試合の論点
アーセナル v ノッティンガム・フォレストのトーキングポインツ。
試合を完璧にコントロールした夜
序盤こそ拙いプレッシングを破られたり、フォレストも骨のあるところを見せるかと思われたが、90分を通してみればアーセナルにとって危ないシーンもほとんどなく、ほとんど完璧に試合を支配したと云える。今シーズンはもちろん、昨シーズンも含めてここまで完璧だった試合はいくつもない。
この試合がこれまでと違っていた点はどこだろう。
相手がチャンピオンシップのチームだったということは当然割り引いて考える必要はあるが、この試合を観ていて今シーズンのレギュラーのアーセナルと違っていたポインツはいくつかあったと思う。
ぼくが気づいたひとつは、前半何度か観られたようにフルバックからのクロスがわりと浅い位置から入れていたこと。アーセナルではこのプレイはふだんほとんど見られない。これにはおやと思ったものだ。
ふだんのアーセナルならファイナルサード深くに侵入してからクロスというがもっぱらのやり方で、以前からぼくはもっと早くクロスを入れてもいいのに思っていたものだから、この戦略?が余計に新鮮に見えた。実際それは得点には結びつくことはなかったが、そういったクロスを織り交ぜていくことは、相手DFにとっての守りにくさという意味からもまったく理にかなっていたと思う。
それと、ここ数試合はずっと問題だった中盤のバランスについて、トレイラ(DM)とウィロック(B2B)のダブルピヴォでだいぶ改善していたように見えた。トレイラのNo.6はもちろん本職だし、ウィロックが攻守のバランスを取っていたこともあって、ボールを奪われてからすぐ中盤のスペイスを使われてカウンターというシーンはほとんど観なかったし、ボールを持たれたときでも、しっかりと組織で対応できていた。
エメリの目にはこのバランスの良さはどう映っただろうか。
最高の戦術=エメリを無視すること?
ところで、みんなおんなじことを考えるんだなあと思ったのは、試合後のこのツイートを見て。
Combine that with the way we finished the game on Sunday and I think we found the perfect tactics: stop listening to the manager https://t.co/7tAG6weWc1
— YankeeGunner (@YankeeGunner) September 24, 2019
(今回チェンバースがエメリの指示を無視したことと)日曜の試合のフィニッシュの仕方と併せて考えるに、完璧な戦術ってのは要するにマネージャーの云うことを聞かないことでは?
この試合のプレヴューエントリで、中一日で試合とは準備時間がなくてエメリたちは大変だなあと書いたのだけど、この試合で選手たちにいつものような十分なインストラクションができていなかったとすれば、それが逆に功を奏した可能性があるという。ヴィラの最後のほうだってもうケイオス状態で、ファイティングスピリッツと負けん気と個人のインスピレイションがごちゃまぜに溢れ出ていて、戦術もクソもなかっただろう。
ちょっと笑えるけど、意外にそれはあるかもしれないなと。
つべこべ云わないで、選手たちにある程度任せたらうまくいったってのは、べつにエメリに限らず場合によっては十分にありえることだと思う。とくに今回のようにエジルをNo.10、トレイラをNo.6など本職を適材適所で使っているときは、彼らはふさわしい動きを教わらずとも知っているわけで。
エメリの場合は複雑でたくさんすぎる要求がチームがワークしない問題の原因じゃないかとも指摘されているので、むしろその可能性はけっこうあるんじゃないかと。なんかウケるw いまヴェンゲルさんが帰ってきて「キミたちのインスピレイションに任せよう」なんて云ったら最高のプレイをやるかもしれないよ。
しかし今回指示を無視したというチェンバースにエメリはどんな個人トークをするんだろう。会見では冗談めかして話しているが、コーチと選手の関係性を考えると、選手がコーチの云うことを聞かないというのはわりとシリアスな問題でもありそうに思えるのだが。エメリのコーチとしての求心力にも関わることだ。
決めるべき選手が決めた。選手が自信を深める理想的な得点
5点という久しぶりの大量得点となったこの試合の流れを考えるに、やはり1点目がキーポイントだった。
試合開始からフォレストはちゃんと教科書どおりにゴール前をブロック守備で対応していて、1点目(31分)が入るまでのアーセナルはボールを持ち、左右中央からまんべんなく攻めながらも少ないスペイスでなかなか決定打が出ず、若干攻めあぐねの傾向があった。
せっかくエジルがいるのに、ほかの攻撃の選手たちとあまり息が合ったところは見られず。試合を優勢に進めているにも関わらず、ファイナルサードでのクリエイティヴィティ不足を感じさせた。攻撃のコンビネイションについては、やはり普段から一緒にプレイしているわけではないロウテイションチームというふうには見えた。
そんななかでマルティネリの1点目につながったチェンバースのダイレクトのクロスは、まさに固いブロック守備を崩すために求められていた意外性のあるスーパーなプレイだった。
そのつぎの得点は71分のホールディングまで待たなければならなかったが、最初の得点のあとは、アーセナルがポゼッションして相手ハーフに全体を押し込むという、より一方的な展開になった。
結局最後の20分で4得点が生まれるというケチャどば展開となって大変に喜ばしいかぎりだが、なにが一番素晴らしいかといえば、取るべき選手がゴールし、取らせるべき選手がアシストしたということ。
一応プリアシストまで入れるとゴール+アシストはこんな感じである。
- 31分 ネルソン → チェンバース → マルティネリ
- 71分 ネルソン(CK) → ホールディング
- 77分 ムスタフィ → ベレリン → ウィロック
- 84分 サカ → チェンバース → ネルソン
- 92分 チェンバース → マルティネリ
ゴールに関わったメンツ。
- マルティネリ 2ゴール
- ネルソン 1ゴール 1アシスト 1プリアシスト
- ウィロック 1ゴール
- ホールディング 1ゴール
- チェンバース 3アシスト
- ベレリン 1アシスト
- ムスタフィ 1プリアシスト
- サカ 1プリアシスト
マルティネリの2ゴールはもちろんとてもポジティヴだが、ネルソンのパフォーマンスがなによりぼくはうれしかった。
彼はここしばらくは、ファーストチームでのペッキングオーダーで年下のサカに先を越されたような状況でもあったのだから、このパフォーマンスで自分はサカに決して負けていないと猛烈にアピールしたようなものだ。サカとネルソンはドリブル突破できるウインガーのライヴァルとしてこれからどんどん高めあっていってもらいたい。
それとホールディングとベレリンがそれぞれ長期離脱から復帰直後で劇的ゴールと劇的アシスト。出来すぎである。マンガかな?
いいパフォーマンスはもちろんだが、数字に残る結果はアタッカーにとって最良の薬だ。彼らがこの試合で自信を深めたことが、今後のアーセナルにとりなによりポジティヴである。
キーラン・ティアニーのクオリティを見た
この試合が彼のAFCにおけるデビュー戦となった。これはもう「鮮烈デビュー」と云っていいのではなかろうか?
ゴールにこそ直接関与していないが、左サイドで見せた攻守での貢献はもうハンパじゃなかった。
ぼくは彼がちゃんとプレイするのを観るのはこれが初めてで、攻撃ではクイックさとペイスにまず驚いた。ぶっちゃけ彼の前評判はさすがに大げさだと思っていて、そこまで期待はしちゃいけないと思っていたんだ。
ところがどうだろう。切り返しの鋭さに、対峙した相手を簡単にぶち抜くペイス。そしてクロスの精度。控えめに云ってフォレストのRBをちんちんにしていた。
また今回特筆したいのは彼が攻撃だけでなく、守備も非常に安定していたこと。いるべきときはちゃんと後ろにいるし、出るべきときはちゃんと前にいる。彼が試合の流れを読める選手だということを物語っていたと思う。
前述のArseblogによれば、彼が今回残した数字は以下。
- 59 パス成功。成功率80.8%
- 3/8 クロス成功
- 6 ボックス内へのパス成功(アーセナルで2位)
- 2 キーパス
- 3 ドリブル(トップタイ)
- 10 ボールリカヴァリ(トップ)
- 2/3 タックル
ベレリンと交替するまでとてもよく動けていたように見えたが、当然彼はまだ100%じゃない。ケガから復帰後、先週のU-23とこの試合しか出ていないのだから。これでマッチフィットネスが整ったらどんなふうになるのか。末恐ろしいほどだ。
エメリにとって、ベレリンやホールディングと同様、彼もまた救世主のひとりになりそう。そんなふうに思わせるハイパフォーマンスだった。
エメリがセンターバックのオプションで頭を悩ませる事態に
ソクラティスとダヴィド・ルイスのレギュラーCBふたりがPLで不安定なパフォーマンスをつづけるなかでの、ホールディングの復帰、チェンバースのインフォーム、そしてムスタフィの(意外な)パフォーマンスの安定。この状況でPLの2CBを選ぶのがますます難しくなってきたのではないだろうか。とくにムスタフィは今シーズン2試合出場でどちらもクリンシートということで、マンU全体よりも多いらしい(笑い)。
ちなみにエメリは先日、ホールディングが戻ってきてもCBで優遇するつもりはないとコメントしていて(※ソース失念)、選手のフォームよりもチーム内の序列を重んじるという「悪癖」に個人的には疑問を抱いているのだけど、まあ実際はいまのCBを見れば、2CBのうちひとりはホールディングを選ばざるを得ないだろうと思う。ソクラティスとルイスはどうも相性が悪いのが見えてきている。もう信頼して使えるCBがふたりしかいないというような状況ではない。
したがって実質的な問題はホールディングとコンビを組むCBに誰を選ぶかになるはず。ソクラティス、ダヴィド・ルイス、チェンバース、ムスタフィのなかからひとり。
ふつうに考えれば、ソクラティスかルイスのどちらかだが、チェンバースとムスタフィも無視できないパフォーマンスを見せている。
この試合を受けて、ファンからはチェンバースをCBで選ぶべきだという声が高まっているよう。たしかに彼はヴィラでも技ありの1ゴール、この試合でも悪いところはまったくなく、しかも3アシストだ(最後のマルティネリのソロゴールもアシスト記録)。アーセナルでいま一番フォームな選手のひとりだと云える。ただ彼は、AMNが離脱中?ということもあり、CBでというよりはRBで起用されることになりそう。
一方この試合のムスタフィもかなりよかった。守備の時間が圧倒的に短かったのでその点では正しい評価はできないが、少なくともビルドアップでは彼のひとり飛ばした先を狙う「急行パス」(各駅停車じゃない)は、だいぶ効いていたし、ボールを持ったときの安心感もあった。守備でミスさえやらかさなければ、本来はそれくらいのクオリティは期待してもいい選手だ。
週末のマンUをどういうCBで臨むか。エメリの選択に注目だ。
チェンバースはほんとうによかったなあ。試合の流れをよく読んでいて何度ボールを奪い返すんだと。安西先生みたいにゾクっとしましたよ。この試合は誰が一番よかったかを決めるのは難しいくらいだが、やはり納得のMOTM。
このうれしそーな顔。おれはこの黄色の彼とまったく同じ顔をしていたね。
その他試合について
気がついたことなど。
- マルティネリはとても良かった。彼は以前にも書いたかもしれないが、ブラジルの選手らしく守備の意識が非常に高い。いまのアーセナルのFWのなかではおそらく一番ではないだろうか。この試合でも組織的なプレッシングは拙さを見せたが、マルティネリらの個人でのしつこいチェイスやタックルはとても効いていた。彼が得点して自信を深めたことはまことに喜ばしい。ポジションについては、左ウインガーらしく左に寄ってしまってネルソンらとかぶるシーンがあったり、CFしぐさを学ぶ必要があるなと思った瞬間がいくつかあった。今後もCFでプレイするなら彼の課題になりそうだ。
- ウィロックはますますラムジー化してきている。守れるし攻められる、得点できるMFの道をこれからも歩んでほしい。
- セバーヨスはNo.10よりNo.8のほうがずっといいという説があるが、ぼくも今回の試合を見ていてそう思った。彼がエジルと交替してからは4-3-3になったと思われるが、比較的後ろめでボールキープして右へ左へさばいていくようなプレイスタイルが彼にはとてもよく合っている。エメリはPLはジャカ+ゲンドゥージのコンビをレギュラーで固定しつつあるが、彼らよりもセバーヨス+トレイラのほうがよほど中盤が安定するように思える。ボールプログレッションのために中盤の安定を捨てているのが現在のエメリに思えるが、今後も続けるのだろうか。
- ベレリンの人気がすごいことはよくわかった。
- この試合の唯一のネガティヴは、もちろんエミル・スミス・ロウの負傷退場。先日のフランクファートにつづいて、この試合でも彼がひとりだけノッていなかった。あの流れであの負傷は気の毒すぎた。今シーズン2試合めで彼こそ結果がほしかったはずだ。それと、エメリがまた彼を右サイドで使ったのはどうかと思った。彼はフランクファートで右サイドで効いていなかったのは明らかで、むしろ右サイドでもプレイできる(本職?)ネルソンとサイドを変えてみてほしかった。
試合については以上。
TJJは怪我だったようで。本人がTwitterで言ってました。
個人的に、マルティネリはユングベリお墨付きでもないのになんで開幕からずっとベンチ入りしとるんやろと思ってたんですけど、これだけやれるんですね。これならELでも出番もらえるやろうしいい誤算でした。あと、それに伴いエンケティアが自分の意思でローンを願い出たってのもナイス判断やったなーと今なら思えますね。
もう夢と希望しかない。
このメンバーにオバメヤンとペペ入れるだけでユナイテッドやっつけられそうですね。
ホールディングとチェンバーズのコンビなら、将来的なことを考えても長い目で見る気になれるでしょうし、きっとパパルイスよりも結果も出るでしょう。あの二人はどっちもやらかし系なんでコンビはダメですよ。
次の試合のスタメンが待ち遠しい。
被シュート数5本にSOTが1本と、理想的な守備スタッツでしたね。
中盤の安定には、no.6にトレイラ固定でいいと思うのですが。あとはフォメによりゲンドゥージ、ウィロック、セバーヨス、ジャカを織り交ぜる、と。
エメリがあまり余計な手を加えず、適材適所に徹してくれることを切に望みます。
ベンゲル時代は選手にまかせっきりで戦術がないと騒ぎ立て、いざ戦術を立てて試合に臨むエメリがくると今度は選手に自由にやらせろという。
結局は選手の個が大事。ナポリがリバポに勝ってうちがリバポに負けたのはCB(クリバリ/マノラス)と(ソクラティス/ルイス)の差なんだなぁ。
ティアニーの良さはこちらにも書いてある通りあるべき時にいるということだと思います。
ティアニーがサカの内側からサイドに流れてサカのドリブルスペースを作り、ミドルシュートにつながったシーンはなかなかコラシナツでは見ないシーンなので印象的でした
エメリと選手たちが深い信頼関係で結ばれているのかというのは今シーズンのアーセナルを語る上で重要な争点になってきそうです。
マルティネリとかサカって、まさかここまでスカッドに食い込んでくるとは思ってませんでした。
やっぱイウォビ売却は間違ってなかったですね。
ティアニーout、ベジェリンinのとこの大歓声はちょっと震えましたね。コラシナツのプレッシャーもかけず、スペースも切らずにズルズルさがるだけの守備はほんとイヤなので、はやくティアニー1stチョイスにしてほしいです!
スパーズは昨シーズンの勤続疲労と、今まで週給を抑えて、馬車馬のように働かせていたが、契約年数切れ間近になって選手が半サボタージュ状態になっていると思う
こんなチャンスシーズンないよ
向こうからCL権取ってくださいと譲られている状況
しかし我らがエメリも負けじと譲り返す有様
昨シーズン末も圧倒的有利な状況で5位転落を見せたし、今シーズンは4位になれないとヤバい(語彙力
チェンバースはいいフォームだけれど、CBとしてはどうなのか、まだ疑問がある所
どちらかといえば彼の攻撃力が注目の源泉のような(1G3A)
ジャカを使うよりいい気もするけれど、ウィロックをそのポジションで見たい気もするし、セバージョス、トレイラ、グェンドウジの適性もその辺りで、超激戦区になっている
3トップもベンチ出場では造反が起きそうなほどトップで使わないといけないメンツが揃っている
CBだけが穴
まるで野球盤のフォークの穴のよう
なんじゃこりゃ状態
いやもう、若手の活躍と自信をつけていく姿は、本当に楽しみでしかない。ベジェリンとティアニー、ホールディングはとにかく慎重な怪我からの復帰プランを組んでほしい。オールドトラフォードは鬼門ですが、今のマンUであれば他のハードワークするミッドテーブルよりも却って与しやすし、という気がするのですが。かつてラシュフォードのデビューに2点ほど決められた記憶があるので、彼らの若手の覚醒の場とならぬよう、エメリんはこのスカッドで圧倒してここ数年はうちに勝てない、と思わせるような、そんな手立てを考えて頂きたい。
コルチェスターはチャンピオンシップ(2部)ではなく、リーグ2(4部相当)じゃないですかね。
そこに負けたのが衝撃という。
ほんとだ。ご指摘どもです。
トレイラは生きるポジションに据え置いてほしいです。個人的にアーセナルの将来と思ってますし、彼のような選手をずっと必要としていたのでは、と思うので。
年齢を考えてもロブ ホールディングやチェンバース、ムスタフィ(は否定派の方が多いですが)をベンチに置いてまで、パパ&ダビドルイスコンビが安定してるとも思えないので、そのふたり固定は私も反対です。特にロブは良いプレイをしていて、メルティと組んでたあの頃も含めて着実に成長している方だとは思えるので、使ってあげてほしいです。彼が出てったら、また選手を獲得せねばならんわけですし。
負傷明け3人は、焦らず大事に起用して欲しいです。
ムスタフィは頑張れ!
エジルは罰ゲーム(カラバオ3回戦)やらされてるようです・・・
エメリが指揮を執ってるうちは、もうダメなんですかね?
罰ゲームとは思ってないのではないかしら。復活組への祝いエジルほど相応しい人もいない。それに前線の若手はエジルの指示に必死について行ってたよ。まあ、なぜかセバーヨスがいて、いいとこ持っていかれたけども。若手は皆クレバーで上手いから、エジルにはカラバオカップで良い効果があるかも。