えてプレイしているみたいに観える。
それと、フラムとの試合に対するメンタリティもあったかもしれない。今回は、慢心というワードはあまり使いたくないが、これが仮にシティやリヴァプール、ToT相手のビッグゲイムだったらと考えると、中二日の試合だって、もうちょっとやる気を観せたんじゃないだろうか。ビッグライヴァル相手にあんなプレイをしたらファンが許さない。
だから、アーセナルは、この試合について心身ともに準備不足だったと感じる。
この試合で露呈したいまアーセナルが抱える問題
アーセナル界隈でも、最近はストライカーの問題ばかりフォーカスされてきたが(※現在オープンプレイゴールがリーグ13位)、問題はそれだけではない。
この試合のあと、ちまたでいろいろ指摘されている、アーセナルにある現在問題だと思われている部分をまとめると。
- 決定力不足
- 予測可能性(同じ戦術)
- 遅すぎるプレイ(遅攻)
- レギュラー固定(サブが死んでる)
- プランBの欠如(戦術柔軟性)
- 個人フォームの落ち込みが同時進行
等々。
まあ、このほとんどは、アルテタがアーセナルに来てからこれまでずっと云われつづけてきたことでもある。勝っているうちは、大きな問題にならなかっただけで、潜在的にはずっと存在してきたこと。
だからこそ深刻に思えるというのは、ある。どれも、アルテタのスタイルのあまりにも根本的な部分だから。
この試合でも著しく露呈した予想可能性問題については、この間、アルテタ自身もジェズースのケイオスを称賛したり、予測不可能性を重要視する発言をたびたびしているので、それに問題がないとは思っていない。
ただそれでも、根本的にはやりかたを変えずに去年、今年と事態が好転してきたのは、やはり相手が予測していてもなお、それを上回るチームプレイのスピードや正確さ、個人のクオリティを発揮するようになってきたからだろう。サカにボールが渡って、彼が決定的ななにかをするだろうと予想できても、なかなか止められないみたいな。みんなMo Salahがどんなプレイをするか知っているが、それでも彼はゴールを決めつづけている。
いっぽう、それが足りなくなると相手のブロック守備の外側で延々とボールをまわしつづけるみたいな、そしてたまになんでもないところでパスミスするみたいな、たちまち以前のドジでのろまなアーセナルに戻ってしまう。今回のように。疲れているときも、そうなりやすいだろう。
あるいは、あまりにも毎回同じやりかたと同じ選手なので、相手チームの研究がどんどん深まってきたとか。ハムとフラムの対応を観てたら、それもあるように思える。
個人フォームの落ち込みが同時進行については、各所で似たような議論がされているのを観たが、個人的にはよくわからない。サカ、ネリ、トロサール、ジェズース、フロントの選手がみんなフォームが落ちていて、こういうことが同時に起きたのはこれまでなかったと。
どうだろう? 全員疲れてるとか。ネリのように、バッドフォームの結果でさらにバッドフォームになっていくような悪循環はあるかもしれない。
ぼくが、このなかでアルテタにほんとうになんとかしてほしいのは、4である。このブログでは何度も同じことを書いているので、もう聞き飽きたひともいるかもだけど。
とくにネルソンとESRは、やっぱりプレイタイムが全然足りない。ESRなんかせっかくフィットしているのに、あまりに冷遇すぎる。アルテタは3年前彼に命を救ってもらったのを忘れてしまったのか。
彼らがいまサブでインパクトを残せないとしたら、彼らのタレントのせいではなく、ふだんから彼らにマッチフィットネスとか自信とか勢いとか、そういうものを取り戻させようとしていないからだろう。
レギュラーチームがひどく疲れていることと合わせて考えると、どうにも納得がいかない。
単純にアルテタが彼らを信頼しておらず、いまのシステムにも合わないし、いずれ売却対象と考えているのかもしれないが、それでもこのシーズンは、いまいるスクワッドで勝っていかなきゃならないのだから、使えるリソースは有効に使わないと。彼らは、その足しにすらならないのだろうか。
この件については、半分あきらめてもいるが。アルテタは頑固であまり変化を好まないコーチで、同じやりかたに強くこだわる。それで成功した部分もある。だが、そうじゃない部分もある。いまは、彼の頑固が裏目に出ている部分に思えてならない。
総じて、こういう試合を観てしまうと、アルテタのやっていること、やろうとしていることは、試合に勝つうえで、ゴールを奪ううえで、果たして効率がいいのか考えてしまう。いいときはもちろん何の問題もないが、悪いときはそれがほどほどで済まない。
今回のサカのゴール(5分)は、カウンター状況からのマルティネリのショットをレノが弾いたところを押し込んだかたちであるが、あれが決まるまでのボックス内タッチはたった4だったそうである。ウェスト・ハムでは、ボックス内タッチ77でゴールがゼロ。
それは、相手がボックス内で準備万端でいるときのゴールを決める難しさを端的に物語っているし、毎回アルテタのチームは遅攻によってそういう状況を自らつくりだしている。
それにしても、シーズンを折返すだいじな局面で、チームがこういう状況になるとは想像もしていなかった。正直、ぼくはもっと楽観的だった。
ここでタイトルの望みが消えたとまでは云わないが、まあかなり厳しくなったのは事実。アーセナルが敗けを重ねて4敗なのに対し、トップのリヴァプールはまだPLで1敗しかしていない。なにより、アーセナル自身が、ここから事態を好転させられるかどうかがあやしく思える。つぎのFAカップはリヴァプールだから、そこで3連敗の可能性だってある。そうなれば精神的なダメッジも大きい。若いチームの自信は、たいそう傷つけられるだろう。
つぎのPL(パレスH)まで3週間あるのは、悪くない。この間にアルテタは、どうこのムードを変えられるか。このチームにポテンシャルがあるのは疑いないのだから、あとは彼らをどうノセるか。
今回は、選手たちを責める気にはまったくなれない。彼らをパフォームさせるのもコーチ次第。とてもそういう感覚がした試合だった。
今年アーセナルがPLタイトルの夢を消さないためには、ここから自分たちが勝ちつづけるだけでなく、リヴァプールやシティのスリップを期待せねばならなくなった。
この試合については以上
ご紹介のXの動画で指摘されている矢印の前へのパスコースは半分くらいが、実際には出せない(通らない確率が高い)パスコースで、もうその前から遅いんですよね。
しかも三段階の優・良・可で言うと良あたりの狙いのパスで、これでも仰る通りの遅攻の範疇ですね。
各駅停車の中盤の間受けよりも効果的なのは、一個飛ばして最前列に当ててウデゴに落とす方が前向きで受けられるパスで、上位クラブはそれが多い。
比較すると今のガナは遅々攻。各駅停車よりも渋滞にはまった路線バスくらい遅い。
Xのそれも方向性的に正論だし同意だけど、問題はより深刻ですね。
監督がハム戦後に「質より量」宣言をしていて、まるで悪い冗談のようです。
「30ショッツでゴールできないなら、50でも60でも打たないと。それが唯一のことだ。」
無駄にいじって悪くしてるのも仰る通りだし、昨季のチーム編成も内容も成績も出来すぎの、いわば奇跡の連続でした。